ホーム » エッセイ » 【 ヒロシマからフクシマへ、終わらない放射線への恐怖 】
日本政府が隠蔽を繰り返したため、数値の把握が滅茶苦茶
「福島第一原発の事故による健康被害に関するデータは貧弱すぎる上、脈絡も無く分散させられている」
アンドリュー・レヴキン / ニューヨークタイムズ 3月10日
原子力の危険性の認識の歴史について、新たな見方を提供する、物理学者・歴史家であるスペンサー・ワート執筆の『湧き上がる原子力の恐怖』が4月に出版されます。この本は彼が1988年に発表した『原子力の恐怖 : 映像の歴史』を土台とした作品です。
執筆者のワートは『ドット・アース』の常連執筆者として知られ、この100年間の地球温暖化について詳述した邦題『温暖化の警告とは何か?』などの著作があります。
巨大地震と巨大津波が東日本に壊滅的被害を与え、福島第一原発において 深刻な事故を引き起こしてから一年が経過し、世界は再び日本に注目しています。
しかし日本は放射線が環境を破壊している問題よりも、経済問題と人々が受けた心理的な影響の方に目が行っており、私はワートにこの点について徹底して検証してもらうことにしました。
ここにスペンサー・ワートの『あなたの関心事』という原子力の恐怖に関するルーツになったエッセイがありますが、福島第一原発の大惨事により再び注目を集めています。
福島第一原発の大惨事から1年が過ぎ、私たちは人々の健康被害と精神的に及ぼす影響に関する調査を開始することができるようになりました。
ただ奇妙なことは、日本側の資料には心理的影響に関するものばかりが多いことです。
マシュー・ワルドが最近グリーンブログに掲載した記事の中で明らかにしたように、福島第一原発の事故によ る健康被害に関するデータは貧弱すぎるうえ、脈絡も無く分散させられているようです。
別の理論に基づけば、数十万人の市民が増え続ける放射線量のためにガン発症率が上がってしまっています。
しかしこれと対立する理論によれば、この程度の放射線量ではどんな種類のガンもほとんど増えない、としています。
科学者であっても、どちらが正しいのか明快な判断は難しいのです。
しかし心理的な影響は明らかになっています。
低レベル放射線による損傷を見つけ出すことが困難だからこそ、その放射線を浴び続ける人にとってははっきりしない不安にさいなまれることになります。
多くの人が自分たちの生活のすべてが汚染されたわけではない、と信じています。
しかし彼らは、先天性の欠陥を恐れて、子供を作りたがらない可能性があります。
そして彼らには、正体不明の接触伝染病のようなものを恐れる他の人々が、近づかなくなる可能性があります。
強制的な避難によって生じる数多くの不自由さに加え、人々は社会的孤立、不安、抑うつ、心身症、無謀な行動、自殺などの衝動に襲われるようになります。
1986年に発生したチェルノブイリ事故により、このような状況は25年たった今もウクライナの各地で続いています。
2005年に行われた大規模な調査は
「チェルノブイリ事故が引き起こした健康被害の中では、精神疾患が問題としては一番大きい」
と結論付けました。
ガンやその他の命に係わる疾患の発症原因を作る物質であっても、このような精神的に非常に危険な状態に人々を追いつめていくものは放射線以外には存在しません。
広範なエリアで、一度にたくさんの人々が同じ内臓疾患にかかる、などという事はまず起こりえません。全米科学アカデミーの調査研究によれば、石炭の燃焼によって排出される有害物質は、全米で1万人の人々の寿命を縮めていますが、全人口に占める割合は高いものではありません。
人間に心理的に多大な負担を強いるものは原子力による放射線以外には存在せず、このことは人間の歴史の中で異彩を放っています。
原子力が生む放射線の不気味な危険性は、1930年代にすでにサイエンス・フィクションの中に描かれていました。
映画の中にもボリス・カーロフが主演した『見えない恐怖』の中で、放射線により次第に発狂する科学者の様 子が描かれています。
原爆を投下された後の広島と長崎の惨状のイメージについては、巨大な昆虫やその他の恐怖を描き出す映画を多数生みだしました。
観客は放射線を浴びればこうした生物が誕生する可能性が現実にあるかのように想像し、恐怖に震えていました。
確かに原子力が生み出す放射線には、恩恵もありました。すでに1950年代には放射線治療が実用化され、多数の人々が命を救われています。
しかし、冷戦の恐怖がこのような「放射線の恩恵」を圧倒し去ることになりました。
繰り返された核爆弾の実験により放射性物質が世界中至る所に風によって運ばれて行き、人々に悲鳴を上げさせました。
核シェルターに関する議論は人々の脳裏に、死の灰によって地球が破滅するイメージを人々に想い起こさせずにはいませんでした。
要するに核戦争に対する恐怖は、放射線というものをこの地上で、唯一この地球を一気に死滅させられる存在であるとして人々に印象づけたのです。
冷戦の終了とともに、こうしたやみくもな恐怖というものは無くなりましたが、原子力による放射線が魔法のように汚染を拡散する力を持っている、という考えは根強く残っています。
テレビアニメの『シンプソン一家』の中に出てきた原子力発電所の排水が流れ込む海にいる目が三つある魚や、コンピューター・ゲームの『フォールアウト』に登場するよろよろ歩く恐ろしい化け物など。
もっと現実的なものでは、テロリストがあたり一帯に放射能汚染をまき散らす、汚染爆弾などもあります。
もちろん、誰かがもし大勢の人間にガンを発症させるテロを企画しているのであれば、核廃棄物をまき散らすよりもっと扱いやすい方法があります。
本当に恐ろしいのは、広範囲にわたり人々を避難させなければならなくなる放射性物質なのです。
その痕跡を丹念にたどり、広大な地域の除染を人々に強いるのが放射性物質です。
放射能への恐怖というものはその人自身が生み出すものであり、それがどれ程のものになるかはその人自身のイメージによって決まります。
私たちは放射能の脅威が、通常の化学物質と同じであると言っているのではありません。
工業技術は我々に生活するために不可欠な恩恵をものではあっても、一方ではその技術が生み出した汚染が人々の生命を脅かすこともあります。
私たちはもっと科学的に放射性物質と向き合う必要があります。
放射性物質については、水銀や発がん性のある煤煙と接するように、慎重に、しかし客観的にこれを取り扱うべきです。
正体不明の化け物を次々と生み出す、見えない恐怖として見ている間は、本質的な解決には結びつきません。
http://dotearth.blogs.nytimes.com/2012/03/10/nuclear-risk-and-fear-from-hiroshima-to-fukushima/?scp=4&sq=fukushima&st=cse#
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この原稿は訳し終えて、正直ご紹介する価値があるかどうか「ビミョーかな?」と思いました。
福島第一原発の事故を起こしたこの日本において、『科学的に放射性物質と向き合う』邪魔をしているのは日本政府そのものだからです。
少なくともこの原稿をお読みいただいている皆さんは、科学的に放射性物質と向き合う事の大切さは十分認識しておられます。
国連すら「日本政府の情報提供はあまりにひどすぎる」と言わざるを得ない状況故に、国民は福島第一原発がまき散らした放射性物質を『見えない恐怖として』とらえるほかないのです。
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【数々の料理と食材のヒップホップ】
アメリカCBSニュース 4月27日
こちらには特に解説らしい解説もありません。
ご覧いただいた通りの内容です。
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【赤ちゃんどうしの熾烈な?戦い】
アメリカCBSニュース 4月30日
こちらも同様。
解説よりご覧いただいた方が…
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