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【 フクシマvs. チェルノブイリ・生き物たちは今、どうなっている? 】

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所要時間 約 10分

生きていくのに、ふさわしくない場所はどちらなのか?

レイチェル・ヌーワー / ニューヨークタイムズ 7月12日


小鳥たち、そして蝶やミツバチにとって、命をつないでいくために、よりふさわしくない場所はどちらでしょうか?
フクシマ?それとも、チェルノブイリ?
片方は一年以上前に、放射性物質の放出の危険が続く、日本の被災地・福島。
もう一方は四半世紀前に発生した事故により環境中の汚染物質の蓄積が続き、突然変異の脅威にさらされている、ウクライナ共和国のチェルノブイリ事故の被災地です。

研究者は放射性物質があたり一面を覆い尽くしている、この二つの場所のどちらがそこで暮らす生物にとって危険なのか、あるいは危険性は同程度なのか、調査を行うことにしました。


「環境中に大量の放射性物質をまき散らした、という点において、チェルノブイリと福島第一原発の事故は類似しています。」
コロンビアのサウスカロライナ大学の生物学者、ティモシー・ムーソー教授が語りました。
「違っているのは以下の点です。福島の方は最初の爆発により放出された、半減期の短い放射性物質が現在はまだ環境中に大量に残っています。一方事故発生から26年が経過したチェルノブイリでは、そうした半減期の短い放射性物質はほぼ消失したと見られ、かわりに数世代にまたがる放射線被ばくによる慢性的な影響が見られます。」


これまでの研究は動物たちや植物について、原子力事故による放射線被ばくが引き起こす遺伝子の損傷、あるいは成長過程における影響について検証してきました。
しかし、ある特定の場所にいるひとつの種全体の数がどのように変化するか、という研究は行われてきませんでした。
そこでムーソー教授と彼の研究チームは、鳥類、昆虫、そしてクモの生息数について、事故直後の放射線被ばくと長期にわたる突然変異の繰り返し、そのどちらが種全体の生息数に悪影響を与えるか、調査することを決めたのです。

彼らの研究結果は、刊行された『環境指標』ジャーナルに掲載されていますが、1,198種のクモ、バッタ、トンボ、蝶、蜂、セミ、そして鳥類の生息数の変化について、チェルノブイリと福島の比較を行いました。この過程で彼らはこうした生物の生息数に影響を与える可能性のある、天候、雨量、土壌の質などについて、統計学的な調整も行いました。

調査の結果、福島では放射線量の増加と反比例して、鳥類、蝶、セミの生息数が著しく減少していることが明らかになりました。
蜂、トンボ、バッタの生息数には、放射性物質量の増大による影響は認められませんでした。
一方驚いたことに、クモは多くの種で、放射性物質の拡散とともにその生息数が増加していたのです。


この結果についてはおそらく、放射線量の高い場所ではクモがエサにしている昆虫類が弱ってしまい、捕食されやすくなったせいではないか、と研究者たちは見ています。そしてクモが初期の放射能汚染に対しては、耐性があることもわかりました。
しかし長期的に見れば、クモ、蜂、トンボ、バッタも、その生息数は減少するものと見られています。

チェルノブイリでは、環境中の放射線量の増加により、すべての生物の生息数が減少しました。
ただし、セミはチェルノブイリ付近には生息しておらず、この比較だけは不可能です。
「この結果は、放射線被ばくの直接被害、そして世代交代の際に繰り返された突然変異、その組み合わせによりもたらされたものと考えられます。」
ムーソー博士がこう語りました。

福島では事故以降、多い生物で2~3の世代交代が行われただけです。このため大型の動物では、はっきりした突然変異例はまだ確認されていません。

しかし昆虫のような小さな生き物の中では、すでに突然変異は始まっています。


ムーソー博士たちが先にチェルノブイリで行った調査では、小動物、爬虫類、両生類の生息数が放射能汚染によって受ける影響は、似たような経過をたどることが明らかになっています。
立ち入り禁止(避難指定)地域の中にある比較的汚染が軽度な場所では、これらの生物も生存できるかもしれないものの、高濃度の汚染地域では、これらの姿はほとんど見ることができない、と博士が語りました。
「全体的には、チェルノブイリ付近の立ち入り禁止(避難指定)地域で動物たちの数が増えている、などいう話はたわごとに過ぎません。」
ムーソー博士はチェルノブイリの立ち入り禁止区域が、大きな野生動物保護区の中にある、という事実に言及しながら、こう語りました。
「若干ですが、放射性物質が存在する環境中の中で、突然変異が起きないように、その生物メカニズムを進化させた生物がいる、ということが証明されています。しかし、ほとんどの生物では、そうはいきませんでした。」

チェルノブイリの汚染区域も、福島の汚染区域も、数年間はその地の生物にとって、生存可能な場所にはなりそうにありません。
たとえばチェルノブイリでは、環境中のプルトニウムが崩壊して、アメリシウム-241に変化しています。アメリシウム-241は生物の体内で高い毒性を示しますが、環境中のアメリシウム-241の量は増加を続けているのです。
いったん土壌の中に浸透していったセシウムなどの放射性物質も、植物の成長や受粉などにより、土壌の表面付近を行ったり来たりすることになります。


そしてプルトニウムの半減期は24,000年です。
「こうした放射性物質は、実に長い間、環境中に留まり続けるのです。森や草原が『危険ではない』場所に戻るまでには、数百年、数千年単位の時間がかかるのです。」

ムーソー博士と共同研究者たちは、今後生物の生息数がどのように変化していくか、チェルノブイリと福島の両方で、同時進行で調査を続けていくことにしています。

原子力発電所災害の影響を正しく評価するため、チェルノブイリと福島を対象に、さらに詳細な調査・研究を続けていくことが必要である、とムーソー博士は考えています。
それによって得られた情報があって初めて、政策決定者が原子力発電所の持つ潜在的な危険性について評価することができるからです。
「今、重要なことは、生物の生息数の変化と、放射線被ばくが続くことにより、それぞれの種が長期に渡ってどのように変化していくのか、調査を継続していくことなのです。」

http://green.blogs.nytimes.com/2012/07/12/fukushima-vs-chernobyl-how-have-animals-fared/
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先週20日金曜日夜、NHK仙台が制作した「今、チェルノブイリはどうなっている?!」という番組が放映されました。
やはり低線量の放射線被ばくに関しては、国際的に論争が続いており、『科学的な』結論は出ていない、と伝えていました。
中で印象的だったのが、ウクライナの現地で一生懸命治療に取り組む医師たち、そして対照的にIAEAやWHOなどの『国際機関』の及び腰の態度でした。
結論が出そうにもない今、現場で治療にあたっている医師たちの意見こそ、まずは尊重されるべきではないか、というのが見終わっての感想でした。

番組の中、日本政府の○○委員会の席上、大学の名誉教授である幹部委員が、若い研究者に向かって
「科学的な説明をしろ。」
と言っている場面がありました。
現地で様々な疾病や将来への不安に苛まれる人々へ目を向けることの、どこが『非科学的』なのか、説明させたい衝動に駆られました。
チェルノブイリやフクシマの現場に行って、人々の不安に耳を傾けることも無く、思いをはせることも無く、おのれの地位ばかりが価値があるかのように振る舞う、この手の『有識者』が、この日本にはなんと多いことか!
そしてそんな人間を並べた『委員会』が、この国の行方を決めてしまう、その危うさ。

日本においては、『第三者委員会』も、『外部の有識者』も、『人間として当たり前の良心』を持っているのかどうか、まずは疑ってかからなければならない、それが厳しい現実のようです。

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【シリア政府軍、経済都市アレッポへの空爆を開始】
アメリカNBCニュース 7月24日

24日、シリア政府軍はヘリコプターによる経済的に重要な都市、アレッポへの空爆を開始した。



空爆の知らせに、飛び出していく反政府軍の兵士









 

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