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たった2段階のストレステスト【 原発の無い社会へ!その取り組みと懸念 】[ガーディアン]

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所要時間 約 10分

「豊富な再生可能エネルギー源と世界トップクラスの技術の活用により、日本が再生可能エネルギー分野で世界のトップに立つことは容易なこと」
[原題 : 数々の懸念を抱えつつも、原子力発電なしの生活に備える日本]

ザ・ガーディアン(英国) 5月3日



5月5日、日本はこれまで誰もそれが可能だなどと考えたことが無い状況に入ります。
そのきっかけは1年前に発生した、福島第一原発の3基の原子炉のメルトダウンです。
5日土曜日、北海道にある現在稼働中の泊原子力発電所3号機が定期点検のため停止し、世界第3位の規模を持つ日本経済は、この50年で初めて原子力発電による電気供給が行われない状態に入ります。

54基ある原子炉がすべて停止することで、日本のエネルギー政策には劇的な構造転換が起きるでしょう。脱原発を目指す人々が喜び合う一方、国家的規模での電力不足は経済と環境問題に関し、著しい危機を引き起こす可能性があります。

3月11日に襲った巨大地震と巨大津波が引き起こした福島の危機は、日本人に原子力発電とのつき方について根本的な問いかけを行いました。

泊原子力発電所の停止による全原子力発電の停止は、長く暑苦しい日本の夏を控え、日本国民にエアコンなどの使用について覚悟を促す一方、夏場の電力不足の懸念が生じ、さらには国内に生産設備を持つメーカー各社は生産現場で混乱が起きることを懸念しています。

政府の政策決定部門が今週発表した報告書では、首都圏では5%の電力不足、そして大規模な工業地帯を抱える大阪を含む関西圏では16%の電力が不足するものと見ています。

「この国が直面している電力不足は、極めて深刻であると言わざるを得ません。」
経済産業大臣の枝野幸男氏が語りました。
そして現在火力発電所を稼働させるため、余分に輸入しなければならない石油石炭の輸入代金がかさみ、結果的に電力利用者にその分を負担させる必要がある、と付け加えました。



3月11日の東日本大震災発生以前、日本は全電力の3割を原子力発電によって賄っていました。そしてさらに原子力発電所の新設を進め、2030年には全電力の5割を原子力発電によって賄う計画でした。
しかし大量の放射性物質を大気中、そして海洋中に放出し、食糧や水の汚染が進み、数万人の人々が福島第一原発の周囲から避難を余儀なくさせられるにいたり、原子力政策の推進による二酸化炭素排出削減策は灰燼に帰しました。

過去14ヵ月間、日本国内の原子炉は津波の影響を受けた訳では無く、定期点検のために稼働を停止してきました。
このために不足する電力を各電力会社は輸入石油石炭による火力発電所の稼働によって補い、その結果日本はこの30年間で初めて貿易赤字を記録したのです。

日本はすでに世界最大の液化天然ガスの輸入国でしたが、原子力発電の代替分としてその輸入高は記録を更新することになりました。世界エネルギー機関の試算によれば、全原発の停止により日本は一日当たり450万バレルの原油を余分に必要とするため、同じく一日当たり1億ドル(約80億円)の石油輸入代金が余分に必要になります。

土壇場での野田首相の関西電力大飯原子力発電所の再稼働への働きかけは、原子力発電に対して硬化した世論を前に潰えざるを得ませんでした。

制度の変更によりいったん停止した原子炉は強化されたストレステストを受け、パスしなければ再稼働できなくなりました。このストレステストはチェルノブイリ以来最悪の原子力発電所事故の直接原因となった、14メートルを超える津波が襲っても耐えられることをシュミレーションしています。
しかし複数の専門家はたった2段階のストレステストでは不十分だとの批判を行っており、たとえ一部ではあっても直ちに原子力発電所が再稼働することは難しい状況です。



法的には大飯原子力発電所の再稼働に、地元住民の同意は必要ありません。
しかし、野田首相が政治的危険を冒してまで地元住民の意思を無視し、再稼働に踏み切ることは無いという見方もあります。
直近の共同通信社の福井県における世論調査によれば、大飯原子力発電所の再稼働に関し、賛成26.7%に対し、反対はその倍以上の59.5%に上っています。

原子炉再稼働を強力に進めようとしているのが、日本の政治に対し大きな影響力を持つ経団連です。
最近の調査では製造会社の71%が電力不足によって商品生産が滞り、96%が電気料金の上昇により利益が減る、と答えています。
日本エネルギー経済研究所はこのまま原子力発電を停止させたままにしておけば、工業生産量の減少と燃料価格の上昇により、2012年度のGDPは0.1%の上昇にとどまらざるを得ない、と警告しました。

原子炉停止に対する批判は、これ以上石油・天然ガス。石炭などの化石燃料の消費を増やせば、今後の日本の気候変動対策にも悪影響を与える、と主張しています。
この点については、再生可能エネルギーのへの大規模投資を行っているソフトバンクの孫正義社長のような人ですら、この国が実際に様々な発電手段を組み合わせ、安定的に電力を供給できる体制を実現するまでには時間がかかる、と認めています。

しかし新しい環境省の委員会は、節電対策の実施と再生可能エネルギーへの発電手段のいち早い切り替えによって、原子力発電に頼らなくても2030年までに1990年と比較して25%の温室効果ガスの削減は可能である、と結論付けました。
発電量の25%から35%を再生可能エネルギーに切り替えることで、2030年までに達成可能になります。
「日本がその気にさえなれば、この数値は達成可能です。」
環境省・低炭素社会促進事務所の加藤部次長が語りました。
「日本にはそのための技術も、ノウハウもあるのです。」

短期的な電力不足の問題を別にすれば、5月5日に実現した全原子力発電所の稼働停止は、日本の脱原発社会実現のためのまたとない機会だ、と様々な環境保護団体などが述べています。
「これは日本が人々が望んでいる持続可能エネルギー社会を実現するための転換点であり、絶好の機会です。」
グリーンピースが『先進エネルギーによる問題解決』報告書でこのように述べました。
「豊富な再生可能エネルギー源と世界トップクラスの技術の活用により、日本が再生可能エネルギー分野で世界のトップに立つことは容易なことです。その実現と同時に、危険である上、非常に高価な原子力発電を終わらせることができるのです。」

5月8日火曜日、日本の会社員たちは例年より一カ月早く、電力消費を節約するためクールビズの取り組みを始めました。
しかし温暖な春に重いスーツを脱いでネクタイを外し、代わりに半袖シャツを着てエアコンの使用をやめることは簡単なことです。
福島第一原発事故後の日本はどうあるべきなのか、それを問いかける暑い夏は、これからやって来るのです。

http://www.guardian.co.uk/environment/2012/may/03/japan-nuclear-power-closure

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今、吉井英勝さんの『原発抜き・地域再生の温暖化対策へ』を読んでいることは一度書きましたが、その第3章にこんな話が出ています。
電力会社のOBがNPO法人を立ち上げ、そこから核廃棄物処理施設の建設反対運動を展開している町村に街宣車が送り込まれ、住民への脅迫を繰り返したこともある。

行為の卑劣さに唖然としました。

私など3.11がきっかけで原子力発電の危険性に気がついた、いわば新参者ですが、ここまで400本ほどの海外の記事を翻訳するうちに、少しずつ
知識が深まってきました。
翻訳した世界中の記事の半数近くは、原発関連のものだと思います。
その中で、
イギリスでも、フランスでも、ドイツでも、
イタリアでも、スイスでも、スペインでも、
そしてアメリカでも、
反原発運動を行う人々に対し、原子力産業側が暴力でもって「脅しをかけた」ことがある、などという記事は見たことがありません。

日本だけが、それをやる。
世界の原子力産業界の中で、発電・売電を独占している日本の電力業界だけが、暴力でもって国民を脅すのです。

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【この一年で最悪の日】
アメリカNBCニュース 6月1日
ダウジョーンズ平均株価はこの日、雇用情勢の悪化を受け、今年一番の277ポイントの下げ幅を記録しました。



【 ヨーロッパの歳出削減 】
デア・シュピーゲル・オンライン
☆バルセロナ国際空港
政府の歳出削減先に抗議し、空港ビルの清掃スタッフがあたり一面に紙屑をぶちまけました。



【 ハリケーンの吹き返し 】
アメリカNBCニュース 6月1日
フロリダ州ジャクソンズビル近くの海岸で、強風に髪をなびかせご満悦の9歳の少女。



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ほんとうの「今」を知りたくて、アメリカCNN、NBC、ABC、CBS、英国BBC、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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