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政府が通したのは財界の要求、しかもその費用負担は国民へ[ウォールストリート・ジャーナル]

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【 撤回されてしまった日本の原子力発電・廃止計画 】

エリノア・ワーノック / ウォールストリート・ジャーナル 9月19日

原子力発電の無い日本をつくる、という方針が撤回されました。

原子力発電を支持する財界から厳しい批判を突きつけられ、2040年までに原子力発電を段階的に廃止するという計画に対し、内閣として完全な承認を与えることを拒絶したのです。


古川元久内閣府特命担当大臣(経済財政政策・科学技術政策担当)は取材に対し、前の週に諮問委員会が作成した、段階的な原子力発電の廃止を盛り込んだ計画に、日本政府として完全な承認を与えることはせず、『参考意見として考慮に入れる』にとどめることになった、と語りました。
同大臣が読み上げた内閣の声明の内容は以下の通りです。
「将来のエネルギー政策及び環境政策に関して、我々は革新的なエネルギー・環境戦略を考慮に入れ、関連する地方自治体と懸念している国際社会と責任ある議論を行う」
そして、こうつけ加えられていました。
「柔軟性を維持し、継続的に国民の理解を求めながら、不断の検証と見直しを行いながら政策を実行していく」


昨年発生した福島第一原発の事故以前、必要とする電力の約3分の1を原子力発電によって賄ってきました。事故後原子力発電所の安全性に対する国民の不安は増大し、現在、2基を除くすべての原子炉が停止しています。

古川閣府特命担当大臣は記者団に対し、2030年代(2040年まで)に原子力発電の廃止が可能かどうか判断するのは、早計に過ぎると語りました。

昨年福島第一原発の事故が発生し、一般国民の原子力発電に対する懸念が大きく膨らんだことにより、14日金曜日、日本政府は原子力発電の段階的廃止を盛り込んだ、長期エネルギー政策を発表したはずでした。


原子力発電所の廃止は電力料金を高騰させ、電力記要求を不安定にし、日本の経済活動の障害になると主張する、ところが財界からの激しい反発を受けることになったのです。
「産業界はこのような政策は、全く受け入れることができない。」
日本最大の経済界の政治団体である経団連の米倉会長が18日火曜日、日本政府に詰め寄りました。
「こんな計画は白紙に戻し、もっと現実的なエネルギー政策を採用するように求める。」

中部電力の美津濃社長は
「日本のような資源がほとんどない国では、安定した電力供給のためには地熱発電、原子力発電、そして水力発電をバランスよく組み合わせたエネルギー政策を採用することが重要である。したがって電力業界は、今後も原子力発電を重要な発電手段と位置づけ、継続して行くつもりである。」


3基の原子炉が現在停止中している原子力発電所1か所を、中部電力は管理しています。
しかしこの浜岡原子力発電所は、東海地震の予想震源域にある上、活断層が直下にあるとされ、地元住民は廃炉を求めています。

今回の政府の決定に対しては、原子力発電に反対する人々、そして環境問題に取り組む人々から批判が集中しました。
この夏日本政府が行った意見聴取会において、大多数の参加者から日本の将来のエネルギー政策においては原子力発電への依存をゼロにすべきである、との意見が出されたにもかかわらず、この原発ゼロの政策を『参考意見にとどめ置く』とされてしまったことについて、国民はまさに『裏切られた』と感じることになるだろう。
こう語るのはグリーンピース・ジャパンで反原発の運動を行っている鈴木かずえさんです。
「国家予算の総額を上回る程の損害をもたらす巨大地震が再び日本を襲うかどうか、それは解りません。しかしそうなれば、電力会社が損害賠償を行うことなど不可能になります。結局その分はすべて、国民が負担させられることになるのです。」
彼女は2030年代に(2040年までに)原子力発電を段階的に廃止した場合の、経済面での影響についての問いに、このように答えました。
そして長期的観点に立てば、再生可能エネルギーを増やしていくことが、日本全体のエネルギーコストの低下につながるとつけ加えました。

http://online.wsj.com/article/SB10000872396390444165804578005882519607670.html
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「将来のエネルギー政策及び環境政策に関して、我々は革新的なエネルギー・環境戦略を考慮に入れ、関連する地方自治体と懸念している国際社会と責任ある議論を行う」
「柔軟性を維持し、継続的に国民の理解を求めながら、不断の検証と見直しを行いながら政策を実行していく」

まさにこれを官僚的作文というのでしょうが、大切な部分を読み解いてみましょう。
まず将来のエネルギー手段を再生可能エネルギーとせず『革新的なエネルギー』とした点ですが、アメリカで実用化がすすめられている小型原子炉も、ここには含まれているでしょう。

そして『関連する地方自治体と懸念している国際社会と責任ある議論を行う』という部分。まず国民という文字が無い点から、国民との議論はもう行わない、そう宣言しているのではないでしょうか?
これは続く文章で「国民の理解を得た上で」ではなく『継続的に国民の理解を求めながら』とされた表現が、「理解を求めはするが、必ずしも合意を取り付ける必要は無い」と解釈できることからも、そのように類推できます。
そして懸念している国際社会とは、日本が核廃棄物の中間処理を委託しているフランス、イギリスの利害、そしてアメリカの原子力産官複合体のことが念頭にあっての表現と考えられます。

こうして読み解いた結果、政府見解の『あり得るシナリオ』は、以下のようになると思います。

「将来のエネルギー政策及び環境政策に関しては、日本政府は原子力発電の新技術も考慮に入れ、原発が立地し国の補助金を受け取っている地方自治体と、米英仏の原子力産官複合体の意見を聴き、その両方の意向に逆らわないように方針を立てていく。この議論に一般国民は参加させない。」
「いつでも原子力発電所の廃止路線を完全放棄できるようにしておき、その際、国民の理解を求めはするが、必ずしも合意を取り付ける必要は無い。国民の抵抗が思ったより少なければ、原子力ルネッサンスの復活も考えてよいのではないか。」

これを見てどうお感じになるでしょうか?
私は『公憤』という言葉を、久しぶりに思い出しました。

しかしだからとって、また自民党が政権をとれば、今度こそ白昼堂々脱原発の願いが捨て去られる危険性大です。
昨日も大江健三郎氏らが自民党総裁候補全員に送付した脱原発アンケートに対し、全員が黙殺をもって応えた旨報じられていました。
中でも最大の原発推進派と見られる人物が総裁に選ばれ、自民党の本音ははっきりした観があります。

脱原発を願う人々にとっては、まさに前門の虎、後門のオオカミの状況です。
さらには徴兵制の復活、軍備増強を言ってはばからない維新の会も控えています。財政が窮迫している上に、すでに福島第一原発の事故によりただ生活することにすら危険がつきまとうようになってしまった日本で、戦争をする能力拡大のために予算をつぎ込むことに、どんな意味があるのでしょうか?

これに対し敢然と民主党を離党した平智之議員のような政治家や、『国民の生活が第一』、共産党、社民党などは、例によって日本の大手マスコミが民主党総裁選、自民党総裁選にかこつけて黙殺を続けているため、苦しい戦いを強いられています。
しかしこんな時こそ国民一人一人に語りかけ、危機的状況にあるこの国の『脱原発への願い』を救い出して欲しいものです。

ロシア革命の『ヴ・ナロード(民衆の中へ)』、反帝政派の活動家は民衆の中に入っていき、地道に支持を拡大して行きました。
今多くの人々が行き場の無い怒りと、脱原発へのひたむきな思いを抱いたまま、立ちすくむことを強いられています。
一方で今ほど大勢の国民が、自分たちの思いが政治の場で力を持つことを、切望している時はないのです。

脱原発を支持する政治家の皆さんには、どうしたら議席を手に入れることができるのか冷徹に計算し、「善戦した」「一定の成果はあった」などという中途半端な評価に終わらないよう、勝利への方程式をしっかりと組み上げていただきたいものです。

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ほんとうの「今」を知りたくて、アメリカCNN、NBC、ABC、CBS、英国BBC、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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