ホーム

【 ユネスコにもうカネは出さない?】

読了までの目安時間:約 10分

南京大虐殺・中国側資料をユネスコの世界記憶遺産に登録、日本政府は抗議
具体的な犠牲者数を立証できる資料は現在残されておらず、具体的数値を出せるかどうかについては中国国内でも議論が分かれる

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 10月13日

南京大虐殺
1937年南京を占領した日本軍は6週間に渡り各所で虐殺・略奪を繰り返し、合計で300,000人を殺戮したと中国の歴史家は主張します。
これに対し日本の歴史家は犠牲者の数はもっとずっと少ないと主張しています。

日本政府は異議を申し立てていたにもかかわらず、ユネスコが中国側が提出した南京虐殺に関する記録を世界記憶遺産に登録したことに反発し、拠出金を回収するとつめよりました。
第二次世界大戦(太平洋戦争)中の中国大陸における日本軍の事歴に関わる一連の問題は、尖閣諸島を巡る領有権の争いと同様、日中関係を悪化させる主な要因となりました。

日本の菅義偉官房長官は、今回登録が決定された記録は中国側の一方的な見解に基づくものであるとのコメントを発表しました。
「見解の大きな相違が日本と中国の間にあります。一方の見解だけを取り上げるという決定は、歴史問題を政治問題化してしまうものです。」

ユネスコに対し「我々は(資金提供の停止を含む)あらゆる対抗処置を検討しています。」
菅官房長官はこう語り、次のように続けました。
「意思決定プロセスにおける透明性が不足しています。我々は中国側が提出した記録について、内容を確認する事すら拒否されました。」

南京攻略01
日本は昨年、ユネスコ予算総額の約10%、37億2,000万円の資金を拠出しました。
ユネスコは第二次世界大戦(太平洋戦争)の敗北と占領の後、1951年に国際社会に復帰した日本が国連に加盟した際、最初に関わった機関です。

14人のメンバーからなる公文書収集記録委員会から推薦を受け、ユネスコのイリナ・ボコヴァ事務局長は11日、アブダビにおける会合で南京虐殺事件の記憶遺産登録を承認しました。
日本の外務省は10月10日付で、
「日本政府が,これらの基本的な考え方について随時申入れを行ってきたにもかかわらず,中国側が提出した「南京事件」に関係する文書が記憶遺産として登録されたことは,中立・公平であるべき国際機関として問題であり,極めて遺憾です。」
との談話( http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_001450.html )を公表しました。

一方でユネスコは中国側が併せて申請した、日本軍が中国で従軍慰安婦を使役したことに関する文書や写真を南京虐殺の記録に含めることは拒否しました。

南京虐殺は1937年後半に日本軍が中国南西部にあるこの都市を攻略した際、数万とも数十万とも言われる中国人を殺害、強姦するなどした事件を総称したものです。
中国の歴史家は大日本帝国の陸軍部隊が6週間に渡り略奪・暴行などを行った結果、300,000人以上の兵士と市民が殺害されたと主張しています。
一方日本の歴史家においては諸説あり、犠牲者数は少ないもので数万、最大で200,000人と主張しています。

南京虐殺01
日本政府の公式見解は次のようなものです。
「多数の非戦闘員の殺害、略奪、その他の行為が行なわれました。」しかし犠牲者の数については「特定するのは困難です。」
日本政府当局は、ユネスコの中立性に疑問を呈し、中国政府がその政治目的を達成するための手段として国際的・文化的な舞台を利用したとして非難しました。
中国が提出した資料には、第二次世界大戦(太平洋戦争)後に行われた極東軍事裁判の法廷資料も含まれています。
この裁判では日本の戦争指導者二十数名が有罪判決を受け数名が処刑されましたが、この時証拠として提出されたのがカメラマンが南京虐殺の様子を写したものだとした写真、そしてアメリカ人宣教師が撮影したフィルム映像でした。

しかし日本側はこの資料の信ぴょう性に疑問を呈しました。
日本側は中国側の専門家も立ち会った上で、この資料の中身の検証作業を行いたいとの申し入れを行ったが、中国政府が拒否したと付け加えました。
日本の外務省は今回の記憶遺産登録について、「中立・公平であるべき国際機関として、この度の取り扱いには疑問を提起する」コメントし、
「当該文書は完全性や真正性に問題があることは明らかであると考えます。」
と付け加えました。

南京攻略02
一方、中国の外務省報道官は日本の抗議を退け、南京虐殺事件を「重大な犯罪」とし、「国際社会が広く認めている史実である」とコメントしました。
「史実を否定することはできません。歴史は歪曲されるべきではありません。その発言もユネスコに対する措置も、日本側が史実と正面から向き合うことを忌避していることを明らかにしましたが、そうした態度は誤りです。」

日本国内の新聞はユネスコの決定に対し、共通して批判的な論調を展開しました。

「我々は元来世界の文化遺産を保護するための仕組みを日本を攻撃する手段として利用し、その独善的な歴史解釈を世界の共通認識に仕立て上げようとする中国政府のやり方を容認するわけにはいかない。」

自由主義の立場に立つ朝日新聞は犠牲者数が300,000以上とする中国政府の主張に対し、中国国内にも疑問を呈する歴史家が存在する点を強調しました。
「具体的な犠牲者数を立証できる資料は現在残されておらず、具体的数値を出せるかどうかについては中国国内でも議論が分かれるところです。」
朝日新聞はこう伝えました。
「しかし中国国内にはこの問題について公然と議論を行う自由がありません。」

ユネスコは今回2件の日本の申請を認定しました。
(1)東寺百合文書
平安時代以来一貫して東寺の宝蔵(ほうぞう)に収められ,1,000年以上にわたって東寺に伝承した約2万5千通に及ぶ寺院文書。日本の仏教史,寺院史,寺院制度史研究上で貴重な資料。1685年(貞享2)に加賀藩第五代藩主・前田綱紀(まえだつなのり)により「百合」の箱が寄進され,保存・管理されてきた。
東寺百合文書
(2)舞鶴への生還
1945-1956年のシベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録
「シベリア抑留体験の記録」,「安否を気遣い帰還を願う日本の家族に関する資料」,「引揚関連資料」に係る570点の資料から構成。
(以上は外務省ホームページより引用)

ユネスコ記憶遺産は1990年代の発足以来、アンネ・フランクの日記、とカール・マルクスの『資本論』の草稿の注釈つきコピーを含む数十件について、認定を行ってきました。

http://www.theguardian.com/world/2015/oct/13/japan-threatens-to-halt-unesco-funding-over-nanjing-listing
 + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

私自身も南京虐殺の犠牲者については、確定できる資料はもはや現存せず、日本・中国の歴史学者が共同調査・検証を行った上で『規模を推定』する以外の途は無いと考えています。
そしてこれ以上歴史を政治のプロパガンダの材料にすべきでないとも考えています。

シリア内戦の現状を見れば、戦時の犠牲者の数の特定が極めて困難な作業であることが解ります。
2015年の現在であっても、あれほどの混乱状態に陥ってしまえば、正確な犠牲者数の特定はほとんど不可能でしょう。
政情不安定な都市における1937年の事件ともなればなおさらであり、この点中国政府側の主張のみ認めた形でのユネスコの判断には確かに疑問が残ります。

しかし少し古い記事にもかかわらず今回ご紹介した理由はその点にはなく、与党の外交部会が
「言う事を聞かないなら金など払わん!」
という反応をした際、「ああ、これが日本の政治の本質なのだろうな。」と感じたからです。
だからこそ『金を払ってやるから俺の言う事を聞け』(例えば中央政界→地方政界)、『あんたの言う事を聞くから金をくれ』(地方政界→中央政界)という『日本の政治のルール』を無視するかのようなユネスコの対応に、与党『外交部会』の議員たちは激高したのでしょう。

そして下記のテロ事件。
テロリストによるこれだけの攻撃を可能にしているのが、旧東欧諸国から流出している武器です。
カラシニコフは旧ソ連、そしてプラスチック爆弾はチェコ製だと言われています。
冷戦の負の遺産が未だに人を殺しているのです。

【 迷走を続ける日本経済、アベノミクスでは打開不能 】《後篇》

読了までの目安時間:約 8分

アベノミクスは最初から大胆な、場合によっては大げさすぎる公約を掲げてきた
600兆円!たった5年の間に低迷する国内総生産をどうやって20%も引き上げるのか?!
これから5年後に国内総生産を600兆円にするなど、「あり得ない数値」

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 10月25日

NYT アベノミクス
アベノミクスの経済政策において、かつてない規模の大きな役割を演じたのが日本銀行でした。
黒田総裁の下で日本銀行は、かつてアメリカの連邦準備制度理事会が7年前のリーマンショックの後に導入した「量的緩和」策を大々的に進めました。
しかしアメリカでは連邦準備制度理事会は景気の回復に合わせ、債券買付プログラムを徐々に縮小して行き、現在は公的金利をゼロのまま据え置くか、あるいは引き上げるかという選択肢について検討中です。
しかし日本銀行はこれとは逆を指向しています、より一層通貨政策を緩めようとしているのです。

その措置が採られるかどうかは、10月末に開催される『成長とインフレ達成』のため年2回開催される日銀の理事による会合で決定されることになります。
その場では悲観的見方の方が大勢を占めることになりそうです。
同じ10月、黒田総裁は昨年金融の分野で最後の一撃を加え、驚きが市場を支配しました。
そして日本はもちろん、世界各国で株価が高騰しました。

Abeno03
黒田総裁は市場の悲観的予想をいくらかでも和らげるため最善を尽くしてきました。
そして、現在の日本銀行のそれぞれの金融政策は充分効果を上げていると主張してきました。
インフレの数値が目標を達成できなかった理由は、予想を超えた原油価格の下落に主な原因があり、物価と賃金は上昇傾向にあるとも語ってきました。
「私は現在の方針、すなわち質的緩和策・量的緩和策は充分に機能し、日本経済に狙い通りの効果を発揮したと考えています。」
ペルーのリマで開催された世界中央銀行総裁会議で、黒田総裁は10月11日に行われたCNBCとのインタビューでこう語りました。

黒田総裁は昨年大規模な追加策を実施する前、同じ趣旨の発言をして市場をミスリードしたことがあります。
しかし今回は日本銀行の政策は思ったほどの効果を発揮できない可能性もあります。

日本銀行による景気刺激策は、円の価値を低下させる傾向があります。
それは海外で収益をかせぐ多国籍企業にとっては好都合ですが、殊勝な貿易相手国や国内の消費者、そして輸出には縁がない国内の中小企業の怒りを買うリスクを犯すことにもなります。

TPP05
今月、日本とアメリカを含む12の環太平洋地域国が、主に貿易上の取引条件を設定するための取引協定、すなわちTPPについてやっと合意に達しました。
安倍首相はこれにより、日本は域内における貿易と投資活動をより活発化できると語っています。
この二つは日本の成長率を押し上げるための大切な要件です。
しかしこの協定は各々の国の議会における承認を必要としますが、アメリカ合衆国議会のメンバーは、日本が貿易競争を有利に進めるため、不当に円の価値を引き下げていると非難しています。

「TPP交渉の場では、各国の通貨政策は波乱巣をとる上で非常に厄介な問題です。」
かつて日本銀行で働き、現在はJPモルガン証券に籍を置く足立氏は、通貨政策がTPP交渉の場におけるそれぞれの合意内容を変えてしまうほどの影響力を持つ、その政治的な微妙さを熟知しています。

足立氏は来年実施される参議院議員選挙を視野に起きながら、こう付け加えました。
「一般家庭は円安によって家計が圧迫されることを望んでいません。」

景気悪化
普段は日本銀行の大規模な金融緩和策に拍手喝さいしている安倍政権の経済担当チームも、今回に限っては慎重に言葉を選んでいます。
麻生財務大臣は最近行われたNHKとのインタビューで「喫緊に日本銀行が緩和策を実施することは無いと考えています。」

安倍首相は相変わらず派手な公約を掲げ続けています
9月、安倍首相は2020年までに日本の名目経済生産高を600兆円にまで増やすという目標を掲げて見せましたが、これまでの20年間成長できなかった日本経済をこれから5年の間に、現在の数値を20%も上回るこの目標までどうやって引き上げるのか、その詳細については一切明らかにはしませんでした。

アベノミクスは最初から大胆な、場合によっては大げさすぎる公約を掲げてきました。
これについて日本銀行の黒田総裁は『デフレ心理』を払しょくするための取り組みの一つだと弁護しています。

Tokyo 5
しかしこの3年間、アベノミクスにはこれといった成果も無く、これまで当たり前のように自民党政権を支持してきたビジネス・エリートたちを含む多くの識者から、その骨格構想に疑問を突きつけられるようになりました。
「600兆円というのはあり得ない数値だと思います。」
経済同友会の小林喜光代表幹事がこう語りました。
「政治的メッセージとしか思えません。」

〈 完 〉
http://www.nytimes.com/2015/10/26/business/international/japans-struggling-economy-finds-abenomics-is-not-an-easy-fix.html?ref=topics&_r=0
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

【 11月11日までの報道写真から 】

アメリカNBCニュース 11月11日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

Day05
11月3日、一般公開を前に政府関係者に公開されたレストアされたローマのトレビの泉。(写真上)
ファッションメーカーのフェンディから資金が提供され、17カ月がかけて修復がおこなわれました。

ギリシャからマケドニアに入国する手続きのため、列を作る難民の人々。(写真下・以下同じ)
国連難民事務所はこの冬、1日あたり5,000人のペースで中東難民がギリシャ国内を通過していくと予測しています。
day01
11月8日、ダマスカス郊外の反アサド勢力の実効支配地に空爆が行われ、少なくとも23人が死亡、多数が重傷を負いました。
シリア内戦監視団は7日土曜日にも同様の爆撃があり、57人が死亡し100人以上が負傷したと報告しています。
day02
11月9日、トルコ、チェシュメの崖の上から満員のゴムボートを見下ろすシリア難民の男性と男の子。ボートはこの場所から対岸にあるギリシャのキオス島に渡ることになっています。
トルコからギリシャへの難民の流入はすでに100万人を超えました。
day03
11月9日、ギリシャ、レスボス島の廃棄物処分場に積み上げられた数千個のライフジャケット。
すべてエーゲ海を越えてやって来た難民たちが残していったもの。
Day04
11月11日、エーゲ海を横断中の難民を乗せたボートに向かってライフジャケットを打ち振り、目的地を教える難民の女性。
week01
http://www.nbcnews.com/news/photo/today-pictures-november-12-n462581

【 迷走を続ける日本経済、アベノミクスでは打開不能 】《前篇》

読了までの目安時間:約 8分

日本の潜在的成長率はほぼゼロ、わずかなショックで経済が不況に落ち込む可能性がある
安倍政権が誕生してからもうすぐ3年が経過、しかし経済局面が打開されるのはまだまだ先
アベノミクスに対する幻滅を、ますます露わにしている海外の投資家たち

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 10月25日

NYT アベノミクス
日本経済はこの2、3年、不況に落ち込みかけたまま、先行き不透明な状態が続いてきました。
成長局面に入ったのと同じ回数だけ不況局面に落ち込んだ日本経済において、それぞれの不況局面が意味するものとは何でしょうか?

現在の日本は、再び不安定な状況にあるように見受けられます。
2015年は第2四半期にマイナス成長に落ち込んだ後、続けて第3四半期にも生産高が縮小してしまった兆候があらわれています。
その原因を作ったのは減速する中国経済でした。

国内の経済学者などはどのような不況局面であっても短期間で済み、かつ深刻なものにはならないだろうと見ています。
しかしよりさらに厄介な事態を引き起こす可能性がある問題が、より深い場所に隠れている可能性があります。

日本の不況を終わらせるという公約を掲げて安倍政権が誕生してからもうすぐ3年が経過しますが、局面が打開されるのはまだまだ先のように見受けられます。

GRPH Real GDP
「潜在的成長率はゼロに近いため、どんなわずかなショックであっても日本経済は不況に落ち込む可能性があります。」
JPモルガン・チェイスの幹部級の日本経済学者である足立正道氏がこう語りました。
「日本経済の成長予想は貧血状態にあります。」
こうした状況から一部の経済学者は、国債を買い取るという形で莫大な金額を市場に注ぎ込んできた日本銀行10月末に開催される理事会で、一層の金融緩和策を打ち出すものと見ています。

アベノミクスの名で知られる安倍政権の経済政策の中心部分を成していたものが、この日本銀行によるかつてない大規模な資金注入(金融緩和)政策でした。
しかし日本の経済の実態はこうした政策によっては浮上しないことが、徐々に明らかになってきました。

そのひとつが昨年間の悪いタイミングで実施された、消費税率の引き上げでした。
日本の消費者心理を一気に冷え込ませ、出費を思いとどまるようになりました。
そして引き続き襲ったのが、日本製工作機械の最大需要家であった中国の景気減速でした。

しかし多くの専門家が、最も根本的な問題は、日本経済にはそもそも成長する要素をほとんど持っていない事だと指摘しています。

日本の経済成長は、基本的にゼロです。

安倍甘利
国内総生産の規模は1990年代半ばと同規模です。
その原因の大きなものは労働人口の減少です。

局面が目まぐるしく移り変わる状況下、こうした構造的要因により日本経済は何かあればたちまち不況局面に後戻りする危うさを持っているのです。

日本経済が持つ構造的弱点の改善については、これまで安倍首相が進めてきた経済政策はほとんど無力でした。

「海外の投資家はアベノミクスに対する幻滅を、ますます露わにしています。」
ゴールドマン・サックスの幹部級の日本経済学者である馬場直彦氏が、10月下旬にヨーロッパ、アメリカ、アジア諸国の投資家との会談を終えた後こう語りました。

これまでアベノミクスに対する外国人投資家の前向きな評価の中心にあったものは、安倍政権の経済政策の数少ない性向の中の日本の株価の上昇でした。
ここ数カ月間はそれ以前と比べ日本の株価は、他の世界市場の動きと同様その上昇の勢いは失われましたが、それでも2012年末に安倍首相が就任した時点と比較すれば、時価は約2倍になっています。
しかしそれ以外の日本経済の側面は弱体化しているように見えます。

日本経済02
アベノミクスの主要課題の一つは、労働者の給与アップと商取引上の障害となっている各種の規制を取り払うことに加え、持続的かつ全面的な物価上昇を生み出すことですが、「なかなか上昇局面には乗せられずにいます。」と馬場氏は語ります。
これらすべての要件の改善が実現されれば、日本経済の代謝が活発になり、経済構造の基幹部分に成長の可能性を現実のものにするための因子が組み込まれるはずでした

〈 後篇に続く 〉
http://www.nytimes.com/2015/10/26/business/international/japans-struggling-economy-finds-abenomics-is-not-an-easy-fix.html?ref=topics&_r=0
  + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

【 眠っている難民の子供たち…あなたが感じるものは何ですか?】《後篇》

アメリカNBCニュース 11月5日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

難民子供 4
カメラマンのマグナス・ウェンマンが、大量の中東難民が移動を続けている中、最も弱い立場の子供たちが眠る姿をカメラに収め、その背景にあるものを伝えています。

アフマド、7歳(セルビア、ホルゴスにて・写真上)
眠っている間ですら、自由にはなれない場合があります。
恐怖体験の再現が子供たちを苦しめています。
シリアのイドリブで暮らしていたアフマドが家に帰ってきた瞬間、爆弾がさく裂しました。彼は爆発の際破片に頭を強打されましたが、幸い命を取り留めました。
しかし弟はそうではありませんでした。
アフマドの一家は数年間戦争と隣り合わせの暮らしを強いられてきました。
しかし家を破壊されてしまった以上、もう選択肢はありませんでした。
彼の一家は逃げ出すほかなくなりました。
逃避行が始まって16日目、今アフマドは閉鎖されたハンガリー国境に通じる高速道路の脇のアスファルトの上で眠っています。
これまで家族はバス待合所で、道路で、そして森で眠ったとアフマドの父が説明しました。

アブドゥラ 5歳(セルビア、ベオグラードにて・写真下)
アブドゥラは、血液疾患にかかっています。
この2日間、彼はベオグラード中央駅の外で眠りました。
彼はシリアにいるとき、目の前で姉妹が殺害されるのを見ました。
アブドゥラはまだショック状態が続いており、毎晩悪夢にうなされています。
アブドゥラは疲れがたまり健康でありません。
しかし母親には彼に治療を受けさせたり、薬を買うだけのお金がありません
難民子供 3
アフマド、6歳(セルビア、ホルゴスにて)
アフマドが芝生の上で眠るのは真夜中が過ぎてからです。
周囲では難民申請をすることなくハンガリーを通過し、さらに西に行く方法を求める大人たちがうろうろしています。
アフマドはまだ6歳ですが、家族が荷物を抱えて徒歩で逃避行を続ける間、彼自身も自分で荷物を担いでここまでやってきました。
シリア国内で父親が死亡して以来、アフマドの世話をしている叔父がこう語りました。
「アフマド勇敢な子です。時々泣いていますが、それはいつも夕方だけです。」
難民子供 5
http://www.nbcnews.com/news/world/fleeing-childrens-sleeping-portraits-haunt-n458111

【 信じられますか?安全!ニッポンのゲンパツ : 避難区域への帰還2015 】《後篇》

読了までの目安時間:約 7分

事故発生以降、福島県内の子供たち、青少年の間で甲状腺ガンの発症割合が異常に高くなっていることを確認
土地が安全になったのなら、なぜそこで収穫した農産物の放射線量の検査をしなければならないのか?
政府機関に対する不信感は、町や村の再建を不可能にする程、住民の間に広くかつ抜き差しならぬものになっている

エコノミスト 10月24日

楢葉町帰還住民
かつて福島第一原発の周辺で暮らしていた約80,000の人々のうち、多くの人々がすでに別の場所で生活を再建しました。
帰還を果たした人々の多くは高齢にさしかかっています。
地元自治体では帰還する住民は多くても半分程度と見積もっており、特に放射線による健康被害が発生しやすい子供たちがいる家庭は、二度と戻らない可能性がある考えています。

人びとが放射線による被害を恐れる大きな理由は、日本政府と東京電力が公表している計測値に対する不信、そして放射性物質がもたらす本当の脅威です。

10月20日には、福島第一原発で事故収束作業にあたっていた作業員が、メルトダウンによる放射性物質の放出と関連性があるガンを発症したと公表されました。
これは福島第一原発の事故とガンの発症との因果関係が公式に認められた初めてのケースですが、最近行われた医療調査では福島第一原子力発電所の巨大事故が発生して以降、福島県内の子供たち、青少年の間で甲状腺ガンの発症割合が異常に高くなっていることが確認されています。

人類の敵
2011年に発生した福島第一原発の事故へのその後の対応のまずさは、日本の原子力関係諸機関に対する一般国民の信頼を大きく損ねることになりました。
2013年田村町都路地区の再開を当局が認めたとき、住民は帰還することの安全性に不信を露わにし、もっと徹底した除染作業を行うよう要求しました。

避難命令が解除されて1年後、川内村の遠藤町長は政府機関に対する不信感は、もはや村がかつての規模を取り戻すことは不可能な程住民の間に広く、かつ抜き差しならぬほどのものになっていると語りました。

彼は29年前に世界最悪の原子力発電所事故を引き起こしたウクライナのチェルノブイリ周辺地区を視察しました。
そこで目にしたまるで墓場のようないくつもの捨てられた町や村は、逆に川内村再建の彼の決意を一層強いものにしたと語ります。

しかし帰還を果たした人々もその多くが、彼らに対して示された保証を果たして信じていいものかどうか、未だに迷い続けています。

汚染02
たくさんの人がこんな疑問を持っています。
土地が安全になったのなら、なぜそこで獲れた農産物はいちいち放射線量の検査をしなければならないのか、と。

楢葉町には旧都路村や川内村には無い、もうひとつの希望の光があります。
この町は福島第一原発の事故収束・廃炉作業、そして3.11の巨大地震・津波の被害が比較的軽微に済んだ福島第二原子力発電所に関連する仕事の恩恵を受けることが出来ます。

もうひとつ、楢葉町の喫緊の課題は新しい街灯を設備することです。
そのための資金は日本政府から出される助成金によって賄われます。
街灯が整備されれば町は蘇ったように明るくなり、その分住民の帰還が進むものと松本町長は期待を寄せています。

NBC 6
しかしいまは、すでにある街灯もほとんど点いてはいません。
夜は暗闇が支配し、不気味な気配があたりを支配したままです。

〈 完 〉
http://www.economist.com/news/asia/21676828-lack-trust-authorities-hindering-resettlement-near-fukushima-back-nuclear-zone?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

【 眠っている難民の子供たち…あなたが感じるものは何ですか?】《前篇》

アメリカNBCニュース 11月5日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
難民子供 1
カメラマンのマグナス・ウェンマンが、大量の中東難民が移動を続けている中、最も弱い立場の子供たちが眠る姿をカメラに収め、その背景にあるものを伝えています。

5歳のワラアはシリアの自宅に帰りたいと願っています。
アレッポの自宅には彼女自身の部屋がありました。
自分の部屋で眠る時、彼女は泣くことはありませんでした。
ここ難民キャンプでは、ワラアは毎晩泣いています。
ワラアは夜が来るのが恐ろしいのです。彼女の家も部屋も爆破してしまったのは夜間爆撃でした。(写真上)

5歳のラマールがバグダッドの自宅で暮らしていた時には、人形たちやたくさんのおもちゃに囲まれて暮らしていました。
でもたった一発の爆弾がすべてを変えてしまいました。
爆弾が投下された時、家族は買い物に出ていました。
家に帰ると、そこはもう住める状態ではありませんでした。
祖母のサラはトルコからゴムボートに乗ってらエーゲ海を渡り、やっとの思いでハンガリーとの国境にたどり着きました。
しかしその国境は閉じられ、ラマールたち家族は野宿を続けています。
森の中で寝るのは怖いし、寒いし、そして悲しい…ラマールがこう話しました。(写真下・以下同じ)

難民子供 2
アフマド、7歳(セルビア、ホルゴスにて)
眠っている間ですら、自由にはなれない場合があります。
恐怖体験の再現が子供たちを苦しめています。
シリアのイドリブで暮らしていたアフマドが家に帰ってきた瞬間、爆弾がさく裂しました。彼は爆発の際破片に頭を強打されましたが、幸い命を取り留めました。
しかし弟はそうではありませんでした。
アフマドの一家は数年間戦争と隣り合わせの暮らしを強いられてきました。
しかし家を破壊されてしまった以上、もう選択肢はありませんでした。
彼の一家は逃げ出すほかなくなりました。
逃避行が始まって16日目、今アフマドは閉鎖されたハンガリー国境に通じる高速道路の脇のアスファルトの上で眠っています。
これまで家族はバス待合所で、道路で、そして森で眠ったとアフマドの父が説明しました。

難民子供 4
http://www.nbcnews.com/news/world/fleeing-childrens-sleeping-portraits-haunt-n458111

【 信じられますか?安全!ニッポンのゲンパツ : 避難区域への帰還2015 】《前編》

読了までの目安時間:約 6分

もう故郷には戻りたくない…その最大の理由は日本の政府当局への不信
福島第一原発が吹き上げた放射性物質は、北西方向の市町村を何十年も人が住めない場所にしてしまった
除染作業に注ぎ込まれた巨額の国家予算、被災者の生活再建に充て方がはるかに有効だったのではないか?

エコノミスト 10月24日

楢葉町帰還住民
腐敗物とネズミの排泄物から漂い出す悪臭が、猪狩良衛さんの自宅の居間にたちこめていました。
猪狩さんは2011年3月11日に襲った巨大地震と巨大津波が重要な設備である原子炉冷却システムを破壊し、福島第一原発の3基の原子炉でメルトダウンが発生した事故により、翌12日に楢葉町から避難した住民のひとりです。

2015年9月5日、楢葉町の避難命令が解除され、猪狩さんは実際の様子を確認するため町内の自宅へと急ぎました。
無住にせざるを得なかった間、野生のイノシシが手入れが行き届いていたはずの庭園にあった、背の高い見事な庭石を破壊して行きました。
それでもあちこちが腐ってしまった内装の中にあって、仏壇につい最近供えられたばかりのヒナギクの花は、猪狩さんが先祖代々暮してきたこの家に戻る決心をするかもしれないという事を示唆しています。

掲載した地図にもある通り、日本政府は福島第一原発の周囲に設定されていた避難指定区域を徐々に縮小し、今年ついに避難区域内の全市町村の中で初めて楢葉町全域の安全が宣言され、避難指定が解除されました。

避難区域地図
「2011年3月以来停止していた楢葉町の時計が、今また時を刻み始めました。」
松本幸英町長がこう語りました。

事故発生時、福島第一原発が放出した放射性物質は北西方向に向かいました。
日本政府は年間20ミリシーベルト未満に下がればその場所を安全とみなすという方針を示していますが、福島第一原発の北西方向に位置する町の放射線量は、未だに年間50ミリシーベルト(mSv)以上計測されており、今後も数十年間は人が暮らすことができないままの状態が続くと見られています。

しかし4年半前の事故発生当時の風向きと続けられてきた除染作業のおかげで、楢葉町に加え、北西方向に向かった放射性物質からかろうじて逃れることが出来た2つの町村について、日本政府は安全宣言を行うものと見られています。

これに先行して、昨年4月田村町の都路地区(旧都路村)で初めて避難住民の帰還・永住が認められました。
この後10月には川内村も続きました。
この二つの地区については、非難する必要が無い場所にあった店舗、病院、学校などが帰還区域を支えられる状態にあります。

請戸09
これに対し楢葉町はどうでしょうか?
避難した飼い主に捨てられた牛たちがついこの間まで通りをさまよっていたこの町には、地域での生活を支えるためのこうした基盤はありません。
地域社会を復活させるためには、まずは生活のための基本サービスから再度整備していく必要があります。
楢葉町の駅は昨年業務を再開しましたが、改札口の上に取り付けられた放射線を測定するためのデジタル線量計がいやでも目につきます。
来年には中学校が再開される予定ですが、かつて約8,000人いたこの町帰還したのは、たったの300人です。
心配の種は尽きることがありません。

日本政府は日本人なら誰でも持っている共通の感情、故郷への愛着、望郷の思いに惹かれて住民の帰還が進むことを願っています。
さらに2020年の東京オリンピックの開催時には、福島第一原発周辺地区の『復活』を世界に向け喧伝できるようになることを切望しています。

01ドイツ・反原発
そして何より福島第一原発の事故により全国で停止している原子力発電所を再稼働させられるために、政府としての事故処理能能力をアピールしたいのです。
福島県内の放射性物質によって汚染された農地や住宅地の除染作業を終えるまでには、およそ6兆円の国家予算がつぎ込まれるものと見られています。
これ程巨額の国家予算をつぎ込むのであれば、どこかほかの土地で被災者の生活再建を図った方がはるかに賢明であったという指摘もなされています。

〈 後篇に続く 〉
http://www.economist.com/news/asia/21676828-lack-trust-authorities-hindering-resettlement-near-fukushima-back-nuclear-zone?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
  + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

【 深まりゆく秋 】

アメリカNBCニュース 11月10日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
Fall01
10月27日、オーストリア、グナーデンヴァルト。(写真上)

10月31日、ドイツ、レックリングハウゼン。(写真下・以下同じ)
Fall03
10月4日、ドイツ、ホプフェラウ、テゲルベルク山。
Fall04
10月15日、ドイツ、ケルハイムのドナウ川。
Fall05
10月15日、スペイン、パンプローナのタルガ川。
Fall02
10月24日、ポーランド、グディニャ、オルウォボ。
Fall06
http://www.nbcnews.com/news/photo/falling-foliage-autumns-colors-pop-n456756

このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、アメリカCNN、NBC、ABC、CBS、英国BBC、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
サイトマップ
最近の投稿
@idonochawanツィート
健康関連リンク
アーカイブ