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【 平和を愛してきた日本国民に対し、未曽有の脅迫が開始された 】

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所要時間 約 13分

軍事・外交面における安倍首相のタカ派政策に対し、早くも現実になった反動
『積極的平和主義』海外の武力衝突に関わることにより、日本人の命が危険にさらされる

マーティン・ファクラー、アラン・カウルジャン / ニューヨークタイムズ 1月20日

人質事件01
覆面をつけた戦闘員がひざまずかせられている2名の日本人男性を殺すと脅迫しているビデオが1月20日ウェブ上で公開され、アメリカ合衆国や他の国々同様、日本をもまた人質事件の悪夢が襲うことになりました。
安倍晋三首相は脅迫に屈するつもりは無いと宣言し、日本人男性の救出を誓いました。

このビデオは中東諸国を歴訪している最中に公開され、安倍首相はこれまでとは全く異なる類いの課題を背負わされることになりました。

積極的平和主義を掲げ世界の安全保障問題に自ら関わっていこうという安倍首相の姿勢に対し、日本の国民の中で飽くまで平和主義の立場に立とうとする人々は不安と反感を抱いています
政治評論家は、オレンジ色のつなぎの服を着せられ地面にひざまずかされている日本人男性の姿は、こうした日本人の不安をより大きなものにするだろうと語っています。

過激派であるイスラム国のサイトで公開されたビデオの中の日本人男性二人は、ジャーナリストの後藤健二氏と湯川遥菜氏であることが確認されました。

ビデオの中でナイフを手にした戦闘員の男が山岳地帯と思われる場所でひざまずく2人の日本人男性の間に立ち、2人の男性の身柄と引き換えに日本が2億ドル(約234億円)を72時間以内に支払うよう求める、あらかじめ用意されたと思われる声明を読み上げました。

Kobani04
この戦闘員は今回の身代金要求が、中東諸国を歴訪中の安倍首相が17日に発表したイスラム国、別名ISISまたはISILに対する戦いを行っている国々に対する非軍事経済援助がきっかけであると語りました。
安倍首相はイラク政府への支援、そしてイスラム国の占領地区の拡大とともに難民となり、トルコ、レバノン、シリアで生活している人々への援助資金として2億ドルを供出すると語っていました。

「日本の一般国民の諸氏に告ぐ。イスラム国との戦いに2億ドルを支出するという、あなた方の政府が行なった決定が如何に愚かしいものであるかを思い知ってもらうため、人質救出のために政府に圧力をかける時間として72時間を与えよう。」
覆面をした男はビデオの中でこう語りました。
男は米国英語ではなく、英国のアクセントの英語で次のように続けました。
「さもなければこのナイフは、諸君にとって悪夢になるだろう。」

イスラム国の一連の人質事件の被害者である2人のアメリカ人、ジェームズ・フォーリーとスティーブンJ.ソトロフ、そして2人の英国人、デイビッド・ヘインズとアラン・ヘニングが首を切られて死亡するビデオに登場した覆面の男の声、しぐさ、服装と今回の男のものには共通点が見られました。
この戦闘員は身代金要求の際通貨を指定しませんでしたが、アラビア語の字幕には米ドルと明記してありました。

Kobani01
アメリカ合衆国と英国はこうした要求に対し、身代金の支払いを拒否すると明言しています。
アナリストや政府関係者は日本政府が過去に身代金を支払った例があるものの、最近ではそうした例は無いと語りました。
そして2億ドルという金額は政治的判断を下しようのない程非現実に高額であり、支払われる可能性は低いとしています。

日本政府のスポークスマンを務める菅義偉官房長官は東京での記者会見で次のように語りました。
「日本がテロリズムの脅迫に屈することはありません。そして、国際社会のテロリズムに対する戦いに積極的に関わっていくという我々の方針に変更はありません。」

このビデオは、イスラム武装組織がはっきりと身代金の要求を行った初めての例であると考えられます。
これまでイスラム国はビデオの中で人質を殺すという脅迫はしてきましたが、具体的要求を行った例はありませんでした。
そして72時間という期限を切って回答を要求した点においても、これまでとは一線を画しています。

kobani04
事件当時は公表されませんでしたが、アメリカ人人質の解放と引き換えに身代金の支払いを強要したもののうまくいかなかったことが、武装グループの今回の要求の規模につながったとの観測があります。
イスラム過激派の宣伝活動を監視しているSITE(諜報機関)は、最新のビデオがイスラム国の外部向け宣伝機関であるアル・フルカンによって制作されたものであると語っています。

人質に迫る脅威は、すべての日本国内のニュース番組でトップで扱われました。
国内では有権者の多くが、安倍首相のタカ派的政策の推進により、日本がこれまでの平和主義を捨て去ってしまうことについて懸念を募らせていました。

日本もこれまでアラブの過激派による攻撃と無縁だったわけではありません。
2003年後半、日本の2人の外交官がイラクで銃撃を受けて死亡、その1年後には同じイラクで若い男性が誘拐され殺害される事件が起きました。

しかし政治評論家は今回の事件が、安倍首相に対する一般国民の支持率を低下させる可能性があると語っています。
昨年12月末の衆議院議員選挙で決定的勝利を手にした後、安倍首相の政治方針に口をはさめる人間は誰もいないかのような状況が続いていました。

人質事件安倍首相
安倍首相はその経済政策に対する国民の支持を得て得意気でしたが、国民の多くは安倍首相が推進する日本の軍事面・外交面での強化策に必ずしも賛成ではありません。

日本国民は第二次世界大戦において国が破滅寸前にまで追い込まれていく中、数々の悲惨な体験を強いられました。
その事から日本国民はどのような軍事行動にも嫌悪感を抱いていると、アナリストは分析しています。
そして今回のビデオは、日本人のその思いを新たにする可能性を持っています。

「今回の危機は日本国民の心の奥深くにある、安倍首相に対する懸念を呼び覚ますことになるでしょう。」
政治学研究科の春名幹男客員教授がこう語りました。
「この事件が起きる以前に、安倍首相のタカ派的政策が遠く離れた海外の紛争に日本を巻き込み、日本人が殺される結果につながるのではないかとの懸念を国民はすでに抱いていました。」

20日火曜日のエルサレムでの記者会見では、安倍首相は人質になっている2人を救出するため、関係部局に対しあらゆる手立てを尽くすよう命じたと語りました。

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安倍首相は同時にアメリカ合衆国の同盟国として、これからは国際舞台での活動を積極的に推進するための第一歩となる、関係各国に約束した2億ドルの資金援助についてこれを撤回するつもりは無いと語りました。

「脅迫の材料に人間の命を使う事は、許しがたいテロ行為であり、私は心底憤っています。」
安倍首相は中東滞在の時間を短縮し、危機対応のため東京に戻りました。
「私は人質になった2人が無傷のまま直ちに解放されるよう、強く要求します。」

アメリカ合衆国報道官は火曜日、「これらの一般人と他の全ての人質を即時釈放するよう」を要求する声明を発表しました。
「アメリカ合衆国は、この問題において完全に日本を支援します。」

日本のニュース報道によれば、人質のうちのひとり、湯川さん(42歳)は妻を肺がんで亡くした後、心の隙間を埋めるべく戦争で国土をずたずたに引き裂かれたシリアに向かいました。
湯川さんは昨年8月、自らのウェブサイトでシリアのアレッポで作業服を着て突撃銃を発砲するシーンを公開しました。
そして8月ごろにブログで、これからシリアに向かうが詳しい場所を明かすことはできないと書き
「次に向かう場所は、これまでで最も危険である可能性があります。」

湯川さんが顔から血を流しながら地面に横たわっている動画が、彼を捕えたと思われる人間によってインターネット上で公開されました。

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もう一人の男性、後藤さん(47歳)は、交戦地帯や危機的状況にある場所の報道経験を持つフリージャーナリストです。
捕えられる前、後藤さんは移動中の詳しい様子を伝える数本の動画をオンライン上に投稿し、その中には英語で『シリア国境をめざすジャーナリスト後藤』というタイトルが付けられていました。

ツイッター・アカウントによると、後藤さんはトルコとの国境に近く、イスラム国武装勢力の包囲が続くシリアの都市コバーニ付近で、10月2にちシリア領内に入ったものと見られています。
ツイッターへの彼の最後の書き込みは、10月23日付になっています。

日本のメディアは20日、後藤さんが以前シリアで湯川さんに会ったことがあると伝えました。
後藤さんは日本国内にいる家族に、湯川さんを救出するためシリアに向かうつもりだと話していましたが、具体的にどうするかは明らかにしていませんでした。

http://www.nytimes.com/2015/01/21/world/middleeast/video-isis-japanese-hostages.html?_r=0
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この事件に関する記事は早い段階で各国のメディアに登場したのですが、事実を伝える速報であれば、国内報道の方が早く詳しいはずであり、それよりも世界全体を視野に入れた上で事件全体をどう理解すればいいのか、ニューヨークタイムズのマーティン・ファクラー氏とガーディアンのジャスティン・マッカリー氏、そしてエコノミスト誌の記事を読みたいと思って待っていました。
20日付でM.ファクラー氏、23日付でJ.マッカリー氏の記事が掲載されましたので、ご紹介させていただきます。

事件の推移は予断を許しませんが、安倍首相?あるいは外務省?の洞察力の無さには憮然たらざるを得ません。
シャルリーエブド事件直後に、アラブ世界の紛争に日本も進んで手を突っ込むぞと大見得を切った挙句の事件発生でした。
2億ドル規模の『援助』であれば、外務省の事務方の交渉で終わらせればよかったものを、と悔やまれます。

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【 虐殺を逃れて - 民族差別が行き着いたところ 】

アメリカNBCニュース 9月24日
(再掲載・掲載されている写真をクリックして大きな画像をご覧ください)

クルド 1
自分たちの故郷だった場所で勢力を拡大しているイスラム国の攻撃を逃れ、何千何万というシリア人が国境を越えてトルコ領内へ逃げ込み、難民センターはたちまち満杯になってしまいました。
ロイター通信によるとイスラム国はシリア北部で100個所以上の村を占領したため、難民の世話をしている担当者は138,000人の難民がトルコ領内に逃げ込んできたと語りました。

9月23日、トルコ領内に避難した後、トルコの警察官の姿を見て怯えて泣き叫ぶクルド人の少女。(写真上)

9月23日、以下の写真はいずれも国境を越えトルコ領内に避難するシリアのクルドの人々。

クルド 2
クルド 3
クルド 4
クルド 5
クルド 6

http://www.nbcnews.com/storyline/isis-terror/misery-border-syrian-kurds-flee-turkey-n210556





 

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