【 日本国内の原子炉、国民との対話も同意も無い再稼働が始まる 】
日本国内の原子炉再稼働を進めるため、『新たなる安全神話』が作られようとしている
まずは国内19基の原子炉を動かす再稼働方針、現実には存在しない『国民との対話』
福島第一原発の事故によって欠陥が証明された安全基準に沿って建設された日本国内の原子炉
AP通信 / ワシントンポスト 7月16日
日本の原子力発電所が16日水曜日、福島第一原発の事故以降厳格化された原発の安全基準の事前審査(新規制基準適合性審査)に合格し、2011年の事故発生以来国内初の本格的再稼働に向け、重要な手続きがクリアされたことになります。
日本の原子力規制委員会は九州電力・川内原発の2基の原子炉について、設計変更と安全対策の改善が昨年7月に導入された新基準に適合したとして、九州電力の再稼働の申請を事実上認める裁定を行いました。
福島第一原子力発電所では襲った巨大地震と巨大津波がきっかけとなり、3基の原子炉がメルトダウンを引き起こし、周辺市町村に放射性物質がまき散らされる事態に陥りましたが、原子力規制委員会は同様の災害が発生しても川内原発の安全性は保たれると判断しました。
日本国内にある48基の原子炉は福島第一原発の事故後、安全点検と設備改善のためすべてが停止したままになっています。
5人の原子力規制委員会の委員は、再稼働のための次の手続きである7月16日から8月15日までの一カ月間行われる技術的なパブリック・コメントの募集に進むことに、全員一致で賛成しました。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は今回の承認について重要な前進があったという趣旨の発言を行い、新基準については福島第一原発の事故の教訓を取り入れ、特に火山活動、地震、津波、そして台風などの自然災害が発生しやすく、それが過酷事故につながる日本の事情を充分に考慮したものであることを強調しました。
そして川内原発の審査過程においては、それに対する多重対策を施している点を評価したことを伝えました。
「以前の安全基準は単に原子炉の設計だけを問題にしていましたが、今回の審査では特に過酷事故の発生をどう防ぐかという点に重点を置きました。」
週一回の定例会議で田中委員長はこう語りましたが、その発言は再稼働に反対する人々が挙げる抗議の声でしばしば中断させられました。
多重防御システムは主に原子炉炉心と原子炉格納容器を、損傷から守ることに重点が置かれています。
さらに福島第一原発の事故と比較し、放射能漏れをわずかなものに留めるための対策がとられることになりました。
九州電力は地震に対する設備の強度の引き上げを行い、防潮堤の高さもこれまでの3倍の15メートルの高さにかさ上げしたと田中委員長が言及し、テロ攻撃、航空機の墜落による衝突、そして火山の噴火に対する対応も強化されたと語りました。
九州電力・川内原発は、少なくとも5つの活火山に囲まれています。
委員の一人、地震学者の島崎邦彦氏は、噴火の発生を正確に予測することは困難だと語りました。
しかし調査の結果は現時点での噴火の可能性は『極めて低い』ことを示唆しています。
一般国民の間では再稼働に反対する意見が賛成をはるかに上回りますが、安倍晋三首相率いる日本政府は再稼働を要求しています。
その政権の主張は原子力発電所の停止が長引けば日本経済が打撃を受けるというもので、すでに前政権が決めた原子力発電の段階的廃止の方針を早い段階で覆しています。
九州電力・川内原発の安全対策が妥当なものであると判断され、その再稼働が認められれば、日本の原子力産業界にとっては強い追い風が吹くことになります。
「私はこれを大きな前進ととらえています。」
安倍首相は報道陣に対しこう答えました。
「最終的に安全が認められて川内原発が再稼働されれば、我々は地元自治体と住民の理解を得ながら、国内の原子炉を再稼働させる方針を継続して行きます。」
九州電力・川内原発の原子炉1、2号機を本格的に稼働させるためにはさらに2、3カ月必要になると関係者は語っています。
九州電力は地元自治体から再稼働に関する同意を取り付けた後、最終的には発電所内での最終審査を受ける必要があります。
西日本にある大飯原子力発電所が夏の間の電力危機を回避するため一時的に再稼働されたことがありましたが、現在は本格的な安全審査を受けるため停止しています。
再稼働に反対する人々は次の2つの理由から、再稼働の判断は時期尚早に過ぎると語っています。
ひとつ目は放射性物質の環境中への放出量を減らすためのフィルターベント装置を含む安全設備が2年後でなければ完成しないこと、もうひとつは万が一事故が発生した場合の住民の避難計画に不備な点がある事です。
また大規模な火山噴火の可能性については、原子力規制委員会は楽観的に考えすぎているとし、福島第一原発で現在起きている汚染水漏れのような問題が発生した場合、現実に対処する方法があるのかどうかについても憂慮しています。
日本国内の多くの原子炉が、福島第一原発の事故によって欠陥がある事が証明された安全基準に沿って建設されたものです。
うちいくつかは人口稠密な地区と隣り合わせに建設されました。
最新のシュミレーションと訓練の結果、すべての住民が危険な場所から避難を完了するのに、最大で2日以上を要することが明らかになりました。
「日本は、火山列島です。そして火山こそは、日本で原子力発電を行う際の最大の弱点の一つであると考えるべきです。」
原子力行政を担当する東京の官庁前で、川内原発再稼働反対の抗議活動を行っている多数の人々の中にいた吉田輝勝氏がこう語りました。
九州電力・川内原発は東京の南西約1,000km、九州の南端部分に位置しています。
今年3月に開始された原子力規制委員会による国内19基の原子炉の安全審査の中、川内原発は最も早く津波対策の防潮堤のかさ上げと耐震補強工事を完了させ、国内で初めて本格的再稼働を現実のものにしようとしています。
引き続き原子力規制委員会は残る17基の原子炉の再稼働の是非について、安全審査の作業に入ることになっています。
http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/japanese-nuclear-plant-deemed-safe-nears-restart/2014/07/16/d3d27df6-0c9d-11e4-bc42-59a59e5f9e42_story.html
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安倍政権が『前政権が決めた原子力発電の段階的廃止の方針を早い段階で覆した』、このくだりを訳していて現政権が発足前から「とにかく再稼働」のつもりでいたことに改めて気づきました。
口では「議論をつみ重ねて」と言いながら、結局は議論以前にすでに決定していた方針に沿ったアリバイ作りをしているに過ぎないと批判されても仕方がないでしょう。
使えなくなった安全神話を捨て、今新たに安全神話を作り、日本の原子力発電の大復活を目指す安倍政権。
国内19基以上の原子炉の再稼働、憲法第9条の解釈の変更、特定秘密保護法の公布、これ以上『物言わぬ羊』であり続ければ、私たちの未来は暗澹たる様相を呈する、その事を一人一人がしっかり心に銘ずる必要があると思います。