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好調?日本の経済政策、しかし条件次第では最後の大ばくちに?〈後篇〉

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所要時間 約 6分

日本経済の行く手をふさぐ、人口の減少、急速な高齢化の問題
必要な構造改革とは公的負債・人口減少・急速な高齢化、その根本的な解決


ジェフ・ソマー / ニューヨークタイムズ 5月18日

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今年四月、参議院議員選挙を控えている日本の安倍首相は、自ら『3本の矢(金融緩和、財政政策、構造改革)』と名づけたその経済政策の全容を明らかにはしていません。
この中で金融緩和政策が他に先行する形で実施されていますが、円安の実現に大きく貢献し、国内経済にメリット、デメリット、著しい影響が表れ始めています。

長年海外企業との厳しい競争にさらされてきた日本企業ですが、昨年の政府の調査では1ドル84円以上円安になれば、利益確保は充分可能であると回答しました。これは1986年には1ドル175円以上円安にならなければ利益確保はできないと答えたことを考えれば、著しい変化です。

1ドル100円以上という現在のレートが続けば、輸出に特化している日本企業の利益は大幅に膨らむことになる、フィデリティ投資顧問会社の子会社ピラミス・グローバル・アドバイザー社の有価証券担当部長で日本担当のアイリーン・ディブがこう語りました。
彼女の部門が株式を所有するトヨタと富士重工業は、円安によって大きな恩恵を被るはずだと語りました。
円安が続けば貿易摩擦が再燃する可能性がありますが、安倍首相はオバマ政権の支持を得た上で、環太平洋パートナーシップ(TPP)に先んじて加盟することにより、この問題を回避できると考えています。

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ディブ氏は日本の株式市場の先行きについても、楽観的です。最近の一連の株価上昇の後ですら、なおその価格は手ごろな水準にあると考えています。
例えば1988年、日本の日経平均株価の株価純資産倍率は6.5でしたが、現在は1.4に過ぎません。
これに対し、企業の収益率は改善を続け、今後もその勢いは続くと見られています。
ここ数年間で、最も先行き明るい状態であり、
「日本経済に再び火が灯ったような状況です。」
とディブ氏が語りました。

安倍首相は経済刺激策を採用しています。
その政策は短期的には効果があるかもしれませんが、IMFのクリスティン・ラガルド総裁は今年4月の演説の中で、日本の公的負債がGDPの245%近くという、異常な値に膨らんでいる点に言及し、
「日本の金融政策は、ますますその場しのぎのものになってきているように感じられる。」
と警告しました。

しかし日本経済について好意的な見方をしている、T.ロウ・プライス・ジャパン・ファンドの有価証券部長のМ.ガン・キャンベル氏は、日本にはギリシャと同じ状況に陥るような要因は無いと語りました。
日本国債を保有しているのは、そのほとんどが日本国民であり、そのほとんどが自国通貨のままです。
そして日本の経常黒字基調も安定したものであり、これらすべてが債券市場からの圧力を緩和している状況にあります。

さらに幸いなことに、日本には潤沢な国有資産があり、国有の港湾施設や郵便事業など、巨大規模の貯蓄銀行の役割を果たしている事業を民間に売却すれば、何億ドルもの現金を回収し、債務を減らすことが出来るはすだと語りました。

「日本は、現在、マーガレット・サッチャー就任以前の英国のような状況です。その気になれば、打てる手はまだまだあるはずです。」

しかし、ここに経済の回復のための大きな障害になる構造的な問題があります。
人口の減少、そして高齢化です。

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「日本では人口の減少が続いており、しかも急速に高齢化が進んでいます。」
ヴァンガード社の上級エコノミスト、ロジャー・アリアガ・ディアス氏がこう語りました。
「日本は必要な移民緩和策を取らない限り、国内総生産が年率1.3%の割合で減少を続ける可能性があります。」
「この問題こそは、日本経済の再生にとっての大きな障害なのです。」

日本では定年の年齢を引き上げ、女性の社会参加の機会を増やすための対策がとられていますが、その効果はゆっくりとしか現れません。
ディアス氏がこう指摘しました。

しかしながら日本市場は徐々に活性化しつつあり、その経済は回復基調にあり、円による投資資金が世界中の市場に流れ込み始めています。
最後にモハメド・エル・エリアン氏が以下のように語りました。
「これはきわめて野心的な政策です。」

「しかしこれ以上公的負債を積み増し、人口の減少や高齢化といった構造的な問題について根本的な解決を図らなければ、現在の政策は当たれば効果は大きいものの、外れればその危険もまた非常に大きいという、一か八かの賭けでしかありません。」

〈 完 〉

http://www.nytimes.com/2013/05/19/your-money/japan-starts-to-recharge-after-two-lost-economic-decades.html?pagewanted=all&_r=0





 

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