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【 福島第一原発の事故収束、業界利害を優先し、危険な状況 】〈前篇〉

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所要時間 約 8分

深刻な危機、莫大な量、福島第一原発の放射能汚染水

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 4月29日

02廃炉作業
3基の原子炉がメルトダウンし、世界史上2番目に最悪の原発事故を引き起こした福島第一原発が、今新たな深刻な問題に直面しています。
高濃度の放射能を帯びた汚染水を、安全に貯蔵することが難しくなっているのです。

毎分約280リットルの地下水が、事故により破壊された原子炉建屋の下に流れ込んでいます。
原子炉を冷却するために送り込まれる以前、この地下水は建屋の地下に流れ込むだけで高濃度に汚染されてしまっているのです。
かつては芝生や駐車場だった約17ヘクタールの土地に立ち並ぶ、灰色と銀色に塗られた巨大な貯蔵タンクの中にこれらの汚染水を安全に貯蔵し続けることに、今、福島第一原発の汚染水の管理を担当する職員や労働者が大変な思いをしています。
これら貯蔵タンクは、オリンピックプール112個分の汚染水の収容能力を持っています。

しかし、それらをもってしても原発内のストロンチウムを含む汚染水をすべて収容するのに充分ではありません。
汚染水の総量について東京電力と当時の監督官庁である原子力安全・保安院が、2011年の事故の規模からその規模を想定し、その設備を準備しましたが、結局はその場しのぎの対策に過ぎなかったという批判があります。

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しかし汚染水の圧倒的とも言えるペースでの増加に直面し、東京電力は数百基の貯蔵タンクを増設するスペースを確保するため、福島第一原発の敷地の南端のちいさな小さな林の木をすべて切り倒すことを決定しました。
最近になって収容しきれなくなった汚染水を一部貯めておく目的で作られた地下貯蔵施設から汚染水が漏れ出していることが判明し、貯蔵タンクの増設は喫緊の課題となりました。

「汚染水は分刻みで増え続けています、私たちが食事をしている間も、寝ている間にも。」
東京電力・広報部長の小野正行氏がこう説明しました。
「増え続ける汚染水と、いつも競争しているようなものです。しかし少しでも汚染水に先回りして対処できるよう、私たちは最善を尽くしています。」

東京電力は汚染水の問題について、あらかじめ対処できるよう努力を続けてはいますが、汚染水を収容するための貯蔵タンクの不足は、自身『緊急事態』と呼ばざるを得ない状況に追い込まれています。
莫大な量の汚染水が増え続ける状況は、海辺に位置する福島第一原発にとっては、将来太平洋にこの汚染水が流れ込む危険性が存在することを意味します。

東京電力がこうした苦境に追い込まれていることを際立たせたのが、東京電力側の褒められない一連の誤作業によるトラブルでした。
この中には29時間電源の供給が絶たれ、最も重要な設備には含まれないとはいえ、使用済み核燃料プールでの冷却が出来なくなってしまった事故が含まれます。

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巨大地震と巨大津波が重要な設備である原子炉冷却システムを破壊し、3基の原子炉でメルトダウンが発生してから2年が経ちましたが、福島第一原発は今なお、何かあれば最初の事故と同等、あるいはそれ以上の事故を引き起こしかねない、きわめて脆い状況に置かれたままなのです。

事故の後、現場にした職員と作業員の不退転の決意と必死の作業により、メルトダウンした各原子炉は現在は比較的安定した状態にあります。
誰もが絶望的な思いでいた事故を直後のあの数カ月間と比べ、福島第一原発の危険性は小さくなった、それは確かに言えることです。

しかし多くの専門家が、建材の福島第一原発の安全対策設備はそのほとんどが急場の間に合わせのものであり、災害などに対してはきわめて脆い状態にある事を警告しています。

破壊された原子炉の炉心に対利用の水を送りこんでいる配管類やフィルターの類は、まるでパイプの見本のように種々雑多なものが使われ、それが発電所の地面の上を露出したまま絡み合い、曲がりくねった状態で約4キロの長さに渡って伸びています。

そして破壊された4号機原子炉建屋の5階にある使用済み核燃料プールの中には、未だに大量の核燃料が入ったままになってより、現在東京電力がより安全な場所に移し替える取り組みを続けています。

福島第一原発の事故の後、日本では原子力安全・保安院が解体・再編され、新たに原子力規制委員会が発足しました。委員長に就任したのは、長年に渡り日本で原子力発電を推進してきた一人である、田中俊一氏です。
田中委員長はインタビューの中で、福島第一原発の現状について
「もう一度巨大事故を起こしかねない、深刻な状況にある。」
と深刻な懸念を表明しました。

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東京電力に福島第一原発の事故の収束作業を一任してしまったことで、日本の政治指導者たちは、事故以前と変わらない内部関係者があらゆるものを支配する状況を再現する道を開いてしまった、そう指摘する政府関係者、そして外部アドバイザーが今、増えつつあります。

チェルノブイリ以来最悪となった原子力発電所事故の収束作業がを決めて困難な字義用であることを理解して上で、多くの科学者は東京電力が首尾一貫した作業方針も立てずに、問題が発生するたびに右往左往する有り様を見て、同社に本当に事故を収束させられる能力があるのかどうか、強い懸念を抱いています。

「明らかに東京電力はその日その日を何とか終わらせるだけで手いっぱいの状態で、あす以降のことなどは考える余裕も無いといった状況にあります。まして、来年のことなど見当もつかない状態です。」
事故収束の道筋について検討した委員会のメンバーであった原子力発電の専門家である、井上正氏がこう語りました。

しかし福島第一原発の事故の収束について深刻な問題を抱えているのは、東京電力だけではないのです。
〈後編につづく〉

http://www.nytimes.com/2013/04/30/world/asia/radioactive-water-imperils-fukushima-plant.html?pagewanted=2&_r=0&ref=global-home
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福島第一原発の事故の真相究明に、ニューヨークタイムズが果たしてきた役割は小さいものではありません。
アメリカの原子力発電の専門家であるアーニー・ガンダーセン氏の指摘にいち早く着目し、そのいちいちを独自の取材によって検証し、問題提起を行ってきました。

4号機使用済み核燃料プールの問題然り、積み上がる核廃棄物の問題然り、そしてこの汚染水の問題然りです。
いずれも日本国内の報道に先駆けて報道を行い、その正しさは後に証明されています。





 

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