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【 福島第一原発の事故、それは人間にとって、巨大すぎる悲劇 】

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所要時間 約 18分

降り注ぐ放射性物質は、通りと言う通りを汚染しつくし、人が住めない状態が続いている
もはや被災者のことなど、眼中に無い日本の政治
日本の専門家、小出助教授は福島第一原発の事故は、一切収束していないと指摘

カイル・ドゥルベク(特別寄稿) / アメリカNBCニュース 7月27日

暮れなずむ、現在の南相馬市小高区


索漠としたメインストリートは、はるか遠くでかかっている音楽がかすかに、気味悪く聞こえる以外、何の物音もせず、静まり返っています。
2階部分の屋根が目の前の道路までずれ落ちてしまった、廃墟となった建物の前の歩道には、割れたガラスの破片が散乱しています。
空き地や道の上には、いたるところ雑草が伸び放題のままにされています。
学校や公園もありますが、静まり返ったまま、荒廃の跡が見て取れるだけです。

小高町にようこそ!
かつては13,000人の住民が暮らしていた、海沿いの美しかった町も、2011年3月に襲った三重災害 – 巨大地震、巨大津波、そして福島第一原発の原子力災害 – により、死の町と化してしまいました。
東北地方太平洋側の多くの市町村を、巨大地震と巨大津波による大災害が襲っている間、小高町(正しくは市町村合併により南相馬市小高区は、同市の南部分を構成しています)はその南端からちょうど15キロの地点に福島第一原発があるため、他とは全く異なる状況に追い込まれました。

福島第一原発は建屋が破壊された4基の原子炉の内、3基の原子炉がメルトダウンを起こし、膨大な量の放射性物質が環境中に放出されました。
その放射性物質は小高町にも降り注ぎ、通りと言う通りを汚染しつくし、その後一年数か月もの間、人が住めない状態が続いています。

結果としてこの町は、福島第一原発の周囲に設定された日本政府による立ち入り禁止区域に指定され、一年以上も時間が止まったも同然となっています。
慌ただしく行われた住民の被ばく線量調査、そして2、3回行われた形ばかりの除染作業の後、4月16日になって、日本政府は立ち入り禁止区域を福島第一原発の北側20キロメートルから10キロメートルにまで縮小し、住民に対して生活に必要な日用品(そのほとんどがめちゃくちゃになった上、カビが生え、放射能に汚染されてしまっていましたが)を持ち帰るため、一時帰還が許されることになりました。

こうして小高町がわずかずつではあっても動き始めたとき、さらに福島第一原発に近い場所にある市町村では、果たして故郷への帰還は可能になるのかどうか、そしてそれはいつになるのか、そのことに対する期待と不安、そしてそのためにこなさなければならない数多くの課題が、人々の話題にのぼり始めました。

初めて故郷の町に入っていく人々の波の中に、小高町で小さなホテルを経営していた小林とも子さんの姿がありました。
彼女は当面は客が訪れそうにもない、ホテルの片づけを始めていました。

小高地区でホテルを経営する小林さんは、少しずつ経営していたホテルと住んでいた自宅を整理しています。
一方、避難していた間に無断宿泊者たちが散乱させた酒瓶なども、整理しなければなりません。



小柄で精力的な女性である小林さんは60代ですが、彼女はこの小さなホテルの3代目の経営者です。
彼女は10年前にこのホテルの経営を引き継ぎましたが、今年定年退職する夫との暮らしに、ホテルの経営は確実な収入をもたらすはずでした。
しかし今、夫婦二人住まいの窮屈な仮設住宅から、毎日片道40マイル(約65km)もの道のりを通いながら、小林さんは小高地区が二度と人の住めない場所になるのではないか、と心配しています。
実際にたくさんの商店主や若い人々は、他に生きる場所を求めて小高地区を去っていきました。

そうした人々がこの町にいなくなってしまえば、
「小高は老人と災害復興労働者の町になってしまいます。」
小林さんが、そう語りました。

▽信用できない日本政府

南相馬市では除染作業と災害復旧作業がすでに始まっていますが、しかし小高地区は日本政府の直接管理の下にあります。
小高の人々が町に戻るためには、福島第一原発の事故直後に出された、政府の避難命令が解除される必要があります。
現在小高地区への立ち入りは24時間許可されていますが、誰も泊まることは許されません。

多くの住民が小高地区から遠く離れた避難を強制されたため、定期的にかつて住んでいた場所を訪れ、生活に必要な品々を選び出したり、津波による泥の掻き出しや清掃作業ができる人々は、結果的には少数に限られることになりました。

住民がいない間、警察と自警団が町の見回りを続けています。
町の中で車を停めて何か探し物をしたりしている人の中、少しでも挙動不審のものがいれば、丁寧な口調で声をかけて回っています。
緊急作業員が電信網、送電網の回復工事、そして道路にできた穴の修理などを行っていました。

かつては小高地区の産業の中心であった農業と漁業は、もう長い間行われず、人々の暮らしを支えることもしばらくは無理のようです。
農地は津波による塩害に、放射性物質による汚染が加わり、使い物になりません。
水産業は壊滅したままです。

福島市近郊でゼオライトを散布する農民。ゼオライトは放射性セシウムを吸着する働きがあり、水田の再生に向け作業を続けている。



地震と津波による被害も相当なものですが、地元自治体、そして住民たちにとって一番の心配の種はやはり放射能汚染です。

以下のURLをクリックすると、3.11の被災地の震災直後と状況と、現在とを比較したスライドショーを開くことができます。



http://msnbc.msn.com/id/43357920/displaymode/1247?beginSlide=1

南相馬市で再建事業を担当する宮本たつおさんは、小高地区を再び生活の場として再生させるための「住民帰還のための残骸の撤去・汚染除去作業は緒に就いたばかり」であり、それに加えて、電気、水道、下水処理施設の再建が果たされる必要がある、と語りました。

当面の間、日本政府は小高地区の放射線量は、長期間被ばくを続けても健康に被害の出ないレベル、すなわち世界放射能防護委員会が原子力設備労働者向けに国際標準として設定している、年間被ばく線量20ミリシーベルト以下にとどまるだろう、と日本政府は判断している、と宮本さんが語りました。
しかし同時に政府は30メートルごとにこの地区を区切り、それぞれの地点で放射線量を測定する作業を全域にわたって行うよう指示しています。
この測定の後、これから何年もの間市の全域が『避難指示解除準備区域』『居住制限区域』または『帰還困難区域』に分割されることになります。
この指定に基づき、表層部分の土の除去、高圧洗浄その他の方法による除染作業を、どの地点で行うか決定することになりますが、どこで行われても立ち入り禁止区域は残ることになります。
しかし今月から少なくとも2013年末まで行われる予定の除染作業も、放射性廃棄物の保管所の目途が立たないため、その日程にすでに遅れが出ています。

こうした状況が、早期帰還者となった小林さんのような人々の前途を暗くしています。
ボランティアの人々によってかき集められた放射能で汚染された泥を詰め込んだ土嚢が、ホテルの敷地以外の歩道に沿って積み上げられたままになっています。
「私はこの泥の詰まった袋をどこかに持って行くように言いましたが、彼らは決してそうしようとはしませんでした。」
小林さんは、政府が手配した作業員がこの道を通るたびに声をかけていました。

放射能汚染の検査対象となっている水田が、南相馬市内のいたるところにあります。この秋収穫されたコメは、放射性物質の残留濃度を調査されることになります。


福島第一原発が拡散した放射性物質は、市内に均一に降り注いだわけではありません。
町を取り囲む山裾の丘陵地帯に放射線量が特に高い地点がある、と放射線量調査に携わっている二人の自警団員、65歳の松本もりおさん、71歳の室原やすみさんが語りました。
「私たちの線量計は1時間当たり20マイクロシーベルトをさしましたが、測定した放射線量の中でそれが最大の値でした。」
松本さんが、一度丘陵地帯の調査を行った際のことを説明してくれましした。

▽ 疑問を持たれ始めた除染作業

県内の除染作業を行っている福島県の当局者は、これまでの除染作業によって、県内の放射線濃度が37%減少したと語りましたが、高濃度に汚染された地域では、この程度の効果では、人が住めるようにはなりません。
さらには一度除染を行った地域が、雨や風の影響で、再び汚染されてしまう可能性もあります。

すでに放射能によって汚染されてしまった福島県ですが、住民や一部の専門家は、福島第一原発の状況に一層懸念を深めています。

福島第一原発を運営する東京電力と日本政府は、福島第一原発はすでに安定した状態にあり、安全設備の復旧も果たされた、と主張しています。

福島第一原発の事故直後に放置され、そのままになっている自転車。南相馬市小高区。



しかしかつて福島第一原発で冷却装置の担当作業員として働き、現在は放射線量調査のボランティアを務める高橋けいさんは、東京電力の経営陣は望み得る限りの最良の状況を語っているにすぎない、と指摘しました。
「福島第一原発では、至る所から放射性物質が漏れ出し、高濃度汚染された残骸が散乱しています。政府や東京電力が言う程、状況は簡単なものでは無いのです。」

小林さんも政府や東京電力が保証する、『福島第一原発の安定した状態』について、非常に大きな疑念を抱いています。
「もう放射性被ばくの危険がもう無いというなら、今や危険は原子炉内部にしか無いはずです。私たちが未だに帰還できない状況を考えれば、福島第一原発はまだまだ危険な状態だという事なのでしょう。」
「私たちは真実を知りたいのです、それがどれ程悪い状況であったとしても。」
「政府や東京電力が一つでも事実を隠ぺいしたら、私たちはもう彼らを信頼することはできません。」
最近発表された国会事故調査委員会の報告書は、国も東京電力も原子力発電の安全基準を無視していた、と非難しました。

▽ 若い人たちの帰還は、もう望まない

東京電力は3基の原子炉には、一度溶け落ちて再び固まった核燃料で一杯になっており、まずこれを取り除かなければならないこと、そして核燃料プール内にある核燃料が再び放射性物質を放出しないように、冷却を続けなければならないことを認めています。
これらの処理も含め、福島第一原発の廃炉には40年以上かかると見られています。

東京工業大学原子炉工学研究所の澤田哲生助教授は、放射性物質の除去について『難しく、大きな課題』だと指摘しました。

別の専門家はさらに状況は悪いものと見ています。
原子炉の専門家の、京都大学の小出裕章助教授は、以下のような指摘を行いました。
「原子炉の状態は悪化を続けています…福島第一原発の事故はまだ進行中なのです。」
「目下、どうしたら放射性物質の放出無く、核燃料を除去できるか、という問題に直面しています。
…今、私たちにできることは、これ以上福島第一原発がダメージを受けないように、巨大地震が発生しないように祈ることしかありません。」
「福島第一原発の事故が、チェルノブイリ以上の放射性物質を放出する可能性は、まだ現実のものなのです。」

小出裕章助教授



最終的に、財政的な圧迫が、小高地区の住民の帰還問題の、決定要因となる可能性があります。
現在の政府の基準では、東京電力による賠償が受けられるのは、避難命令がこのまま継続された場合に限られます。
避難命令が取り消されてしまえば、住民たちは損失を抱えたまま、福島第一原発による被ばくを覚悟の上で、自宅や職場に戻る決断を迫られる可能性があります。

住民たちが、どうしてそんな決断を迫られるのか、世界中の専門家が大いに疑問を持っています。

明らかなことは、現地の人々は生活の上で、様々な苦痛や不便を強いられている、という事です。
小高地区の北側にある原町地区では、子を持つ親たちは、子供たちに対し、室内か、除染作業の済んだ学校の校舎内か体育館以外で遊ぶことを禁じています。

また広範なエリアで健康診断やボディ・スキャニングによる被ばく線量調査が行われましたが、多くの住民たちは食料品の汚染、そして空気中の埃や砂などに含まれる放射性物質の存在についても懸念を持っています。

小高地区では、今回のとんでもない汚染を引き起こした福島第一原発に近づくに従い、こうした懸念は大きなものになっていきます。
そして住民の28%が65歳以上という人口構成であったこの町が、はたして今回の原子力災害を乗り切れるかどうか、小林さんの懸念も深まるばかりです。

「私はこれから先、生きたとしても20年かそこらでしょう。私にとって生死のことは、さほど大きな問題では無くなりました。けれども私は、若い人たちがこの町に戻ってくることを、もう望んではいません。」

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[NBC "TODAY" 『チェルノブイリのいま』]

http://openchannel.nbcnews.com/_news/2012/07/26/12839675-in-japan-a-nuclear-ghost-town-stirs-to-life?lite

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