世界が見ている!【 原子力発電廃止の撤回に向かう日本 】
安倍政権の誕生に原子力ムラは『祭囃子』、活発化するその活動
そして人々の願いを、『失望の淵』に沈める新政権
ジョリアン・ライオール(東京)/ ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 12月27日
自民党が政権に返り咲いたことによる政策上の最初の犠牲者は、原子力発電の廃止方針という事になりそうです。
福島第一原発の事故を受けてなされた国民に対する約束は、財界寄りの政党には受け入れがたいもののようです。
世界史上2度目となった最悪の原子力発電所事故が発生してもうすぐ2年になりますが、首相官邸前で毎週金曜日の夜に行われている抗議行動は途切れることなく続けられています。
彼らの抗議行動のあり方は限りなく日本的です。
対決的姿勢を示す代わりに色とりどりに意匠を凝らし、挑発的である代わり礼儀正しくふるまっています。
ここに集まっている人々は福島第一原発という事故を体験した国のいたるところから集り、前政権が公約した2030年代に日本の原発をゼロにするという方針の維持を求めて運動を続けていますが、その願いが今、大きな失望の淵に投げ込まれようとしています。
12月16日に行われた国の総選挙のための運動期間中も自民党は、世界的にも問題となった福島第一原発の事故後になされた、数々の政策を見直す意向であることを明らかにしていました。
そして投票日の4日後には、安倍新首相が政権の閣僚の人選を進めている段階で、かつて国の規制当局との癒着について厳しく批判された原子力ムラの当の本人たちが、自民党に対してどんどんプレッシャーをかけ始めたのです。
「我々は長期的展望に立った、揺るぎの無い現実的なエネルギー政策を求めます。」
関西電力社の八木誠社長は大阪で記者にこう語りました。
日本第2の大都市圏であり、工業化の進んだ近畿地区に電力を供給する関西電力は、顧客の需要を満たすため原子力発電に最も依存する企業でもあります。
▽停電に敏感な日本
国内のすべての原子力発電所が福島第一原発の事故後いったんすべて停止してから数カ月後、夏の電力需要期のピーク時に、大阪で電力が不足し大規模停電が発生するのではないかという懸念が取りざたされるようになりました。
そうした事態はかろうじて避けることが出来ましたが、今年の夏が記録的な暑さとなるにおよび、懸念が再び取り上げられるようになったのです。
電気事業連合会の会長も務める関西電力の八木社長は、野田政権が打ち出した方針は矛盾しており、風力発電、潮力発電、地熱発電、太陽光発電などの再生可能エネルギーは原子力発電の代替手段にはなりえないと、批判を強めました。
解決を必要とする「問題が多すぎる」、八木社長はこのように語りました。
「2030年代の終わりまでにべての原子力発電所を廃止するというエネルギー戦略は、あまりにも多くの問題を引き起こすことになります。」
「我々は新政権に対し、見直すよう求めます。」
現時点で、日本国内で稼働可能な原子炉のうち、2基だけが稼働しています。
日本の真ん中にあるこの2つの原子炉、大飯原発1号機と2号機は、自然災害による原子力発電所事故の危険の大きさに目覚めた近隣住民や地震学者の懸念をよそに、2012年7月に再稼働されました。
この事態に喜んだ原子力産業界は、再稼働後この2基の原子炉は何の問題も無く運転を続けていると胸を張りました。
自民党の安倍総裁は12月26日、正式に日本の首相に就任し、新内閣を組織しました。
そして経済産業大臣に茂木敏充氏を起用し、日本の原子力産業界の運営方を任せました。
▽エネルギー政策の見直し
茂木氏は間髪を入れず、新政権のエネルギー政策についての考え方を明らかにしました。
就任したその日の記者会見で、原子力発電の廃止方針を見直すことを表明したのです。
「私たちは党の政権公約の中で、再生可能エネルギーを含む新エネルギー政策の策定を10年以内に行うとしています。その決定は早ければ早いほど良いと考えますが、この段階で再生可能エネルギーや化石燃料の割合まで決定するのは、時期尚早と考えています。」
安倍首相自身は就任後初の記者会見で、未だに昨年発生した福島第一原発の事故の惨禍の克服に苦しみ続ける人々の感情をなだめようと、国の原子力規制委員会などの国の機関に対し、国内の原子力発電所の安全確保については、最も『厳しい』基準で臨むよう求めると語りました。
しかし3年間の野党時代を経て、政権奪還のために大企業の全面的な協力を得て政権に返り咲いた自民党にとって、電力会社を始めとする財界の要求前に、多数の国民の願いを優先させることを期待すべきではないのかもしれません。
一方で自民党は、今回の選挙で原子力発電の継続を含む党の方針が支持されたというよりは、前の民主党政権に対する国民の大きな反発のおかげで選挙に勝利できたことを知悉しています。
12月上旬、日本の原子力規制委員会は、日本原子力発電が運営する敦賀原子力発電所の真下に、活断層が走っていると発表しました。日本の法律により、活断層であることが確認された場合には、同社は敦賀原発の廃棄要求されることなります。
声明において、日本原子力発電は原子力規制委員会の見解に真っ向から反対し、調査結果について「全く受け入れがたいものだ」との声明を発し、原子力規制委員会の調査とは別に、自社による再調査を実施することを明らかにしました。
http://www.dw.de/japan-likely-to-reverse-nuclear-energy-phase-out/a-16480631
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この記事が【星の金貨】、今年最後の新規掲載となります。
一年間おつき合いいただき、ありがとうございました。
2012年、最後の最後に、官邸前で抗議活動を続けて来られた方の願いが「大きな失望の淵に投げ込まれようと」しているという、厳しい現実に直面することになりました。
しかし日本では、「大勢の人々の」取り組みが始まってまだ2年。
ドイツが2022年までに全原発の廃止方針を打ち出すまでには、市民による長い間の抵抗運動がありました。
【星の金貨】の取り組みも、これからが正念場です。
市民の側には権力も無ければ、資金力も無い、まして記者会見を開くなど許されるはずもない。
だからこそ市民の側に立って物事を考え、発信することが大切なのだ、そう考える世界の一流メディアの報道の紹介を、2013年も続けていきます。
2013年は2012年同様月曜日を休刊日とし、1月1日から新規掲載を開始します。
どうか穏やかな、良い年末年始をお過ごしください。
最後に今年ご紹介した写真の中で、最も印象に残っている写真をもう一度ご紹介します。
5月28日戦没将兵追悼記念日、アフガニスタンで今年戦没した父親の墓標の前に座り込む少年、ワイアット・マケイン9歳。
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【 2012年 別れを告げていったひとびと 】
アメリカNBCニュース 12月28日
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【 2012年の印象的光景 】
アメリカNBCニュース
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
ハリケーン・サンディに襲われた直後、10月31日深夜のニューヨーク。ロワー・マンハッタン地区だけが停電している。
ビッグ・アップル(ニューヨークの別称)の上のビッグ・オレンジ。
この写真が撮影された5月4日は地球が太陽に一番接近する日であるため、独特の景色が現れる。
12月28日は満月の日。ニューヨーク、エンパイヤステート・ビルディング。
2013年新年のカウント・ダウンのリハーサル。12月29日ニューヨーク、タイムズスクエア。
暮れてゆく2012年。ドイツ、バンベルグのミカエルベルク大聖堂。12月29日。
地面からミミズをひっぱり出そうとするコマドリ。3月末、ウィスコンシン州で。
アフガニスタンの兵役から帰還した父親の腕を、両手で抱いたまま目を閉じる少女。
アリッサ・スミスの父親リチャードソンは12カ月に及ぶアフガニスタン駐留を終え、この日帰国した。
3月24日、アンカレッジ。
過積載。パキスタンの首都のイスラマバードの100マイル北西のマラカンド地区。小麦わらを積み過ぎてひっくり返ったトラック
をロープで引き起こそうとする人々。4月。
さくによじ登り、巣箱の中のシジュウカラをつかまえようとする猫。シジュウカラは無事、逃げのびることができた。
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