ホーム » エッセイ » 【 国連はフクシマ、チェルノブイリの健康被害を過小評価 】《後篇》
チェルノブイリの現地調査もせず、『報告書』を公表したWHO
WHOとIAEAの『密約』の存在が、事実を隠蔽する
「被ばくが原因でガンを発症しても、体はガンの発生原因を教えてはくれない」
IAEAの原子力推進政策が、世界に悲惨な地獄を作り出している
ジョージ・ガオ(国連本部)/ IPSニュース(イタリア) 6月26日
▽ ウラン採掘現場の放射線
IAEAは「ウラン資源の安全な、確実な開発」を推進しています。
ウラン資源の使い道は二つ、ひとつは原子力発電の核燃料、そしてもうひとつは核兵器製造です。
インド東部、ジャジュゴダ・ウラン鉱山周辺で暮らすホ族のアシシュ・ビルリーさんにとっては、「ウラン資源の安全な採掘」などとんでもない話です。
放射線が人体に与える影響については、その実態を世界に伝えるため撮影された写真に描かれている通りです( http://www.morizumi-pj.com/jadogoda/jadogoda.html )。
学生でありながらフォトジャーナリストとしても活躍するビルリーさんは、インド国営ウラニウム会社がウランを採取した後出る残滓でいっぱいになっている、投棄用ダムに隣接した場所で暮らしています。
「肺がん、皮膚がん、腫瘍、先天性奇形、ダウン症候群、精神発達障害、巨大頭蓋、無精子症、不妊性、胃壁破裂(症)、サラセミア症候群、そして先天性欠損症、そこにはありとあらゆる病気と障害が蔓延しているのです。」
彼はIPSニュースの取材に対し、こう答えました。
「私たちはまるで、放射線障害のモルモットです。」
インド政府のこの問題に対する無能無策を非難しながら、ビルリーさんがこう語りました。
「私たちは日常的に放射線被曝をさせられており、それが私たち自身にどのような健康被害をもたらしているか、毎日目の当たりにさせられているのです。」
▽ 核実験による放射線
冷戦の最中、ソビエト連邦は現在のカザフスタン共和国内のセミパラティンスク試験場で、456回に上る核実験を行いました。
IAEAはこの問題について、以下のような見解を明らかにしています。
「実験が行われる際に用意された資料、そして実験後に行われた影響調査によれば、カザフスタン領内の実験施設周辺には、核実験によるものと思われる放射性物質による直接的な影響は、ほとんど確認することはできません。」
しかしIAEAの、この実態報告というよりは作り話とも言うべき報告は、セミパラティンスク周辺で暮らす人々の実感からはかけ離れたものです。
包括的核実験禁止条約機関の準備委員会(1996年に国連で採択されたCTBT(包括的核実験禁止条約)に基づき核実験の監視を行う国際機関・1997年にウィーンにCTBTO準備委員会が設置された)は以下の見解を明らかにしています。
「セミパラティンスク周辺で確認された、いくつかの遺伝子損傷に起因する疾病及び先天性欠損症、奇形、ガン、そして生殖機能障害は、繰り返された核実験に起因するものである。」
「セミパラティンスクに最も近い場所にあるカザフスタン東部の都市、セメイでは突然変異の博物館とさえ言うべき状況が生み出されている。」
同委員会はこのように警告しています。
核兵器・原子力発電と人間の健康の問題に43年間取り組み続けてきたカルディコット博士がこう語りました。
「放射線に被ばくすると、それがガンマ線であっても、アルファ線であっても、あるいはβ線であっても、人間の細胞を傷つけ、DNAの中の遺伝子情報を書き換えてしまいます。」
「人体内でそれまで行われていた正常な細胞分裂が、ある日突然無秩序な状態になり、何兆もの変異した細胞を作り出すようになります。そうです、正常な細胞の変わりに、がん細胞が次々と生み出されるようになってしまうのです。」
「放射線を浴びている実感、そんなものを人間は感じることは出来ません。放射性物質に汚染されたものを食べても、味は全く変わりません。そして被ばくが原因でガンを発症しても、体はガンの発生原因を教えてはくれないのです。」
▽ ハドソン川河畔のフクシマ
インディアンポイント原子力発電所は、国連本部のあるニューヨークの北西60キロの場所にあり、現在操業延長の許可を得るため様々に運動しています。
しかし193カ国の外交官たちは、自分たちが暮らす場所のわずか60キロしか離れていない原子力発電所が及ぼす健康被害を懸念しています。
実はインディアンポイントの2基の原子炉は活断層の疑いのある場所の真上にあり、自身と津波によって大破壊を引き起こした福島第一原発になぞらえ、『ハドソン川の福島』と呼ばれることがあります。
しかし詳細に見れば、福島第一原発とインディアンポイント原子力発電所との間には、2、3異なった点があることに気づかされます。
「福島の事故では当時の風向きにより、放出された放射性物質のうち、その大部分が海に向かって吹き飛ばされるという幸運がありました。しかしそれでも尚、地上に残された放射性物質は付近一帯を壊滅されるのに充分だったのです。」
環境保護団体であるハドソン川クリアウォーターのディレクターである、マンナ・ジョー・グリーンがこう語りました。
しかしニューヨークの場合はその地理的条件により、風は北から南へ、東から西へ吹く場合がほとんどであり、インディアンポイント原子力発電所が事故を起こせば、放出される放射性物質はその風に乗って人口密集地に向かうことになります。
インディアンポイント原子力発電所の半径100キロ圏内には、約2,000万人の住民がいます。
そしてインディアンポイント原子力発電所と一番近い海岸線のとの間には、900万人が暮らしています。
「もしインディアンポイント原子力発電所が事故を起こせば、放出される放射性物質は海に出て行く前に、数百万人の人々を被ばくさせてしまうことになるでしょう。」
〈 完 〉
http://www.ipsnews.net/2013/06/u-n-downplays-health-effects-of-nuclear-radiation/
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福島第一原発の事故の後、海外の原発報道を翻訳し続けるうち、IAEAとWHOについては、その本質について深刻な疑問を持つようになりました。
本当に地球上の一般市民のための活動を行っているのだろうか、という疑問です。
今回の原稿を翻訳するため、Semipalatinsk(セミパラティンスク)やJadugoda(ジャジュゴダ)というキーワードでいろいろ調べました。
このページには、その際確認した写真を転載していますが、いずれも出来るだけショッキングすぎないものを選びました。
それでも、これらの写真を見た後にIAEAの以下のコメント、
「放射性物質による直接的な影響は、ほとんど確認することはできません」
を読むと、この『国連機関』には良心というものを感じることは出来ません。
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『放射線を浴びている実感、そんなものを人間は感じることは出来ません。放射性物質に汚染されたものを食べても、味は全く変わりません。そして被ばくが原因で癌を発症しても、体は癌の発生原因を教えてはくれないのです。』
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