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発症と進行のメカニズムを理解し、最良の予防法について考えよう
発症により重症化する理由、死亡に至る理由
ジェームズ・ギャラガー / 英国BBC 2020年3月14日
新型コロナウイルスは昨年12月に出現したばかりですが、世界はすでにウイルスの感染拡大とそれが引き起こす病気との戦いに奔走することになりました。
ほとんどの場合、症状は軽度ですが、一部の人々にとっては死に至る病になっています。
適切な予防措置を講じるためにも、ウイルスが体をどのように攻撃するのか、なぜ死に至る人々がいるのか、理解しましょう。
□ 潜伏期間
潜伏期間とは、言い換えると新型コロナウイルスが感染した人の体内で自分の存在を確立する期間です。
ウイルスはあなたの体を構成している細胞の中に入り込み、そこを乗っ取ることで感染を完成させます。
正式にCovid-19と名付けられた新型コロナウイルスは、誰かが近くで咳をした直後あなたが吸い込んでしまう、あるいはウイルスに汚染された表面をあなたが手で触り、その手で自分の顔に触れることによって体内に侵入します。
新型コロナウイルスは最初に喉、気道、肺の内側の細胞に感染し、その場所を「コロナウイルス生産工場」に変えてしまいます。
そこで増殖し、さらに多くの細胞に感染を続ける膨大な数の新しいウイルスを吐き出すことになるのです。
しかしこの初期段階ではあなたはまだ本格的に症状を発症しません。
中にはそのまま罹患せずに終わる人もいます。
潜伏期間、感染してから最初の症状が現れるまでの時間は大きく異なりますが、平均で5日間です。
□ 症状が軽い場合
新型コロナウイルスCovid-19は10人中8人にとっては軽度の感染症であり、主な症状は発熱と咳です。
体の痛み、のどの痛み、頭痛はすべて可能性がありますが、必ずというわけではありません。
発熱、および吐き気などの症状が出るのは、あなたの免疫系が感染に反応した結果です。
ウイルスを敵対的な侵入者として認識し、サイトカインと呼ばれる化学物質を放出することで、体内で問題が発生したことをあなたに認識させようとしているのです。
こうした働きによって免疫系を活動させますが、同時に身体の痛み、痛み、発熱も引き起こすことになります。
コロナウイルスの咳は最初は乾いたものであり(むせかえるような感じはありません)、その原因はウイルスに感染した細胞の刺激によるものです。
もっとも症状が進んだ段階で咳き込み、吐いてしまう人がいますが、これはウイルスによって死んだ肺細胞を含んだベトベトした粘液が出てきます。
こうした症状を治療するには安静、大量の水分、パラセタモール(英国の鎮痛薬)を使いますが、特に専門病院で治療を受ける必要はありません。
この段階は約1週間続きますが、その過程で免疫系がウイルスを撃退するため、ほとんどの人が回復に向かいます。
ただしCovid-19によってもっと深刻な症状を引き起こす人々もいます。
現時点で症状が進んだ段階で鼻水が止まらなくなるという、風邪とよく似た症状を発症する人々がいることが確認されました。
□ 症状が重い場合
病気が重篤化するのは免疫系がウイルスに過剰反応するケースです。
生体内の他の部分への免疫系の過剰反応は炎症を引き起こしますが、免疫がどの程度の反応を起こすかというのは極めて微妙なバランスの上に成り立っています。
炎症反応が強すぎると、身体全体に二次的な損傷を引き起こす可能性があります。
「新型コロナウイルスは免疫反応のバランスを壊してしまいます。炎症反応が強すぎるのですが、新型コロナウイルスがどのようにしてこうした反応を引き起こすのかはまだ未解明です。」
ロンドンのキングス・カレッジのナタリー・マクダーモット博士がこう語りました。
この炎症が肺で起きると肺炎になります。
口や鼻から侵入した新型コロナウイルスが気管を通り、さらに肺の中の細い細気管支を通り抜けることができた場合、最終的には小さな小さな肺胞に入り込みます。
これは、酸素を血液中に送り込み、二酸化炭素を肺の外に排出する場所ですが、肺炎では小さな嚢が水で満たされ始め、最終的に息切れと呼吸困難を引き起こす可能性があります。
症状の重い患者は呼吸するために人工呼吸器の装着が必要になります。
これまで中国で収集されたデータに基づくと、感染者中約14%の確率でこうした症状を発症することになります。
□ 重症
症例の約6%が重態になると推定されます。
この段階に至ると身体の多くの部分が正常な機能を失い、死に至る危険性が高くなります。
もっとも問題なのは、免疫システムが制御不能に陥り、全身に損傷を引き起こすことです。
血圧が危険なレベルまで低下し、臓器が正常に機能しなくなるか、完全に機能しなくなると、敗血(症)性ショックにつながる可能性があります。
肺ガ広範囲にわたり炎症を起こすことによって引き起こされる急性呼吸促迫[窮迫]症候群は、生き残るために必要十分な酸素を取り入れることを不可能にします。
腎臓は血液を洗浄するのを止め、腸の内膜が損傷する可能性も出てきます。
「このウイルスは非常に広範囲に炎症を引き起こすため、患者は文字通り倒れることになります…そしてそのまま多臓器不全を引き起こす可能性があります。」とバラト・パンカニア博士がこう語りました。
そして、免疫システムがウイルスを抑え込むことができない場合、最終的には体の隅々まで広がってさらに多くの損傷を引き起こす可能性があるのです。
この段階での治療は非常に侵襲的(侵襲とは、「病気」「怪我」だけでなく「手術」「医療処置」のような「生体を傷つけること」のすべてを指す言葉)であり、ECMO(体外式膜型人工肺)が使われる場合もあります。
体外生命維持とも呼ばれる体外膜酸素化は、心臓と肺が生命を維持するのに十分な量のガス交換または灌流を提供できない人に長期の心臓と呼吸の支援を提供する体外技術です。太いチューブを介して体から血液を取り出し、酸素を供給して送り込む人工肺装置を使います。
しかし最終的には体内組織の損傷は致死的レベルに達する可能性があり、そのレベルでは臓器が体を生かし続けることができなくなります。
□ 最初の死亡例
最大限の努力をしたにもかかわらず、一部の患者がどのように死亡したかを医師が説明しています。
中国湖北省武漢市のジンインタン病院で死亡した最初の2人の患者は、ランセット・メディカルジャーナルに掲載された詳しい説明によると、長期の喫煙者であり、肺の機能が低下していたと考えられます。
最初に死亡した61歳の男性は、病院に到着する以前に重度の肺炎を発症していました。
彼は急性呼吸困難であり、人工呼吸器を装着していたにもかかわらず、肺が機能しなくなりその結果心停止に至りました。
この患者は入院してから11日後に死亡しました。
2例目の死亡患者である69歳の男性も、急性呼吸促迫[窮迫]症候群を患っていました。
ECMO(体外式膜型人工肺)に接続されていましたが、これでは十分ではありませんでした。
この患者は血圧が急激に低下した段階で重度の肺炎と敗血症性ショックにより死亡しました。
https://www.bbc.com/news/health-51214864
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