ホーム » エッセイ » 【 放射能汚染から食料供給を守るため、苦悩する日本 】〈第2回〉
「失ってしまった顧客を取り戻すためには、真実をすべて明らかにするしかありません」
「政府の言う通りにしていたら、どうしようもなくなってしまった…」
ニューヨーク タイムズ 1月21日
このような実態を証拠立てるもののひとつが、巻き起こる市民運動です。
従来日本では市民社会が力を持たず、一部の官僚が独裁的な権限をふるう有司専制社会が続き、一般市民が公衆衛生を含む国益の問題に関心を持つことは稀でした。
しかし今や政府が自分たちの利害にばかり目を向けていることに気付いた市民たち、消費者、そして農民までもが新たに結集し、自分たちで放射能汚染の実態を明らかにするための取り組みを始めました。
福島県から東京までの150マイル(約240km)の区間に、ボランティアが運営する12か所を超える観測地点が設けられ、政府が行う調査よりも厳密でしかも透明性の高い調査を行うべく、取り組みが続いています。
「政府の安全基準など、もはや誰も信じていません。」
福島第一原発の北西25マイル(約40km) の二本松市で、無農薬のシイタケ栽培に取り組む59歳の武藤一郎さんが語りました。
「失ってしまった顧客を取り戻すためには、真実をすべて明らかにするしかありません。そうすれば、消費者自身がちゃんと判断できるようになります。」
武藤さんは二本松市の集荷場に、自分たちの放射線試験場を立ち上げた250人の農民の中の一人です。
ある日、武藤さんを含めた6人ほどの農民が、集荷場にある狭いキッチンに集まりました。
そこで農民た ちはNGO機関から寄付された40,000ドル(約300万円)もする放射能測定器で、切り分けた大根、そしてネギの放射線量をそれぞれ測定しました。
彼らが育てた作物の放射線量は、いちいちそのインターネットサイトにアップされ、誰もが見られるようになっています。
武藤さんはこうしたやり方がどれ程リスクが高く、自らの痛みを伴う方法であるかを理解しています。
テストの後、武藤さんは収穫した110,000個に上るシイタケを、すべて廃棄処分にしました。
放射線力が高く、とても出荷などできなかったのです。
しかしこれ程の努力も、消費者が抱くもっとも大きな疑問のひとつ、福島第一原発近隣の農地で作物を栽培できるのか?という疑問には答えられないのです。
武藤さんのような農民は東京電力による補償も十分ではなく、何とか生計の途を立てて行かなければなりません。
東京電力は、 福島第一原発から12マイル(20km) 圏内の、避難を余儀なくされた農民に対してのみ満額の補償を行いました。
しかし大量の放射性物質は、北西方向のさらに広い区域に降り注いだのです。
こうした補償のやり方は、人口密度の高い日本という国を可能な限り細分化して、政府が示した方針に沿ったものです。
政府・自治体側も福島第一原発に近い場所での農作物の栽培に、多くの人が疑問を持っていることは認めていますが、放射能汚染を理由にいったんこの地区での栽培を禁止してしまったら、再開に当たっては国民を納得させるために何年もかかってしまうだろう、と語っています。
「消費者はもはやこの場所では農業をしないことが一番だ、と考えるかもしれません。しかし、作物の放射線量はひとつひとつ異なっているのです。」
福島県の稲作部門の責任者である、天野わたるさんがこう語りました。
しかし、大波町の農民たちの考えは異なります。
彼らはこう語りました。
11月に米が汚染されていることが判明する以前、政府は農民が米を作るに任せ何の方針も示さなかった。
ところがこの区の農民は米が一粒も売れない、という経済的破局に直面させられている、と。
「これらはみな、保証金を支払いたくない、という動機によるものなのです。」
こう語るのは米作農家で、これ以上の汚染がわかれば7代続いた農家を廃業しなければならないと恐れ、佐藤さんとだけ名を明かしてくれた74歳になる女性です。
「私たち農民は政府がこうしなさい、といった通りにしてきたのに、もうどうしようもなくなってしまいました。」
〈つづく〉
http://www.nytimes.com/2012/01/22/world/asia/wary-japanese-take-food-safety-into-their-own-hands.html?_r=4&pagewanted=all
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【 子どもたちのために、立場の違いを乗り越えよう 】
アメリカNBCニュース[この世界をかえていく! メイキング・ア・ディフェレンス ] 2月16日
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