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国の原子力政策、そして東京電力に、真っ向から孤独な戦いを挑む!《後篇》

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所要時間 約 6分

【 政府の命令より、汚染されてしまった生き物たちの命を守れ 】
なぜ日本人は、権力に対してこうも従順なのか?
日本にはまだ変わるチャンスはある、その事を訴え続けたい

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 1月11日

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吉沢さんは時々、他にも飢えて骨と皮ばかりになった牛がさ迷い歩いているのではないかと、避難区域一帯を見て回ります。
迷い牛を見つけたら、吉沢さんはその耳を引っ張って自分の牧場に連れて帰ります。
その際、吉沢さんはできるだけ警察の検問所を避けるようにしています。

避難区域内に入ることは基本的に違法行為です。
彼はこれまで6回ほど警察に捕まり、あらかじめ用意されている謝罪文に署名するよう求められました。
文書の中の『二度としません』という部分を線で消さない限り、吉沢さんが署名することはありません。

吉沢さんが権力に抵抗姿勢を示すのは、これが初めてではありません。
以前は反原発の闘士でした。
彼は福島第一原発の事故が発生し、父親から受け継いだ牧場を永遠に失ってしまうかもしれないという状況に追い込まれた時、その思いは一層激烈なものになったと語りました。

浪江町の人々がこの国の原子力行政の高級官僚や東京電力の経営陣、あるいは政治家に騙されていたことがその理由ではありません。

吉沢さんの自宅の台所の窓からは、福島第一原発の煙突とクレーンが見えます。
吉沢さんは3月11日、自宅にいるときに大きな爆発音を耳にしました。

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このとき日本政府は事故に関する重要な情報を明らかにせず、吉沢さんも含めた浪江町のたくさんの人々が、放射性物質が飛散している方向に向かって避難してしまったのです。

「私は生き続けるためには、新たな哲学を身に着ける必要があったのです。」
結婚せずに独身のまま、牧場を守り続ける吉沢さんがこう語りました。

「そして私は、この疑問に突き当たったのです。
『なぜ日本人は、権力に対してこうも従順なのか?』と。」

「私は決めたのです、たったひとりの抵抗勢力になると…」

吉沢さんの牧場には、通常世話することが出来る数の2倍から3倍の数の、食用の霜降り肉を提供することで名高い黒毛和牛がいます。
つい最近のある寒い朝、吉沢さんは小型ブルドーザーを使って、牛のえさにするため黄色い米俵を運んでいました。
飢えている牛たちは一口でもエサを口にしようと、互いに押し合いへし合いしながら鳴き声をあげていました。

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吉沢さんは、大きな懸念のひとつは牛たちに与えるエサが底をつくことだと語りました。
適正な数を大きく上回る数の牛たちは、牧場の牧草を食べつくしてしまった今、エサと運営資金の寄付に吉沢さんは頼らざるを得ません。

そしてもう一つの心配は、汚染された寒気用の中で暮らしている牛たち、そして吉沢さんが、環境中の放射性物質によってどのような影響を受けることになるのか、という問題です。

この2年間でだいぶその値は下がったものの、事故直後、吉沢さんの体内からは高い値の放射性セシウムが検出されました。
吉沢さんは生活用水はろ過したものを使い、食糧は避難区域以外の場所で購入することによって、これ以上の被ばくを最小限に留めようと努力しています。

吉沢さんの活動は少数の支持者を得ましたが、一方で政治的主張を行うため、人道的見地からは牛たちが適切ではない環境を強いられているという批判も集めることになりました。
「これは個人的な見解ですが、牛たちこれほど密集して飼われている現状はあまり人道的とは言えないと思います。」
今回牛たちに出来た白い斑点について検証をした東北大学・加齢医学研究所の病理学者である福本氏がこう語りました。

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こうした批判に対して吉沢さんは、政府の命令通り殺処分されていたら、牛たちは生きることすら許されていなかった点について、皮肉を交えながら反論しました。

そして目下のところ、地元の自治体などは吉沢さんの抵抗運動について、非常に日本的な対処方法を選択しています、見て見ぬふりをすることです。

浪江町の職員は避難して区域内に人が住んでいるという事実は確認できていないと返答しました。
一方で町は吉沢さんの牧場の電気の供給と電話回線を復旧させました。

吉沢さんはそう簡単には自分を無視できないように、活発に動きつつけています。
しばしばニュースメディアに登場し、自身では牧場にウェブカメラを設置してネットで中継を行い、ブログの更新も怠りません。
そして時には東京まで行って東京電力の本社前で一人で抗議演説も行います。

希望牧場04
「すべての日本人が、受け身の姿勢でいるわけではありません。」
吉沢さんがこう語りました。

「ここにいる牛たちと私は、それでも日本には変わるチャンスがある、その事を訴えるために生き続けるつもりです。」

〈 完 〉

http://www.nytimes.com/2014/01/12/world/asia/defying-japan-rancher-saves-fukushimas-radioactive-cows.html





 

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