ホーム » エッセイ » インドの反原発デモ、参加者一名射殺される[米国NBC]
ここでも、従来通りの平和な暮らしを続けたいという、力無き人々の願いが踏みにじられている
S.ムラリ / ロイター通信 / アメリカNBCニュース 9月10日
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インド・チェンナイ
インド南部で10日、国内最大規模の原子力発電所建設に反対するため、高速道路の封鎖を行っていたデモ隊に対して警官隊が発砲し、デモに参加していた漁師一名が死亡しました。
この発電所建設に対しては数カ月間反対運動が続いていますが、数週間のうちには稼働が開始される予定です。
デモ隊は警官隊の列に投石を繰り返し、鉄道線路の封鎖も行っていたと、警察関係者がロイター通信に語りました。
警官隊は空に向けて威嚇射撃を行いましたが、参加者一名が射殺されました。
また、デモ隊の一部は地元自治体の事務所に放火しました。
当初警官隊はタミル地方のクダンクラム原子力発電所付近の海岸にいた、数千人のデモ隊に対しては催涙ガスを使っていました。
女性と子供を中心にした約4,000人のデモ隊は付近の漁村からやってきて、原子力発電所から約1.5キロほどの海岸で、放射能汚染の脅威に対し抗議していました。
しかし警官隊が迫ってくると、数百人の人々は海の中に入ったり、漁船に乗って逃げようとしました。
海岸に残ったデモ隊は警官隊に対し石などを投げつけ、双方に負傷者が出ました。
クダンクラム原子力発電所は数週間のうちに稼働開始の予定ですが、2ギガワットの電力を供給する予定です。この電力は数百万戸の家庭の需要を満たし、電力不足が続いているタミル地方の状況を緩和することになるでしょう。
インド国内ではさらに原子力発電所の建設が予定されています。
先月インドの原子力規制当局はクダンクラム原子力発電所の2基の原子炉のうちの1基に燃料の装填を許可しました。これでいつでも発電を開始できる状態になりました。
インドでは増え続ける需要に電力の供給が追い付かず、ピーク時には12%の電力不足が発生し、経済に悪影響が出ていました。
この夏には送電網の問題から2日間連続で、世界最大規模の停電が発生してしまいました。
1988年に建設が始まったロシア製のクダンクラム原子力発電所は昨年操業を開始する予定でしたが、3月に巨大地震と巨大津波がきっかけとなり、3基の原子炉がメルトダウンを引き起こし、大量の放射性物質が環境中に放出され、数万人が避難に追い込まれた日本の福島第一原発の事故を見た反対派の人々が施設の包囲を続けてきました。
反対派の人々はこの場所が2004年のインド洋の大津波に襲われていることから、福島と同様の事故が発生することを恐れているのです。
インドの内務大臣は、複数の外国のNGOグループが反対派の後押しをしているとして非難しました。
「我々は一部の国々のNGO団体が、この問題に干渉していることを懸念しています。国名を名指しすることはしませんが、内容はすでに把握済みです。」
インドのスシルクマール・シンデ内務大臣は記者団に対し、こう語りました。
今年始め発行されたサイエンス・マガジンに掲載されたインタビューの中で、マンモハン・シン首相も、反対派に対して資金提供を行っているとしてNGOを非難しました。
インドは、2032年までに30台の原子炉を建設し、63ギガワットの原子力発電を行う予定です。
しかしその割合は、国内電力需要の3%未満です。
インドが発電手段の開発の中心に据えているのは石炭による超臨界発電で、すでに国内需要の60%を占めています。
環境問題と誤った対応により、この分野においても進展が遅れ、経済の成長に悪影響を与えました。
インドの中央部にある石炭資源がある場所でも、ヒマラヤの水力発電開発でも、地元の種族の抵抗がありました。
(追補 : ニューデリーのアニー・バナージ、編集 : フランク・ジャック・ダニエル、ニック・マックフィー、ジェーン・メリマン)
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