ホーム » エッセイ » 新型コロナウイルス:有効な漢方薬はあるのか?
新型コロナウイルスとの戦いの最前線医療現場、そこで使われている漢方薬とは?その目的は?
鍵となるのはやはり自己免疫力の強化
ベッツィー・ジョレス / ドイチェ・ヴェレ 2020年2月11日
中国が新型コロナウイルスの治療法を見つけるために懸命の取り組みをしている中国では、一部の医師や医療関係者が中国の伝統的治療法である漢方薬に注目し、実践しています。
しかし、漢方薬だけを頼ることは危険だと警告する専門家もいます。
中国は新型コロナウイルスの治療法を確立しようとする懸命の取り組みの中で、伝統的な漢方薬による治療を見直しています。
WeChat(微信)で一般公開されている医療ニュースのアカウントの最近の記事の中で、河南省の郡レベルの病院院長の唐英医師は、漢方薬を投与することで医師が新型コロナウイルスに感染しないように予防する方法を説明しています。
患者と直接接触しない管理スタッフは、甘草と乾姜を成分とする薬湯を摂取しています。
内科で直接患者の治療にあたる医師には桂枝に茯苓、そして白朮を加えた漢方薬を服用させ、脾臓機能の強化によって免疫機能を活性化させることを目的としています。
「今回は新型コロナウイルスとの戦いの場の最前線で、漢方薬の存在は不可欠です。」
唐医師はこう書いています。
唐医師の伝統的なアプローチは、新型コロナウイルスへの感染患者の治療を行うための中国政府の推奨事項に沿ったものです。
先週、国民健康委員会が発表したアドバイスには、伝統的な漢方処方に西洋薬を加えて投与するという内容が含まれています。
中国中央部の武漢で最初に確認されたこの病気の治療法はいまだわからない状態であり、感染者は世界の25カ国に広がっています。
万能の解決策というものがないことから、一部の医師と医療関係者が伝統的な中医学に目を向けることになり、漢方治療の有効性と安全性に関する議論が活発化することになったのです。
▽ 漢方薬は効果を発揮しますか?
「1種類の薬が効いたことで特定された病気の正体、そして私たちの経験の中からで特定された病気の正体との間にはある種の緊張関係があります。」
北京市内での漢方医として開業しているシェリー・オークス医師がドイチェ・ヴェレの取材にこう答えました。
たオークス氏は中国中医科学院で博士号を取得、漢方医として訓練を積んだ専門家は、病気の特定方法、戦い方、そして予防方法に関し、様々な可能性について検討しなければならないと語りましたた。
「私たちは、その人が示す症状をターゲットにしていますし、発症傾向全体もターゲットにしています。」
中国健康委員会は2003年のSARSの大流行の際、ステロイド剤を投与された患者が副作用により骨質劣化の症状を現したことから、伝統医学療法である漢方治療を推奨しています。
中国国務院情報局によればこうした取り組みは、2020年に4,330億ドルの売り上げを達成すると期待されている漢方医療の治験例を増やし、世界規模で漢方治療の普及を図ろうとしている中国政府の推進政策に沿ったものであるという側面も持っています。
しかしヨーロッパの医療専門家の中には、漢方治療に使用される成分について規制や検査体制に不備があると主張し、漢方治療を大々的に復活させようとする中国の意図に疑問を呈しています。
昨年、WHOが医療行為の規範とする文書に漢方医療に関するセクションを追加ましたが、欧州医学アカデミー連盟と欧州アカデミー科学諮問委員会の2つのヨーロッパの専門家グループは、WHOに対し再考を促す共同声明を発表しました。
▽ 西洋の懐疑論
「ある程度の基準はあると理解しているが、多国間での比較を可能にするためのデータ収集を共通化するための国際基準はなく、治療介入の有効性を検証したり、安全性を確認するための共通の基準も存在しない。」
共同声明はこう述べています。
漢方薬に使われる成分を活用しようとしているの中国保健委員会の勧告は、コロナウイルスの感染拡大が続く中、誤った情報と未検証の治療法が広まっていた時点で行われました。
WHOは、オンラインで広まったニンニクやゴマ油が新型コロナウイルスに対し予防効果があると主張する偽情報を一掃しようとしました。
オックスフォード大学の薬理学部のミン・レイ(Ming Lei)教授はその専門分野において、漢方薬の成分の有効性について新薬の原料としても使われていることから、漢方治療の有効性は広く認識されていると語った。
しかし新型コロナウイルスの治療については、治験は始まったばかりであり、漢方薬を活用した新しい治療薬を現段階で開発することは夢物語だと語りました。
「治療に有効な成分はあるかもしれませんが、治療薬の開発には長い時間がかかります。」
レイ教授はこう語りました。
一方、中国はアメリカの製薬会社キリアド・サイエンシズが製造する抗ウイルス薬であるレムデシビルの治験を開始しました。
治療薬としての使用はまだ承認されていませんが、肯定的な結果が出ています。
▽ 新薬と漢方薬の併用に可能性
専門家は、漢方薬と新薬の抗ウイルス薬を併用することが成功の秘訣になるかもしれないと語っています。
オークス医師は中医学(漢方治療)と西洋医学のアプローチは異なるものの、漢方薬と新薬が並用されることは珍しいことではないと述べました。
中医学はすでに中国の多くの公立病院で併用されており、中国の漢方専門医は西洋医学の訓練を受けています。
決定的な治療法がまだないことを考えると、オークス医師は重症度に応じてコ新型ロナウイルスの治療のためのより良い選択肢として、新薬と漢方薬の併用を考えています。
オークス医師は自分の家族の健康維持のため、漢方薬を積極的に活用しています。
家族はカリンのジュースを飲んで肺を潤し、お粥を常食して消化器系を健康に保ち、風邪のひき始めには免疫機能をサポートする玉屏風散(ぎょくへいふうさん)を服用しています。
しかしオークス医師は治験例は個別の症例の積み重ねであり、新型コロナウィルスとその症状についてはさらに詳しく検証していかなければならないと語りました。
「病状がどのように変化していくのかを詳細に検証し考慮しなければなりません。」
中医学(漢方治療)を専門とすることは、新薬の分野から生まれた成果を無視するということではありません。
「そんなことをすれば、自分の患者を害することになりかねません。」
https://www.dw.com/en/coronavirus-can-traditional-chinese-medicine-help-fight-the-disease/a-52337292
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第二パラグラフに出てくる漢方薬、『苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)』という処方で日本国内でも一般に販売されており、薬局薬店で購入することができます。
しかし漢方薬はビタミン・ミネラルが十分足りている体でないと効きにくい、という特徴があるようです。
漢方薬というのは大雑把に言えば個々の症状に対する対症療法を提供するのではなく、病気の原因はバランスの崩れによって生じたと考え、そのバランス補正をするものであり、バランス補正には十分なビタミン・ミネラル補給が不可欠だからです。
そしてウィルスの感染予防の大原則は自己免疫機能の強化。
この点が一番大切なところだということを忘れないようにしたいものです。
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