【 つまずき続ける日本の原子力発電、疑問を突きつけられる再稼働 】《後篇》

もはや日本全体の市民感情としては原子力発電の廃止に向かうべき、しかし安倍政権は再稼働を推進
燃料価格高騰を招いている大きな原因は『アジアプレミアム』、そして円安誘導政策
再稼働による経営改善は一時的、旧型原子炉の巨額の廃炉費用のねん出には見通しを立てられず

ダニエル・オルドリッチ、ジェームズ・プラット / ワシントンポスト 8月15日

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もはや日本全体の市民感情としては原子力発電の廃止に向かうべきであるにもかかわらず、安倍首相率いる政権は原子力発電を支持、この春には国内の既存の原子炉を再稼働させるとするエネルギー政策の実施を公表しました。
この政策は原子力発電への依存を減らし、再生可能エネルギーの技術開発を推進すると謳っていますが、具体的な数値目標には一切触れず、将来のエネルギー計画についても何も明らかにしませんでした。
日本のこうした不明確なエネルギー事情が求める対価を支払っているのが電力会社、そして一般消費者です。

国内の全ての原子炉が2011年から2012年にかけて順次停止し、以降一時的な例外を除いて完全に停止したため、日本は化石燃料、特に液化天然ガスを輸入して火力発電に頼らざるを得ませんでした。
経済産業省によれば、2010年に全電力に占める輸入燃料による火力発電の割合は62パーセントであったのに対し、2013年には88パーセントを占めるに至りました。
2010から2013年にかけ、一般消費者向けの電気料金は19.4パーセント、産業用電力の場合は28.4パーセントの価格上昇に見舞われたのです。

事態をより一層悪化させているのが、いわゆる天然ガスに関わる『アジアン・プレミアム(アジアプレミアム)』の問題です。
BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)社によれば米国での主要取引ハブ、Henry Hub(ヘンリー・ハブ)における天然ガスの価格は2ドル76セント/100万BTU(英国熱量単位)であるのに対し、日本の輸入価格は16ドル75セントという高さです。
そして今年2月には20ドル12セント/100万BTUという高値の最高を記録しました。
そして日本による円安誘導の外貨政策がその事態を一層悪化させたのです。

廃炉09
この結果、原子力発電所を所有する日本の全ての電力会社が財政的に苦しくなり、2011年以降多額の損失を計上し続けています。
東京電力は経営破たんを回避するため国有化されました。
そして4月、国営の日本政策投資銀行は九州電力社と北海道電力社に併せて約15億ドル(1,500億円)の株式投資を行なう事を発表しました。
九州と関西電力社は両社とも昨年、9億ドル(約900億円)以上の損失を計上しました。

最終的な問題、それは何基の原子炉がいつ再稼働されるかという事です。

日本の原子力規制委員会は九州電力・川内原発を含め現在17基の原子炉の安全審査を行っていますが、その作業が完了すれば追加でさらに多くの原子炉について安全審査を行うことになると見られています。

それぞれの原子力発電所の安全審査に数カ月ずつかかると仮定すれば、原子炉の再稼働に関する論争は2~3年間続くものと思われます。

2020年末、日本では13基の原子炉が稼働許可年限の40年を迎えることになります。
そして2025年末にはさらに10基の原子炉の稼働許可が期限切れになります。

原子炉建屋
原子力規制委員会が稼働許可年限の延長を認めない限り、このうちの大部分の原子炉がそのまま廃炉になると仮定するのが当然の見方といえます。
これに対しある人は地方自治体、あるいは原子力規制委員会が比較的新しい原子炉について再稼働を認めないことにならない限り、今後5年前後で25基から30基の原子炉が再稼働することになると見ています。

しかし仮にいくらかの原子炉を再稼働させることにより電力会社の経営が一時的に改善されても、福島第一原子力発電所世代の原子炉、国内の原子炉の約半分を廃炉にするための巨額の費用をどうするのかという、重要な問題が残ります。

自民党と実業界のリーダーたちは原子力発電復活への野心をたくましくしていますが、その前途は長く、そして困難に満ちています。

〈 完 〉

※ダニエル・オルドリッチはパーデュー大学の準教授で、同大学の選抜指導者のひとりで、『Site Fights and Building Resilience』の著者です。
ジェームズE.プラットは、ホノルルにある太平洋フォーラムCSISの給費研究員です。
彼は日米市民による原子力 – 核問題に関する運動と北東アジアの安全保障問題についての研究を行っています。

http://www.washingtonpost.com/blogs/monkey-cage/wp/2014/08/15/after-the-fukushima-meltdown-japans-nuclear-restart-is-stalled/
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いかがでしたでしょうか?
この記事は語り口がきびきびしている分、日本政府や現政権が原子力発電に固執することの不自然さや動機のいかがわしさがかえって際立つことになった、翻訳した人間としてはそんな感想を持ちました。

原子力発電に関し私たち日本人は、すでに深刻な問題を処理しきれない程数多く抱え込んでいます。
これ以上の悪化は将来の日本の危急存亡に関わってきます。
危急存亡という表現は決して大げさではありません。
この国が最も愚かな選択をすることにならないよう、声を挙げていきましょう。

明日9月2日(火)は掲載をお休みいたします。
よろしくお願いいたします。

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【 地球上で最も高齢の人々が集う場所 】
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

ニューヨーカー 2014年8月25日

長野01
平均すると日本の人々は世界のどの国よりも長い人生を送ることになります。
そしてその日本の中で長野県の人々が最も長い人生を送っています。
日本の男性の平均寿命は80.9年ですが、長野県の女性は平均87.2年の人生を生きています。
カメラマンのジェームズ・ホイットロウ・デラノは、長生きしている人々の日常の光景をとらえ、その理由を探ろうと長野へと旅立ちました。

母親の食事の準備で、味噌汁の塩分を測定する女性。(写真下・以下同じ)
長野02
第二次世界大戦の従軍経験を持つ96歳の男性。
長野03
畑の草取りをする90歳の女性。
長野04
長野県須坂市の女性とその飼い犬。
長野05
山田温泉で健康に良いとして売られている自然食品。
長野06
http://www.newyorker.com/tech/elements/slide-show-oldest-place-earth

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