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【 いよいよ決断を迫られることになる安倍首相 】《2》

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所要時間 約 8分

各企業に非正規雇用の数を減らし、正社員数を増やすように促す『改革』、その実現はあるのか
農協改革の断行、安倍首相が構造改革に本気で取り組むつもりがあるかどうか、その試金石となる

エコノミスト 12月6日

安部06
公平を期するとすれば、若干の分野で安倍首相は大胆な決断をしました。
日本企業に対し経営意思の決定を迅速に行い、外部に対し経営内容を正しく公開することを求めた安倍首相の取り組みは実を結びました。
働く場における女性の地位改善を求める政策も、全面的各方面において性差別を無くす方向で取り組みが進んでいる兆候を示しています。

来年秋には大阪市でフィリピンその他の国々から数千人の労働者を受け入れ、家事や育児労働に従事することになっています。
外国人労働者の受け入れは長年議論されてきた問題ですが、日本政府もこの取り組みを全国に関題していく方針です。

安倍首相はエコノミスト誌に対し、選挙後にはいよいよ本格的構造改革着手すると保証して見せましたが、確かにいくつかの分野においてはその発言を信用しても良いという根拠を見ることができます。
安倍氏は時に大胆な改革姿勢を見せてきました。
終身雇用制度がしっかりと根付いている労働市場に流動性をもたらした事
医療分野での冗費の削減
電力市場の自由化
農協の全国的かつ独占的なネットワークの再編
などの政策を進めることを約束しました。

この中で他に抜きんでて重要な改革は時代遅れの労働慣行のオーバーホールです。
かつて日本が高度成長を謳歌していた時代、各企業は才能ある人材が他に流出することを食い止めようとして、終身雇用制度の充実を図りました。
日本の組合は終身雇用による労働者保護のシステムに固執しています。

日本では事実上解雇が禁止されています。
裁判所が判例を基に『社会的通念上』認められないと判断すれば、いったん解雇された人間も職にとどまり続けることが可能です。
こうした規制を避けて通るため、多くの企業が正社員よりもはるかに少ない人件費で事足りる非正規雇用の労働者の数を増やそうとしているのです。

こうした非正規雇用労働者の割合は現在、全労働者の5分の2に達し、様々な波及効果を生んでいます。
非正規雇用に甘んじる若者たちは、結婚も出来ず家族を作る事も出来ず、日本の出生率低下の原因の一つになっています。
社会に不満を持つ彼らの中には極右の宣伝に乗ってこれまでの社会秩序の破壊を叫び、近隣諸国との関係悪化の一因を作りだしています。

こうした日本の労働市場をオーバーホールするとしたら、安倍首相の選択肢はどのようなものでしょうか?

日本の厚生労働省は現在、解雇が被雇用者に与える打撃を和らげるため、最先進各国の事例を参照しながら解雇手当による対応の可能性について検討を行っていると言われています。
そのためには現在の失業保険制度の再検討が必要です。
現在日本の失業者は他の先進各国と比べ、より少なく、より短期間の失業手当しか受け取れません。
この分野の構造改革が実現すれば、各企業に非正規雇用の数の減少と正社員数の増加を促すことになります。

民主党は正規非正規を問わず、同じ労働を行っている労働者には同じ賃金を支払う制度を確立すると公約し、安倍首相もこの問題に関する対応を迫られることになました。

さらに安倍首相はアメリカを含む各国との間でTPP(環太平洋パートナーシップ)交渉における第一段階の合意にこぎつけることにより、改革派首相としての立場が強化されるとほのめかしています。
安倍首相は自身を『TPP交渉の場において、一日も早い結論を得るべく最も熱心に取り組んでいる指導者』と位置づけ、日本の交渉担当者により柔軟な対応をとるように指示していると語っています。
現在日本とアメリカとの間では自動車産業と農業分野における立場に大きな隔たりがありますが、選挙後の早い段階で何らかの合意が成立する可能性があります。
それが現実になれば、日本経済に大きな推進力が加わることになるでしょう。

農業製品に対する高額の輸入関税は国内農業を保護する一方で、平均的家庭の食費の割合がアメリカが6%、英国が9%であるのに対し、日本のそれが14%に上る一因となっています。

日本経済の改革に農協の改革も不可欠です。

農協は当初、農民、特に兼業農家をサポートするためのネットワークとして発足しました。
しかし時間の経過とともにそれは農製品の流通機構を独占し、農作業の初期投資と金融を独占し、農民から利益を吸い上げる官僚機構に変貌しました。

安倍首相が強力な政治力を持っている農協の改革を視野に含めていることは、評価されるべき事です。
そのための法案は来年初め、国会に上程されることになっています。

農協の改革を断行するかどうか、このことは選挙後に安倍首相が構造改革に本気で取り組むつもりがあるかどうか、その試金石となるでしょう。

-《3》に続く –

http://www.economist.com/news/asia/21635609-shinzo-abes-expected-victory-next-weeks-snap-election-will-leave-him-no-excuse-further?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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私事ですが、妻の兄はかつて仙台市北郊の農協の課長をしていましたが、日本がインフレの時代には農家を一軒一軒まわって
「どんな名目でもいいから、融資話をもちかけて金を貸してまわれ。」
と命令されました。
ところが一転して日本経済がデフレ局面に落ちこむと、今度はこれまで農家に貸し付けていた金を
「何が何でも回収してまわれ。返せないと言ったら田んぼでも家でも取り上げて来い!」
と命令され、
「そんな手前勝手な、冷酷なことができるか!」
と怒り、農協に辞表を叩きつけました。
以来、私は農協という組織に深刻な疑問を持つようになりました。

日本には、ありとあらゆる職業人の上に『協会』の類が乗っかっていますが、自分たちのフトコロではなく、純粋誠実に会員のために働いている組織はどのくらいあるのでしょうか?

この稿は当初前篇後篇の2回に分けてご紹介するつもりでしたが、訳文の分量が予想を超えて長くなったのと、きわめて重要な結論が最後(《3》に掲載します)に出てくるので、全3回に分けてご紹介します。





 

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