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【 汚染された故郷、再建できない生活、そして原発難民の帰還へ強まる政治的圧力 】〈前篇〉

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所要時間 約 8分

苦悩する地元住民は蚊帳の外、日本政府と『日本の大手メディア』による除染完了の安全宣言
「補償は打ち切る、原発被災者は元いた場所に帰れ」強まる安倍政権の冷酷な圧力
原子力ムラの強大な力を背景に、一部大手メディアと結託、日本の原子力発電の大復活を目論む
充分な賠償を行なえば、巨額の費用が表面化。そんな対応は原発に対する世論の反発を招くだけ

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 4月27日

都路村住民01
3年前に発生した福島第一原発の事故によって避難を強いられて以来、キム・ウンジャさんと彼女の夫は環境中に残る放射線の被害を避けるため、見事な山容を誇る自然の中にある村の丘の上にある自宅に戻ることを拒んできました。
しかし彼らは今、最早選択の自由は許されなくなるかもしれないと話しています。

2014年4月、日本政府は付近一帯を250億円の費用を投じて除染作業を行い、福島第一原発20キロ圏内の避難区域内では初めて、都路地区の安全宣言を行い住民の帰還を促しています。
この決定により事故の責任者である東京電力は、これまで負担していたキムさんたちが車で1時間ほど離れた場所のアパートの避難生活を可能にしていた、月々の給付金を打ち切ることが出来るようになります。

「日本政府と日本の大手報道機関は除染によって放射性物質がほとんど除去されたかのように伝えていますが、それはすべてうそです。」
と、韓国出身のキムさん(55)がこう語りました。
キムさんは日本人の夫と都路村の郊外で小さな韓国のレストランを経営しています。
「私はここから避難をしたいのですが、そうすることができません。私たちは今度の事で、お金をすっかり使い果たしてしまったのです。」

しかしそうした境遇にあるのは彼女だけではありません。
日本政府と国営放送、全国規模の報道機関が都路村の再開を、2011年3月の福島第一原発の事故が付近一帯を壊滅させて以来、初めての画期的な出来事として報道する一方で、地元の人々はその裏にある暗い現実について重い口を開きました。

彼らは、かつて住んでいた自宅は損傷がひどく、住むには危険過ぎる上、他の場所で生活を再開しようにも、未だに充分な賠償金を受け取れずにいると主張しています。

NBC25
ほとんどの家族にとって自宅は最大の財産ですが、元住民たちは東京電力がその家屋の補償すらきちんと行っていない点について、口をそろえて批判しました。

住民たちによれば、住んでいた場所によって最低でも事故前の評価金額の半額以上の補償が受けられるはずでしたが、実際には最高でも30万円程しか手にしておらず、受け取るべき金額の数パーセントに留まっています

多くの村民は補償金額そのものについても、未だに様々な形で放射性物質の漏出を続けている福島第一原子力発電所から充分に離れた場所で生活を再建するか、あるいは伝統的な農家の木造家屋を修理するには補償金額が低すぎると不満を露わにしています。
これらの家屋は地震によって損害を受けた後、福島第一原発の事故により住民たちが避難を余儀なくされたことにより放棄されたことにより、腐敗が進み、一部あるいは全部が倒壊してしまっています。

この結果避難を余儀なくされた多くの住民が不安定な状態のまま捨て置かれ、窮屈で劣悪な環境の仮設住宅で暮らし続けることを強いられるか、東京電力が費用負担していた都路村以外でのアパート生活を打ち切らざるを得ない状況に追い込まれています。
東京電力は日本政府から命令の下、各種の補償金の支払いを行っています。

元の住民たちは現在、望もうが望むまいが、かつて住んでいた場所に戻るよう求める圧力が強められつつあることを感じています。

日本政府は現在月額数万円から十万円を超える月々の補助金を、来年3までに打ち切ることを公表するとともに、仮設住宅についても順次閉鎖していくことを発表しました。

それ以前に帰還を果たした村民に対しては東京電力が90万円の一時金を支給することになっており、このことも帰還への圧力を強めています。

岡原10
「東京電力は、補償問題についてあまりにも不当な態度を取り続けています。」
都路地区が属する田村市の冨塚市長がこう語りました。
「私たちは被害者なのです。なのに充分な補償を求めるために、東京電力まで出向いてぺこぺこと頭を下げなければならないのでしょうか?」

150,000人の住民が避難・移住を強いられた福島第一原発の事故の被災地では、日本政府が3兆6,000億円をかけて行っている除染作業進んでいますが、専門家は都路地区が除染完了と住民帰還の先例と位置づけられていると語っています。
同時に専門家は、強大な力を持つ原子力産業に対する批判を抑え込み、日本の原子力発電事業全体について、可能な限り福島第一原発の事故以前の状態に戻すため、事故の被災者たちは日本政府の圧力が強まっていることを感じとっていると指摘しました。

「その態度はまさに冷酷で、無責任です。」
原発事故の被災者が充分な補償を受けられるよう、東京に拠点を置いて被災者のサポートを行う法律組織『原発被災者弁護団』( http://ghb-law.net/ )の弁護団長を務める丸山輝久弁護士がこう語りました。
「日本政府は充分な賠償を行なえば、巨額の資金が必要になり、そうなれば日本で原子力発電を続けることに対する一般国民の疑念を呼び覚ましてしまう、その事が解っているのです。」

東京電力はこれまで支払った様々な形の補償・賠償金の総額が3兆6,000億円に上っている以外のことについては、コメントを拒否しました。
東京電力の広報を担当する山岸氏は、次のように語りました。
「わが社はそれぞれのお申し出について、心を傾けてお話をうかがっています。」

NBC22
補償について基準作りを進めている文部科学省のスポークスマンは、ひとり一人の被災者の要求に出来るだけ対応するようにしているが、すべての要求に応ずることは難しいと語りました。

補償関連の係争問題を解決するために設立された政府の委員会は、これまで不満を持つ避難者から10,000通以上の請願書を受け取ったと述べました。

〈 後篇につづく 〉

http://www.nytimes.com/2014/04/28/world/asia/forced-to-flee-radiation-fearful-japanese-villagers-are-reluctant-to-return.html?_r=0
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何度か書きましたが、仙台市で暮らしている私たちは3.11を体験することにより、住む場所や家を奪われるという事がどういう事なのか、その『臨死体験』をしたように思います。
そして原発難民になってしまわれた方々は、実際にそれまでの人生を奪われるという苛烈な体験を強いられることになってしまいました。

福島、宮城、岩手の3県の被災地の中にあって、原発難民の方々の境遇だけは想像を絶するもののようです。
しかしそこにある『理不尽さ』が相当に大きなものである事だけは、容易に想像できます。

ではなぜその理不尽さは、そのまま放置されているのか?
その理由については、後篇をご覧ください。





 

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