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【 行き場のない放射性核廃棄物の処理計画 – 中間貯蔵、最終処分、その実態 】〈後篇〉

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中間貯蔵・地層処分、核廃棄物は数千年間、きわめて危険な存在であり続ける
年間降雨量の多く地震が発生する場所は、放射性核廃棄物の保管場所には適さない
処分場の下流域の人々は、長い間ガン発症率と疾病率の高さに苦しんできた
放射性物質は半減期の10倍~20倍の期間、周囲の人間や環境にとって危険な存在であり続ける
半減期24万年以上のプルトニウムによる環境汚染、実質的には『永遠』に続く

フェアウィンズ・エネルギー・エデュケイション 2014年6月11日

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ドイツの核廃棄物は、1967年から1988年まで稼働していた原子力発電所から排出された使用済み核燃料で、ガラス固化されたキャニスターの形でサバンナ川最終処分場(SRS)に持ち込まれることになります。
一方、アメリカは1965~1988年の間、高濃縮ウランをドイツに提供していました。

サバンナ川最終処分場(SRS)自体の建設は1951年から始まり、H Canyonは1955年に稼働を開始しました。

約125ヘクタールの敷地を持つこの施設はできてから60年以上が経ち、これまで1953年から1989年までに作られた核兵器から取り出されたプルトニウム、そして原子炉が生み出した高レベル放射性核廃棄物を数百万ガロン保管しています。

クレメンツ氏が率いるグループは、SRSが高レベル放射性核廃棄物の加工処理はできても、最終的な処分に関する計画も方法も無いと訴えています。
米国エネルギー省は高レベル放射性核廃棄物の最終処分は問題を起こすこと無く実行が可能だと主張していますが、具体的にどこでどう処理するのか、その具体的なプランは無く、現在は世界中からただ引き取るだけの作業を続けています。

「私が恐れているのは、他国の問題を引き受ける形でサウスカロライナ州とジョージア州が、核廃棄物の最終処分場になってしまう事です。
もし高レベル放射性核廃棄物が施設の外に漏れ出してしまったら、いったいどうなるかご存知ですか?
事実これまでにこうした施設から、放射性核廃棄物が漏れ出したことがあります。
そうなってしまってから『これはドイツの施設から排出されたのだから、ドイツに持って帰れ』などと言うことはできないのです。このままいけば、サバンナ川の約半分の流域にこうした恐れが出てきます。いったん高レベル放射性核廃棄物を受け入れてしまったら、少なくとも数千年間、放射性物質が環境を汚染してしまう可能性が生まれるのです。プルトニウムに至っては、2億4000万年です。」
フェアウィンズ・エネルギー・エデュケイションのアーニー・ガンダーセン氏が、アトランタ・プログレッシブ・ニュースの取材に対しこう答えました。

廃炉01
「ジョージア、あるいはサウスカロライナのような降雨量の多い場所は、プルトニウムのような高レベル放射性核廃棄物の保管には向かないのです。だからこそこれまでは、ニューメキシコ州の砂漠地帯が保管場所とされてきたのです。」
ガンダーセン氏はこう語りました。

サバンナ川最終処分場(SRS)は、北アメリカ大陸南部の地震多発帯、そして最も大規模な帯水層の上に位置します。
そして老朽化した貯蔵タンクから放射性物質が漏れ、周辺環境を汚染する問題を引き起こしました。

この辺りの土壌は砂質で、しかも降雨量が多いために湿地の様相を呈し、放射性物質の漏出があれば直ちに環境汚染が拡大することは明らかです。
今年に到るまで、アメリカの核廃棄物処分場はニューメキシコ州カールズバッド近くにあるWIPP(Waste Isolation Pilot Project)核廃棄物隔離保管実験プロジェクト( https://kobajun.chips.jp/?p=18461 )だけが、全国で唯一アメリカ政府が核廃棄物を永久保管している場所でした。
しかし今年、2014年2月14日に核廃棄物を保管している容器が爆始発する事故が起き、地下に作られた施設全体が汚染されてしまいました。

米国廃棄物処分場02
この事故のため、アメリカ全土から回収されこの場所に収納・保管される予定だった核廃棄物については、今後いつ受け入れが再開されるのか現時点では不明です。

爆発事故の原因は、核廃棄物を収納する際に使われる専用容器を間違って選んだために発生したとされています。
粘土を使って保管されていた核廃棄物を有機物で作られた容器に移し替えたところ、爆発が起きたとされています。
http://yubanet.com/usa/Breaking-Bad-A-Nuclear-Waste-Disaster.php#.U5XvAygelZg

「万が一、サバンナ川最終処分場にMOX燃料工場を建設するようなことになれば、多額の税金が無駄に使ってわざわざテロの目標を作るようなものです。プルトニウム燃料はウラン燃料に比べて高額であり、現時点ではウランが不足している訳では無いのです。燃料工場を稼働させるために他国のプルトニウムを引き受けた挙句にMOX燃料を生産しても、それを高額な価格での購入を希望する顧客などどこにも存在しません。」
アトランタ・プログレッシブ・ニュースの取材に対しガンダーセン氏はこう答えました。

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ごく少数の例外を除いてプルトニウムは原子炉内で、ウランが核分裂を繰り返していく過程で生まれます。
プルトニウム239の半減期は241万年ですが、これは放射能を放出しながら放射性崩壊によりプルトニウムの質量が半分に減るまでの時間を表します。
放射性物質は通常、その半減期の10倍~20倍の期間、周囲の人間や環境にとって危険な存在であり続けます。プルトニウムの場合は2410万年~4820万年ということになり、これは人間の時間尺度で言えば『永遠』と同じことです。
つまりプルトニウムが環境中に放出されてしまったら、その危険は『永遠』に続くことになるのです。

もし人体に入ってしまえば、プルトニウムは細胞組織のDNAの損傷を引き起こし、ガンの発生要因になります。

MOX燃料を燃やしてもプルトニウムは無くなりません。
高レベル放射性核廃棄物という、極めて危険性の高い物質の中にプルトニウムとして存在し続けます。

放射性核廃棄物を最終的に無害にする処分技術というものは存在しません。

中間貯蔵にしても地層処分にしても、放射性核廃棄物は数千年もの間、きわめて危険な存在であり続けるのです。

「環境中にプルトニウムが放出されてしまった場合、その影響を受けるのは次世代だけではありません。私たち人間は25万年前、どのような存在だったでしょうか?(ネアンデルタール人。現人類は7万前前後に今とほとんど変わらない形になったと言われる。ウィキペディア「人類の進化」より : 訳者注)」
「環境中に放出されたプルトニウムが無害な物質になるころには、人間は全く別の種に進化しているかもしれないのです。」
ガンダーセン氏がこう語りました。

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サバンナ川最終処分場の下流域の市町村は、長年高いガンの発症率、そして死亡率の高さに苦しみ続けています。
その原因について住民たちは、サバンナ川最終処分場、そしてジョージア州のサバンナ川沿岸にあるヴォーグル原子力発電所の存在が原因だと考えています。
「米国エネルギー省は目先の利益にばかり目が行き、これからの300年、あるいは1000年間の環境が犠牲になるコストについては念頭にありません。サバンナ川最終処分場の経営を成り立たせるために、サバンナ川流域の環境を1000年間破壊してしまう事は、ジョージア州やサウスカロライナ州の住民にとっては致命的な問題です。」

「我々がなぜ、ドイツ、ベルギー、あるいはイタリアの核廃棄物を引き受けなければならないのか、その理由が私には理解できません。」
「これらの国々でも、地層深く核廃棄物を埋設することは可能なはずです。違いがあるとすれば、それぞれの国民はアメリカ国民よりも、環境問題に関心が深いという事だけです。このままではアメリカ自体が核廃棄物の処分場と化してしまいかねません。」
ガンダーセン氏の意見です。

サバンナ川最終処分場の監視団体によれば、諸外国の核廃棄物を輸入することは国際核安全保障協定(international Convention on Nuclear Safety)だけでなく、使用済み核燃料の安全に関する合同会議決議(joint Convention on the Safety of Spent Fuel Management)、そして放射性核廃棄物の取り扱いに関する安全協定(Safety of Radioactive Waste Management)に違反する可能性があります。
6月24日にこのドイツからの高レベル放射性核廃棄物の持ち込みに関する公聴会が開催されます。
一般市民の皆さんの、積極的な参加と意見の提出が待たれます。

〈 完 〉

http://www.fairewinds.org/secretly-dumping-peoples-problems/
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この記事は先週掲載したドイツのニュース誌、デア・シュピーゲルの記事を参照しながらお読みいただくと、非常に興味深いものがあります。
原子力発電所が危険かそうでないかを議論する以前に、原子力発電をやったら人間の手では処理できないきわめて大きな危険を作りだすことになる。

デア・シュピーゲルとフェアウィンズのこの記事を読むと、その事が痛感されます。





 

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