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【 福島第一原発事故発生当時の東京電力役員を刑事告発 】

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所要時間 約 9分

東京電力と日本の原子力行政の信じられない程の怠慢について、その本当の責任が明らかにされなければならない
当初福島第一原発の事故は『メルトダウンではない』と主張した東京電力と、それを追認した日本の原子力行政

ジャスティン・マッカリー 2016年2月29日

東京電力3役員
2011年3月11日に発生した福島第一原発の3基の原子炉がメルトダウンした事故が原因での負傷、そして死亡に対する責任を問われ、東京電力の役員3名が刑事告発されました。

この告発により2月29日は、160,000人の地元住人の強制避難が行なわれ、そのうちいまだに多くの人々が避難生活を強いられたままの福島第一原発の事故関係者について、初めて刑事告発が行なわれた日になりました。

事故当時会長だった勝俣恒久氏と副社長だった武藤栄氏、同武黒一郎氏の3人がは業務上過失致死の責任を問われることになりました。
報道によれば3人は福島第一原発について津波の危険性を認識していたにもかかわらず、安全を確保するために必要な対策を怠っていました。
3人ともこの問題に関しこれまで拘束されたことはありません。

2011年3月11日に東北地方を襲ったマグニチュード9.0の巨大地震により発生した巨大津波が福島第一原発に押し寄せ、全6基の原子炉の内3基の原子炉でメルトダウンが発生しました。
福島第一原発の敷地内に殺到した津波はバックアップ電源を破壊し、このため原子炉の冷却装置が作動しなくなってしまいました。
その結果、大規模な放射能の漏出が起きたのが福島第一原発の事故です。

第一大破壊
専門家は、これまで検察側がメルトダウンを防止するための必要な措置をとらなかったことに関する刑事責任を証明することに、困難が生じていた可能性があると語りました。
この裁判は今年度中には始まらない見込みですが、そります。

日本の公共放送局であるNHKは、後半では3人の元役員たちは無罪を主張し、襲来する津波の大きさを予見することは不可能だったと主張する見込みであると伝えました。

この問題について日本の検察は事件を立件しないとの決定を2度にわたり行いましたが、昨年7月市民を加えた独立機関である検察審議会が起訴相当の処分を決定しました。

11人のメンバーからなる検察審議会は、勝俣恒久氏(75歳)と武藤栄氏(65歳)武黒一郎氏(69歳)の3人は、事故発生により緊急避難を強いられた人々のうち、移送中とその直後に亡くなった高齢の入院患者、そして事故対応にあたった東京電力職員と自衛隊員の負傷について、その責任を問われなければならないと決定しました。

これまで原子力発電に反対する活動を行ってきた人々は今回の措置を「著しい前進」と評価し、改めて日本国内の原子力発電所の廃止を呼びかけました。

川内原発再稼働
「福島と日本の人々は、やっと正義の名に値する結果を得ました。」
グリーンピース日本の高田ひさよさんがこう語りました。
「今後の公判では、周辺住民の安全を守るべき東京電力の、そして日本国民の安全を守るべき日本の原子力行政の信じられない程の怠慢について、その本当の責任がどこまで及ぶべきか明らかにされなければなりません。」
「東京電力と日本の原子力行政は、福島第一原発の事故の発生原因の核心部分について、詳細な説明を求める声を無視し続けてきました。未だに故郷に戻れずにいる100,000人に上る避難民は、起きた事実すべてを知る権利があります。

日本国内の稼働可能な43基の原子炉のうち、すでに4基が昨年再稼働しました。
残る原子炉も現在、福島第一原発の事故後改定された安全基準に適合させるべく、修復や点検が進められています。

事故の後まとめられた国会事故調査委員会の報告書は、東京電力の安全管理の恒常的な手抜き、そして日本政府と原子力行政との不適切ななれ合い関係について厳しく非難しました。

昨年、国際原子力機関(IAEA)は福島第一原発の事故の鍵となる要因として、原子力発電の安全管理に関する誤った安易な管理基準を問題に挙げました。
2012年に公表された国会事故調査委員会の報告書は、いい加減な原子力発電の監視管理体制、そして東京電力、日本政府、業界の安全管理機構の3社の間のなれ合いの関係が引き起こした『人災』であると指摘しました。

アルジャジーラ抗議集会
これに対し東京電力は、約5年前に福島第一原発を襲った津波の規模を予見することは不可能だったと主張してきました。
しかし事故調査委員会のメンバーは、2008年に行われた内部調査の結果、最大15.7メートルの津波が襲う可能性があると報告されていましたが、東京電力の経営陣がこれを無視し「津波の危険性充分認識していたにもかかわらず、必要な防御措置をとることを怠った」と非難しました。

そして事故後5年近くたった2月末になってやっと、東京電力は3基の原子炉でメルトダウンが発生したことは早期に認識していたにもかかわらず、発表を2ヵ月遅らせていたことを認めました。
東京電力は原子炉の炉心が5%以上損傷を受けた場合にはメルトダウンであると定義した緊急時社内規定に思いが及ばなかったと弁明しました。
東京電力は事故後数週間に渡り、原子炉はメルトダウン程深刻ではない『炉心損傷』が起きたと公表していました。
そして当時の監督官庁であった原子力安全・保安院も、産業界の安全管理機関も、事故がメルトダウンであるという事を否定していました。

コンピュータ・シミュレーションにより3基の原子炉の内1基で核燃料のほとんどが溶け落ちて原子炉格納容器の底にまで達し、残る2基ではより一層深刻な炉心溶融が起きていたことが明らかになり、東京電力は2011年5月になってやっと福島第一原発の事故がメルトダウンであったことを認めました。

FR24 破壊された福島第一原発
同社は最初の不適切な表現により誤解を生じさせたと認めつつも、対応は適切だったと主張しました。
「炉心損傷なのかメルトダウンなのかどう表現することは、事故直後は喫緊の問題ではありませんでした。当時の非常事態に対応するためには、とにかく何が何でも炉心を冷却し続けること、その事につきました。」
東京電力の広報担当者の中久喜氏が当時をこう振り返りました。

http://www.theguardian.com/environment/2016/feb/29/former-tepco-bosses-charged-fukushima
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【 難民収容所と化した老朽化したアテネの空港 】《2》

アメリカNBCニュース 2月27日

空港難民06
ギリシャは押し寄せる難民問題について、特に財政面でも含め追い詰められつつあり、いくつかの欧州連合加盟国と深刻な外交紛争に発展しています。
難民たちの通り道となっているこれらの国々は国境の封鎖、あるいは著しい入国制限を課すなどして流入を防ごうとしていますが、果てしなく長い海岸線を持つギリシャは手の打ちようがありません。

しかし重要な問題は今起きていることです。

はっきりと拒否の姿勢を示す数カ国を含め難民の流入に対して増々警戒感を強めているEU各国と、自国の海岸からかろうじて短い航海に耐えられる程度のボートに乗って次々に旅立っていく難民たちを、できるだけ早く通過させようとしているトルコとの間に挟まれ、ギリシャには今、驚くほど多くの難民たちが滞留しています。
2月26日アテネ市内の今は使われていない空港内で、風船で遊ぶ難民の子供。(写真上)

2010年以降財政破たんの背戸際にあるギリシャにとって、難民問題はさらなる圧力となっています。
国民に痛みを伴う改革を求める財政問題は、『これでは老後の生活が成り立たない』と怒る農民の年金を大幅にカットするなど、全土に波紋を広げています。
2月26日空港の建物の外の地面の上で眠る初老の難民。(写真下・以下同じ)
空港難民07
ギリシャにやってくる難民の大部分は戦争によって住む場所も暮らす場所も奪われたシリア、イラク、そしてアフガニスタンの人びとです。
空港の建物の外で遊ぶ難民の子供たち
空港難民08
2月26日空港の敷地を出て鉄道の駅に向けて歩く難民の家族。
空港難民09
http://www.nbcnews.com/slideshow/decrepit-athens-airport-becomes-shelter-stranded-migrants-n527251

【 もう弾薬(タマ)切れ?ニッポン銀行も先進各国の中央銀行も… 】《後編》

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所要時間 約 9分

先進各国の中、最悪は日本経済?! このままではお先真っ暗?
日本の政治家は、既得権勢力に立ち向かうだけの勇気は持ち合わせていません
日本の政治家は、企業団体や政治単体に対してあまりにも臆病

エコノミスト 2月20日

ECO バズーカ
別の考え方に基づく政策もあります。
経済をズブズブの流砂から引き上げるため、各中央銀行が政府から所得政策の権限移譲を受け、労働者の賃金と物価に直接関与する方法です。

1970年代に当時の政策担当者が収束させるために大汗をかいた賃金上昇と物価上昇のスパイラルですが、政策減税等の手法を用いてすべての労働賃金と物価の上昇スパイラルを、今度は人為的に作りだすことです。

これらの政策はいずれも危険をはらんでいます。
ヘリコプタードロップが作り出す世界は、多くの人々が忌み嫌うでしょう。
例を挙げると欧州連合ではユーロの価値を守るため、財政当局が自国の国債を買い入れることは条約によって禁止されています。
さらには各国の所得政策は財政危機により柔軟性が失われ、問題は大きくなる一方であり、これを数十年前の状態に戻すなど至難の業です。

経済低迷03
しかし豊かなはずの社会がデフレから抜け出せないという状況、例えば日本経済のようにこのままではお先真っ暗という状況では、時に極端な政策をとる必要性について検討すべき時が来ていると考えるべきでしょう。

日本以外の最先進国は、未だそれ程危険ではない財政政策を採る余裕があります。
例えばドイツを筆頭に多くの先進諸国は財政的にまだ余裕がありますが、それゆえ思い切った財政政策は避けてきました。
しかしこうしたドイツ的倹約主義は今はむしろ有害です。

これほど借入利息が低くなったことはこれまでありませんでした。
全世界分合算して7兆ドル以上あった国債の利回りも、現在世界中で下がり続けています。
新しく生産的な投資対象を見つけられるのであれば、その国が公的負債を増やすことになったとしても債券市場も世界的な格付け会社も前向きに評価することになるでしょう。

ただしこうした投資にはインフラの整備が含まれている必要があります。
使い勝手の悪い公道を再整備し、俗悪な建物を再建する事業を多年にわたって続けるために何期もの会計年度に渡る支出プランを立ち上げ確定させることが今ほど有効なときはありません。

ウォールストリート
景気刺激策というのは点で作用するだけですが、これに思い切った構造改革の実施を加えれば、財政出動の威力は大きなものになります。

ヨーロッパの各銀行の財政基盤はさらなる強化が必要であり、この点に不安がある限り、そうそう簡単に融資条件を緩めるはずもありません。
不良債権の圧縮も選択肢の一つではありますが、それよりは銀行法自体を見直し政府が各銀行は資本増強に努めた結果、法律に基づき監査機関が妥当と認める財政基盤を確立したと主張する方が良いかもしれません。

さらなる選択肢は規制緩和で、よく知られているように確かに強力な効果を発揮します。
アメリカ経済諮問委員会によれば、おいては、州ごとの事前許可制関連の法律によって規制される労働者の割合は、1950年代の全体の5%に対し、現在は25%にまで拡大しています。
官僚主義に基づくこのような規制は本来不要です。
自治体ごとに異なった規制が存在するのは、新たな産業基盤が育つ際の障害になります。

時代の遺物とも言うべき税制や形式主義にとらわれた規制は、かえって一部の富裕層の財産隠しに利用され、経済の循環の障害になるだけです。

day 5
▽『それが政治というもの…』ばかな!

世界的経済低迷の最大の問題は、政策の選択肢が無くなってしまったという事ではありません。
先進各国の政治家たちは自分たちさえ力を尽くせば、局面を打開できる可能性があるという事は先刻承知していました。
しかし彼らは何かと理屈をつけたがる割には、意外な程に力不足でした。

アメリカの主流派の政治家たちは、分裂したままです。

日本の政治家は、企業団体や政治団体に対してあまりにも臆病です。

ユーロ圏各国の政治家は、新たな方針を支持する積極姿勢に欠けています。

今は未だ本格的な経済危機が到来した訳ではありませんが、政治家が採るべき対応をこのままとらずにいればこの先その仕事はもっともっと難しいものになるでしょう。
こなすべき役割は簡単なものではありませんが、このまま放置すればもっと悲惨な結果が待っています。

トランプ
現在最も憂慮すべきは停滞しきっている市場であり、スタグネーションに陥っている経済です。
このままの状態が続けば、2007年から2008年のリーマンショック以降同様、政治の世界ではポピュリストが台頭することになるでしょう。
ポピュリストの手法 – 保護貿易関税、超過利潤税(企業収益が適正利潤を超えたときにその超過分を税収として吸収する)、企業の国有化など、それこそは世界市場の破壊を決定づけることになります。

そして中央銀行の制御が効かなくなった経済社会には、さらなる闇が待ち受けることになります。
それは民主主義者、そして正論を述べる政治家がお払い箱にされてしまう社会です。

〈 完 〉
http://www.economist.com/news/leaders/21693204-central-bankers-are-running-down-their-arsenal-other-options-exist-stimulate
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【 難民収容所と化した老朽化したアテネ空港 】《1》

アメリカNBCニュース 2月27日

難民03
中東難民であふれかえるギリシャで、アテネ市内の今は使われていない国際空港が臨時の避難所として使われています。

北部ヨーロッパを目指し、続々とバルカン半島に渡ってくる中東難民がマケドニア国境で足止めされ、その数がギリシャ国内で膨れ上がっています。
北はマケドニアとの国境、南はピレウス港まで、国境封鎖のためギリシャ国内に留まる中東難民の数は少なくとも20,000人はいると見られています。
2016年2月26日、アテネ市内の現在は使用されていない国際空港で、子供の手を取り立ちつくす難民の男性。(写真上)。

ターミナルビルで虫干しされるマットレス。旧空港ビルのビスケットの包装紙が散乱する床にはいくつものマットレスが敷かれ、無数の女性や子供が座り、あちこちからすすり泣く声が聞こえていました。(写真下・以下同じ)
難民04
スロベニアの警察署長はオーストリア、マケドニア、セルビア、クロアチア、スロベニアはヨーロッパへの難民の大量流入を緩和させる策として、それぞれが受け入れる難民の数を1日580人に制限することで合意したと語りました。
難民05
ギリシャの主要な港であるピレウス港やアテネ周辺の公園や広場、そして南北をつなぐ高速道路の上に何十台と駐車中のバスの中など急ごしらえの難民避難所はどこも難民でいっぱいです。
彼らは寒さに震えながら、徹夜で国境を通過する日を待ち続けています。
難民06
ギリシャ政府は26日、旅客フェリー会社や旅行代理店に対し、ギリシャ南方の島々から本土に移送する難民たちの数を制限するよう依頼しました。
難民の多くは中東で続く暴力的な紛争を逃れて来た人々ですが、ギリシャの運輸大臣は、足止めのための措置は国内各地で続く混乱を収束させるための一時的なものだと語りました。
写真は旧空港ビル内で休む難民の一家。
難民07
http://www.nbcnews.com/slideshow/decrepit-athens-airport-becomes-shelter-stranded-migrants-n527251

【 もう弾薬(タマ)切れ?ニッポン銀行も先進各国の中央銀行も… 】《前編》

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所要時間 約 8分

『もはや打つ手なし…?』日銀首脳部、そして先進各国の中央銀行総裁の顔色
政治家たちは中央銀行にのみ重荷を背負わせ、自分たちは身を切る努力を嫌って責任の回避を続けてきた

エコノミスト 2月20日

ECO バズーカ
現在、世界の株式市場は、我慢比べの様相を呈しています。
そして金融市場の混乱が続くと決まって資金が流れ込むことになっている金相場は、この30年間で最も輝かしいものとなるはずの1年をスタートさせました。
さらに今、銀行の破たんに備える保険料が急騰しています。

そして今、アメリカ経済が不況局面に落ち込んだとする話が取りざたされています。
12月に利率を引き上げたばかりのアメリカ連邦準備制度理事会に対しては、金利を元に戻すか、あるいはそれ以上のマイナス金利の適用を求められるかもしれない可能性が浮上してきました。

ある懸念が市場全体に広がりつつあります。
景気が低迷した時に先進各国が共通して採用してきた景気刺激策が、もはや機能しないのではないか?

2007-08年に発生した金融危機以降、国内市場の需要を喚起する役割は中央銀行総裁の手に委ねられてきました。
彼らの徳の絶頂は欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ頭取が欧州通貨ユーロを守るために「できることは何でもする」と発言した2012年に実現しました。
欧州再建市場は反発急騰し、ヨーロッパにおける金融危機の懸念も吹き飛んだかに見えました。
しかしそれは結局一時的なものでした。

Abenomics 2
各国の中央銀行の努力にもかかわらず、経済の回復基調はまだまだ弱いままであり、インフレ率も低迷しています。
そして通貨政策に対する信頼はぐらついています。
各国の中央銀行総裁が打ち出す政策に対し、市場は効果に対する期待と逆効果に対する警戒を併せ持っています。

ヨーロッパと日本がマイナス金利を導入したことについて、投資機関や投資家は銀行経営の先行きを懸念しており、各国で銀行の株価は値を下げています。

量的緩和政策、QEは平たく言えば紙幣をどんどん印刷して債権を買い入れることですが、これまでの動きによって新興国債権市場においては結果的に買い支えの効果を発揮することになりました。
しかし今はその新興国債権市場の先行きも怪しくなっています。
そして量的緩和策によって通貨安になったことで、その国の銀行信用は比例して低下することになりました。

賃金交渉の結果も、果てしなく続く物価の下落傾向を反映したものとなりました。
労働者の賃金こそは、物価の動向に最も敏感に影響を受ける指標です。

各投資機関や投資家たちは世界経済がまた新たな不況局面に落ち込み始めたのではないかという点を心配し、さらに不況を何と回避しようとしてきた各国政府当局も万策尽きてしまったのではないかとの懸念を深めています。

証券01
▽ 下手な鉄砲

しかし望みが全くないというわけではありません。
低成長に喘ぎ、低インフレのまま麻痺している経済を揺さぶる方法は、まだ残されています。
本当の意味で経済回復に貢献し得る、そして経済政策の担当者が取り得る方策は、実は数多く残されているのです。
一方不安材料としては、日銀をはじめとする各国の中央銀行は政府の助力なしでは今後立ち行かなくなる可能性があります。

これまで政治家たちは中央銀行にのみ重荷を背負わせ、自分たちは身を切る努力を嫌って責任の回避を続けてきました。
いくつかの中央銀行は、財政政策、金融政策を機能させるための協力をなおざりにする政治家に散々な目にあわされてきました。
実際、先進各国の政府の中には中央銀行の政策に反する財政の緊縮政策を実施し、結果的に金融刺激策に逆効果となりました。

もはや政治家は中央銀行総裁と肩を並べ、事態に対処すべき時です。
最も急進的な方針アイデアは、財政緩和と金融緩和を組み合わせた政策です。
この選択肢は大量の紙幣を印刷して公共投資に直接注ぎ込むか、あるいは直接税の減税を行います。
この手法は『ヘリコプタードロップ』と呼ばれる政策です。
(またはヘリコプター・マネー : ヘリコプターから現金をばらまくように、中央銀行あるいは政府が、対価を取らずに大量の貨幣を市中に供給する政策。米国の経済学者フリードマンが著書「貨幣の悪戯」で用いた寓話に由来。中央銀行による国債の引き受けや政府紙幣の発行などがこれにあたる - デジタル大辞泉)

GRD日本の景気
通常の金融緩和策とは異なり、ヘリコプタードロップは銀行や金融市場を迂回し、まっすぐに人々のポケットに印刷されたばかりの現金を注ぎ込みます。

この政策の明らかに乱暴な部分は、理論的に、人間はたなぼたで手に入った現金は貯蓄などせず湯水のように使うはずだと規定していることです。
(そして中央銀行がインフレターゲットを一気に引き上げることも…)

〈 後篇に続く 〉
http://www.economist.com/news/leaders/21693204-central-bankers-are-running-down-their-arsenal-other-options-exist-stimulate
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【 国際報道写真コンテスト上位入賞作品 】《8》

アメリカNBCニュース 2月18日

press29
総合部門単作品第2位:ポール・ハンセン / EPA
2015年12月6日にギリシャのレスボス島で、当局による発見・拘置を避けるため、暗闇の中を移動する中東難民。(写真上)

日常部門連作第3位:セバスチャン・リステ / EPA
2015年2月にリオデジャネイロのスラム街の近くで、警官に射殺された22歳のタクシードライバーの画像を確認する住民グループの男性。
この地区では住民とギャングの対立抗争が激化し、度々重武装警官が出動する事態となっています。(写真下・以下同じ)
press30
人物部門第1位:カズマ・オバラ / EPA
1986年4月26日、チェルノブイリで世界最悪の原子力発電所事故が発生しました。
事故のちょうど5ヵ月後、チェルノブイリの南100kmの場所にあるキエフで一人の女の子が生まれました。
しかしチェルノブイリの方角から吹いてくる風には大量の放射性物質が含まれ、この女の子も悲劇の犠牲者のひとりに加わりました。
この一連の作品は、この女の子がもし生きていたら過ごしたであろう30年間の生活を表現したものです。
これらの作品はすべて、チェルノブイリから5キロの場所にあるウクライナのプリピャチで発見されたカラーネガフィルムを使って撮影されました。
press31
日常部門連作第1位:ダニエル・ブルフラク / ニューヨークタイムズ
2015年12月7日オーストラリア領南極地方のキングジョージ諸島のアードリー島で、ペンギンの個体数を確認するドイツ、フリードリッヒ・シラー大学の研究チームの男性。
press32
http://www.nbcnews.com/slideshow/world-press-photo-awards-top-images-2015-n520731






【 日本経済の縮小に追い打ちをかける円高 – アベノミクスの窮地 】《後篇》

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所要時間 約 8分

先進各国でマイナス金利の導入競争が起きれば、足の引っ張り合いに陥る危険性がある
これ以上の日本経済の悪化を食い止めているのは、財政赤字を膨らませながら続けられている公共投資

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 2月15日

安部首相0215NYT
問題なのはここに来て、より一層安定さを欠く展開が続いている日本の株式市場です。
2月の第2週にはここ1年間で最も円高となったことを受け、日経主要銘柄の平均株価は12パーセント急落しました。
その下げ幅は日本の株式市場史上、7年前に起きた世界的金融危機、リーマンショック以来最悪のものとなりました。

そして月曜日、今度は海外市場の反発と原油安の下げ止まりから円高圧力が幾分緩和され、日経平均株価は7パーセント以上、一気に値上がりする展開となりました。
この株価の高騰は同じ日、2015年の最終四半期に国内総生産が年率換算で1.4パーセント減少し、国内消費の減退と輸出不振が明らかになりました。
2015年の最終四半期については、ブルームバーグ・ニュースの調査取材を受けた経済学者は、平均して
0.8パーセント日本の国内総生産が縮小すると予測していました。

しかし三井住友アセットマネージメントの戦略家である市川昌弘氏は、投資家は日本銀行が追加で打ち出した金融政策の意味するところの方を懸念しており、第4四半期の国内総生産のマイナス転落についてはそれ程でもないと語りました。

日本経済
日本銀行は1月、公定歩合についてマイナス金利をどうに要すると発表し、同じようにデフレと戦っているヨーロッパ各国の中央銀行と足並みをそろえることになりました。
こちらの方はさらなる動きが確実になりそうだと、市川さんが語りました。
「さらに低い政策金利の適用、あるいは別の金融緩和策が打ち出される可能性があります。」

一部のアナリストは、各国の中央銀行同士が競って金利ゼロ、あるいは競い合うようにしてマイナス金利の幅を拡大すれば、互いの政策が相殺し合う結果に陥りかねない危険性について指摘しました。
事実各国の中央銀行は自国の経済を何とか活性化できないかと、躍起になってその方途を探しています。

2月11日木曜日、日本銀行がマイナス0.35%のマイナス金利を導入したのと同じタイミングで、スウェーデンの中央銀行はマイナス0.50パーセントの短期金利を採用しました。

日本の経済状況の厳しさは、そのまま安倍首相に対する政治的圧力となって跳ね返ってきました。
この夏、自民党と公明党の与党連合は参議院議員選挙を戦わなければなりません。

NYT アベノミクス
アナリストや投資アドバイザーは、安倍首相はアベノミクスへの支持が、そのまま参議院における議席拡大につながるものと期待していたと語ります。
そうした目論見は現時点で一層不透明なものとなりました。
しかし一方では弱体化してしまった日本の野党が、現政権への失望を自分たちの得票につなげられるのかどうか、その点も不明です。

野党の安倍政権への批判は、タカ派的な安全保障政策に集中してきました。
経済問題について日本にはどのような選択肢があるのか、具体的なビジョンを提示することはほとんどありませんでした。
日本の新聞社が行なったごく最近の世論調査が1月に実施されましたが、第二次安倍政権の支持率は約50%と日本の首相としては一貫して高いままであり、対立野党への支持を大きく上回っています。

しかし安倍首相は政権を代表する看板のひとりであった閣僚を失ったばかりです。
1月28日、甘利内閣府特命担当大臣(経済財政政策)が建設会社からの贈収賄のスキャンダルが明るみに出て辞任に追い込まれました。

2月15日の政府の発表によれば、最終四半期の国内総生産の数字のそれ以上の悪化を食い止めた2つの大きな要因のうちの1つは、政府による財政出動でした。
もうひとつは前年同期1.4%という予想を上回る数値の改善を実現させた企業による設備投資です。
しかし設備投資については、最終的にGDPの数値が確定する際、度々修正が入ることがあります。

I'm not ABE
ゴールドマン・サックス東京支社の経済学者である馬場直彦氏は、日本政府は多額の負債を抱えているにもかかわらず、安倍政権がさらなる紙幣の増刷に踏み切ると同時に財政出動の規模拡大に打って出る可能性があると語りました。
「7月の参議院議員選挙の前に追加の財政刺激策を求める安部首相に対する圧力は、今確実に強まっています。」

〈 完 〉
http://www.nytimes.com/2016/02/16/business/international/japan-economy-abenomics-yen.html?ref=topics&_r=0
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2月28日に掲載したドイツ国際放送の記事、そしてこの稿と見てきて、アベノミクスの最大の狙いは『実質的な円の切り下げ』であったことを改めて確認しました。
そして本来なら最も大切だったはずの『第三の矢』、すなわち日本国内の構造改革が徹底的に換骨奪胎された結果、全くの不発に終わったことはこれまでご紹介したエコノミスト等の記事によっても明らかです。(【 現在の不況構造をアベノミクスで解決できるか 】 http://kobajun.chips.jp/?p=21001
この点についてドイツ国際放送は、昨年11月時点で「出口戦略が無いまま、日銀の量的緩和策にひたすら頼り続けるしかなくなる」と予測していました。(【 アベノミクスが成功すれば、日本は持続的成長を成し遂げる?立ちはだかる山のような課題はどうする? 】 http://kobajun.chips.jp/?p=21125
結局、実質的には日銀の大規模金融緩和も何も『実質的な円の切り下げ』布かなくなってしまい【 アベノミクスの成長シナリオ吹き飛ぶ – 日本経済再々度不況に転落 】( http://kobajun.chips.jp/?p=26838 )ということになったのだと考えられます。

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【 国際報道写真コンテスト上位入賞作品 】《7》

アメリカNBCニュース 2月18日

press25
自然単作品部門第3位:セルヒオ・タピロ / EPA(写真上)
2015年12月13日夜間に噴火するメキシコ、コリマ火山。

総合連作部門第1位:アブド・テュメニー / EPA
2015年5月11日、シリアの首都ダマスカス東郊の反政府勢力が支配するドウマに対する空爆で負傷し、にわか作りの診療所で治療を待つ少女とそのおじ。(写真下・以下同じ)
press26
時事問題部門第1位:マリオ・クルーズ / EPA
2015年5月20日、セネガル北部のサンルイのセネガル川の川岸にたたずむイスラム神学校の学生たち。首都ダカールと比べるとサンルイは都市としては小規模ですが、多数のイスラム神学校があることで知られています。しかしこの写真にあるように、宗教教育を嫌がって神学校を抜け出し、一日中ぶらぶらしている若者も少なくありません。
press27
http://www.nbcnews.com/slideshow/world-press-photo-awards-top-images-2015-n520731

【 日本経済の縮小に追い打ちをかける円高 – アベノミクスの窮地 】《前篇》

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所要時間 約 9分

日本経済の成長軌道への復帰という安倍政権の筋書きは、実質的に不可能になったとの?懸念が拡大…
海外で得た利益を国内に持ち込む際、円安を利用して額面を膨らませる、それが『経済の好循環』の正体?

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 2月15日

安部首相0215NYT
3年前、日本の安倍晋三首相が日本経済の状況を好転させる取り組みに着手した際、彼は税率の改定、貿易、女性の労働条件に関わる分野に狙いを定めました。
そしてアベノミクスと名づけられたその経済政策は、ある特定の戦術に大きく頼ることになりました。
すなわち実質的な円レートの切り下げです。

最初の段階ではその戦術は狙い通りに機能し、まず日本の株式市場が急上昇し、続いて輸出関連企業の収益が改善しました。
しかし2016年現在、アベノミクスは再び不発状態に陥り、スタート時と同じ窮地に陥ってしまった可能性があります。

世界市場の混乱は日本円を再び上昇路線に乗せました。
再び円高になったことで日本の株式市場は大幅な下落を記録し、経済学者の間では安倍政権による日本経済の成長軌道への復帰という筋書きは実質的に不可能になったのではないかとの懸念が拡大しています。

「アベノミクスは今、空中分解するかどうかという瀬戸際に立たされています。」
かつて日本銀行に勤務し、現在はJPモルガン・チェイスのアナリストを勤める足立正道氏がこう語りました。

経済低迷02
こうした状況は政府当局が日本経済に関する報告を行った15日、明らかになりました。
世界で3番目の規模を持つ日本経済は2015年第4四半期、事前に予測されたよりも大きく経済規模が縮小したことが解りました。
日本経済は過去3年間12回あった四半期の内、5回縮小しました。
そして2015年1年間の経済成長率は0.4%というわずかな数値に留まりました。

日本は夏に参議院議員選挙を控えていますが、安倍政権与党、そして連立与党に対してはこうした経済の低迷を何とかするよう求める圧力がかかっています。

経済再生を図るアベノミクスは、円安政策に極めて大きく依存してきました。
しかしその円は現在値上がりを続け、逆に株価は下がり、日本経済の成長局面への転換はより一層難しくなっています。
日本の通過当局は円安誘導策は行っていないと主張していますが、つい最近まで安倍政権の意に沿う政策を実施してきたことは否定しようのない事実です。

日本の財界人や政策立案担当者にしてみれば、円安に振れれば振れる程彼らの利益は大きくなります。
トヨタとパナソニックのように国外においても大々的に事業展開している企業は、海外における所得を国内に持ち込む際、円安を利用して利益を膨らませることができます。

経済低迷03
円安になれば日本が輸入する物品やサービスの価格が上昇することになりますが、現状ではそれすら日本経済にとってメリットがある場合があります。
現在日本では物価が下がり続けるデフレーションが進行し、結果的に収入の減少と出費の削減がさらに物価の下落を招く悪循環が発生、これを断ち切るために輸入産品の価格上昇が貢献する可能性があります。

2012年から2015年にかけ、なぜトヨタの北米における利益が実際の販売実績の増加に比べ5倍も多くなったのか、円相場の下落とあせて考えると説明は容易になります。

トヨタは円安を背景に今期、日本で初めて利益が3兆円を超える企業になるべく、着々と歩みを進めています。
円安によるたなぼた利益は、企業にとってはアベノミクスの副産物です。

2013年に安倍首相が任命した黒田東彦総裁の下で、日本銀行は莫大な金額に上る日本国債を買い入れることにより、金融市場に円貨を氾濫させました。

アベノミクスの基幹戦略の表向きのゴールは、消費者にできるだけ借金をさせそして消費を拡大させようとするものです。
しかし多くの経済学者が指摘する口に出せないゴールとは、円安への誘導です。

Tokyo 5
安倍政権誕生から3年、円はドルに対し40%値下がりしました。
しかし世界経済の先行きに対する懸念により、その円安誘導策も目に見えて効果が失われつつあります。

2015年12月以降、円相場はドルに対し約10パーセント値上がりました。
世界の投資機関・投資家は一時的な資産の避難場所として円買いに走りました。
JPモルガン・チェイスの足立氏はこうした流れは、このまま円安傾向が続くことを期待していた日本企業に損失を与える可能性があると語りました。
これまで輸出関連の日本企業はタナボタ式に舞い込んだ利益を、社内留保としてため込んできました。

トヨタの場合、配当として株主に配布する代わり会社内に利益を蓄積するいわゆる社内留保として15兆円以上の現金資産を保有しています。
同様にキヤノンは3兆円以上、ホンダは約7兆円の社内留保を保有しています。
しかしこうした社内留保の蓄積も、円高の進行により徐々に少なくなりつつあります。
このままの状況が続けば、これらの企業もいずれ経費削減に動く可能性があります。

〈 後篇に続く 〉
http://www.nytimes.com/2016/02/16/business/international/japan-economy-abenomics-yen.html?ref=topics&_r=0
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前回のドイツ国際放送の記事から、アベノミクスの総括とも言うべき記事を連続して掲載したいと考えています。
今回はアベノミクスの看板の中身を『公平に判断する』のに格好の記事として、本編を翻訳しました。
後篇を掲載した後、エコノミストの記事をご紹介し、ひとつの結論が見えるようにしたいと考えています。
ドイツ国際放送の記事で問題提起、ニューヨークタイムズの記事で内容分析、エコノミストの記事で総括すれば、アベノミクスに対する国際世論の評価が見えてくるのではないでしょうか?

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【 国際報道写真コンテスト上位入賞作品 】《6》

アメリカNBCニュース 2月18日

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一般ニュース部門第2位:フランシスコ・ズィゾーラ / EPA(写真上)
2015年9月3日国境なき医師団が運営する救助船の甲板に並んで座る、エリトリアから脱出してきた難民たち。
かれらはこの前日、リビア沖で漂泊していたところを救助され、この捜索救助船ブルボン・アルゴスに収容されました。

スポーツ単作品部門第1位:クリスチャン・ワルグラム / ロイター
2015年2月8日、アメリカ、コロラド州のビーバークリーで開催されたFISスキー世界チャンピオンシップのダウンヒル競技でクラッシュするチェコの選手。(写真下・以下同じ)
press22
人物単作品部門第1位:マティク・ゾルマン / ロイター
2015年10月7日マケドニアのプレセボにある難民登録キャンプで順番待ちをする人の列の中で、レインコートで顔を覆われた女の子。
難民の多くはマケドニアからセルビアを横断し、とりあえずハンガリー、クロアチア、スロベニアなどの欧州連合加盟国に向かうことになります。
press23
長期取材部門第1位:メリー・カルバート / EPA
2013~2015年に撮影されたこのシリーズ写真は、アメリカ軍に所属していた間に強姦された、あるいは性的暴行を受けた女性たちのその後を取材したものです。
写真は2014年12月1日のカリフォルニア州、退役軍人となった後ホームレスとして車中生活を続ける元女性兵士を写したものです。
press24
http://www.nbcnews.com/slideshow/world-press-photo-awards-top-images-2015-n520731

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ほんとうの「今」を知りたくて、アメリカCNN、NBC、ABC、CBS、英国BBC、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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