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原子力発電の廃棄に向け、変わるドイツの消費生活行動
17基ある原子炉すべての停止まで、残された時間は7年
ティム・スメドレー / ザ・ガーディアン(英国)5月15日
▽ 発想の転換
ドイツの『エネルギー改革』は大規模なインフラの再整備と資金調達という課題を克服しなければなりませんが、個人の生活様式を変えるというような抽象的な課題に比べれば、それほど困難という訳ではありません。
個人の生活様式を変えるなどと言う問題に、政府が口出しするなどという事は、これまでは考えられもしなかった事だ、フィシェディック博士がそう指摘しました。
「エネルギー消費量を半分に減らすためには、消費者の日常行動の変化は避けて通れない課題です。」
「そのためにはすべての消費者が、自分のエネルギー消費の在り方について再検討することが必要です。現在は未だに消費者は、自分のエネルギー消費の在り方についてはほとんど無関心です。」
「この状態を改善するためには、私たちは社会に対し、電気設備の改良だけでは不十分であり、さらに合理的で適切な電気の利用が必要なことを訴えていく必要があります。」
こうした取り組みは、教育の分野でも必要になってきます。
さらには環境税のような、税制度の見直しなども必要になってきます。
上記のような取り組みについてはこれまで検討される機会がありませんでしたが、今後2年間で活発な議論が展開されることになるでしょう。
しかしすでにヨーロッパで電気料金が2番目に高いドイツにおいて、いくつかその兆候が見られる発電コストの上昇が、エネルギー改革が超えることのできない障害にならないよう、対策を講じて行く必要があるとフィシェディック博士が続けました。
「キロワットアワーあたりの発電コスト、あるいはキュービックメーターあたりの天然ガスの価格などでは無く、最終的に電気料金がいくらになるかということが、非常に重要な問題です。
エネルギー効率の高い分野に多額の投資を行なったからといって、必ず電気料金が上がるという訳ではありません。
私たちが消費者に本当に伝えなければならないことは、その背景にある問題についてです。
現在のところ、国民に対するメッセージは説得力に乏しいものであり、うまく伝わってはいないようです。
もし『エネルギー改革』に大きな障害が生じるとすれば、この改革を最初に提唱した政治家たちがへそを曲げてしまう事です。
「EUがエネルギー効率についての改善提案を行った時、EUの手に『エネルギー改革』の主導権が渡らないよう工作を行ったのは実はドイツ政府なのです。
私たちの取り組みについては、ヨーロッパ全体でそれを達成すべきであるという、これまでには無いレベルでの目標とコンセプトがありますが、目下のところドイツ政府の真意はずいぶんと違うようです。」
政治家というものは、様々な思惑を抱えているようです。
ドイツのエネルギー改革について語るなら、併せて困難な道のりを克服しようとする英雄的行動にハイライトを当て、敬意を表しなさいということなのでしょうか?
世界の他の国々は、温室効果ガスの削減については、緊急の課題であると口で言うだけで、具体的取り組みとなるとほとんど何もしていないというのが実情です。
もしヨーロッパ経済を引っ張る大国ドイツの取り組みを見習うことが出来れば、この問題について、他の国々も具体的解決策を手にすることが可能になるはずでした。
17基ある原子炉すべての停止まで、残された時間は7年です。
そしてこの間に温室効果ガスを40%削減し、電力の消費量も2割削減しなければなりません。
課題は目の前にあります。
スケジュールを、迅速にこなしていく必要があるのです。
(冒頭の写真)ドイツ、エーベンドルフ近く、ニーダーザクセンの再生可能エネルギー発電施設。バイオマス発電と風力発電の双方が行われています。
ここでは周辺の農場から出た廃棄物を電気、熱エネルギー源とする他、環境に負荷を与えない肥料に加工しています。
〈 完 〉
http://www.guardian.co.uk/sustainable-business/nuclear-power-germany-renewable-energy?INTCMP=SRCH
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後編になって、少し論旨が解りにくくなりました。
こういう時、翻訳者としては、どこかで自分が間違ったのではないかと少し不安にかられます。
今回は見直しを重ね、誤りの無いよう気を使ったつもりですが…
ところで。全国紙のS新聞が敦賀原発2号機の下に活断層があると結論を出したことについて、「原子力規制委員会の暴走を許すな」との社説を掲げたそうですが、「暴走」という言葉を使う相手を間違ってはいるのではありませんか?
まさにそうした報道姿勢こそ、イギリスのメディア(エコノミストほか)からも、アメリカのメディア(ワシントンポストなど)からも、
「正しい事実認識の役には立ちません!」
と見下される、大本営発表報道の後継者たる所以でしよう。
加えて福井県知事の「非科学的」という誹謗も、聞いていて非常に違和感を感じます。
いやしくも県知事という立場の人間がそのような極端な表現を使うのであれば、非科学的である事を『科学的』に証明できる論文なり、調査結果を提示しなければなりません。
このような知事もまた、英国の政治評論家が「どうにもならないレベルで、まともな人間と入れ替わるのに2世代〈50年〉かかるだろう」と慨嘆する対象であるのでしょう。