ホーム » エッセイ » 【 なぜ彼らは戦争を欲するのか?! 】《4》[GRD]
核戦争につながりかねない危機、それは私たちが知らない場所で何度も繰り返されてきた
一歩間違えばソ連の核兵器報復を招きかねなかった、レーガン政権の防空システム実地検証作戦
歴代政権の政策担当者にとって、一般市民の生命を守ることは最優先事項ではなかった
ノーム・チョムスキー / ガーディアン 2014年8月6日
ケネディ大統領の顧問であり、個人的にも親しかった歴史家アーサー・シュレジンジャーはキューバ危機あるいはミサイル危機について、「歴史上で最も危険な瞬間」と表現しました。
危機が頂点を迎えた10月下旬、ケネディはフルシチョフからの1通の極秘の書簡を受け取りました。
内容は、トルコに配置されているアメリカのジュピター・ミサイルを撤去すれば、キューバに配置されたソ連のミサイルも撤去する用意があるというものでした。
ジュピター・ミサイルは当時とすでに旧式兵器であり、アメリカはケネディ政権の手により地中海に核ミサイルを搭載したポラリス潜水艦を配備し、核攻撃能力を格段に進化させていました。
書簡を受け取ったケネディ大統領は、フルシチョフ提案を拒否した場合の主観的評価を行いました。
結論は核戦争が発生する危険性は33%~50%に上る、というものでした。
アイゼンハワー元大統領は米ソ間の核戦争が勃発すれば、北半球が全滅することになるだろうと警告を発していました。
それにもかかわらずケネディ大統領はソ連国境沿いに配置したトルコ領内のミサイル撤去を『公式に』受け入れることを拒否し、キューバからのミサイル撤去だけを公式に明らかにすることを要求したのです。
これはアメリカはどこにでも自由に、ソ連国境沿いにミサイルを配置できるという権利を認めさせることが目的でした。
人類史上これ以上は無いという程危険な決断が下された瞬間でした。
しかし今日聞くことができるのは、ケネディ大統領の冷静な勇気と政治的手腕に対する高い評価だけです。
その10年後の1973年のアラブ・イスラエル戦争の終盤、アメリカのニクソン大統領の国家安全保障担当補佐官ヘンリー・キッシンジャーは、核兵器使用の可能性をちらつかせました。
その目的はロシアに対し、イスラエルの勝利を確定させるために彼が行なってきた緻密な計算に基づく外交的策謀の邪魔をしないよう、警告を発することでした。
中東地区においてアメリカが一方的に有利な立場を維持していくためには、イスラエルが勝利する以外の選択肢は無かったのです。
この策謀はきわめて緻密である分、どこかで歯車が狂えばたちまち崩壊する危うさも持っていました。
アメリカとロシアは共同でイスラエル・アラブ側の双方に停戦を要求しましたが、キッシンジャーは水面下でイスラエル側に接触し、停戦要求を無視しても構わないと伝えました。
こうしたことからアメリカはロシア側に核兵器使用をちらつかせ、追い払う必要があったのです。
一方、アメリカ人の安全は従来と変わらないままでした。
10年後、レーガン政権は空からの攻撃、そして海からの攻撃をシュミレーションすることによって、ソ連の防空体制を徹底的に検証する作業に着手しました。
さらに核攻撃に対するソ連側の警戒態勢のレベルを『実地に』検証する作業も始まりました。
これらは米ソの緊張関係が緊迫する状況の中で行われました。
アメリカはモスクワまで飛行時間5分以内のヨーロッパ各地にパーシングII戦略ミサイルの配備も進めていきました。
さらにレーガン大統領は戦略的な防衛プラン、いわゆるスーウォーズ計画を発表しました。
ソ連側はこの計画について、核ミサイル攻撃の中で最も警戒しなければならない第一撃に対する最も効果的な防衛態勢の構築と理解し、両陣営で最強の防衛プランとみなしました。
米ソ間の緊張は高まりました。
レーガン政権による一連の軍備拡大政策はソ連国内では、大きな警報となって鳴り響きました。
アメリカ国内における計画が順調に進んでいたのに対し、ソ連国内では体制の弱体化と実質的な崩壊が始まり、大きな混乱が発生し、1983年には大きな戦争パニックに発展したのです。
新たに公表された歴史記録は、歴史家がそれ以前に分析し結論づけたものより、現実は一層危険なものであったことを明らかにしました。
ここに冷戦のひとつの難問と題されたCIAの分析資料があります。
1983年のソビエト国内における戦争パニックに対し、アメリカの情報機関が、ソ連の懸念とこれ以上アメリカの核攻撃・防衛能力が大きくなる前に先制的に核攻撃を実行しようと本気で考えていた事実を過小評価していた可能性について指摘しています。
『戦略研究ジャーナル』誌は当時の状況について、ソ連側が防衛上の必要から先制的核攻撃の実施について、真剣に検討していたとする論文を掲載しました。
2013年9月英国BBCが放送した番組は、この米ソ間の緊張が世界的危機にまで発展し、危険が最高潮に達したまさにその瞬間に起きた事実を明らかにしました。
ソ連の早期警戒システムがアメリカ合衆国からのミサイル攻撃を探知、ソ連領内の核ミサイルシステムに対し、最高レベルの警報を発したのです。
ソ連軍における対応手順は、アメリカに対し核ミサイルによる報復攻撃を行うことを定めていました。
人類にとって幸いなことに、当直任務についていた士官、スタニスラフ・ペトロフは報復攻撃命令に従わず、上官に対する警告も行いませんでした。
彼は後に正式なけん責処分を受けることになりました。
しかし少なくとも北半球で暮らす人類は、彼の職務怠慢のおかげでこうして今生きていることが出来るのです。
レーガン政権の政策担当者にとって一般市民の生命を守ることは、それまでの政権同様、最優先事項ではありませんでした。
それは現在までずっと変わらずに続いています。
エリック・シュロッサーの研究『指揮と統制』によれば、これまで何度も偶発的核戦争に発展しかねない事態が、これまでの数十年間繰り返し起きています。
なによりまず核兵器の存在、そしてダマスカス(米国アーカンソー州で起きた大陸間弾道ミサイル・サイロで発生した爆発事故)事故(1980年)、核兵器が安全を守るという幻想…。
言葉を変えれば、バトラー将軍の結論(《1》を参照してください)に反論することは難しいという事なのです。
-《5》へ続く -
http://www.theguardian.com/commentisfree/2014/aug/06/hiroshima-day-nuclear-weapons-cold-war-usa-bomb
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【 あの日、犠牲になった市民たち 】
アメリカNBCニュース 9月11日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
2015年9月11日、同時多発テロ発生の14周年を迎えました。
2001年、ニューヨーク、ワシントンD.C.とペンシルバニア州で行われたテロ攻撃により、約3,000人の市民が犠牲になりました。
犠牲者の名を刻んだ銘盤には、この日多くの花が供えられました。
テロ攻撃で殺された叔父を偲ぶ少年。(写真下・以下同じ)
犠牲者の名が刻まれた銘盤の前を歩く、テロリストに乗っ取られた93便に乗り合わせて犠牲になった久世としやさんの母、やちよさん。
http://www.nbcnews.com/news/us-news/nation-honors-victims-sept-11-attacks-n425461
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小林 順一
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