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高濃度の汚染水で制御もままならない、世界史上2番目に最悪の原子力発電所事故の現場
345億円をかけた凍土遮水壁計画はすでに失敗に終わっている?
ジュリアン・ライオール / ドイチェ・ヴェレ(ドイツ国際放送) 2016年8月29日
3月11日に襲った巨大地震によって引き起こされた巨大津波が重要な設備である原子炉冷却システムを破壊し、福島第一原発の3基の原子炉でメルトダウンが発生したことが日本の人々の記憶に刻まれてから5年5ヵ月の歳月が経過しました。
現場では大気中に放出された放射性物質を取り除き、原子炉の制御を取り戻そうとする作業が続けられています。
東京電力のプレス・リリースは、事故発生以来続けられてきた収束作業により、ゆっくりとではあるが確実に効果が現れていると主張しています。
しかし福島第一原発の事故以降停止している日本全国の原子力発電所を再稼働に対する支持を得るため、現場の回復が進んでいるという東京電力、そして原子力産業界の保証を日本の国民の誰もが受け入れたという訳ではありません。
「福島第一原発の現場には相互に関連する膨大な数の問題が存在します。中でも私たち日本人が直面する最も大きなものの一つに、敷地いっぱいに並べられた巨大な鋼鉄製のタンクにため込まれている高濃度汚染水の問題があります。」
京都に拠点を置く日本の反原発団体、グリーン・アクション・ジャパンのアイリーン・ミオコ-スミス氏がドイチェ・ヴェレの取材にこう答えました。
「福島第一原発の敷地内ではこれ以上の汚染水タンクのための敷地が無くなりつつありますが、高濃度汚染水が毎日増え続けている以上、東京電力はさらに多くの汚染水タンクを作り続けなければなりません。そして一部の溶接されていないタンクには、汚染水漏れ事故を繰り返してきたという記録が残されています。
▽『時を刻み続ける時限爆弾』
「福島第一原発の高濃度汚染水の実態は、カチカチ音を立てている時限爆弾のようなものです。しかし東京電力には今のところ、汚染水タンクをひたすら増設し続ける以外の選択肢は無い、そう見えます。」
環境グループは東京電力と日本の原子力事業を監督する立場にある原子力規制委員会に対し、このまま汚染水タンクの増設を続ければいつか福島第一原発の敷地がいっぱいになってしまった時点で、汚染水を太平洋に投棄せざるを得なくなることから、問題解決のための具体的方法を明らかにするよう求めています。
東京電力は8月初旬、それまでに福島第一原発の原子炉1、2、3、4号機のそれぞれの地下トレンチ(溝)から回収した汚染水が10,000トンに達したことを確認しました。
東京電力の担当者によれば、この他に各原子炉建屋とタービン建屋の地下からあふれ出した汚染水が約60,000トンあります。
「1号機と2号機、そして3号機の原子炉を冷却し続ける為に、毎日約100トンの水を注入しなければならず、汚染水が増え続けるのです。」
東京電力の担当者はドイチェ・ヴェレの取材にこう答えました。
「さらに一日あたり約150トンの地下水が、同じ場所に流れ込んでいることも確認しています。」
一部の汚染水については浄化装置を使って放射性物質を取り除く作業が行なわれていますが、発生する量があまりにも多いため、浄化処理作業はまったく追いつくことがてきないため、汚染水タンクの増設を続けなければならない状況にあります。
原子力規制委員会に助言を行っている専門家たちは、これ以上の地下水の流れ込みを遮断するため1~4号機の周囲の地下に凍土壁を作る計画を発表しましたが、これすら現在うまくいっていません。
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