ホーム » エッセイ » 実録『トモダチ』作戦・第3部「まとわりつく、放射能汚染の恐怖」[第2回]運命の中に落ち込んでく兵士たち
「間違ってる!日本側の認識は全部、デタラメもいいところだ!」
ロジャー・ウィザースプーン / ハフィントン・ポスト 3月5日
空母ロナルド・レーガンとその僚船たちは、放射性物質(放射能雲)の『細い流れ』から何とか身をかわそうと必死の操船を続けていました。
しかし実際には、常に頭上にあった大気中の放射性物質、そして海流によって運ばれる放射性物質により、その汚染はじわじわと進んでいたのでした。
3月16日までに、一連の爆発により原子炉1~4号機の原子炉建屋が次々に破壊されました。
国務省東部アジア地区担当のカート・キャンベル国務次官、原子力規制委員会の委員たち、そしてアメリカ国防総省は、この期に及んでなお、正しい情報を確保するため自ら行動する事無く、東京電力が提供する情報にばかり頼ろうとする日本政府を見て、たまりにたまった憤懣が爆発寸前になっていました。
日本の朝日新聞は、この時のキャンベル国務次官宛ての内部文書を入手、公開しました。
- あの日、国務省の高官たちの中には、汚い言葉を使ってあからさまな批判をする者もいたのです。
「間違ってる!日本側のすべての認識はデタラメもいいところだ!」
これらの文書の中には、当時のヒラリー・クリントン国務長官あてのものもありました。
一方アメリカ原子力規制委員会は、日本本土の汚染を何とか食い止めようとしていました。
しかし福島第一原発から約290キロ南方の横須賀海軍基地で放射能を感知した時、彼らは狼狽しないわけにはいきませんでした。
彼らは汚染物質のほとんどは、海上に運ばれるものと考えていたからです。
それまでは日本国土の数千万の住民たち、そして数万人の米軍関係者には放射性物質による被害は及ぶ可能性は低く、代わりに『トモダチ』作戦の名の下で洋上に居て捜索・救援援護活動を行っていた、空母USSレーガン機動部隊の将兵が危険にさらされていました。
しかし風向きが変わったことにより、条件が全く逆になってしまったのです。
大災害の真っ最中に、根拠も無く楽観的な見通しを持っていたことについては、理解しがたいとしか言いようがありません。
「私も同じ過ちをしたかもしれません。」
憂慮する科学者連盟のメンバーで、原子力発電安全問題の専門家であるデイヴィッド・ロックバウムがこう語りました。
「私は海上にではなく、陸上に人が集中しているという事について、漠然としか捉えていませんでした。もし風をどちらに向かって吹かせるか私にその選択権が与えられたら、私は風向きを海に向けてセットし、その上でほっと一息ついたに違いありません。」
「もしその場所に海軍の艦艇がいたならば、直ちに避難させる必要がありました。しかし、その措置がとられることは無かったのです。」
こうして『トモダチ』作戦に参加した将兵たちは、それぞれの運命の中に落ち込んでいくことになったのです。
▽放射能汚染に対し、あれこれ想像をめぐらす日々
軍隊においては重要な情報は中枢部門に集積の上、関係個所に対し必要最低限の情報が伝達されていきます。
福島沖で危険が迫っていた際にも、現場にいた将兵に対してはあまり多くの情報を与える必要は無いとの判断が下されました。
大きな被害を被った東北地方の沿岸で捜索・救助活動を行っていた、空母ロナルド・レーガンと第7機動部隊の艦船に対し充分な情報が与えられなかった、その結果は明白でした。
各艦の航海士たち対する充分な情報提供こそ、その時必要なものでした。
航海士のジェイミー・プリムが当時を振り返りました。
「当然私たちは、放射能が海上にも近づいていると思っていました。当時艦上では被災地に向けヘリコプターが発着を繰り返している真最中で、私たちの艦は海岸線から3キロ沖合の位置を保ち続ける必要がありました。」
「航海士の立場に居た私たちに対しては、本国は当時起きていたことの概要を理解させようとしました。」
モーリス・エニスが後を引き継ぎました。
「しかし彼らは私たちたがパニックを起こすことも、恐怖で身をすくませることも望んではいませんでした。そのため、放射能漏れに関する詳細な情報までは教えてはもらえなかったのです。」
「陸上で放射能漏れが起きていることは知っていました。」
「しかし私たちは、進路を決定しなければなりません。いったいどこが危険なのか、福島第一原発から放出された放射能汚染物質は、いったいどのあたりまで到達しているのか。
確かなことは何もわかりませんでした。
しかし私たちは、ブリッジにあるパイロットの詰所の中に放射能検知器を設置していました。
そして飛行中のヘリコプターのパイロットも、大気中の放射線量を刻一刻と報告して来ていました。
放射能汚染物質から身を避けるため、空母機動部隊の提督と各艦の艦長たちは航海士に対し、まずは福島第一原発の正確な位置を設定するよう命じました。
航海士たちは福島第一原発がある場所からまっすぐ東に向け、80キロの直線を引きました。そして次に福島第一原発を中心に南北に40キロの長さの直線を引きました。
艦隊はこの線と海上80キロの点を結んだ三角形の海域の中こそ、放射性物質が充満している汚染地域だと仮定したのです。
「しかし推量に過ぎませんでした。」
ジェイミーがこう語りました。
〈 第3部第3回「汚染されてしまった艦隊」へ続く 〉
http://spoonsenergymatters.wordpress.com/2013/03/03/404/
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以下、オリジナル記事に掲載されている、3枚の地図を掲載します。
〈原子炉1号機からの放射性物質の拡散状況・3月11日〉
〈原子炉1号機からの放射性物質の拡散状況・3月12日〉
〈原子炉2号機からの放射性物質の拡散状況・3月11日-24日〉
宮城県仙台市で暮らす私は、この中の2枚目の地図を見、放射性物質がまともに自分たちに向かっていたことを再確認しました。
その日何をしていたかを思い出すと全くがっかりします。
正しい情報が無いということは、そういうことなのだ、ということを痛感させられた思いであり、その点においてこの記事に登場する兵士たちと変わる所がありません。
アメリカの兵士たちは東京電力という外国の会社と、日本政府という外国政府の被害者です。
しかし、あの日の福島県民や宮城県民への加害者は誰なのでしょう?
それを考えると、本当にがっかりします。
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【 講義する人々、声を上げる人々 】
アメリカNBCニュース 3月27日
(掲載されている写真は、クリックすれば大きな画像をご覧いただけます)
イリノイ州シカゴ。公立学校の閉鎖に抗議し、道路に座り込む人々。3月27日。
ネバダ州クリーチ空軍基地前。無人攻撃機の使用に抗議し、道路に横たわる人々。3月27日。
首都ワシントンにある最高裁判所前で、同性婚支持のプラカードを掲げる賛成派の人々。3月27日。
同性婚に反対する人々。
最高裁判所前で、それぞれの立場で議論する人々。
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