【 ベテランの原子力発電専門家、地震多発帯の原子炉の完全停止を訴える 】《後篇》

地震想定の誤りを飽くまで認めず、従来のままの原子力発電所の操業継続に固執する原子力規制委員会
本当に必要とされる耐震性能向上の改良工事を行なえば、原子力発電所は最早不採算設備と化してしまう

AP通信 / ガーディアン 2014年8月25日

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環太平洋地震多発帯の上の原子力発電所の危険性を警告したペックの分析に対する反発は、まず原子力規制委員会の内部から噴出し、同委員会としては珍しい内部論争に発展しました。
論争の的となっているのは、大地震によって原子力発電所の内部設備が破壊されるかどうか、そして起こりうる地震のマグニチュードの数値、すなわち原子力発電所が耐えなければならない地震の強度をいくつに設定するかという問題です。

ペック氏と原子力規制委員会の上層部とのさらに大きな論争のテーマは、2008年に発見されたショアライン活断層の存在です。
この活断層はディアブロ・キャニオン原子力発電所の原子炉からわずか600メートル離れた海側の場所を、曲がりくねりながら走っています。
そして原子力発電所から8キロほど離れた場所に1970年代にすでにさらに大きなホスグリ断層が発見されていました。
しかしこの断層が発見されたのは原子力発電所の建設申請に許可が下り、すでに工事が進んでいた時でした。
その後も活断層の調査は続けられ、原子炉の南北に互いに連動する可能性のある活断層の地図が出来上がりました。

ディァブロ活断層
ペック氏がまとめたところでは、ディアブロ・キャニオン原子力発電所を所有運営するパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社が2011年に行った内部調査では、付近にある活断層、ショアライン、ロスオソスとサンルイス・ベイの3つとも、大地震が発生した際には原子力発電所内の主要設備が想定している耐震強度以上の地震動を生み出す可能性が明らかになりました。
サンルイス・ベイ活断層の場合、その大きさは最大1.75倍に達することが判明しました。

この見解の中にはピーク時の地動加速度と呼ばれる、それぞれの場所で地震が発生した場合、その強度に応じてどれだけの振動が発生するかという計算結果が含まれています。
分析の結果、PG&E社は原子力発電所の設計時の想定を上回る地震が発生した場合でも、発電所内の主要な設備が正常に動作することを証明できなかったと報告書は述べています。
これは操業許可申請事項違反に当たります。

最後にペック氏の報告は、ディアブロ・キャニオン原子力発電所は配管類、原子炉冷却装置、その他の主要設備が設計時の想定を上回る地震が発生した場合においても、正常に作動することが確認されない限り、あるいはいくつかの設備が動作しなくなっても全体としての機能を失わないという事が証明できない限り、完全停止させるべきであると述べています。

don't need it
ペック氏は、米国原子力規制委員会がこれらの問題の検証をすることなくディアブロ・キャニオン原子力発電所の操業を続けさせることに反対しています。
発電所はペック氏が指摘した問題点をいずれもクリアすることが出来なかったため、2012年同氏はディアブロ・キャニオン原子力発電所が操業継続に必要な安全基準を満たしていないとして、正式の異議を申し立てる手続きを行いました。
しかし数週間のうちに、原子力規制委員会は同発電所の管理運営に問題は無いとの見解を下したのです。

2013年ペック氏はさらなる異議申し立てを行い、新たな検証が行われることになりました。

しかし原子力規制委員会はホスグリ活断層が想定される最大の地震動を生んでも、ディアブロ・キャニオン原子力発電所の耐震性能はそれを上回っていると主張しています。

これに対しペック氏は、原子力規制委員会が行ったホスグリ断層が引き起こす可能性のある地震動の検証結果を彼なりに再検証した結果、発電所内のありとあらゆる設備が設計時に想定したよりもさらに大きな地震にも耐えられると同委員会が結論づけていることについて、構造強度の計算方法などに誤りがあると指摘しました。

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2012年原子力規制委員会は、ショアライン活断層が生み出す地震動がディアブロ・キャニオンの原子炉の新たな脅威にはならないとする、予備調査結果を支持しました。
この予備調査は発電所周辺にあるホスグリ活断層について、「原子力発電所の設計段階において、想定された範囲内の地震動しか生み出さない。」と結論付けました。

ガーディアンの取材に対しペック氏は、これら一連の内部論争に関するコメントを控えたいと伝えてきました。
ペック氏は原子力工学の博士号を有し、現在はテネシー州にある原子力規制委員会のテクニカル・トレーニング・センターの上級指導員の地位にあります。

地震活断層は原子力発電所にとって、何十年もの間一番気がかりな隣人でした。

北部カリフォルニア州北部のフンボルト湾原子力発電所では、周囲3キロ以内に3か所の活断層が見つかりました。
このため1976年の核燃料交換の際に原子炉を止め、想定される地震の規模に合わせて耐震性能工事用の改良工事を行うことになりました。
しかし必要な工事を施して再稼働するためには、当初の予想をはるかに上回る費用が必要なことが解りました。
以来同原子力発電所は稼働を停止したまま、二度と再稼働することはありませんでした。

〈 完 〉

http://www.theguardian.com/world/2014/aug/25/nuclear-plant-diablo-canyon-california-shut-down
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私はグレゴリー・ヤッコ委員長を実質的に『締め出した』現在のアメリカ原子力規制委員会を信用してはいませんが、懸念通りの現実が存在することを実感しました。
それでもアメリカはサンオノフレをはじめ何カ所かの原子力発電所を閉鎖しており、その点日本よりは原子力発電についてまともな対応をしているのではないでしょうか?

明日22日(月)は掲載をお休みさせていただきます。

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【チェチェンの犠牲者】

ニューヨーカー 2014年9月9日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

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2004年9月1日月曜日、ロシア領内のチェチェン共和国において、分立独立派の武装グループがベルサン小学校を占拠、1,000人の人質を取って3日間立てこもる事件が起きました。
この事件で186人の子供たちを含む334人の人質が命を落とす悲劇が起きました。

ロシア系アメリカ人のカメラマン、ダイアナ・マルコシアンはこの悲劇から10年を迎える日、現場となった小学校を訪れ、体育館で行われた追悼式典などを撮影した写真をニューヨーカーに寄稿しました。
ダイアナは現在は記念施設となっている元小学校での追悼式典に参加した後、犠牲者や人質となった家族を訪問しました。
「子供たちの中には水すら与えられず、自分たちの排泄した尿を飲むように強制された者もいました。」
「他に聴けた話は、事件前の学校での暮らしに関わるものだけでした。」
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http://www.newyorker.com/culture/photo-booth/diana-markosian-beslan-russia

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