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【アメリカ国防総省、フクシマ型災害対策ロボットの『実物見本』を公開】
ジョン・マーコフ / ニューヨークタイムズ 10月24日
日本の福島第一原発事故現場のような過酷な環境下、危機に対処できるロボット開発コンテストの優秀作品には、賞金200万ドル(約1億6,000万円)を提供する、アメリカ国防総省(ペンタゴン)の先進技術研究部門が24日発表しました。
アメリカ国防総省国防高等研究事業局(DARPA)は先にロボットコンテストの開催を予告していました( http://kobajun.chips.jp/?p=2245 )が、24日、部門ごとにクリアしなければならない課題に関する詳細を発表しました。
ひとつの部門では、主催者側も一体のロボットを開発・製作することになっています。
これは移動型ロボット開発に優れた実績を持つボストン・ダイナミクスとアメリカ政府が共同で開発にあたり、このヒューマノイド型ロボットをコントロールするためのソフトウェア開発も同時に行われることになっています。
ボストン・ダイナミクスは国防高等研究事業局(DARPA)の依頼により、四足歩行ロボットの『ビッグドッグ』を制作したことで知られています。『ビッグドッグ』は起伏のある地面の上を、重い荷物を運んで進むことができます。
( http://youtu.be/Vu2IXk5Jbag)
今回はさらに『チーター』と名付けたロボットを、インターネット上で公開しました。
ビデオの紹介によれば、『チーター』は屋内の仮想トラックの上を時速28.3マイル(30km)で、つまりは地球上最速の人間ウサイン・ボルトよりも、速く走ることが可能なのです。
( http://youtu.be/ZAMDgoSKUrA)
別のビデオでは、これもDARPAの依頼によりボストン・ダイナミクスが開発した二足歩行ロボットが、障害物を乗り越えて進む様子が紹介されています。
( http://youtu.be/FFGfq0pRczY)
さらに別の2部門では、コンピューター上のシュミレーション・システムでの表現を求め、実物を制作する必要は無く、これにより世界中から広く応募が可能になるよう配慮しています。
DARPAで今回のロボット・コンテストを主宰する、開発責任者のギル・プラット氏は、22日に行われた電話による記者会見で、今回のコンテストは将来の兵士ロボットを開発することが目的ではない、と強調しました。
現在、アメリカ軍はすでに航空、海中双方のロボット兵器システムを実用化しています。
しかし実はこれらも、地上兵器ロボットほどの進化をとげてはいる訳ではないのです。
イラクとアフガニスタンの戦場では、地雷による兵員の殺傷を免れるため、現在すでに数千体のロボットが活動し、機材を運ぶためにロボット車両が実験的に使われています。
しかし軍自体は、地上用戦闘ロボット開発にそれほど積極的ではありませんでした。
「私たちは今回、これまで実現できなかった技術の開発をねらっています。」
プラット博士がこう語りました。
アメリカ軍の任務の一つは、自然災害、あるいは人間が作り出した災害、そう、福島第一原発の事故現場のような状況下、人間にしかできない援助活動を行う事です。
福島第一原発の事故現場には実際に数体のロボットが送り込まれましたが、操作する側の方がこのような危機に対処するための訓練を受けておらず、貴重な時間を無駄にしてしまいました。
「ロボットの操作性が良いこと、そしてさまざまな道具の使い分けができること、それが将来、このような重大な危機に対応できる能力を持つという事であり、ひいては危機の経過と結果が大きく異なることになります。」
プラット博士がこのように指摘しました。
プラット博士はこれまでも、同様の開発の後援を行ってきました。
これまで最も注目されたのは、2004、2005と2007年に行われた自動走行車両のコンテストでした。
このコンテストは、実際の自動車製造現場でも自走技術の開発を促す結果となり、数多くの自動車メーカー、そしてグーグルなども、自走自動車技術の商業化に乗り出すきっかけを作りました。
( http://youtu.be/BSS0MZvoltw)
DARPAは、カーネギー・メロン大学の国立ロボット技術開発センター、ドレクセル大学、レイセオン、シャフト、バージニア工科大学、NASAジョンソン宇宙センターとNASAジェット推進研究所に、それぞれ独自のロボットを製作し、今回のロボット・コンテストに参加するよう依頼しました。
今回のコンテストでは、ロボットは必ずしもヒューマノイド型である必要はありません。実際、複数の参加団体は人間とは似ても似つかない形のロボットを製作中です。
ジョンソン宇宙センターのロボットは3本の足を持っていますが、腕は1本しかありません。
また以下の大学や組織から参加する各チームは、ボストン・ダイナミクスが制作した最新型ロボットを提供され、これを動かすための優れたプログラムを制作するよう求められます。
参加するのは、ロッキード・マーティン先進技術研究所、RE2、カンザス大学、カーネギー・メロン大学、マサチューセッツ工科大学、TRAC研究室、ワシントン大学、フロリダ人間・機械知能研究所、ベングリオン大学、NASAジェット推進研究所とTORCロボティックスです。