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【 再び日本の国際的評価を低下させた、戦時記録を改変するアベネシア 】《前篇》

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所要時間 約 7分

第二次世界大戦(太平洋戦争)中に日本が犯した数々の非人道的行為の責任については回避的、かつ曖昧
安倍首相は、日本の国益よりも歴史問題に関する個人的主張を優先している
歴代首相が繰り返した戦争への「反省と後悔」、自分はそこに重点を置くつもりは無いという意思を明確に示した安倍首相

ジェフ・キングストン / アメリカCNNニュース 5月1日

安部米国議会
日本国内はもちろん世界が注目する中、日本の首相として初めて安倍首相が行なった米国上下両院総会における演説は、歴史を書き換えようとする行為により近隣諸国との緊張関係を作りだし、関係各国の懸念を増大させているにも関わらず、予想されていた通りこうした緊張関係や懸念を払しょくする内容のものではありませんでした。

第二次世界大戦(太平洋戦争)が終了して今年で70年を迎えますが、アジア太平洋地区においては未だにその負の遺産の整理はついておらず、日中、日韓関係における火種の一つであり続けています。
安倍首相は戦争中に日本軍が行なった非人道的行為に関する責任を受け入れかどうかという点については問題の存在そのものを否定し、曖昧なままやり過ごそうという対応をとってきましたが、米国議会における演説においてもその姿勢に変化はなく、関係諸国を失望させる結果に終わりました。

この「Abenesia(アベネシア - 安倍首相と健忘症amnesiaをかけた造語)」は日本の国際的なイメージを傷つけるものであり、中・韓両国の一層の怒りを買い、その結果両国との間の安全保障問題に影を投げかけることになります。

防空識別01
オバマ政権は安倍政権に対し、歴史問題に関するハードルを意識的に下げています。
これは台頭を続ける中国に対抗するためには、今やアメリカと日本の国力を併せた対応が必要になっているとの認識を、日米が共有しているからにほかなりません。

軍事能力の増大を目的として日本との同盟関係を強化し、TPP交渉を決着させて調印してしまうことは、日本の過去の悪行をつまびらかにすることに優先します。
40年前サイゴンの陥落によって終わったベトナム戦争、イラク戦争、そしてアフガニスタン戦争を引き起こしたアメリカには、一般市民に戦争の恐怖と犠牲を強い、自国の軍隊が戦争犯罪まで引き起こすという計算外の結果が生じたことについて、他国を責める資格はありません。

前任者の大統領たちが長年にわたりそれぞれに挙げていた安全保障問題の要求項目を網羅した提案に対し、安倍首相は全面的に応える意向をあらかじめ伝えてきていたため、バラク・オバマ大統領は安倍首相に対し最大限の歓迎を行うための努力を惜しみませんでした。

集団的自衛権04
しかし安倍首相が全面的な受け入れを表明した、安全保障上の新たに役割分担は、日本国内ではほとんど支持されてはいません。
PEWリサーチセンターによる最新の世論調査でも、日本が役割分担を大きく増やす集団的自衛権の行使については68%が反対であるのに対し、賛成はわずか23%です。

アメリカ自身、太平洋地区における安全保障体制の整備には、米国、日本、そして韓国の3カ国の緊密な連携が重要だと考えていますが、安倍首相の歴史認識に対する姿勢は協力体制の構築の障害になっており、安全保障上の問題とはむしろ安倍首相自身にあると言う事も出来ます。

『永遠の哀悼の意』

安倍首相は居並ぶ米国議員たちの反応を慎重に確かめながら、演説を進めていきました。
あらゆる側面において米国議員たちの意に添うよう、その表現も考え抜かれたものであり、歴史認識の問題についてすら一定の譲歩を行いました。
「熾烈な戦いをかわした敵同士が、現在は互いに理解し合える友人同士になりました。」

確かにそれは歓迎すべき事実です。
しかし日本は中国や韓国とは過去の事実認識を共有できてはいません。
そのためこれらの国々との関係は「理解し合える友人同士」とはとても言い難いものがあります。

日中紛争01
多くの国が自国の歴史のうち都合の悪い部分については、目をつぶろうとしがちです。
しかし安倍首相はそうした態度すら飛び越え、1990年代半ばから「愛国教育の推進」を旗印に、それまでの日本が第二次世界大戦については反省と後悔をのみ表明していたことを否定し、この時代の日本に誇りを持ち再評価すべきであるとの主張を教育の世界でも定着させようとしています。
安倍首相は個人の主張を日本の国益に優先させており、この点において高邁な理念を持つ政治家のレベルに達していません。

もちろん安倍首相には中国、韓国の主張を受け入れ、両国との根本的和解を成立させるつもりはありません。
この2カ国こそは、19世紀末から日本の侵略的意図に苦しめられ続けてきました。
しかし一方でそれは、安倍首相に中韓両国との関係改善の意志が無いという意味ではありません

安倍首相はこう語りました。
「戦後私たちはすべての戦争に対する深い後悔の念を心に抱きながら、再出発しました。」
「日本の行動は、アジア諸国の人々に苦しみを強いることになりました。我々は、それから目をそむけてはいけません。私はこの点において歴代の前首相たちが明らかにした見解を支持します。」

沖縄戦01
この前任者の見解を『支持する』という言い方に、私たちは留意しなければなりません。
つまりは戦争に対する「反省と後悔」については歴代首相がさんざん繰り返しており、自分としてはその点にことさら重点を置くつもりは無いという意思を明らかにしたものだととれるからです。

そしてもうひとつ問題なのは安倍首相はその政治経歴全体を通じ、第二次世界大戦の戦前戦中の日本の事歴について誤りや罪を認めることを拒否し続けてきた点です。
ただ単に前任者たちの発言を『支持する』と言うよりは、自らはっきりと謝罪を口にすれば、安倍首相に対する批判を多少は和らげることが出来たでしょう。

〈 後篇に続く 〉

http://edition.cnn.com/2015/04/30/opinions/japan-abe-united-states-kingston/index.html





 

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