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【大阪市長の急進的な呼びかけ、疲れてしまった日本人の心をとらえる〈後編〉】[ニューヨーク・タイムズ]

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所要時間 約 9分

小泉前首相をしのぐポピュリスト、そして『決断の人』

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 2012年9月27日
※この記事の印刷版は、28日付のニューヨーク版に掲載されました。


橋下氏の支持者は橋下氏自身、2000年代初頭に経済の自由化を主唱し、根本改革を行うとして大衆向けのパフォーマンスを行った、テレビ向きの小泉純一郎首相のパターンを追い始めている、と語りました。

橋下氏のやり方は小泉元首相のホピュリスト・スタイルをしのぐものがあります。
橋下氏は「責任は私がとる」という即決スタイルをとりますが、合意形成を旨とし、練り上げられた政策ですらそれが無ければ実現しない日本社会では珍しいものです。
日本では首都のメイン空港の処理能力を拡大するにも、数十年という月日がかかりました。
橋下氏はさらに、「敵を作らない」ことを信条する日本の政界において、あえてそのことに挑戦しています。
彼は最近、国民一般に対する『受け』をよくするため、橋下氏の運動に加わろうとした6名ほどの国会議員に対し、審査団を前に離党する権利に関する議論を行い、その結果既成政党から離党させました。
橋本氏の主張のある部分は、彼の特殊な出身が背景になっています。
彼はヤクザの父親を持つ弁護士であり、中世以来「部落民」と呼ばれ、未だに差別問題と向き合わなければならない人々が暮らす、大阪市内の地区の出身です(橋下氏自身は自分がその階級に属するのかどうか判然としない、と語っています)。

彼はまた1990年代初頭のバブル崩壊の後成年に達した『失われた世代』の中から初めて政治家になった人間の一人であり、政治の世界、ビジネスの世界で若い人々の台頭を許さない仕組みを破壊することを訴え、都市部における若い有権者たちの心を捉えました。
「利益団体の要求に対し、はっきりノーと言える、そして国全体のための決断ができる政治家が日本には必要なのです。」
最近の記者会見で、橋下氏はこう述べました。

彼は、いつもそうしているように、とある記者会見の求めを断りました。
彼はむしろツイッターで直接有権者にメッセージを送ることの方を好んでいるようです。
彼は日本で最もフォロワー数の多い政治家です。

彼の好戦的なスタイルは、記者会見の場でも際立っています。
ある全国紙の記者が質問に立った際、彼はその新聞が最近、第一面の記事の中で橋下氏に対し『独裁者』という名称を使ったとして、その新聞をしかりつけました。
「あなたは私を独裁者だと思いますか?」
彼はおどおどしながら愛想笑いを浮かべる記者に向け、答えを要求しました。
「ここは大阪なのです。私は有権者に約束した通りの事に取り組み続けるだけです。この点についてどう思っているか、有権者に尋ねてみてください。」

さらに橋下氏は謙虚さが評価される日本においては珍しいことに、しばしば自画自賛することをはばかりません。
大阪城など歴史ある都市でオートバイレースの開催の決定に関しては、迷っていた市職員を無視して決定したと橋下氏は記者団に語りました。

こうした決断力が900万人近い住民が暮らし、工場閉鎖による打撃が続く大阪での、彼の人気を不動のものにしました。
2008年、大阪市を含む大阪府の知事選挙で勝利を収めた後、彼は最も人気の高かった大阪府の予算を大幅に削減するという公約を実現するために、児童図書館の費用も含めた福祉予算も容赦なく削減したことで、多くの人々を驚かせました。
昨年の大阪市長選挙では、すべての大政党によって支持された現職の市長を破って当選したことで、これまで権力を握ってきた人々を再び唖然とさせたのです。

「橋下氏は既得権と戦い、無駄な出費を削減するというドラマを演じてみせることで、人々の期待を掴み取ったのです。」
大阪市立大学大学院教授砂原庸介(すなはら・ようすけ)氏がこう語りました。

福島第一原発の大災害が発生し、彼が国内の原子力発電所を再稼働する前に、原子力産業界から独立した、より透明性の高い監督・監査を行うよう要求した時、彼の評価はさらに上がりました。

砂原教授をはじめとする人々は、衝動的言動が目立つ橋下氏はさらなる衝撃的行動に走る可能性がある、と指摘しました。
彼の行動の中で最も論議の的となったのは、国家を謳わなかったことで教師を処罰した高校の校長を支持したことでした。
そして『ファシズム』をもじって、『橋イズム』すなわち『ハシズム』と揶揄されたのです。

彼はまた右翼的先導者と、とられかねない発言も行いました。
彼が率いる維新の会はこの国の平和憲法を改定し、今よりさらに大規模な軍備を行うように主張し、その是非を国民投票により決するべきだと求めていますが、この面での保守主義的傾向を隠そうともしません。
先月橋下氏は韓国政府に対し、第二次世界大戦中、日本帝国の軍隊が韓国人女性を従軍慰安婦、すなわち性的奴隷として扱ったという証拠を提示するよう要求しました。
この点において、戦前の日本の軍隊においてそうした事実はあったとする、日本政府の公式見解と決別したのです。

多くの大阪市民が、市政を着実に改革してくれる限り、橋下市長の過激発言のことはあまり気にしていない、と語りました。

「確かに橋下市長は素早い決断ができる政治家です。」
62歳のバスの運転手である本間亮一さんがこう語りました。
「大阪には決断力のあるリーダーが必要なのです。しかし国政のリーダーに求められるのは、それだけではないでしょう。」
〈完〉

http://www.nytimes.com/2012/09/28/world/asia/osaka-mayors-radical-message-has-broad-appeal-with-japanese.html?_r=1&pagewanted=all
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この【星の金貨】でも数多く記事をご紹介している英国のガーディアン紙が、以下のような指摘を行った事があるそうです。
「権力側にあまりに理不尽な仕打ちをされると、人間は最初は猛烈な怒りを感じる。しかしそれを繰り返されると怒りはやがて疲れやあきらめに変わり、従順な住民が出来上がる」。
これも広義の意味での『愚民化』政策でしょう。
日本の民主・自民の政治はまさに、それを狙っているのではないか、と思ってしまいます。

特に福島第一原発の事故後の民主・自民の政治は「あまりに理不尽」だと感じている方は、大勢いらっしゃるでしょう。
多くの人々が日本の政治の現実に幻滅し、選挙から足が遠のいてしまいました。
その結果どうなったでしょうか?
組織票が本来以上に力を発揮、国民ひとり一人の人間として当たり前のはずの意見が、通らない政治がまかり通るようになってしまいました。

その事に対する怒りを、時間の経過とともに疲れやあきらめに変えてしまわないよう、ツイッターやフェイスブックを活用するなどして、地道にこの日本を変える努力を、できるだけ多くの方々が続けてくださることを願ってやみません。

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『挑み続ける』パレスチナの車いすのフリーカメラマン

アメリカNBCニュース 10月1日


25歳のフリーカメラマン、モアメン・クレイキアは2008年、パレスチナ・ガザ地区の東部で写真撮影中に、イスラエル軍の空爆により両脚を失いました。
2人の子供の父親でもある彼は、障害者ではあってもカメラマンとしての仕事を続けるべく、あらゆる努力を惜しみません。

ガザ地区の自宅で娘を撮影するモアメン









 

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ほんとうの「今」を知りたくて、アメリカCNN、NBC、ABC、CBS、英国BBC、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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