【 怒号の応酬に終わったヘイトスピーチ問題の議論 】
議論にならなかった橋下徹大阪市長と桜井在特会会長の応酬
公式に在特会を批判することをためらう安倍政権の閣僚
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 10月21日
カリスマ的政治家と韓国朝鮮人の排斥運動を使嗾する右翼過激派との間のヘイトスピーチ問題に関する議論は、互いの見解を冷静に検証しあうというわけにはいきませんでした。
しかし橋下徹大阪市長と桜井誠在特会会長の初めての対決が罵り合いで始まり、たちまち暴力沙汰になりかねない状況に陥り、わずか数分間で打ち切られてしまう事を予測していた人間はほとんどいなかったはずです。
橋下徹大阪市長が桜井在特会会長との討論に同意したとき、多くの人々が驚きました。
在特会は日本国内在住で日本国籍を取得していない約500,000人の韓国朝鮮人が日本の福祉制度を利用できる権利、選挙権を行使できる権利などを「特権」だとして、その剥奪を要求しています。
大阪市役所における今回の討論は、在特会が韓国朝鮮人が多く暮らしている地域などで繰り返し行い、国際的にも批判が高まっているヘイトスピーチ問題が注目される中で行われました。
間隔を開けて設置されたテーブルの前に座った2人の男性は、冒頭議論の進め方についてやり取りを開始しましたが、議論の体を成していたのはわずか数十秒間に過ぎませんでした。
桜井会長は橋下市長に対し、礼を失する「あんた」という呼びかけを行い、以後8分間にわたる敵対的なやりとりを導き出すことになりました。
橋下氏は在特会にヘイトスピーチを止めさせることはできませんでしたが、橋下氏自身も昨年、従軍慰安婦問題に関して「当時の日本軍の規律を維持するための必要悪だった」という趣旨の発言を行い、批判を浴びています。
橋下氏は桜井氏に対し、「民族とか国籍をひとくくりにして評価するような発言はやめろ」と発言しました。
最終的に橋下氏は宿敵とも言うべき相手に対し「だまれ!」と発言する羽目になりました。
桜井氏が橋下氏に対し韓国朝鮮人に対する批判の口封じをするつもりかと詰め寄るにいたり、橋下氏も丁寧な言葉遣いを止めるに至りました。
この後2人は警備員に席に戻るよう押しとどめられる場面も発生しました。
このやり取りを収めた動画はユーチューブで60万回以上再生されましたが、その内容は光るというよりはひたすらに熱いものでした。
それでも橋下氏が一矢報いることが出来たのは、桜井氏に対する次の一言でした。
「大阪に、お前のような人種差別主義者は必要ない。」
この『討論』は桜井氏が橋下氏を侮辱する言葉を繰り返し投げつける中打ち切られ、橋下氏は警護要員に囲まれるようにして会場となった部屋を後にしました。
日本の国内報道によれば、多数の韓国朝鮮人の住民が暮らす大阪市は、全国初のヘイトスピーチを禁止条例を制定する年になる可能性があります。
一方では、そうした条例は日本国憲法が保障する言論の自由を侵すのではないかという懸念もあります。
在特会は13,000人の会員を有すると称し、韓国朝鮮人を『ゴキブリ』『犯罪者』という極端な表現を用いて罵り、日本から出で行けと叫ぶヘイトスピーチ集会を定期的に、大阪をはじめとする各都市で行っています。
7月には大阪の裁判所が、北朝鮮国籍の子供たちが通学する朝鮮学校の近くで在特会が行ったヘイトスピーチ集会は、人種差別行動であるとの判断を示しました。
8月に人種差別の撤廃に取り組む国連の人権委員会は、日本国内において人種間の憎悪を煽り、人種差別に公然と加担する公務員と政治家を特定すること、そして彼らに対し法的な制裁の実施を強く要求する勧告を行いました。
自民党の国会議員で安倍内閣の閣僚である山谷えり子国家公安委員長が、2009年に在特会の幹部と並んで撮られた写真の存在が明らかにされ、メディアの間でここ数週間在特会はにわかに注目を集めることになりました。
山谷氏は公開された写真について記憶が無いと語る一方、公人として在特会を批判する事を拒否しました。
橋下氏は自由主義者に対するいかなる共感も持ち合わせてはいませんが、1人の著名な韓国籍住民である李信恵(リ・シンネ)氏の支持を取り付けました。
李氏は在特会と桜井誠会長と専用サイトの「保守速報」に対し、損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしました。
李氏は共同通信の取材に次のように答えました。
「在特会は公共の場で未だにヘイトスピーチを続けています。それがどれ程ひどいものであるか、橋下氏には実際の現場を見ていただきたいと思っています。」
http://www.theguardian.com/world/2014/oct/21/japan-hate-speech-debate-abandoned-toru-hashimoto-makoto-sakurai
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私はご覧いただいているサイトを運営している関係上、毎日NBCやCNNなどのニュースを視聴していますが、仮にも国政レベルの政治家で『Racist : 人種差別主義者』の疑いを持たれてしまったら、その時点で政治生命は絶たれたも同然になります。
毎日アイポッドで見ているNBCナイトリーニュースのブライアン・ウィリアムス氏が「Racist」という単語を口にするとき、その表情にははっきりと嫌悪感が現れます。
EUやアメリカはもちろん、今や『人種差別は犯罪である』というのはそれ程に世界共通の認識です。
その中、日本はこの点において際立って『異質』なのではないでしょうか。
余計な詮索を省くため申し上げますが、私自身は父方は母系が仙台藩の下級藩士、父系は江戸期に仙台市南郊で大きくは無い旅籠を経営、母方は母系が山形県寒河江市の商家、父系は宮城県南部の郷士であり、日本人として出自がはっきりしているつもりですが、韓国朝鮮の人々を差別しなければならない理由は全く見当たらないし、そのつもりもまったくありません。
どころか私の大親友のひとりは中国人であり、浙江省杭州市で病院長をしています。
私たちの友情に尖閣の問題が影を落とすことはありません。
日本経済が国際社会の中でバランスを取っていかなければ成り立たない以上、政治と社会も同様であるべきだと思います。