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【 福島第一原発の現場を去る…なぜ彼らは汚名を着せられなければならない?! 】《後篇》

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所要時間 約 6分

東京電力を出てさえしまえば、電力技術者として歓迎してくれる世界がある
電力行政、そして原発行政、東京電力の幹部はありとあらゆる官僚にコネクションを持っている
去り続ける職員数の増加は、ただでさえ困難の伴う事故収束・廃炉作業を一層困難なものにする

AP通信 / ワシントンポスト 7月10日

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東京電力という企業は市民社会から嫌悪されていますが、従業員が社員として身に着けたあらゆる種類のエンジニア、メンテナンス技術者、プロジェクト・マネージャ、建設や金融部門のプロとしての様々な技術と経験はそうではありません。

現在日本国内における太陽光発電を始めとする自然エネルギー開発は、政府が支出する多額の助成金により活況を呈し、電力産業の従業経験を持つ人材への需要も高まり続けています。

現在、日本政府は太陽光発電システムによって作られた1Kwhの電力に対し、32円(約31セント)の助成金を支払っています。
アメリカではこの金額は州や都市によって異なりますが、おおむね数セントという金額です。
ドイツの場合は約15セントです。

ロンドンに本社を置くアース・ストリーム社はエネルギー産業分野の人材を専門とする人材獲得会社ですが、同社のショーン・トラヴァーズ氏は日本でのビジネスを拡大しようとする外国企業のため、東京電力の社員の獲得に奔走していました。
「東京電力の社員は教育が行き届いている上、日本の電力業界の仕組みについて豊富な知識と経験を持っています。人材として非常に力ある人々なのです。」

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日本で事業を展開する米国籍の太陽光発電企業、ヌファースト・ソーラー社の最高責任者であるカール・ブルツァート氏とサン・パワー社の杉原隆氏は、もし働くとしたらどのようなポストを希望するか、何人もの東京電力社員と面接済みだと語りました。

技術的知識や経験もさることながら、東京電力の社員が人材として魅力的なのは、電力会社の権力構造を熟知している点、そして幹部級職員の場合は日本政府の官僚との間のコネクションが重要な資産とみなされているのです。

「人間関係は日本の企業文化においてはことのほか重要な要素です。東京電力社員は、あらゆる政府官僚に強力なコネを持っています。」

トラヴァーズ氏がこう語りました。彼はすでに20人の東京電力社員の獲得に成功しましたが、さらに多くの人材を獲得したいと語りました。

東京電力のメンテナンス技術者であった吉川氏も複数の自然エネルギー企業からオファーを受けましたが、いずれの条件も東京電力時代の年収300万円を上回るものだったと語りました。

東京電力社員
東京電力は2012年9月から幹部職員の給与を30%、管理職経営者以外の社員は20%、減らされてしまいました。

しかしさすがに昨年は、これ以上の人材流出を防ぐ意味からも、5,000人の管理職に対し100,000円のボーナスを支給しました。

資格や技術を持った職員の流出を防ぐ対策のひとつとして、今月から減俸率を7%に引き下げましたが、福島第一原発で事故収束・廃炉作業にあたる職員はその対象にはなりませんでした。
しかし東京電力全体にのしかかる財政的圧力も要因の一つとなり、人材流出は止まっていません。

東京電力は福島第一原発の事故後、日本政府により財政的に救済を受けました。
しかし今後行わなければならない数万人を超える事故の被災者に対する賠償責任は、これから長きにわたり東京電力にとって重荷になるはずです。

「私たちは事故収束・廃炉作業を続けるために、人材を確保し続けなければなりません。」
東京電力の広報担当の佐々木原氏がこう語りました。
「しかし私たちは事故を起こした張本人です。その影響は日本国内にとどまらず、世界中に影響を与えてしまいました。社会一般の方々の理解を得るために、私たちは懸命に働き続ける他はないのです。」

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しかし東京都市大学の原子力工学が専門の高木直行教授は、これだけの悪条件が揃ってしまえば、東京電力の職員がその技術と経験を別の場所で生かそうと考えることを防ぐことはできないと語りました。

高木教授は最盛期の日本の原子力産業が、宇宙開発のような不思議な魅力を持っていたと振り返りました。
彼は原子力工学が継続可能な研究分野であり、社会に明確に貢献できる大切な職業であるとも考えています。

高木教授自身は2008年に東京電力の研究分野での仕事を辞しましたが、福島第一原発の事故後、原子力関連の分野に進む学生が減少していると語りました。
その事実はとりもなおさず、必要とされる原発事故の収束・廃炉作業のためのプロの技術者の確保がこれから増々難しくなるという事を意味しています。

「東京電力は今や、人々の嫌悪の対象でしかなくなってしまったのです。」

〈 完 〉
http://www.washingtonpost.com/business/stigmatized-nuclear-workers-quit-japan-utility/2014/07/10/0c15ca32-07fe-11e4-9ae6-0519a2bd5dfa_story.html
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ここにも原発再稼働を許してはならない、ひとつのレトリックがあります。
原発が事故を起こしてしまったら、その事故収束・廃炉作業を維持する、そのこと自体が非常に困難になるという事です。






 

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