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【 原子力発電所こそは、この地上における、最も巨大な『処理不能』の核廃棄物 】《第1回》

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所要時間 約 7分

かつての産業技術の進歩の殿堂・原発は、今や人類最大の愚行を象徴するモニュメント

デア・シュピーゲル(ドイツ) 5月10日

ルブミン原発廃炉
原子力発電を段階的に廃止することを決めたドイツにとって、国内の原子力発電所を廃炉にする作業は今世紀最大の課題のひとつです。
ドイツの全原子力発電所の廃炉作業は、すべてが順調に進んだとしても2080年までかかります。

もし廃炉が完了する前に原子力発電所を所有する電力会社が破綻してしまったら、いったい何が起きるのでしょうか?

政治家が過度に悲観的な演説を行う時、余程のことが無い限り、人々は用心するに越したことはありません。
比較や表現が極端であるにもかかわらず誇張されているようには感じられない、そんな場合にはえてして落とし穴があるものです。

もう少し具体的な話をすれば、ドイツ南西部のバーデン=ビュルテンベルク州知事で、緑の党のメンバーであるウィンフリート・クレッチマンは、『技術的タイムフレーム』の問題は、今や決断すべき時期に来ていると警告しました。
同じくニーダーザクセン州知事で中道・左派連立の社会民主党(SPD)のシュテファン・ワイルは、別の時間的枠組みについて問題にしています。
彼の出身地であるニーダーザクセンでは考古学者のショーニンゲン・スピアーズ博士が、旧石器時代の人類が用いていた狩りの道具を発見しました。
すなわち、300,000年前という時間が経過してなお、人間が作り出した道具がその場所に残るという事実を明らかにしたのです。

実はこれらの発言はすべて、ワイルの盟友である緑の党の院内総務であるユルゲン・トリッテンが、
「人類がこれまで作り出した中で、最も危険な廃棄物」
を安全に格納できる場所を見つけることのむずかしさを同僚である議員たちに思い起こさせ、その結果行われたものだったのです。

▽『核の平和利用』が作り出した、最も厄介な問題

廃棄物
彼らが言いたいのは、核廃棄物の存在、そしてそれをどうすれば安全に処分できるのかという問題なのです。
ドイツは戦争が起きても、革命が起きても、そしてもう一度氷河期が訪れても、決して損傷することの無い核廃棄物貯蔵施設を、地中深く建設しなければなりません。

原子力発電を行ったツケとして、人類は100万年以上、その核廃棄物を安全に保管し続ける責任を負わなければならなくなりました。

私たち人類の祖形であるホモ・サピエンスが地球上に現れてから、未だ10万年しか経過していないのに…

その事実こそ、先月ドイツ議会で示された法律の草案の目的であり、野党の政治家と政府側双方が襟を正して解決に取り組まなければならない問題だったのです。

ドイツの環境大臣ピーター・アルトマイアーはアンゲラ・メルケル首相率いる保守派のキリスト教民主同盟の内閣の下で、ドイツ国内の原子力発電所にあった高放射性核廃棄物の最終処分場をどこにするかの法案について説明を行いました。

提出された法案については現在は未だ議員がその細部についての検証と議論を行っている段階ですが、アルトマイアーはこの法案が目的とするのは『核の平和利用にまつわる、最後に残された、最も議論の多い課題』を解消することだと語りました。

廃炉現場 4
しかし国民の代表であるはずの政治家たちが口にしたがらない問題、それこそがこれから廃炉作業をどう進めていくのか、という問題なのです。

かつて原子力発電所の設備や建物は、技術の進歩を象徴する産業社会の殿堂でした。

しかし今や原子力発電所の冷却塔と原子炉ドームは、人類の最大の愚行を象徴する巨大なモニュメントになり果ててしまいました。

ドイツ環境省の試算により、国内の原子炉の廃炉によって生じる地下に永久保存しなければならない低レベルと中レベルの放射性廃棄物の総量が、173,442立方メートル(610万立方フィート以上)に達することが解りました。
それに加え、政府が所有する原子力関連施設からは107,430立方メートルの放射性廃棄物が排出されることも明らかになりました。

ベルリンで持続可能エネルギーの調査とコンサルタントを行っている、非営利団体のオーコ研究協会の原子力問題の専門家であるマイケル・ザイラー氏は、ドイツのこの記念碑的な事業となる全原発の廃炉は、控えめに見積もっても
「2080年までに完了することはないだろう。」と語りました。
「この予想は、これからどのような妨げも無く、全ての作業が順調に進むと仮定した上で立てた、控えめな数字です。」

〈 第2回につづく 〉

冒頭の写真 : ドイツのルブミン原子力発電所の廃炉作業を取材する日本の報道関係者
http://www.spiegel.de/international/germany/germany-faces-tough-decisions-as-it-dismantles-nuclear-plants-a-899063.html
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昨日に続き、核廃棄物の処分が如何にやっかいな問題であるか、そのことを伝えるドイツの報道誌デア・シュピーゲルの記事を3回に分けご紹介します。

ところで今回の最後の方、
「や原子力発電所の冷却塔と原子炉ドームは、人類の最大の愚行を象徴する巨大なモニュメントになり果ててしまいました」
という一文があります。

皆さんはこれを大げさだとお思いでしょうか?
その答えは第2回以降で、じっくりと明らかにされます。
最終回まで是非、おつきあいください。
メキシコ・シティのヒメネル・フアレス大統領記念碑の日陰でくつろぐ恋人たち。
GRD 6





 

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