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【 日本の核廃棄物問題 – 埋蔵処分の可能性と危険性 】〈後篇〉 AP

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所要時間 約 10分

安倍政権の再稼働政策が現実になれば、日本国内には行き場のない高レベル放射性核廃棄物が積み上がり続けることになる
核廃棄物の問題に手をつけないまま、将来の世代にツケを回すことは許されないことであるはず
福島第一原発の事故により、これまで予想していた以上の核廃棄物を日本は抱え込んでしまっている

AP通信 / ワシントン・ポスト 2014年7月14日

核廃棄物01
「核廃棄物の問題は政治的なものであって、科学的なものではないのです。」
こう語るのは、政府が出資する原子力安全研究協会処分システム安全研究所長の杤山修氏です。

現在の計画の下では、原子力発電所から出る使用済み核燃料は、そのほとんどが再処理された上で燃料として再利用されることになっています。

残った残留物は溶かしたガラスと混ぜ合わせ、厚さが19センチメートルのステンレス製のキャニスターに充填されガラス固化された上で、1,000年間その中の放射性物質の大部分が崩壊していくのを待つことになります。

この容器は最長50年、六ヶ所村再処理工場で冷蔵保管されることになります。
その後、厚さ70センチメートルのベンナイト粘土で出来た分厚いシールドが施され、最終処分場に持ち込まれるのです。
そして安定した岩盤の上に築かれた地下保管施設に格納されることになります。

政府は3兆5000億円をかけ、東京のディズニーランドのおよそ2倍の面積に相当する、地中に網の目のように坑道をめぐらせた地下貯蔵施設を建造し、2100年までそこに放射性核廃棄物を格納し続けることを計画しています。
「自分が住んでいる場所に、核廃棄物を持ち込ませても良いと考える人間はいません。しかし、今ある放射性核廃棄物をどう処分するのか、その現実的な解決方法について私たちは考える必要があります。それは原子力発電を支持する、しないとは別の次元の話です。」
栃山氏はこう語りました。
「その決定を先延ばしにし、問題をこれからの世代の人々に押しつけることは間違っています。」

地下処分場幌延03
しかし日本が最終処分場を手当てするために2000年に原子力発電環境整備機構(NUMO)を設立してからすでに10年以上が経ちましたが、未だにその候補地は見つかっていません。

日本政府はこれから数カ月間で可能性のある場所の選定を行い、自治体との交渉を始めるべく準備を進めています。
しかし強い反発が予想されるため、当局は候補地に関しては堅く口を閉じています。

世界的にみると、フィンランドとスウェーデンだけが地下廃棄物処分場の場所の確保に成功しています。
フィンランドは2020年、スウェーデンは2029年ごろにそれぞれその処分場の稼働を開始する予定です。
フランスは現在のブレの研究施設を、完全な機能を持つ最終処分場として2025年から使用できるよう、承認を求めています。

米国では、計画されていたネバダ州のユッカマウンテンについて断念した後、次の候補地はまだ見つかっていません。
米国政府は当面の時間を稼ぐため、一時的な方法であるドライキャスクによる保管の延長を検討しています。

日本に話を戻しましょう。
安倍政権は2011年の福島第一原発の事故以降停止している50基の原子炉について、再稼働させる政策を強力に推進しています。
しかし実際に再稼働すれば、今以上の処理不能の放射性核廃棄物が生み出されてくることになるでしょう。

サバンナ川最終処分場01
かつて高い人気を誇り、在任中は原子力発電政策の推進を支持していた小泉元首相は、フィンランドのオンカロにある最終処分場を視察した後、日本では最終処分場の建設は不可能であるとの見解を持つようになり、原子力発電所の再稼働反対へとその立場を変え、一躍注目を集めました。

経済産業省によって選定された専門家による委員会は今年5月、原子力発電環境整備機構(NUMO)の活動を『あての無い旅』と批判し、核廃棄物の問題は『現実に存在する、差し迫った危機』であると警告しました。

7月1日、原子力発電環境整備機構は10人の幹部職員のうち、8名を交代させました。
新たに理事長に就任した近藤駿介氏は日本の原子力委員会の政策決定部門の幹部でしたが、政府と協力しながら放射性核廃棄物処理プログラムを前進させると誓いました。

日本の放射性核廃棄物の問題は、これから数年間の間に福島第一原発の事故現場から放射能に汚染された大量のがれきが取り除かれることにより、一層深刻化することが予想されています。

福島第一原発の現場にある損傷を受けた核燃料アセンブリやメルトダウンした核燃料によって汚染されたがれきについて、それらを通常の使用済み核燃料と一緒に保管できるかどうか、専門家によってその見解はまちまちです。

4号機核燃取出し
日本はこれまで予想していた以上の核廃棄物を、抱え込んでしまうことになるでしょう。
なぜなら六ヶ所村再処理工場で行われている再処理計画は失敗続きであり、さらには兵器級のプルトニウムを抽出することについて国際社会の批判が高まり、計画そのものを中止するよう圧力が高まり続けているからです。

「理由が何であれ、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出すれば、その時点で国際社会レベルの危険を作りだすことになるのです。」

プリンストン大学の原子物理学者で、廃棄物処理の専門家であるフランク・フォンヒッペル教授がこう語りました。
4月、日本政府は、フィンランド、スウェーデン、アメリカ同様に使用済み核燃料を再処理することなく直接処分するための事前調査を開始しました。
核燃料の再処理の分野で世界の最先端を行くフランスも、同様の検討を行っています。
この場合、長さ4メートルの核燃料アセンブリをそのまま貯蔵することになれば、核分裂の連鎖反応が起きる事故を防ぐために、一層大規模な施設が必要になり、新たな安全対策も必要になります。

宮本町長は、幌延は国のエネルギー政策に貢献して来たし、これからもそうし続けると語りました。
宮本町長は、実権を進めるためにさらにより深い500メートルの地下トンネルを掘る政府の計画を進んで受け入れるつもりです。
しかし、放射性物質を受け入れるつもりは無いことを強調しました。

waste06
「私は日本の最終処分場がこの町ではなく、国内の別の場所に建設されるものと信じています。」
「施設が私たちの町の発展に貢献してくれる限り、私たちは国の研究の役に立てることに満足しています。」

〈 完 〉

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/underground-lab-tackles-japan-nuclear-waste-issue/2014/07/14/8e46c726-0b2e-11e4-929c-4cd4865c3725_story.html
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原子炉の再稼働に関する国内報道を見ていると、これ程堂々と『不正義』がまかり通る先進民主主義国家は日本とアメリカだけではないか?と思います。
日本は原発の再稼働、アメリカは銃規制強化の取りやめ。

7月22日(火)は掲載をお休みさせていただきます。
よろしくお願いいたします。

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【 原子力発電の60年 】
世界で始まった原子力発電所の廃棄・廃炉作業

ニューヨーカー 5月29日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

ダンジネス01
今年6月、1954年に当時のソビエト連邦に世界初の一般用途向けの原子力発電所が建設されてちょうど60年が経ちました。

しかしスリーマイル島のメルトダウン事故、そしてチェルノブイリ、福島第一原子力発電所と続いた巨大事故の発生を受け、数カ国では原子力発電所の廃棄・廃炉作業が開始されました。
60年を経た今も原子力発電所は巨大な設備、そして複雑な構造を持ったままです。

英国のケントにあるダンジネス原子力発電所(1965-2006)の内部。2005年撮影。(写真上)

ダンジネス原子力発電所(1965-2006)の制御盤に並ぶ無数の計器。(写真下・以下同じ)
ダンジネス02
スコットランドのダウンレイ原子力発電所内の内部、1998年撮影。
ダウンレイ01
英国、カンブリアのセラフィールド原子力発電所、1993年撮影。
カンブリア01
英国、カンブリアのセラフィールド原子力発電所にあるソープ再処理施設、1993年撮影。
セラフィールド02





 

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