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【 終わるはずの無い原子力災害、フクシマ、そして日本 】《後篇》[シュピーゲル]

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所要時間 約 11分

間違った場所に、間違った材料を使って、間違った方法で作られた、間違いだらけの貯蔵タンク
『動作不良』『しくじりの連続』『手がかりなし』これこそが福島第一原発の現在のテーマ
東京電力の対応のあまりのまずさに、唖然とする海外の専門家

マルコ・エヴァーズ / デア・シュピーゲル(ドイツ) 9月10日

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▽ 汚染水の漏出

これら急造されたタンクの内のひとつから汚染水の漏出が始まってから、監視要員がたった2名という体制の下では、事実を把握するまで数週間という時間が空費されてしまったものと見られています。

漏出の事実が確認された時点で、すでに300トンの高濃度汚染水が漏れ出してしまっていました。
事態を重く見た日本の原子力規制委員会は、国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価をレベル3『重大な異常事象』に引き上げました。
この尺度における最高位はレベル7ですが、チェルノブイリ事故と福島第一原発事故の2つがこのレベル7に分類されています。

これらの貯蔵タンクについてはその構造上、耐用期限が目前に迫っているタンクがかなりの数に上ること、そして漏出を早期に発見できるセンサーが装備されているタンクの数が非常に限られていることから考えて、今後も漏出トラブルが続出するであろうことは、疑問の余地がありません。

汚染水漏れ02
こうした状況について、『世界の原子力産業の現況(World Nuclear Industry Status Report)』の主要執筆者の一人である原子力専門家のマイケル・シュナイダー博士がこう断言しました。
「これらは、間違った場所に、間違った材料を使って、間違った方法で作られた、間違いだらけの貯蔵タンクなのです。」

動作不良
しくじりの連続
手がかりなし
これこそは、福島第一原発の現在のテーマのように見受けられます。

破壊された原子炉からは時折、未だに高濃度の放射性物質を含んだ水蒸気が立ち上っています。
福島第一原発においてはこうした漏出口を塞いでいるのがテープの類である以上、再びこの種のトラブルの再発は避けられそうにありません。

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放射能汚染水の問題に至っては、地下水に紛れ込んで漏出してしまったため、いったいどれ程の海洋中に入り込んでしまったのか、数値的な把握など不可能です。
この問題については、外部の専門家などから繰り返し指摘があったにもかかわらず、東京電力は問題の存在を頑なに否定し続けてきました。
しかし事態がここに至ってしまった以上、東京電力の広瀬社長は福島県沖の漁業資源に悪影響を及ぼしてしまったことを、謝罪しないわけにはいかなくなりました。

それから、放射能汚染水があります-ちょうどいくらを測定することは難しいです-それはすでに地下

「まるで日替わりメニューのように次から次へと発生する福島第一原発のトラブルはいずれも深刻なもので、これらの問題に対応するため、東京電力は本来取り組むべき事故収束・廃炉作業には手も付けられずにいます。」
ケルンにあるドイツ原子力発電所・原子炉保安協会(GRS)のマイケル・マクア氏がこう語りました。

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彼は東京電力のあまりの対応のまずさに、驚きを隠せずにいます。
「もしこれが学校での課題で私が採点する立場なら、東京電力の関係者全員、落第の瀬戸際に立たされているでしょう。」
マクア氏はこうため息をつきました。

福島の状況を好転させるべく、現在日本政府はこれまで試みられたことの無い取り組みに国の予算をつぎ込もうとしています。

その計画のひとつが、汚染水の海洋流出を止めるため、原子炉建屋・タービン建屋と海の間に金属製の防護壁を建設しようというものです。

▽ どう考えても、うまくいくとは思えない

さらに東京電力は2015年までに、原子炉建屋・タービン建屋の周囲など原子炉施設周囲1.4キロの土地を地下まで凍結させる『永久凍土』対策を実施し、地下水の流れ込みを阻止することによって、作りだされる汚染水の量を大幅に減らそうとしています。
この技術はこれまで鉱山業などで使われてきたものですが、これほど大規模に、しかも数年間という長期間にわたって実施された例はありません。

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「我々からすると、どう考えてもうまくいくとは思えません。」
マクア氏がこう語りました。

ドイツの原子力産業界に籍を置き、実際に原子力発電所で働く別の技術者も、この計画を批判しました。
彼によると、凍土層を原子炉建屋・タービン建屋の周囲に作る場合、底の部分も凍結させて『蓋』をした状態にしない限り、水の浸入を防ぐことはできないと指摘しました。


1,000基に上る貯蔵タンク内の汚染水については、たった一つ、根本的な解決方法があります。
特殊なフィルターを使用して、主要な放射性物質を取り除き、浄化した水を海に放出することです。

そのためには特殊なフィルターのついたろ過装置を使い、セシウムやストロンチウムなど、ほとんどのの放射性物質を取り除くことが可能です。

汚染水浄化装置
ただし、たったひとつ、半減期が約12年、物理的に10分の1になるまで41年と、他の放射性物質と比べれば崩壊の速度が早く、その分懸念が少ないと言えば少ないトリチウムだけは除去することはできません。
放射性トリチウムはフィルターでは除去することは出来ないのです。

漁業関係者にとってはまさに頭痛の種のこの『浄化済み』汚染水の海への放出については、少しずつではありますが、日本の人々も覚悟し始めました。

ところが、東京電力はこの問題についても、まともな対応ができない会社であることを白日の下にさらすことになったのです。

東京電力は最近になって大規模な汚染水の浄化装置を完成させましたが、それすら会社の危機管理能力に対する信頼を取り戻すために、どんな貢献もしませんでした。
稼働し始めて間もなく異常が見つかり、仕事らしい仕事をしないうちに再び停止してしまったのです。
この装置は春先にもいったん稼働したものの、水漏れを起こして停止してしまい、本体にはサビが浮き始めていました。

東京電力の内部改革委員会に籍を置くデール・クライン氏は、歯に衣着せぬ発言を行いましたが、再び日本に向け旅立つことになっています。
しかし東京電力は今回もまた、クライン氏の発言によって幸せな気分になることは無いでしょう。

東電委員会
クライン氏は、福島第一原発の現場において正しい知見に基づく、的確な事故収束作業を行うために、海外の専門家を加えた新たな会社を設立する必要があるとしています。

クライン氏は確信を深めています。
目の前の困難な課題である汚染水問題に限っても、東京電力には解決する能力は無い、と。
福島第一原発の事故作業、それは『次の10年』のために今どう対処すべきか、その事にかかっているとクライン氏が語りました。

〈 完 〉
http://www.spiegel.de/fotostrecke/photo-gallery-fukushima-s-growing-stockpile-of-contaminated-water-fotostrecke-101236-13.html
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またぞろ一部財界人などが、被害者目線、市民目線に立った国内の原発報道を「偏向報道だ」などと攻撃しているようです。
そもそも絶対公正中立など、あるはずが無く、福島第一原発の事故についても、加害者(東京電力、電力業界、日本政府)目線に立つか、市民目線に立つかで、報道のニュアンスは大きく異なります。
攻撃されたNHKの番組程度の内容が「偏向している」としたら、アメリカだけでも、その一流メディアであるニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、CNNニュース、NBCニュース、CBSニュースなどは「大偏向」している事になります。

大企業の役員の椅子を手に入れると同時に、国内の諸問題に対しても「特別な発言権」を手に入れたつもりなのでしょうか?
原発の被害者目線に立った報道を「偏向報道だ」などと攻撃するという事は、自分たちには発言権があるが、被害者には発言権など無い、間接的にそう言っている事にならないでしょうか?

明日15日(火)は掲載をお休みさせていただき、16日(水)より新規掲載を行います。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い致します。

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【 戦場のこどもたち 】
弾丸が頭上を飛び交う中、家の手伝いに励むシリアのこどもたち

アメリカNBCニュース 10月8日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

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顔も洗ってない子供たちが、屋内でも遊べるように設置されたブランコの周囲に集まってきました。
シリア北部の町、クファル・ラタでは、最低限建物の壁が小銃の弾丸避けになるよう、できるだけ屋内で遊ぶようにしています。

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壁に武器が立てかけられた家の中から、父親だけが毎日外に出て行きます。
本来なら肥沃な土地の上にオリーブがたわわに実をつけるはずの土地は、建物などの残骸、破片で埋め尽くされ、人々は足元に注意しながらその上を歩かなければなりません。
父親たちは破壊された建物の陰に潜み、大通りをってくる兵士たちを狙撃するのです。

繰り返し破壊されたこの街にはもう、一握りの家族しか残っていません。
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たった2週前、クファル・ラタには、約10,000人の住民が居ました。
多くは肥沃な土地で農業を営み、倹約と貯蓄に励み、多くはコンクリート製の大きな家屋を建築して、豊かな暮らしをしていました。

その場所は今や、シリア各地で見かけるゴーストタウンのひとつと化してしまいました。

政府軍と反乱軍の戦闘は国内至る所に拡大し、倦むことなく破壊と殺戮が繰り返されているのです。
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ほんとうの「今」を知りたくて、アメリカCNN、NBC、ABC、CBS、英国BBC、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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