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【 弱すぎる日本の野党の力、反転攻勢の実現の可能性はあるのか? 】

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力づくで押してくる安倍政権が失点を重ねても、有効な対抗勢力を形成できない日本の野党
破たんを見せ始めたアベノミクスと、安倍政権の『真意』に疑問を持ち始めた日本の市民社会
アベノミクスが、労働者の賃金を引き上げることに失敗したことは明らか
安倍政権への国民の信頼が揺らぐ中、その気運に乗じることができない日本の野党勢力

エコノミスト 2014年10月11日

ヒットラー安倍

立て続けに報じられた日本経済の不振を表す暗いニュースは、安倍政権を取り巻く国民の支持は盤石に近いという、国内の多くの報道機関が伝えている様相に影を落とし始めました。
東京、大阪、福岡などのただでさえにぎやかな大都市の路上では、安倍政権の政策が一般国民の生活については、何も改善していないという声が高まり続けています。

一方で4月に実施された消費税の引き上げは、2014年度第2四半期のGDPが年率換算で7.1%という大幅な下落を記録したようです。
特定秘密保護法の成立、憲法第9条の解釈の変更、九州電力・川内原発の再稼働と多くの国民が反対する政策を押し通してきた安倍政権が目玉としてきた経済政策がこのような結果しか導き出せないのであれば、当然日本国内では政権に対する反発の気運が高まり続けていると考えるかもしれません。

確かに安倍政権に対しては国民の期待と信頼が揺らぎ始めてはいますが、与党自民党の対抗勢力に対する有権者の失望の方が、日本では一層深刻な状態が続いています。

日本の野党は長期間分裂状態が続き、有効な対抗勢力を形成することができません。
2年前、安倍氏が率いる自民党に地滑り的な勝利を許し政権の座を追われた民主党は、党勢の回復に尽力てきましたが、小党分立による混乱が一層深まる中、状況はかえって悪化しているように見受けられます。

川内原発再稼働

そうした中、有力な野党勢力を形成する可能性を持っていたのはみんなの党でした。
みんなの党は自民党の有力議員の2世である渡辺喜美氏と、民主党期待の星であった浅尾慶一郎氏がそれぞれの党を離れ2009年に結党しました。
いずれも所属する党が官僚制に支配され、市場原理に基づく政策の立案に消極的であるというのが離党から結党に到る主な理由でした。
みんなの党は若い実業家などを中心に支持を集めましたが、今年四月、渡辺代表が支持者である実業家からの8億円に上る融資に関する明快な説明が出来ず、代表の座を降りざるを得なくなりました。
渡部元代表は今、代表の座を引き継いだ浅尾氏の辞任を求めています。
渡部代表は2012年、安倍政権誕生の際その支持に回りました。
異様に映るのは、渡辺氏の辞任要求に対し、浅尾氏が反撃することをこらえていることです。

もう一人、トラブルの渦中に有るのが、民主党の海江田万里党首です。
民主党の上層部はすでに数カ月間、おおっぴらに批判にさらされてきました。
海江田氏に対しては、2012年の記録的敗北以来民主党が結党以来最大の危機に陥っているという事を、理解できていないのではないかという見方があります。
9月、海江田氏は党上層部の人事を刷新し、批判勢力も内部に取り込むことにより党首の立場に踏みとどまりました。

憲法解釈変更 5
しかし多くの日本人がこの時感じたことは、民主党が最も進歩的な顔ぶれと思われる人々を起用したにもかかわらず、新しい人材の不足、そして女性不在の指導部という印象だったでしょう。
たとえ政治の場で何かが来た出来る人材ではないとしても、少なくとも安倍内閣には発足当時5人の女性閣僚がいました。

民主党が安倍内閣の宣伝性の高い経済政策に対抗できるだけのプラン作りに苦闘している間、安倍首相は憲法第9条の解釈の変更により日本を右旋回させ、同盟国が攻撃を受けた際には日本の集団的自衛権の発動を可能にする政策を強行しました。
この結果安倍首相に対する首相としての指導力に対し、国内世論はまっぷたつに割れることになりました。

民主党内には日本の平和原則を守り通そうとする平和主義者が多数を占めますが、一方では現実的戦略の実行を求め安倍政権の動きを支持する勢力も存在します。
来年安倍政権は集団的自衛権の行使に必要な法案を国会に退出する予定ですが、上智大学の中野孝一教授は、この際民主党内から賛成に回る議員が出るかどうかが、今後の民主党の党運営に大きく影響することになるだろうと語っています。
自民党は民主党の復活の芽を摘み取るべく、この問題をきっかけに民主党の分裂を決定づけようとしています。

日本の政党は長い間分派と党派争いを繰り返してきました。
日本の政治家は自ら政党を設立するため主要政党をしばしば離党しますが、それによって政界における立場を失うことはほぼありません。
今回、分裂した小政党が再編されて『第三勢力』が日本の政界に誕生することを予測した人々がいました。

憲法解釈変更 7
しかし日本の政界には現在のところ、こうした小政党の政策の違いの溝を埋めるどのような動機も見当たりません。
かなり自己主張の強い大阪市長、橋下徹氏がひきいる維新の会は9月、規模としてははるかに小さい、主に経済改革を主張する結の党に吸収されました。
しかしこの二つの政党も大きな政治的な課題である原子力発電、消費増税、そして集団的自衛権の問題については見解が一致している訳ではありません。

再び民主党に目を転じれば、党内には市場原理に基づく経済開放派と、市場原理に一定の制約を課そうとする組合寄りの政策実施を目指す二つの勢力が存在します。
このうち市場経済派はみんなの党など2、3の小規模な政党との連立により、政権の座に返り咲くことを志向しています。
この勢力は2016年末に予定されている国政選挙において勝利を得るべく、豊富な政治資金を蓄えています。

しかしここに来てついに民主党が反転攻勢に打って出るという徴候が見えてきました。
安倍政権がその経済政策を大々的に鼓吹し国民がそれを歓迎していた昨年、民主党はそこを批判することに二の足を踏んでいました。

集団的自衛権01
しかし安倍政権の金融緩和策が、労働者の賃金を引き上げることに失敗したことは明らかです。
民主党の選挙対策の責任者を務める枝野幸男氏は、安倍首相自身こそ安倍政権の最大の弱点であると見ています。
安倍首相の自信過剰こそは安倍政権打倒の切り札に成り得る、枝野氏によればそういうことになります。

今となれば自民党が無敵の勢いを誇り、ほとんど反対勢力が見当たらなかった状況を思いやることは難しくなりました。
安倍首相がこれ以上、思い通りに事を進めることは難しくなりそうです。
市民党と連立を組む公明党の中からその制約の手が伸びてくることが考えられます。

公明党の根本的な党是は世界平和の実現であり、近隣諸国との紛争を煽り続ける安倍政権との行き方とは本来相いれないものであるはずです。
最終的に公明党の指導部は安倍首相の集団的自衛権の行使容認の支持に回りましたが、公明党の支持母体である数百万人の加盟者を擁する創価学会は、平和主義者と福祉国家の実現を目指す人々が中心を成す、仏教徒の集まりです。

さらには安倍首相率いる自民党内の、反安倍派の存在も軽視することはできません。
自民党内には政策の実現のために組織されるのとは別の、派閥の強力な影響力が残っています。
自民党内の民主主義社会における自由主義経済の発展を純粋に志向するグループは、安倍首相が昨年12月に行った靖国神社の参拝に怒りをあらわにしています。
靖国神社には第二次世界大戦中の一般兵士・市民の犠牲者に加え、戦争犯罪人とされた戦時指導者も合祀されています。

秘密保護法05
安倍政権は中国との関係をことのほか悪化させました。
第二次安倍政権において自民党幹事長に任命された谷垣禎一氏は、本来中国との間に太いパイプを持っています。
谷垣氏の今回の人事については、自身に対し最も脅威となり得る政治家の反対の芽を摘んでしまおうという安倍首相の考えに基づいたものであったと考えられます。

http://www.economist.com/news/asia/21623777-opposition-struggles-counter-dominant-prime-minister-not-ready-prime-time?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227

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