【 なぜ今日この事態に至ってしまったのか?福島第一原発の『危機』 】《前篇》
すべては東京電力の、間に合わせ・その場しのぎの対策が招いた
東京電力の事故後の対応は決めて場当たり的なもので、長期間安全を保つことなど望むべくもない
ティム・ヒューム / アメリカCNNニュース 9月4日
この4半世紀で最悪の原子力発電所事故が発生してから2年以上が経過しましたが、事故によって破壊された福島第一原発は、未だに非常に毒性の高い状態がつついています。
この状況を受け、日本政府は自らが直接新たな対策を実施する旨表明せざるを得なくなりました。
東京電力はこれまでトラブルが発生する度、その場しのぎの対策ばかりを行い、繰り返し非難されてきましたが、電力事業を所管する経済産業省の茂木大臣は、そのやり方を『もぐらたたきゲーム』に例えました。
日本政府は直接福島第一原発の汚染水の問題の解決に乗り出すに当たり、これまで試みられたことも無く、検証もされていない対策を実施するための費用として、約470億円の国費を投入することを明らかにしました。
▽これまでの経緯
2011年、東京の北約240キロ地点にある、東北地方太平洋岸にある福島第一原子力発電所が津波によって水没し、当時稼働中だった原子炉にとって極めて重要な設備である冷却装置を停止させました。
このため3基の原子炉がメルトダウンし、大量の放射性物質を大気中に放出、1986年のチェルノブイリ事故以来最悪の原子力発電所事故が発生したのです。
事故発生以来、東京電力はメルトダウンした核燃料が再び過熱して事故が拡大しないよう、毎日数百トンの水を送りこんで冷却を続けなければならない状況に追い込まれています。
この冷却のため使われた水は、直接核燃料に触れることにより高濃度に汚染されてしまいますが、この汚染水が毎日400トンずつ増え続けています。
汚染水は「とりあえず」そのまま保管する目的で「急造された」タンク内に貯蔵されていますが、タンクの数は1,000基前後に上り、実にオリンピック・プール160杯分の高濃度汚染水が福島第一原発の敷地内に貯ってしまっているのです。
福島県沖合の海水の汚染について調査を行っていた科学者たちは、福島第一原発から恒常的に汚染水が漏れ出している可能性について、この1年指摘を繰り返してきましたが、東京電力がその事実をやっと認めたのはつい最近になってからの事でした。
8月になって東京電力は、問題の急増されたタンクの1基から約300トンの高濃度汚染水が漏れ出したことを明らかにしました。
事態を重く見た日本の原子力規制委員会は、国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価をレベル3『重大な異常事象』に引き上げました。これは福島第一原発のメルトダウン事故自体レベル7と判定されたことを除けば、その後最も深刻な状況に陥っていることを現すものです。
その後の調査で、複数の貯蔵タンク、そして配管類から汚染水が漏れ出している可能性があることが判明しました。
国際原子力機関(IAEA)によればレベル3『重大な異常事象』は、「一般市民の被ばくの可能性は高くは無いものの、特定の地域で予測を超えた深刻な汚染が進行している」状況を指すものです。
▽ 汚染水漏れが発生する原因は?
これまでに汚染水漏れを起こしたタンクは、鉄板の継ぎ目をゴム製のシールドで補強したタイプのもので、この場所にある1,000基のタンクの内約350基がこのタイプです。
これらのタンクは事故の直後に増え続けた汚染水を、何とか収納するため急造されたものですが、事故発生から2年半が過ぎ、そのほころびが見え始めたものです。
アメリカの原子力技術者で、原子力発電所の管理責任者でもあったマイケル・フリードランダー氏は、CNNの取材に対し、以下のように回答しました。
このトラブルは東京電力が事故発生直後、緊急に対応するため間に合わせに急増したはずの設備をそのまま使い続けたために発生した問題であり、東京電力の事故後の対応が如何に場当たり的なものであり、長期間安全を保つことなど望むべくもない、その事を証明する実例である。
「危機が最高潮に達していた当時、彼らが対応しなければならなかった課題の優先順位を考えれば、汚染水タンクを急ぎ作り続けたこと自体は、責められるべき事ではありません。」
フリードランダー氏がこう語りました。
しかし緊急時の対応を終えた後も、東京電力はこの問題に長期間どう対応するかのビジョンを示そうとはしなかったのです。
「毎日400トンずつ高濃度汚染水が途絶えることなく増え続ける、それを解決する手立ては目下のところ存在しません。」
「東京電力が採った対策は、いずれも持続可能なものではありませんでした。
福島第一原発の敷地内には大量の高濃度汚染水を貯蔵するタンクを、敷地の周囲には大量の放射性廃棄物を置き並べたものの、それらを処分するための長期的・永続的な解決策は無い、それが現実なのです。」
▽ 問題はそれだけなのか?
地下水についても、似たような問題が発生しています。
福島第一原発の外、山側から敷地内の地下に流れ込む地下水が、汚染のひどい原子炉建屋・タービン建屋付近で汚染水となってしまうのです。
7月東京電力は海側に汚染水の漏出を食い止めるための防護壁を建設したものの、それを超えて汚染水が海に流れ出してしまっていることを認めざるを得なくなりました。
〈 後篇に続く 〉
http://edition.cnn.com/2013/09/04/world/asia/japan-fukushima-nuclear-crisis-explainer/index.html?iid=article_sideba
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数日前に掲載した「自民党はこれからも『原子力ムラ』の肩を持ち続けるのか?その見識がこれから問われる【 ニッポン、これからのエネルギー 】エコノミスト( https://kobajun.chips.jp/?p=13992、 https://kobajun.chips.jp/?p=14004 )について、「自民党はこれからも『原子力ムラ』の肩を持ち続けるのか」という表現・翻訳はあたらないのではないか?!というご批判をいただきました。
確かに原文を忠実に翻訳すると、そうはなりません。
しかし、私は福島第一原発の事故発生以来、アメリカ、イギリスを中心に各国一流メディアの原子力発電に関する記事を、ほぼ毎日翻訳し続けてきました。
翻訳した原子力発電関連記事の数は300本なのか、400本なのか、500本なのか自分でも解りませんが、この作業を続けてきたおかげで、今や自分の中に世界中のメディアの『総合世論』とも言うべきものが出来上がりました。
「自民党は『原子力ムラ』の肩を持ちつづけている」、この表現はこうした背景の中から出てきたものです。
その点、ご理解をいただければ、と思います。
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すべては東京電力の、間に合わせ・その場しのぎの対策が招いた
ティム・ヒューム / アメリカCNNニュース 2013年9月4日
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