【 アメリカの原発、次々と『前倒し』で廃炉へ 】
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10年、20年の単位で早まる、アメリカ国内原子力発電所の廃止
グレンS.K.ウィリアムズ / アメリカAOLエナジー 12月18日
アメリカが天然ガスとシェールガス開発に注目を続ける中、今や時代遅れとなった発電設備がゆっくりと退潮していくことに気づいた人は多くありませんでした。
今やアメリカにおいて、商業用の原子力発電所が事業を継続して行くことについては、その見通しは極めて難しいものになっています。
電力市場において、原子力発電に対する評価は厳しくなる一方です。
10年以上前、かなりの数の地方で、地域ごとに電力事業者から切り離した送電のための共同事業体(あるいは電力事業会社から独立した送電事業会社)を編成し、電気料金を市場原理により決定する仕組みを作りました。
今日アメリカ合衆国内では、この送電事業共同体と送電事業会社が併せて10社になり、卸売電力はオークションにかけられ、数分ごとに取引されています。
電力オークションは飽くまで電力の取り引きであり、発電所は関係ありません。
オークションに参加する企業は発電手段には関心はありません。気にしているのは入札価格だけです。
関心は最終落札価格に集中します。この価格がすべての参加企業に影響するからです。
落札価格が『市場決定価格』と呼ばれる理由がここにあります。
この市場決定価格と発電コストとの差額が、発電事業者の利益の総額になります。厳密には最終落札価格によって利益が決定するのであって、入札開始価格に含まれる売上総利益にはほとんど利益は設定されていません。
しかし発電コスト以外のすべての項目の収入は、発電事業者の固定費の償却に貢献します。
アメリカ国内にあるほとんどの原子力発電所は、たとえ『市場決定価格』が発電コストを下回ったとしても、様々な理由から『稼働させなければならない』発電所なのです。
最近では、いくつかの原子力発電所が採算割れするようになりました。
こうした原子力発電所では、関連事業によって赤字を補てんするか、内部留保を取り崩すかしか道は残されていません。
原子力発電事業の売上総利益も、必ずしも十分ではなくなってきました。
高騰し続けるあらゆるコストを負担しなければならない一方で、株主配当を行うための利益確保も必要です。
最近では原子力発電所は程々の利益を挙げてはいますが、必要とされるすべての費用を支払い、配当も行えるほどの利益は上げていません。
ドミニオン・リソース社の例を見て見ましょう。
最近同社は、所有するウィスコンシン州にある原子力発電所を、20年前倒しして閉鎖することを発表しました。
このウィスコンシン州ケワウニー原子力発電所について、同社は売却先を探していましたが、応じる社は一社もありませんでした。
ドミニオン・リソース社の競合各社はケワウニー原子力発電所の最近の財務内容について、おそらくは利益を上げられずにいたと見ています。
ケワウニー原子力発電所はネクストラ・エナジー社が所有するポイント・ビーチ原子力発電所のすくそばにありますが、二つの原子力発電所はほぼ同じ仕様を持ちながら、同じ市場で競合してきました。
こうしたことから、ポイント・ビーチ原子力発電所もいずれ、商業的に立ち行かなくなる可能性があります。
アメリカ国内には世界最大の数の原子力発電所がありますが、近接する原子力発電所同士同じような財政面での問題に直面しています。
エクセロン社は稼働中の10か所の原子力発電所、17基の原子炉を所有していますが、イリノイ、ペンシルヴェニア、ニュージャージーの3州に集中して立地しています。
いずれの原子力発電所も利益を上げることに四苦八苦しており、エクセロン社は株主に対し、いずれ配当金のカットに踏み切らざるを得ないと警告しています。
電力料金が旧来のままの州では状況は異なりますが、問題も残ります。
電力料金が旧来のままの州における状況は、はるかにましなものになっています。
電力需要は低下に向かっていますが、これらの州にある原子力発電所の財政状況に今のところ問題はありません。
旧来の電気料金体系によって守られています。
しかし、2か所の原子力発電所については、立地している州の規制当局の忍耐が切れかかっています。
ひとつはフロリダ州タンパ近くにあるデューク・エナジー社のクリスタル・リバー原子力発電所、もう一か所はカリフォルニア州南部にあるエジソン・インターナショナル社のサン・オノフル原子力発電所です。
いずれの発電所も予想をはるかに超えた高額なメンテナンス費用に、頭を抱えている状態です。
クリスタル・リバー原子力発電所にある原子炉格納容器の補修には20億ドル(1,600億円以上)を超える費用が見積もられていますが、州の規制当局はそれ程の費用をかける意味について疑問を持っています。
サン・オノフル原子力発電所も高額な費用を要する、予想外のメンテナンス問題に直面させられています。しかし同発電所が供給する2,350メガワットの電力が無くなると、カリフォルニア州は慢性的な電力不足に陥る可能性があります。
それでも、サン・オノフル原子力発電所の問題が明らかになった事により、原子力発電に反対する人々、そして政治家はこの問題に対する攻勢を強めています。
サン・オノフル原子力発電所は事業を継続することはできるかもしれませんが、早期の廃炉は免れないかもしれません。
エンタジー社は2つの州で同時に追いつめられています。
ヴァーモント州はヴァーモント・ヤンキー原子力発電所の廃止を20年早める様求めています。
同種の政治家と規制当局は、一日も早いヴァーモント・ヤンキー原子力発電所の操業停止を求めてあらゆる手段を講ずべく、奔走しています。
ニューヨーク州もインディアン・ポイント原子力発電所の廃止を、20年前倒しするよう求めています。同発電所がこれ以上操業を続けることを許さない決意です。
クォモ州知事は必要な電力はカナダからの輸入で十分賄うことが出来、供給の安定性も確保できるとの立場に立っています。
しかしその場合、ニューヨーク市に限っては現存の送電網だけでは実現が難しいため、全域に充分な電力供給を行うために、新たに送電網を整備する必要があります。
ニュージャージー規制当局は、エクセロン社のオイスター・クリーク原子力発電所の早期閉鎖について協議に入りました。
オイスター・クリーク原子力発電所は現在630メガワットの電力を供給していますが、2019年に10年前倒しで閉鎖される見通しです。
こうした動きは加速しています。2、3年かかるかもしれませんが、従来型の原子力発電所は計画を前倒しして閉鎖させられる圧力にさらされる見込みです。
電気料金の自由競争が起きている地域では、なおさらのことです。
いくつかの原子力発電所は、得られる利益を大幅に上回る管理費が必要となることを見て、運営企業も切り捨てるべき時が来たと判断することになるでしょう。
閉鎖されていく原子力発電に代わり、天然ガスがとって代わるかもしれません。
新開発のタービン技術、そして安い燃料経費により原子力発電に対する優位性を実現することになるでしょう。
しかし、天然ガスの価格が低廉なままであるのは、最新型原子炉の耐用年数と同じ60年間前後と見られています。
※ グレン・ウィリアムズは、20年間以上、原子力産業で働いてきました。
執筆の際、彼はいかなるエネルギー産業とも利害関係を持っていません。
http://energy.aol.com/2012/12/18/the-nation-s-nuclear-plants-are-nuked?icid=rfy/
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整理しましょう。
アメリカの多数の原発で『前倒し』の廃炉が検討され始めたのは、次の2つのケースにおいてです。
1. 経済的に採算が取れなくなったため、電力会社自ら撤退
2. 原発が立地している地方自治体が、廃炉の前倒しを要求している
日本では今回の衆議院議員選挙で、脱原発派は候補者の一本化ができなかった上、準備不足も重なり、ほとんど結果を出すことが出来ませんでした。
その大きな理由の一つが、大政党に有利な『小選挙区制』という制度です。
しかし、これから繰り返される地方自治体の首長選挙には『小選挙区』はありません。
私が住んでいる仙台市の市長は、同県内の女川原発について廃止に反対する発言を繰り返し行っています。女川原発を運営する東北電力の本社が、仙台市内にある事が影響しているものと考えられます。
その仙台市長選挙が来年行われます。
全国においても、これから首長選挙が繰り返されていくはずです。
今度こそ、脱原発を表明している『野党』各党は、国民の願いを『実現』させるための取り組みを、責任を持って行うべきです。
あなた方は今回の衆議院選挙において、現実世界におけるどんな『勢力』も作りだすことが出来なかった。
もう拙劣な作戦を繰り返している余裕は無いはずです。
理路整然と立派な主張をして、脱原発を支持する人たちからだけ喝采を浴びていても、現実がどんどん望まぬ方向に進むのではたまったものではありません。
とにかくまずは自分たちの党勢の立て直し、ではなく、国民の願いをきちんと現実にしていくための受け皿を、しっかり作り上げていただきたい。
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【 パワフルなクリスマス・ツリー 】
アメリカNBCニュース 12月20日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
14フィート(約4.2m)のクリスマス・ツリーは、シアトルのマグノリアにある平屋建ての屋根を突き破っているように見えます。
この家に住む建築家のパトリック・クルーガー氏は14フィートの樹を2本に切り分け、6フィートの上の部分を合板に据え付け、それを屋根にボルト止めすることにより、クリスマス・ツリーが屋根を突き破っているイリュージョンを制作しました。
マイノースウェスト・コムによると、クルーガー氏は、屋根が突き破られる際の物理的特性についてきちんと検証をした上で、このイリュージョンを制作したとのことです。
【 クリスマス・シーズンのアメリカの前庭の光景 】
アメリカNBCニュース 12月20日
ロス・アンジェルスの『キャンディ・ケーン』やメリーランド州ボルティモア『奇跡の34番街』など、アメリカの家庭の前庭が一番にぎわう季節がやって来ました。
http://kobajun.chips.jp/?p=7141