星の金貨プロジェクト

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【 福島第一原発の被災地の安全は確保されたのか?】《後篇》[GRD]

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所要時間 約 10分

住民は町内各所に突出して放射線量の高い場所を確認、除染のやり直しを求めている
4年半もの間放置せざるを得なかった家の中は動物の糞だらけ…とても人間の住める場所ではなくなってしまった
美しかった故郷はもう二度と元通りにならない…解っているのはそんなことだけ…

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 10月12日

楢葉町住民01
渡部さんの自宅も地震で被害を受けました。
4年半の間無住だった家は害獣のすみかと化していました。
「家の中は動物の糞だらけです。とても人間の住める場所ではなくなってしまいました。」
56歳になった渡辺さんがこう語りました。
「古い家は取り壊し、同じ場所に家を建て直して、5年か10年以内には妻と一緒に戻ってくるつもりです。」

「将来この場所がどうなるかは全く分かりません。でも二度と元通りにならない事だけは解っています。
住民の多くが70代、そして80代です…30代や40代の人、特に幼児がいる家庭は、誰もこの場所に戻ってくることに関心を示しません。」
「この町は本当は風光明媚な美しい場所なのです。でも生きていくのには全く適さない場所になってしまいました。」

楢葉町の担当者は住宅地、学校、店舗、そして公共施設の周囲から汚染された土を除去する面倒な除染作業が完了したと語っています。
しかしおよそ100世帯が自宅周辺に放射線量が突出して高い場所があると報告し、除染作業のやり直しを求めています。

120801
行政側の調査では、町内の放射線量の平均は1時間あたり0.3マイクロシーベルト、年率に換算するとちょうど3ミリシーベルト(mSv)未満ですになっています。
この数値は1年につき1mSvという日本政府が設定した「野心的」目標より若干高めです。
この目標については専門家が非現実的な程低いと批判していました。
専門家は被ばく線量が年間100ミリシーベルトを上回らなければ、ガンを発症する確率は極めて低いとすることでほぼ一致しています。

「私たちが目指しているのは。全世代が戻って来てくれることです。しかし、確実なスケジュールなどは存在しません。」
住民の帰還に向けて取り組みを続ける80人の楢葉町職員のうちのひとり、猪狩祐介さんがこう語りました。
「住民の中にはもう5年、10年、あるいはもっと長い間待ち続ける人がいるかもしれません。」

「私たちは他の市町村の復興のモデルケースになりたいと思っています。楢葉町の住民の生活再建が実現しなければ、他の市町村はなおさら復興は難しくなるでしょう。私たちはの点について、大きな責任を感じています。」

請戸04
私たちは福島第一原発の危機が頂点に達していた時に重要な役割を果たしていた人々、そして住んでいた場所が放射能に汚染されたために避難を余儀なくされ、未だに生活再建を果たせない原発難民の人々と話す機会を持ちました。

小泉新平さんは楢葉町で家族と一緒に生活を再建することが現実味を帯びている、数少ない住民の中の一人です。
「楢葉町に戻って生活を何とか再建できるよう、母と娘は家屋の修理を私に嘆願しました。しかし他にこの場所で生活再建をすることに同調する人を見つけることはできませんでした。」
現在65歳の大工職の小泉さんがこう語りました。
小泉さんは地震でだめになった自宅の屋根瓦を葺き替え終わったところでした。

しかし小泉さん自身は家族と行動を共にしようとはせず、いわき市内での仮設住宅暮らしを続けています。
「もう水道水を飲んでも大丈夫だと言っていますが、私には信じられません。2、3のコンビニエンスストアと自動販売機以外、生活のために必要な品々を賄えるだけの店舗もありませんし、近所には誰も住んでいません。ここに留まっている方がまだましなのです。」

楢葉町が史上最悪の原子力発電所事故の被災地であるという証拠は、町の周辺部一帯に衝撃的な光景を生み出しました。

楢葉町05
低レベル放射性廃棄物を詰め込んだ約580,000個の黒い袋が、かつて有数の米作地、そして畑作地であったその場所を埋め尽くすようにして置き並べられています。
米や野菜は例え生産することが可能になったとしても、『福島産』というだけで収穫されても販売には厳しい状況が続いており、その場で朽ち果てるしかないという状況が続いています。

しかし今、町内の各所で市民生活再建に向けた静かな胎動が始まりつつあります。

スーパーマーケット1店舗と現金自動預け払い機コーナーに加え、コンビニエンスストア2店舗が営業を再開しました。
間もなく地元の郵便局も再開される予定です。
11月には住民は新しい健康センターで健康相談を、信用組合で金銭的な相談ができるようになります。

日本政府は福島第一原発のすぐ近くの汚染のひどい場所を除き、2017年3月までにすべての地域で避難命令を解除することを目指しています。
そのため帰還した家族には1世帯につき、最高100,000円の補助金を提供することになっています。

福島県内の他の市町村同様、楢葉町においても原発事故の責任について住民の意見は様々です。
東京電力に対する批判が多いのは当然ですが、原子力発電所が立地したことで多額の補助金が交付され町が潤い、雇用も充分に確保されていた事実を皆が覚えています。

楢葉町06
「私は事故は誰の責任でもないと思っています。」
渡部さんがこう語りました。
「この町には東京電力からたくさんのお金が流れ込みました。そのおかげで私たちは豊かな暮らしを享受してきました。原子力発電所が立地しない市町村と比べ、金銭的にも条件的にも有利な状況にあったはずです。」

7代にわたって同じ家で暮らし、農業を営んできた山内さんも非難を口にしようとはしません。
山内さんは先代の人びとも大切にしてきたこけしや達磨に囲まれているだけでほっとすると語りました。
「起きてしまったことに腹を立てても、くよくよしても始まりません。」
「そんなことをしても何も変わりません。とにもかくにも私たちがしたいのは、生活の再建、そのための具体先な作業を始めることなのです。私たちは故郷に戻りたいとずっと思ってきました。ここが私たちの家なのですから。」

〈 完 〉
http://www.theguardian.com/environment/2015/oct/12/safe-at-last-view-from-naraha-the-first-fukushima-community-declared-fit-for-humans
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【 放射能汚染がれき : 福島第一原発の指定避難区域の今 】《2》

ガーディアン 10月15日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

2015oct05
これらは福島第一原発から20km圏内の不気味な光景です。
2011年3月、巨大地震と巨大津波が東日本に壊滅的被害を与え、福島第一原発の3基の原子炉がメルトダウンした結果、生み出された光景です。
カメラマンのアルカディウス・ポドニーシンスキが防護服に身を固め、ゴーストタウンとなった双葉町、浪江町、富岡町の写真撮影を行いました。
無人飛行機で撮影した低レベル放射性廃棄物を詰め込んだ袋置き場の写真。場所を節約するため、袋は何段にも積み重ねられています。(写真上)

食事が始まる直前の事故発生により、そのまま打ち捨てられた宴席。
1986年のチェルノブイリの事故以降最悪となった福島第一原発の事故の被災地から、放射能汚染を取り除く気の遠くなるような巨大な仕事が続けられています。
数千数万の作業員が福島県内各地に散らばり、土地の表面を削り取り、家建物の壁や屋根をこすり洗いする作業を延々と繰り返しています。(写真下・以下同じ)
2015oct06
放置された車両を包み込むように生い茂る雑草。
元住民の人々は、30年たてばここが再び人間が住める場所になるという日本政府の見解を信じようとはしません。人々はこの場所が永遠に汚染されてしまったのではないかと、懸念を深めています。
2015oct07
生徒、住民、自衛隊員や除染作業員などが寄せ書きをした中学校の黒板。
2015oct08
http://www.theguardian.com/artanddesign/gallery/2015/oct/11/radioactive-wreckage-inside-fukushimas-nuclear-exclusion-zone-in-pictures

【 福島第一原発の被災地の安全は確保されたのか?】《前篇》[GRD]

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所要時間 約 8分

見切り発車の住民の帰還は、見当違いの楽観主義がもたらす新たな教訓を語ることになるかもしれない
帰還を決めた住民のほとんどは現役を引退した高齢者、しかし町中でその姿を見かけることは滅多にない

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 10月12日

楢葉町住民01
楢葉町の住民である山内幸平氏と妻のとも子さんが自宅の居間に久しぶりに足を踏み入れた時、彼らを襲ったものはとまどいでした。
畳敷きの部屋に置かれた棚の上にはこけしが整然と並んでいました。
壁の一方には幸運を呼び込むための大きなだるまが置かれています。
その壁の上の方からは、これまでの当主とその妻の白黒の肖像写真が部屋を見下ろしています。
これ以上掃除の行き届いた清潔な部屋は考えられない程、この居間はきちんとしています。

福島第一原発の事故発生以来4年半、福島県楢葉町、絵のように美しかったこの町の家々も、そして山内家も荒れるがままの状態が続いてきました。

2011年3月12日、楢葉町の住民たちは直ちに避難するように命じられました。
その前日、史上最大規模の地震が東北地方を襲い、今生きている人々が初めて見るような被害が各所で発生していました。

この地震は約19,000の人命を奪い、福島第一原子力発電所の3基の原子炉がメルトダウンを誘発した高さ14メートル以上の津波を生みました。
山内さんたちの頭が巨大津波による膨大な数の犠牲者の事でいっぱいになっていたころ、目には見えない脅威、第2の災害が襲いかかろうとしていました。
楢葉町の北方約19キロの場所にある福島第一原発から漏れ出した、莫大な量の放射性物質です。

白煙を上げる現場
「私たちのこどもたちは、もう二度とこの場所には戻らないと言っています。」
放射性物質による汚染が明らかになった福島県内の市町村のうち、初めて人間が生活できる水準にまで放射線量が下がったと宣言された楢葉町に、先月帰還を果たした数少ない住民の一人である山内さんのご主人がこう語りました。

避難場所から避難場所へという生活には厳しいストレスが伴いますが、山内さんたちは災害発生以来すでに6回もの移動を余儀なくされました。
79歳を越えた山内さんにとって、そのストレスは放射線に関わるいかなる懸念をも上回るものでした。
「私たちは放射線被曝が原因となってガンを発症することについて心配するには、すでに年を取り過ぎています。私は同じ年代の高齢者だけがこの町に戻ってくると思っています。でも子どもたちや孫たちの世代はそうはいかないでしょう。ここで子供たちを育てるのは難しくなっていくでしょう。」
町の職員はメルトダウンが発生した事故から5年近くが経った今、いわき市周辺にある仮設住宅や民間のアパート、いわゆる見なし仮設住宅で暮す人々も含め、かつての住民たちの多くが楢葉町以外の場所で生活の再建に取り組んでいるという現実に直面しています。

9月上旬避難命令解除を宣言した楢葉町の松本町長は次のように語りました。
「楢葉町の時計たった今、再び時を刻み始めました。町の機能の完全な回復を目指した、私たちは全力で取り組みます。」

楢葉町03
安倍首相は楢葉町の避難命令の解除について、警報が解除されず未だ戻れずにいる他の市町村の住民約70,000人にとっての希望の光だと宣伝しました。

しかし太陽がさんさんと降り注ぐ金曜日の午後も人の気配が感じられない楢葉町の街路は、見当違いの楽観主義がもたらす新たな教訓を語ることになるかもしれません。

地元当局によると事故前7,400人の人口があった楢葉町には、今回の避難命令の解除によって200人から300人の住民が帰還しました。
このうち子どもはわずか2人です。

今回町への帰還を決めた住民のほとんどは現役を引退した高齢者ですが、その姿はどこにも見当たりません。
町役場近くの仮設の商店街で買い物をしたり食事をとったりしている人のほとんどは、破壊や荒廃によってぼろぼろになった町の施設の修復工事を行うためやって来た1,000人の建設労働者たちです。

地震の被害を最も端的に表している町の道路は未だに通行が出来ません。
町の中学校は修復工事が仕上げの段階に入っていますが、2017年春までは開校の予定はありません。
しかし2017年になって、果たして通学してくる生徒がいるかどうかは、今のところ解りません。
大きな木造家屋にも人の姿は無く、泥棒除けの分厚いテープが窓中に貼られていました。

楢葉町04
廃墟と化したガソリンスタンドの前のアスファルトの道路の割れ目には雑草が生い茂っています。
今年6月、再開を果たしたローカル線の駅の外側には、何十台もの自転車やバイクが錆びだらけになって捨てられたままになっています。

「どう見てもここはゴーストタウンです。」
楢葉町のレストランで働くため毎日いわき市から通勤している渡辺正準さんがこう語りました。
「店内は一見すると多くの人々がひしめきあっているように見えますが、全員が復興工事の建設労働者です。災害の発生前、この店に通っていた人は一人もいません。」

〈 後篇に続く 〉
※原文が英文のため、氏名の表記に誤りがある可能性があります。ご容赦ください。
http://www.theguardian.com/environment/2015/oct/12/safe-at-last-view-from-naraha-the-first-fukushima-community-declared-fit-for-humans
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【 放射能汚染がれき : 福島第一原発の指定避難区域の今 】《1》

ガーディアン 10月15日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

2015oct01

これらは福島第一原発から20km圏内の不気味な光景です。
2011年3月、巨大地震と巨大津波が東日本に壊滅的被害を与え、福島第一原発の3基の原子炉がメルトダウンした結果、生み出された光景です。
カメラマンのアルカディウス・ポドニーシンスキが防護服に身を固め、ゴーストタウンとなった双葉町、浪江町、富岡町の写真撮影を行いました。
世界的に有名になった看板の前に立つカメラマンのアルカディウス・ポドニーシンスキー。(写真上)

雑草が生い茂る通り。160,000人が避難生活を強いられている事故から4年半が経ちましたが、多くの場所が人間が暮らすには危険な程放射能に汚染されたままです。(写真下・以下同じ)
2015oct02
遺棄されたケンタッキーフライドチキンの店舗。
「事故が起きたのがまるで昨日の事のように感じる程、ここでは時間が静止したままです。」
カメラマンのアルカディウス・ポドニーシンスキーがこう語りました。
2015oct03
遺棄された自家用車の空撮写真。
2015oct04
http://www.theguardian.com/artanddesign/gallery/2015/oct/11/radioactive-wreckage-inside-fukushimas-nuclear-exclusion-zone-in-pictures

【 『新たな』3本の矢?それこそさらなる的外れ 】[ECO]

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所要時間 約 7分

安倍首相の『新たな3本の矢』には、日本経済の閉塞状況を打開するためのどんな効果もない
安倍政権の日本経済の回復策に対する疑問を膨らませる海外の専門機関
日本にとって正しい的(まと)を設定し、そこに向かって正確に矢を射る能力が安倍首相にはあるのか、疑いは大きくなるばかり

エコノミスト 2015年9月26日掲載10月1日更新

日本経済04
多くの国民の怒りを買った4ヵ月間に渡る安全保障関連法案を巡る攻防が終わると時を移さず、安倍首相はそれよりはいくらか安全な場所に戻ってきました。
経済です。
9月24日、安倍首相は続行中のアベノミクス、すなわち金融緩和策、景気刺激策に広範囲な講座改革を進める政策について、意気揚々と『新たな三本の矢を放つ』と披露しました。
しかしここ一年間の日本経済に関する最新のデータは、安倍首相が一息つけるような状況では無いことを示唆しています。

第一四半期の拡大の後、第二四半期に入ると日本のGDPは年率換算で1.2%縮小しました。
現在、第3四半期についての懸念が高まっています。
鉱工業生産指数は8月も連続して下落し、第三四半期は『不況』局面に入ったかもしれないことを示唆しています。
加えて物価はアベノミクスがスタートした2013年4月以降初めて、わずかではありますが再び下落に転じました。
インフレに関する重要な指数のひとつであるコア消費者物価指数(CPI・生鮮食品を除く消費者物価指数)は8月には0.1%下落しました。

Abenomics 2
これは日本銀行にとっては最悪のニュースになりました。
日銀は来年秋まで、1年につき2%ずつ物価を上昇させる政策を実施に移すと宣言していました。
日銀が重視するインフレ指標は『コアコア』CPIと呼ばれるもので、エネルギー価格と食品を除外したものですが、この2品目の価格は現在上昇しています。
しかし他品目に渡るインフレ予想は、現実のデフレーションへの回帰のニュースに影響を受ける可能性があります。
10月末に新たな経済予測を発表するにあたり、日銀は現在行っている金融緩和策の一層の拡大についてさらなる重圧がかかることは間違いありません。

安倍首相の『新たな3本の矢』には、こうした閉塞状況を打開するためのどんな効果もありません。

安倍首相は日本の名目国内総生産を22%増やし600兆円にまで拡大すると宣言しましたが、具体的にどのような内容で、いつまでに達成できるのか一切明らかにはしておらず、概要すらつかめない発表に対しては当初より強い疑問が呈されています。
安倍首相が政権に返り咲いてからの2013年以降、名目国内総生産は継続的に増加していますが、これまでの実績は年率2.3%というものであり、22%という数字の根拠が問われています。

新しいGDP目標を掲げたことは日本の莫大な公的負債の改善に取り組むのではなく、飽くまで経済成長を追求する安倍政権の意思を強調することになりました。
日本の公的負債は現在GDPの246%もあります。

しかし安倍政権のこうした方針は、信用格付機関を納得させられるものではありませんでした。

女性賃金
その結果は日本の国債の信用格付けの引き下げとなって現れました。
9月16日、スタンダード&プアーズは日本の信用格付けをさらに引き下げたのです。
日本の国債は国内の機関投資家や一般投資家が保有し、さらには新規に発行される分はその大半を日銀が買い入れていると見られるため、格付けによる利率の大きな変動はありませんでした。

しかしこうした動きは、安倍政権の日本経済の回復策に対する疑問を一層大きくしています。

今回安倍首相が発表した『第二の矢』と『第三の矢』は、国内の有権者の受けを狙ったものであり、旧アベノミクスの中の構造改革について再度広告宣伝を行ったに過ぎず、人々の失望を買っただけでした。

安倍首相は高齢者のための介護態勢の充実に加え、日本人の出生率の低さを改善するために、これまで以上の財政的援助を約束しました。
現在1億2,700万人の日本の人口は、2060年までに8,700万人にまで減少すると予測されていますが、安倍首相は一億人以下にならないよう対策を取ると繰り返し約束しました。

しかし改革派の人々は今度の『新たな3本の矢』が、実際には約束していた根本的な構造改革を先送りするための方便に過ぎないものであることを懸念しています。
特にこれまで日本の中で政治的影響力を振るってきた農民、医師、薬剤師などの特権的な地位に踏み込むことはうやむやになりそうです。

アベノミクス01
かつて首相の顧問を務めたコロンビア大学の伊藤隆敏教授は、今やアベノミクスは大衆の人気取り政策に変質してしまう危険に陥り、当初掲げていた構造改革による日本経済の立て直しという野心などはどこかに吹き飛んでしまっていると懸念しています。

安倍首相は9月末、ニューヨークに集まった国際的な投資家の前でより大胆な発言を行いました。
コーポレートガバナンスで更なるステップアップを約束しましたが、じつはその多くはすでに達成済みのものです。
さらに野心的な自由貿易協定であり、域内の経済の自由化を目指すトランス太平洋パートナーシップ(TPP)の合意も間近に迫っていると胸を張って見せました。

しかし実際に求められる大胆な決断、そして縮小を続ける人口問題を解決するために実現可能な政策は、非常にきびしい日本の出入国管理政策を緩めることです。
人口動態を安定させると公約しているにもかかわらず、安倍首相はこの点まで踏み込むことには全く意欲を見せていません。

Syr20
9月末国連総会における演説で、安倍首相はシリア、イラク難民問題に関する資金援助を昨年実績の3倍にまで増やすと誓いましたが、難民の受け入れについてはただの一人も受け入れるとは口にしませんでした。

正しい的(まと)を設定し、そこに向かって正確に矢を射る能力が安倍首相にはあるのかどうか、その点に関する疑いは増々大きくなっています。

http://www.economist.com/news/asia/21668283-japans-new-three-little-arrows-shinzo-abe-tweaks-his-economic-programme-japan?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227

【 自衛隊の新たな役割 – それは日本の民主主義史上の汚点?効果的抑止策?】[ECO]

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所要時間 約 9分

安倍首相周辺による脅迫的国家主義は、敵対する人々を『反日(裏切り者)』と攻撃し、彼らが日本国内で孤立するように謀ってきた

エコノミスト 9月26日

安全保障関連法案成立
議会の中では怒気に満ちた論争が絶え間なく続き、国会議事堂の外ではこちらも怒りに満ちた抗議の声が盛り上がる中、9月19日日本の上院にあたる参議院は一連の安全保障関連法案を可決成立させました。
この法案は日本国憲法の中身について解釈の変更を行い、戦後続いてきた日本の平和主義路線を大きく転換させることが目的です。

投票の結果は148対90、安倍晋三の保守タカ派連立政権は法案成立を押し通しました。

この法案成立はふたつの場面で大きな転換点となりました。
ひとつは第二次世界大戦(太平洋戦争)中に日本が数々の非人道行為を行った中国との関係において、もう一つは安倍政権の支持率を急落させる結果をもたらしたという点において。

中国と国境接する近隣諸国とアメリカを核とした同盟関係にある、ただし韓国を除く各国政府はおおむね歓迎の意を表しました。

この法案の成立により大きく変わるのは、日本が直接攻撃を受けていなくとも、日本の自衛隊がアメリカその他の同盟国を掩護することが出来るようになることです。

安部自衛隊行進
2、3の弱小政党との話し合いにより、自衛隊を海外に派遣する際には国会の承認をえるという1項が加えられましたが、いずれにしても不測の事態が発生した場合には米軍が日本を防衛するための戦闘を行なわなければならないとする長年の日米安全保障条約の中身が、今後は一方通行ではなく双方向に掩護し合うという内容に変わりました。

これは今後自衛隊は国連平和維持活動においても、戦闘行動的な役割を担う可能性が高くなることを意味します。
興味深い最初の任務は南スーダンになりそうです。
当地では自衛隊は中国軍と協力して国連のPKO任務にあたる予定です。

新しい法律のもとでは、万が一にも中国軍兵士が攻撃にさらされた場合は自衛隊は直ちに援護のための戦闘を行なわなければなりません。

にもかかわらず、中国政府は安全保障関連法案を強引に成立させたことについて、安倍政権を厳しく非難しました。

参議院で安全保障関連法案が成立した数時間の後には、中国外務省は日本に対し『歴史から厳しい教訓を学び取る』ように『真剣な姿勢』で迫りました。
そして対立をあおるのではなく、『地域の平和と安定』にこそ貢献すべきだとコメントしました。

安保法案02
この法案が今年7月に衆議院を通過した際、中国の国営通信社である新華社は、安全保障関連法案は日本が軍国主義に復帰したことを象徴する『汚点』になったと表現しました。
論説委員の一人は武士の刀を比喩として用い、安倍首相が70年間続いた日本の平和主義を『バッサリ斬り倒してしまった』と表現しました。

安倍首相とその取り巻きによる脅迫的国家主義に対し、あからさまな怒りをぶつけることには慎重な態度をとってきました。
安倍首相周辺による脅迫的国家主義は、自分たちと敵対する主張をする日本人を『反日(裏切り者)』と攻撃し、彼らが日本国内で孤立するように謀ってきました。

安倍首相に対し、第二次世界大戦(太平洋戦争)中に日本が中国国内で行ったむごたらしい仕打ち、残虐行為について、中国国民は決して忘れることも許すことも無いという事を解らせることは正しいことです。

しかし中国自身は、その軍事的野心が日本を含む近隣諸国の不安をかきたてているという事にはかなり鈍感なようです。

中国の国防支出は実質で2009年までの5年間に2倍に増え、その後の5年間でさらに50%増加し、今年も経済が減速傾向にあるにもかかわらず10%以上増えています。

日中軍事支出比較
日本も国防予算を増額していますが、中国の規模とは比較になりません。(上の表)
今年日本は防衛予算を2%増額し4兆9,800億円(420億ドル)に達し、来年さらに2%増額されることになっています。

中国の軍事支出は昨年公式には1,320億ドル(約15兆6,500億円)と公表されましたが、スウェーデンの首都ストックホルムに本部があるシンクタンクのSIPRIは本当の数字が2,160億ドル(約25兆6,100億円)であると見積もっています。
アジア太平洋地域の他の諸国も引きずられるようにして、軍事支出を増額しています。
中国は近隣諸国と紛争が生じている領土問題については、強硬な姿勢を崩さず一方的な主張を繰り返しており、当事国として対応せざるを得ない状況にあります。

日米安全保障条約はしばしば日本では国内問題として争いの種になりますが、アメリカ軍との協働において自衛隊の対応範囲が広がることは、中国にとって明らかに好ましいことではありません。

特にアメリカ海軍と日本の海上自衛隊が今後は密に協力し合う可能性があり、そうなれば中国にとっては直接的な難題が出現することになります。

しかし中国政府は、新たに成立した安全保障関連法案に対して日本国民の反発が拡大していることに慰めを見出すことになりそうです。

SEALDs 5
法的問題に強い影響力を持つ日本弁護士会の村越進会長は今後、法廷闘争において安全保障関連法案の違法性を明らかにすると語りました。
村越会長は安全保障関連法案を国民の意思に反して強引に成立させた安倍政権のやり方は
「日本の立憲民主主義史上に『汚点』を残すものだ」と新華社通信と同じ表現を使って批判しました。

日本の軍事能力の拡大に対する中国政府の懸念にはかなりの裏がありそうですが、懸念を深めているという点に限っていえば、多くの日本国民もまた同じことのようです。

http://www.economist.com/news/asia/21667981-chinas-angry-reaction-japans-new-security-laws-echoed-home-abes-stain?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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この文章、中国の台頭する軍事的プレゼンスに対し日米が同盟関係を強めることは、国際政治学的に必然性はあるとする一方で、安倍政権のやり方は『脅迫的国家主義( the menacing nationalism of Mr Abe )』であると断じています。
国力が尽きかけていた機会をとらえて南ベトナムから西沙諸島の領有権を奪ったやり方、そしてチベット問題を見れば、領土問題に関して中国が善意の国家でないことは明らかです。
だからと言って私たち日本人はこれ以上、『脅迫的国家主義』の跋扈を許すわけにはいきません。
『脅迫的国家主義』こそは今回の安全保障関連法案に対し、国民がこれだけ怒りを爆発させた大きな要因の一つであり、民主主義とは絶対相容れないものだからです。

この記事の結びの部分については、普段【星の金貨プロジェクト】をご愛読いただいている方々には異論も多いとは思いますが、『脅迫的国家主義』という新たな表現が用いられたという点の重要性を考え、ご紹介します。
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【 10月9日の報道写真から 】

アメリカNBCニュース 10月8日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

難民20
10月9日、トルコからゴムボートでエーゲ海を横断し、無事ギリシャのレスボス島に上陸し、互いに無事を喜び合うカップル。
http://www.nbcnews.com/news/photo/today-pictures-october-9-n442041

【 安全保障関連法案は軍事的台頭を続ける中国に対し、効果的な一撃となり得るのか? 】

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所要時間 約 6分

台頭する中国の軍事的圧力の前に、国力の減衰を続ける日米両国の窮余の一策?
法案成立は多くの日本人の心の中に怒りの火を点じ、湧くような批判を煽ることになった
飽くまで日本を掩護するという政治的意思が、将来もアメリカに確実に存在し続けるのかどうか…

ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 9月18日

海上自衛隊01
日本の参議院は、第二次世界大戦(太平洋戦争)以降、自衛隊の国外での戦闘行為に対する厳しい制限を取り払うための法律を可決成立させました。
この法案に対しては、国際紛争に進んで参加するという政策に疑問を持つ平和主義者や国民による大きな抗議活動に発展していました。

詰め寄り群がる野党議員たちを無視し、この日の未明安倍晋三首相の連立与党によって支配される参議院は、論争の的となる請求にその最終的な承認を与えました。
安全保障関連法案成立後の記者会見で安倍首相は
「国民の生命と平和な生活を守り、戦争を防ぐ目的のために必要な」法案だと強調したことをロイター通信社が伝えました。

しかしこの法案成立は多くの日本人の心の中に怒りの火を点じ、湧くような批判を煽ることになりました。
国民は国際紛争の場で、日本がより大きな軍事的役割を演ずることになることを恐れています。

安全保障法案04
新しい法律の下では日本に対する直接的脅威が発生していなくとも、自衛隊の名で知られる軍隊はアメリカを始めとする同盟国の援軍として戦闘行動を行うことが出来るようになります。

第二次世界大戦(太平洋戦争)の敗戦後に制定された憲法により、日本には自国に対する直接攻撃が行なわれた場合にのみ軍事力を行使できるという厳しい制限が課されることになりました。
しかし安全保障関連法案の成立により、日本は集団的自衛権の行使が認められることになり、同盟国の軍隊の援護を目的とした軍事力の行使に道が開かれることになりました。

▽軍事拡大路線への転換

イラクも含めこれまでも日本は国連の平和維持活動に参加してきましたが、これまでの日本の政権は海外での自衛隊の活動については、どれ程戦闘の危険があってもすべて日本国憲法による厳しい制約の下で行ってきました。

新たな法制度の下では日本は自国を目標としたものでなくとも、飛来するミサイルを途中で補足・撃墜することが出来るようになります。
また同盟国の軍艦が攻撃されれば、自衛隊はその掩護のため合法的に戦闘を行う事が可能になります。
ただし日本に対する「差し迫った重要な脅威」が発生していると判断された場合に、こうした行為が可能になります。

安全保障法案05
法案の成立に反対する人々は規定している内容があまりにも漠然としており、将来の政権担当者が解釈次第でどのようにも運用できる危険性を指摘しています。

多くの日本人は第二次世界大戦(太平洋戦争)後に平和で繁栄した社会が70年間続いた挙句、平和主義的方針のいかなる変更であれ、日本が国際紛争に巻き込まれる事態が発生することになることを懸念しています。
日本では安全保障関連法案の成立に反対する一般市民による大規模な抗議行動が、この数カ月間続いています。

これに対し政権側は北朝鮮や台頭を続ける中国の脅威に対抗する上で、積極的な軍事活動を行う事は平和の維持に貢献すると主張しています。

9月17日木曜日、渦中の安全保障関連法案は参議院の委員会で採択され、戦いの場は本会議場に移りました。
委員会の席では日本の政治シーンとしては異例の場面が展開され、法案の強引な可決に反対する野党議員は参議院の廊下に詰めかけ、採択を阻止するため深夜まで委員長の周囲を取り囲み抗議を続けていました。

安全保障法案03
アジア太平洋地区におけるアメリカの覇権に対抗すべく軍事的台頭を続ける中国に対し、効果的な一撃を模索していたアメリカ政府は、日本の安全保障関連法案の可決成立を歓迎しました。

将来日本が武力攻撃を受けた場合、アメリカは日米安全保障条約に基づき日本を防衛するために戦闘行動を起こさなければなりません。
しかし実はアメリカ国内には、その時点でそれだけの国力を維持できているかどうか、あるいは飽くまで日本を掩護するという政治的意思が本当にあるのかどうか、疑問視する声があります。

http://www.dw.com/en/japans-parliament-approves-controversial-security-bill/a-18722083
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【 10月8日の報道写真から 】

アメリカNBCニュース 10月8日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

難民03
10月8日ギリシャのレスボス島、トルコからエーゲ海を横断してきた定員オーバーのゴムボートから、難民の少女の上陸を手助けするボランティア。
今週末、EU首脳はイタリアとギリシャに滞留している数万人の亡命希望者を域内各国に移転させることに各国が合意したため、計画を実施に移すと発表しました。
http://www.nbcnews.com/news/photo/today-pictures-october-8-n441431

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