ホーム » エッセイ » 「年内終息などあり得ない」新型コロナウイルス:英国の専門家
この夏は第二波を防ぐための「重要な段階」、万全の対策を実施すべきだ
たとえワクチンや優れた治療法が開発されても、これから何十年も人類は新型コロナウイルスの感染が続く世界で生きていく
英国BBC 2020年7月21日
人類は今後何年もの間新型コロナウイルスが感染拡大する空間で生活することになり、たとえワクチンが開発されても完全に排除することはできそうにもないと英国の専門家が警告しています。
ウェルカム・トラストのディレクターであるジェレミー・ファラー教授は英国下院の健康委員会の席上「クリスマスまでの収束はあり得ない」と語りました。
そしてさらに次のようにつけ加えました。
これから「数十年」もの間、人類は新型コロナウイルスが感染を広げる空間の中で生きていくことになるだろう…。
それは英国のジョンソン首相が先週、社会生活がクリスマスまでに正常に戻ることを望むと語った後のことでした。
ボリス・ジョンソン英国首相は、7月後半に主なレジャー施設と屋内スイミングプールの営業を開始し、さらに秋には大規模集会を許可するなど、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて行なわれている各種の制限を一層緩和する計画を立てているとコメントしました。
しかし超党派の国会議員グループに検証結果報告書を提出した専門家は、新型コロナウイルスが感染を広げている現実を理解することが重要であると述べました。
政府の諮問機関であるSAGEのメンバーであるサー・ジェレミー教授は、世界は「これから何年も何年も」新型コロナウイルスCovid-19とともに生きていくことになるだろうと語りました。
「クリスマスまでに収束することはありません。新型コロナウイルスは今や人類規模の感染症なのです。」
「現実問題としてワクチンや非常に優れた治療法が開発されても、これから何年も何年も、何十年もの間、人類は新型コロナウイルスの感染が続く世界で生きていくことになるでしょう。」
ジェレミー教授はこの夏の間は決して油断すべきではなく、この期間は第二波を防ぐための「重要な段階」として備えを行うべきだと語りました。
「『感染拡大のピークは去った』などという誤った安心感にとらわれてしまったら、間違いなく第2波の感染拡大を招き、あっという間に再び悲惨な状況に陥ることになるでしょう。」
彼は検査体制をさらに拡充すること、そして治療方法ならびにワクチン開発に十分な投資を行うことが重要であると述べました。
▽ ワクチンに「持続的効果を期待できる可能性は低い」
オックスフォード大学のジョン・ベル教授は、7月20日月曜日に発表されたオックスフォード大学による臨床試験において、ワクチン開発の重要なステップである抗体反応を確認したという肯定的なニュースにもかかわらず、新型コロナウイルスCovid-19が駆逐される可能性は極めて低いと考えています。
「現実問題としてこの病原体は永遠に人類社会にとどまり、消え去る可能性は無いと言わなければなりません。」
ベル教授は議員のグループにこう報告しました。
「たとえば、ポリオ・ウィルスを撲滅するのに人類がどれほどの困難を抱えているかを考えてみてください。その撲滅プログラムは15年間続いていますが、それでもまだ結果は得られていません。」
「それを考えれば、新型コロナウイルスも増えたり減ったりしながら、その多くが冬場に再び活発に活動することになるでしょう。」
「ワクチンの多くは長期間持続する効果を持つことはありません。そのため私たちは継続的にワクチン接種を繰り返していくことになるでしょう。病気の種類が増えれば増えるほど接種するワクチンの種類も増え、さらにまた別の病気が現れるということが
繰り返されることになるでしょう。
「ですから人類社会から新型コロナウイルスを駆逐するという考え方は現実的ではありません。」
▽ 首席顧問は政府の対応を擁護
政府の主任医療アドバイザーであるクリス・ウィッティー教授は、新型コロナウイルスに対するこれまでの英国が行ってきた対策の成果について国会議員から詳細な質問を受けました。
教授は3月にウイルスを封じ込めようとするそれまでの取り組みを終わらせた英国政府の対応を擁護し、担当大臣がロックダウンを発動したタイミングは遅すぎたとの非難に対し大臣の行動を擁護しました。
3月16日の時点で大規模感染の規模とそれがいかに急速に拡大するかをモデリングした重要証拠がジョンソン政権の閣僚に提出されましたが、完全な封鎖が発表されたのは丸々一週間が過ぎてからのことでした。
ウィッティー教授は、決定の『影響力の大きさ』を考えると『大きな遅れ』という指摘はあたらないと述べました。
教授はさらに適切なタイミングで学校の閉鎖を含む他の措置がとられていたと指摘しました。
一方、マットハンコック保健長官は、感染検査に関する政府のこれまでの対応、そして4月末までに1日あたり10万件の検査を可能にする目標を設定した自身の判断が正しかったとしています。
しかしその対応については、恣意的であるとして批判する人々もいます。
これに対しハンコック長官は、健康委員会の後継機関として設置された科学技術委員会のメンバーに対し、これまでにないスピードで検査体制を「スケールアップ」する必要性を認識することが重要であると語りました。
「すべての資源を活用し、政府機関は最大限の、そして国民一人一人は少し努力をして、遠大で大胆で思い切った、そして私たちが目指すべき体制を実現させるべきです。」
英国コロナウイルス統計(7月21日午後5時時点):
45,422人が病院、介護施設等で死亡、感染者数は前日から110人増加しました。
英国の統計機関は異なった数字を公表、新型コロナウイルスCovid-19が主な死亡原因だと証明書に記載されている死者は56,100人であるとしています。
20日午前9時から21日午前9時までの24時間に、新たに445のラボで確認された症例がありました。
全体的に、発生が始まって以来、合計295,817例が確認されています
https://www.bbc.com/news/uk-53488142
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このところどのニュースサイトを見ても、新型コロナウイルスに関する報道が多くを占め、読んでいても正直面白くありません。
当然ながら翻訳する意欲も減退するばかりです。
しかし根拠のない楽観論も一部に根強く、それらが大規模イベント開催要求等につながっているのを見ると、要所要所での確認は必要かもしれません。
私が大きな問題だと思うのは、何と言っても生活困窮者の急増です。
ただでさえ新型コロナの感染拡大と一向に梅雨明けしそうにない気候によって閉塞感ばかりが増していく中、「暮らしていけいない!」と悲鳴を上げている人々が急増している。
これほど気が滅入る問題はありません。
新型コロナ感染拡大以前から日本の社会では格差の拡大が問題になっていました。
新たな危機発生によって最も追い詰められることになったのが、結局は弱者であったことに暗然とならざるを得ません。
こうした事態に日本の権力機構はまたまた機能停止も同然の有様です。
その構成員は公務員であり、彼らは目下のところ生活苦とは無縁であるはず。
だから - 危機感を肌で感じられない - 対応が後手後手だというのなら、本当に許せない話です。
私たちはもっともっと怒りを形にしていくべきではないでしょうか?
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