星の金貨プロジェクト

星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

ホーム » エッセイ » 【 日本の2つの『核』被災地が直面する課題 】《前篇》

【 日本の2つの『核』被災地が直面する課題 】《前篇》

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

所要時間 約 8分

福島では『ゆっくりと進む(スローモーション)核戦争』が起きている
放射性物質の漏出が止まらない福島第一原発、今後何十年も続くことが予想され、累積すれば莫大な量の放射性物質が環境中に放出されると考えなければならない

景山ゆり / AP通信 / アメリカNBCニュース 9月26日

No more Fukushima
「ノーモア・ヒロシマ!」
「ノーモア・フクシマ!」
このふたつのスローガンは日本国内で、この島国で原子力発電を終わらせることを願い、そしてこの世界で核兵器の廃絶を終わらせることを願い、同じ場で叫ばれています。
しかし20万近くの犠牲者を出し、未だに原子爆弾の後遺症に苦しみ続ける広島の人々は、津波によって福島第一原発の原子炉がメルトダウンを起こし、原発事故被災者となった福島の人々との連携をどう進めるべきか、模索を続けています。

1945年8月6日にアメリカが投下した原子爆弾が、その後広島の多くの人々に原爆症という深刻な健康問題を引き起こしたように、2011年3月に福島第一原発の事故が発生した福島でも大量の放射性物質が環境中に放出されたため、今後数十年間にわたる健康問題の発生が懸念されています。

福島第一原発のメルトダウンは、東北地方の太平洋岸で発生したものですが、様々な放射線障害の発症が現実に起きたことで世界的にも有名になった広島の医学専門家たちは、今後福島第一原発の周囲で生活していた人々にどのような健康問題が発生する可能性があるか、助言を求められています。

反原発デモ
歴史の中のひとつの流れを作り出した核拡散防止のための抗議活動に参加してきた人々の中には、福島第一原発の事故以降顕在化した、原子力発電を終わらせるための抗議活動にも参加しました。

広島の惨禍の中から生まれた核兵器を廃絶せよという反核運動は、日本国内においては道徳的にも非常な重さを持っています。
原子力発電の廃止を求める立場に立つ市内の人々は、広島市自体この運動に参加するように求めています。

しかしこの考え方に反対の立場をとる人は、広島と福島では類似点は少ないと考えています。

一方は戦争という行為の中でも、世界がかつて見たことも無い規模の殺戮、火災、そして恐怖をこの世に現出させました。

「私たちの立場は、これは絶対に妥協できないものですが、核兵器は絶対悪であるという事です。」
松井一美広島市長は市役所で行われたインタビューで、声を震わせながらこう答えました。
「両方が放射線の問題を含んでいるというだけで、私は2つを一緒にすることには反対します。」

広島05
この中国地方の代表的な都市のひとつで広く共有されている感情、それは原爆の被害にあった人々は、原子力発電所事故の後遺症に苦しむ以上に恐ろしい、様々な体験をしているという事であり、原爆と原子力発電所事故を同一に論ずることには抵抗感を持っています。

松井市長自身も原爆で親戚を亡くし、両親の家も破壊されてしまいました。

広島に投下された原爆は、即死者、そして数か月以内に亡くなった人を合わせると約140,000人になります。
その3日後、アメリカは2発目の原爆を長崎に投下し、第二次世界大戦終了間際のこの時、約70,000の人命を奪いました。

日本政府によって広島原爆の後遺症、原爆症と認定された人の数は200,000を超えました。

一方、福島第一原発の事故では、放射線障害による直接の死亡者が一人もいないことが知られています。
しかし3基の原子炉がメルトダウンした事故を完全に収束させるには何十年という歳月が必要であり、莫大な量の放射性物質の放出が、最終的に人間の健康にどのような影響を及ぼすことになるのか、この点についても未だ明らかではありません。

最近になってやっと、日本政府は当初考えられていたよりはるかに大量の高濃度の放射能汚染水が、海洋中に放出されてしまった事実を認めました。

112814
日本政府は217,000人の18歳以下の青少年を検査し、多発するだろうと見られていた甲状腺がんを発症している若年者が44人に上ったことを明らかにしました。
本来甲状腺がんは若年の間はきわめて稀にしか発症せず、その発症割合は100万人に1人程度といわれています。
甲状腺がんと放射線との関係はすべてが明らかにされているわけではありませんが、福島では広範囲の調査を行った結果、高い発症率が確認されました。
世界保健機構(WHO)によれば、福島第一原発よりさらにひどい災害となった1986年の旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所事故後では、さらに高率の甲状腺がんの発症が確認され、数万人が発症したものとみられています。

広島平和研究所のロバート・ジェイコブス教授は広島と福島との間には類似点があると考え、福島について『ゆっくりと進む(スローモーション)核戦争』と表現しました。
ジェイコブス教授は福島第一原発からの放射性物質の漏出が、今後何十年も続くと予想されることから、累積すれば莫大な量の放射性物質が環境中に放出されると考えなければならないと指摘しました。

〈 後篇に続く 〉
http://www.nbcnews.com/id/53112658/ns/world_news-asia_pacific/t/attempts-link-fukushima-hiroshima-upset-some/#.UkkLYFM09Vt
 + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

ヒロシマとフクシマ、あまり大きく重く、そして難しい課題であり、私などが軽々に論じて良いものではありません。
しかしこの記事にある、広島では大量の放射線が一瞬に人々に襲いかかり、大量の殺人が行われたのに対し、福島では未だに福島第一原発からの放射性物質の流出が続き、私たちはその総量がどうなるのかをしっかり見極める必要がある、という指摘は重要だと思います。

福島第一原発から放出された放射性物質のうち、半減期が短いのは放射性ヨウ素だけで、それ以外これまで報道等で名前が挙がった
トリチウムは約12年
セシウム137とストロンチウム90が約30年
プルトニウム238が約88年
という内訳であり、
これが物理的に10分の1になるには
トリチウムは約41年
セシウム137とストロンチウム90が約100年
プルトニウム238が約290年であり( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E6%B8%9B%E6%9C%9F より引用)、
これら放射性物質の環境中への累積が懸念されます。
この事実から、これからの放射性物質がじわじわと環境中に漏出し続ける状態を『ゆっくりと進む(スローモーション)核戦争』と表現しています。

被災者の方々の窮状が続いていることに加え、東京電力が福島第一原発で繰り返している『トラブル』により、結果的に環境中の放射性物質の累積量がどう変化しているのか、決して目を離してはいけない、そういう事なのだと思います。





 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事に関連する記事一覧

このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、アメリカCNN、NBC、ABC、CBS、英国BBC、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
サイトマップ
最近の投稿
@idonochawanツィート
健康関連リンク
アーカイブ