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「政府発表を検証もせず、右から左に垂れ流す大手メディアの無責任」
ジェフ・マクマオン / フォープズ 5月29日
2011年春、明らかに福島第一原発の事故が原因と思われる、全米各地における雨水、飲料水、そして牛乳からの放射性物質の検出が始まった時、多くの米国メディアはこの問題を無視しました。
この問題は確かに取材・報道するのが難しい題材です。アメリカ環境保護局は決まって終末の金曜日、それも不定期に計測された数値をそのまま公表するだけでした。
このため報道する側も、ピコキュリー、ミリシーベルト、MCLs(maximum contaminant level : 最大汚染濃度)などの単位で表現される、汚染の拡散状況や汚染経路などに関する相応の専門知識を身に着けないと、報道することが出来ませんでした。
このため報道各社は政府当局が発表する「環境中に存在する放射性物質の量は、安全基準をはるかに下回っている」という政府当局の発表をそのまま鵜呑みにしました。
こうした現実は汚染の真実について、報道関係者があえて一般の人々の注意を喚起することの無いように願う、原子力産業界と政府機関にとっては、願っても無い状況だったのです。
しかし低線量放射線被ばくの専門家である科学者なら、こう指摘するはずです。「安全だ」と公表している政府当局者自身、本来必要とされる、低線量被ばくが人間の健康に与える影響に関する知識など持ってはいないのだ、と。
そしてこれ以上の被ばくをすることになれば、癌の発症割合は目に見えて上昇することになると。
「被ばく線量ゼロを起点にして、放射線被ばく量が上がれば上がる程、将来のガン発症リスクも上がっていく。これが今日の放射線被ばくに関する、科学的に合意が成立しているごく一般的な学説です。」
『The Bulletin of the Atomic Scientists : アメリカ核科学者協会会報』の5・6月号で、アメリカ資源・安全保障研究所長のゴードン・トンプソン氏がこのように語りました。
この学説は『ゼロからしきい値に至る線形法(LNT理論)』と呼ばれ、被ばく線量が限りなくゼロに使い状態においてのみ、健康上の安全は確保される、というものです。
政府機関と原子力産業界はこのような指標があるにもかかわらず、放射線被ばくについてはことさらに過小評価を行い、大手メディアがこれに追随し、一般の人々から真実を隠す共犯者となりました。
これに対し、トンプソン氏は以下のように指摘しました。
「政府機関・原子力業界・大手メディアによる隠ぺい工作は、一般市民を気遣うかのように装って行われます。しかしインターネットの普及により、市民が正しい情報を迅速に手にできる時代に、こうした行為は明らかに時代遅れであり、科学に対する信頼までも失わせてしまいます。」
一般市民の放射線被ばくに対する懸念に対し、LNT理論を隠し続けることに正当な理由などはありません。
一部の専門家を使って真実を覆い隠そうという試みは、逆効果になるでしょう。
結局、真実は明らかにされるはずです。
隠ぺいに加担した専門家、そして彼らが関わっていた『科学』は、一般の人々からの信頼を失うことになります。
こうして一般の人々の懸念は、一層深まっていく可能性があります。
そして専門家は一般市民の懸念について真剣に受け止め、それぞれが属する機関の最新の見解を公表するべきです。
過去何年間も、医師は患者が過度に反応しないよう、ガンの告知を行わないようにしてきました。しかし現代にあっては、このような対応は、誤った温情に基づく、事態遅れの対応だとみなされるでしょう。
▽『ねつ造』アメリカ核科学者協会会報
こうした対応を政府や自治体の職員が行っていることが事実であれば、大手メディアもまたこうした行為に加担していることは明白です。
メディアは本来監視者としての立場に立つべきであり、政府や自治体の職員の行動や発言内容などを詳細に調べ抜かなければならないはずです。
しかし福島第一原発が放出した放射性物質がアメリカ国内でも検出された時、そのような対応を取った大手メディアはありませんでした。
放射性ストロンチウムがハワイ・ホノルル近郊のヒロで牛乳の中から検出された時、当地の代表的メディアの『スター・アドバタイザー』は記事の見出しの中で、「心配するには及ばない」と伝えました。
これは『ゼロからしきい値に至る線形法(LNT理論)』が伝える、科学的真実と相いれません。
この記事を書いたウィリアム・コールはその根拠を、ハワイ環境健康管理局のリン・ナカソネ管理官の見解によっています。
ナカソネはコールにこう伝えたのです。
「牛乳の安全性には、全く問題が無い。」
コールは右から左にそのまま伝えただけだったのです。
もちろん、科学的には牛乳の安全性には疑問があります。
なぜ政府や自治体の職員は、市民に本当の危険性を伝えようとしないのでしょうか?
つまりは牛乳の商品価値の方を、重視しているのです。放射性ストロンチウムの存在により、牛乳が売れなくなることの方を先に心配しているのです。
アメリカ核科学者協会会報の中でゴードンは以下のように書いています。
「経済的動機に基づく政治的圧力が、低線量放射線被ばくによる健康被害に関する政策を、たびたび捻じ曲げてしまっている。」
環境行政の政治的圧力により捻じ曲げられた専門家の見解に対する疑問のひとつが、低線量被ばくが引き起こす健康被害に関し、『ゼロからしきい値に至る線形法(LNT理論)』を無視している、という点です。
この理論に基づけば、たとえ低線量の被ばくであっても、被ばくしている期間が長引くことにより、罹病率が上がり、何人もの人々が死んでいく可能性があります。
これは専門家の見解を伝えている、報道各社についても言えることです。
長期間にわたる低線量被ばくにより、人々の死亡の危険性が高まっていく、そのことを我々報道に携わる者は、これからも公にはしないままで良いのでしょうか?
福島第一原発の事故により、アメリカの13の都市で水道水から放射性物質が検出され、ヴァーモント州では牛乳からセシウム137が検出されています。
▽ジェフ・マクマオンからのメッセージ
「1985年、私が通っていた大学で、誰も見ていない場所で大学当局が放射性廃棄物を一般ごみと一緒に捨てている現場を目撃してから、人間と自然環境との必ずしもうまく行っていない関連性について考えるようになりました。
そしてアリゾナ州を皮切りに、エネルギーと環境問題に関する取り組みが始まったのです。
そしてアリゾナ州とカリフォルニア州で記事を提供し、その中にはニュータイムズやニューシティなどの週刊誌、トゥルー/スラントのようなオンライン事業、ウェザー・チャンネルが運営するフォーキャスト・アース、そしてニューヨーク・タイムズ社が運営するライフ・ワイアなどが含まれます。
また取材で派遣された場所にはニカラグアの反革命戦争、サンフランシスコの世界地震会議、コペンハーゲンでの地球候変動会議などがあります。
またここ数年はシカゴ大学でジャーナリズム、ノンフィクション文学の講義も行っています。
http://www.forbes.com/sites/jeffmcmahon/2012/05/29/should-we-hide-low-dose-radiation-exposures-from-the-public/
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【 『核家族』は時代遅れ? 】
アメリカNBCニュース 4月22日
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