廃炉技術の未熟、それは日本の原子力業界の思い上がりが原因
「今になってやっと、彼らはどのような問題がそこにあるのかを理解した」
山口まり・竹中きよし・ジェームズ・トップハム / アメリカNBCニュース 3月5日
クインスが撮影した福島第一原発内部の写真
東京の東郊にある千葉工業大学の緑の多いキャンパスの中にある、未来ロボット技術研究センターは福島第一原発の事故現場で使われるロボットの開発拠点になっています。
そこでは学生たち、技術者たちが、ここに居る誰も足を踏み入れたことが無い現場に投入されるべきマシーンの開発に全力を挙げています。
ロボットの部品が置かれた雑然とした空間には、隅の方に簡易ベッドが置かれ仮眠を取っている人、さ音を立てながらカップヌードルをすする人、スマートフォンの上でせわしなく指を動かす人、そしてコンピュータモニターにじっと見入る人の姿がありました。
細身の20歳前後の技術者がゲーム用のコントローラを使い、行方不明になったクインスの改良型のロボットに階段を昇らせたり、狭い空間で方向転換させたり、様々な操作を行っていました。
初代のクインス・ロボットが始めて事故現場に投入されたのは事故発生から3カ月後の6月でしたが、以来10月に東京電力が操作不能に陥るまで、原子炉のうちの一基の詳細な調査を行っていました。
何度も機能を回復させるための試みがなされましたが、ことごとく失敗に終わりました。
研究者たちはいつの日かこの初代クインスを回収し、エレクトロニクス機器が長期間放射線にさらされることによる影響について、解明するための研究材料にすることを考えています。
『桜』と名づけられた新型は、初代と異なり、より狭い空間でも前進可能であり、自ら充電ステーションに戻り、充電を行うことが出来ます。
しかしながら最も基本的な第一歩を完遂させるべき、技術開発を行う必要があります。
がれきや破片が発する放射線から生身の人間である作業員を守るために、原子炉について放射線が漏れ出している個所を特定し、修理した上で、再び原子炉内を水で満たす能力です。
「それは、戦場を覆い尽くす霧のようなものです。」
アメリカに拠点を置き、原子力発電所内で汚染された水を浄化するため、一時的に設置される装置を供給するクリオン社のジョン・レイモン社長がこう語りました。
「今になってやっと、彼らはどのような問題がそこにあるのかを解るようになったのです。」
これまで東京電力にできたのは、内視鏡に似た遠隔操作ができるカメラを原子炉核の容器の中、ただし圧力容器の外側にまで入れることだけでした。
しかしこうした試みでは、廃炉のためにまずやらなければならない事、溶けだしてしまった核燃料を取り除くため、その状態を確認することまではできませんでした。
現在検討されている装置は、ドーナツ状の原子炉の圧力抑制プール内の水の中を魚のように自由に泳ぎ回り、詳細な図面を作成するロボットです。
このように事故が発生してから必要となる技術開発が著しく遅れてしまった理由は、日本が原子力発電所事故の可能性について、頭からそれを否定していた思い上がった態度にありました。
原子力発電所事故に対応するための技術開発を行うことは、原子力発電の安全神話を自ら否定することにつながったからでした。
1999年の東海村原発事故の後開発された災害対策ロボットは、研究そのものが打ち切られてられてしまい、本体は科学博物館行きとなり、文字通りお蔵入りになってしまったのでした。
「日本政府はそれ以上金を出そうとしませんでした。国民が気づいてしまう事を恐れたのです。
『ちょっと待って、人間が入ることが出来なくなるような、そんな危険なことが起きる可能性があるの?』」
未来ロボット技術研究センターの小柳栄次副所長がこう語りました。
原発内に一番最初に投入されたのは、アメリカ製の『パックボット』で、事故直後、放射線量が高すぎて人間が入っていけない場所に配置されました。
東京電力にとって緊急を要する最大の課題は、今なお1,500本以上の使用済み核燃料が入ったままになっている、4号機を始めとする核燃料プールからの核燃料の取り出しです。
事故直後、原子炉建屋の爆発によって吹き飛ばされ、この核燃プール内の核燃料が空気中に露出する事態となり、大量の放射性物質を環境中に放出する主原因のひとつとなりました。
核燃料プールがある原子炉建屋の最上階付近は辺りは極めて放射線量が高く、人間が近づけないため、クレーンやその他の重機などを使って、苦心惨憺しながら作業の邪魔になるがれきの撤去などを行わなければなりません。
しかし、一刻も早く解決しなければならない重大な懸念があります。
もう一度巨大地震がこの事故現場を襲ったらどうなるのか、ということです。
東京電力はこの問題について、原子炉建屋の補強工事が完了し、東北太平洋沖地震と同等の巨大地震が襲っても、倒壊の恐れは無いとしています。
もうひとつ、どうしても解決しなければならない問題は、破壊された1〜3号機の各原子炉の温度を100以下にするために、毎日大量に使われ、汚染されてしまう大量の汚染水の保管です。
汚染水は原子炉建屋の基礎部分を水浸しにしている状態で、いつ海洋中、あるいは地下水の中に入り込むか、予断を許さない危険な状態にあるのです。
〈 第3回につづく 〉
http://www.nbcnews.com/id/51056548/ns/world_news-asia_pacific/t/insight-japans-long-war-shut-down-fukushima/#.UYxHJ0r0cnV
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「事故が発生してから必要となる技術開発が著しく遅れてしまった理由は、日本が原子力発電所事故の可能性について、頭からそれを否定していた思い上がった態度にありました。」
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