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日本を『原発ヅケ』にしたのは誰なのか?原子力ムラの司令塔、その意外な正体!〈第1回〉

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所要時間 約 8分

【日本のメディア王にして、日本の病根を作った男】
民主主義者を次々と葬り去った『辣腕の』男

エコノミスト 2012年12月22日

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エコノミストの日本支社は、世界最大の発行部数を誇る読売新聞社の本社ビルの中にあります。
訪れる人と会釈をかわす警備員、そしてしみひとつない制服に身を包んだ受付係がいる1階フロアに入ると、坊主頭のやせた、丸縁眼鏡をかけて新聞に見入っている、まるで鋭いくちばしを持っているような印象を受ける男のブロンズ像が目に入る事になります。

彼が正力松太郎です。
彼は1920年代に読売新聞社の経営権を得ると、それまで自由主義的であった読売新聞から左翼色を一掃し、戦闘的な右翼的新聞社へと変貌させたのです。
銅像だけ見ればジャガイモのような頭部、くちばしのような鼻を持った彼は、新聞を読むというよりは突いているように見えます。

正力は20世紀の日本の至る所に、その影響力を残しました。
その存在ほどには知られていませんが、正力氏は今日の日本のあり方を決定づけました。
彼はいくつもの点で、彼が認める数少ない西洋人の一人、アメリカの新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストにそっくりです。
誰よりも喧嘩っ早く、酷薄で、人に指図をしたがる、しかし明確なビジョンを持った『市民ケーン』だったのです。

読売新聞を買収する以前、正力は情け容赦ない日本の秘密警察部門の幹部でした。
後年彼は読売新聞を売るために、日本にプロ野球を紹介しました。
そして太平洋戦争の後、戦犯として収監されましたが、釈放されると日本テレビ放送網を設立しました。

さらに特筆すべきは、彼は日本の『原子力発電の父』である、ということです。

後に政府閣僚となった彼は、その政治的影響力、メディア王としての勢威を振い、世界唯一の被爆国をして世界有数の原子力発電推進国家にしてしまったのです。
彼が日本に残した遺産が今、福島第一原発で人知の及ばぬ不気味な胎動を続けているのです。

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精神の勝利

日本の歴史には、海外ではほとんど知られていない偉人たちが数多く登場します。
しかし日本人には共通して『謙譲』の文化があり、個人の功績は企業あるいは事業の陰に隠れ、表に現れる事は滅多にありません。
正力は違います。
彼が謙遜する事などありません。
彼の物語は冷酷な野心の物語です。
権力欲の権化、そう言って良いかのもしれません。

彼の権力志向は早くから明らかでした。
彼はまず、警察の権力機構の中でめきめき頭角を現しました。
1913年、28歳の時、彼は東京大学を卒業後すぐ、警視庁に入りました。
しかし当初は勉学よりも柔道に夢中であったようです。
警察の現場での仕事は社会的地位の高さは与えてくれませんでしたが、彼には合っていました。
1年後には彼は東京の都心、日本橋の警察署長に昇進しました。

当時の日本経済は好況にわいていました。
第一次世界大戦は、急激な近代化に邁進していた日本にとっては天の賜物でした。
日清・日露戦争での勝利、そして1910年の韓国併合、日本は帝国主義の強国に最後に仲間入りした国として得意の絶頂にありました。

1917年ロシア革命が起き、それに刺激され、日本国内でも選挙権を収入の多寡に関わらず、広く一般の人々にも認めるべきであるという議論が巻き起こりました。
こうした動きに、公安当局と貴族などの体制側は警戒感を強めていきました。

このとき正力は、当時自由主義陣営最大の牙城であった早稲田大学の学生たちの、民主化運動の弾圧を担当する事になりました。
正力は共産主義者のマッサージ師に成り済まして内部に潜入し、3人の急進的な教授を罠に陥れました。
今日に至っても尚、早稲田大学の左派の人々は正力を嫌悪し続けています。

1918年正力は明敏にも、自分の生まれ故郷の富山県で発生した米騒動の暴動が、やがて東京にも波及するであろうと予測しました。
彼は腰に下げたサーベルを鎖で繋いだままにして使う意志がない事を示した後、暴徒の中に分け入って行きました。
彼の頭めがけて石が投げつけられました。
彼が顔面を血だらけにしながら、群衆を沈静化させるべく説得を行った行動は、一見危険も顧みず職務に邁進する姿に映りました。
この時の様子について、1957年に正力の伝記『Shoriki 奇跡の日本人』を著したアメリカ人ジャーナリストのエドワード・ユーラン、ダナ・トーマスのふたりは(ただしこの伝記は別のゴーストライターにより、正力を聖人化するため編まれたものとみなされている)、
「指一本あげる事無く、殺気立った暴徒を解散させた。」と表現し、彼の生涯の中、「精神力の勝利」を達成した瞬間であったと記しました。

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しかし正力は聖人などではありませんでした。
世界で共産主義思想が世界に広がり、日本国内の朝鮮人の間で日本の支配に対する反植民地運動が盛り上がりを見せた1920年代、正力は警視庁の中で順調に昇進を重ね、実質的に秘密警察部門の責任者となりました。
彼は労働運動と朝鮮人に対する潜入捜査、そして『赤(共産主義)の脅威』一掃の統括責任者となったのです。
〈第2回・[徹底した大衆への迎合、そして洗脳]につづく〉

http://www.economist.com/news/christmas/21568589-media-mogul-whose-extraordinary-life-still-shapes-his-country-good-and-ill-japans
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今日から3回に分け、エコノミストに掲載された長い原稿をご紹介します。
その分量から言って、本来なら4〜5回に分けるべきでしたが、坂本龍馬や秋山好古ならいざ知らず、みなさんをこの人間に長くつきあわせるのは忍びなく、3回に収める事にしました。

進歩的思想を持った人間を次々と罠に陥れる事を「天職」とした人間が、なぜ新聞社の経営に乗り出したのか、それを《第2回》で、なぜ原子力発電を日本に持ち込んだのかは《第3回》でお送りします。

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【ウィンタースポーツ!…?…?】

アメリカNBCニュース 2012年12月27日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

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リヤドから1,500キロ離れたタブクの砂漠で、サンド・スキーを楽しむ。12月27日、サウジアラビア。

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こちらはスイスアルプスのスケートボーダー、1月3日。

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インスブルック、オーストリア、1月4日。





 

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