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【 戦後70年、初めて日本の軍事力行使を可能にさせる安倍政権 】《前篇》NYT

読了までの目安時間:約 8分

太平洋戦争という侵略戦争を行った後、その反省のもとに築き上げた平和主義国家・日本の繁栄
注目される参議院の60日間の審議期間、その間の日本国民の反応

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 7月16日

安倍政権NO!
国民の多くが反対していることが明らかになり、国会周辺では連日大規模な抗議デモが行なわれているにも関わらず、安倍晋三首相は、第二次世界大戦以来初めて海外の紛争が起きている場所で、限定的ながら日本の軍隊が武力行使できるようにするための複数の法案の衆議院通過を勝ち取りました。

野党議員が抗議して退出した後、そして台風の接近により天候がしだいに荒れてきたにもかかわらず、国会の外では多くの一般市民が大声で反対を叫んでいる中、安倍首相率いる自民党と連立与党は11の安全保障関連法案のパッケージを承認しました。
この後法案は上院にあたる参議院に送られますが、そこでも安倍政権の連立与党が過半数を制しており、これらの法案が承認されることはほぼ確実だと言ってよいでしょう。

この採決は、太平洋戦争という侵略戦争を行った日本が、その反省のもとに築き上げてきた平和主義国家において、数か月にわたって議論を続けてきたその結末とも言うべきものでした。
これは日本を『普通の国』にすると呼号し、軍国主義国家が犯した数々の事歴に対する罪悪感を乗り越え、日本が世界の紛争地区における軍事行動に積極的役割を果たすべきであるとする宿願を持つ、保守タカ派の安倍首相にとって重要な勝利となりました。

自衛権01
安倍首相は長年この主張を続けてきましたが、一般国民の多くは反対しています。
そしてアジア諸国、特に第二次世界大戦(太平洋戦争)の戦前戦中に日本による支配や非人道行為を経験したアジア諸国においても、懸念と不安を増すことになりました。

最終的にこの法案が成立すれば、戦後数十年間、たとえ防衛のためであってもその軍事行動を厳しく制限してきた立場から、日本は離れることになります。

大多数の日本の憲法専門家を含む専門家は、安全保障関連法案は戦後制定された日本国憲法に違反するものだと批判を強めています。
日本国憲法は紛争の解決手段としての戦争を放棄しています。

しかし安全保障関連法案は第二次世界大戦(太平洋戦争)の敵国であり、現在の最大の同盟国であり保護者でもあるアメリカ合衆国が支持しており、米国は台頭する中国の軍事的圧力に対抗して東アジア地区における安全保障に、より大きな役割を果たそうとする日本政府の姿勢を歓迎する意向を明らかにしました。

安倍首相は安全保障関連法案を押し通すために、かなりの有権者の支持を失いました。
多くの世論調査が、国民の3人に2人がこの法案に反対し、かつては高かった安倍政権の支持率も40%前後に落ち込んだことを明らかにしました。

自衛権02
安倍首相は日本を取り巻く外交的環境が厳しさを増しているとし、中でも中国の軍事的脅威の増大に対抗するため安全保障関連法案の成立が必要なのだと主張しています。

安倍首相は今年1月、イスラム国(ISIS)武装グループに2人の日本人人質殺害事件に飛びつきました。
安倍首相はもし日本が海外で軍事力を行使できていれば、彼らを救出することが可能だったかもしれないとほのめかしたのです。
「日本を取り囲む治安状況がより厳しくなっている以上、これらの法律は必要不可欠です。」
安倍首相は16日木曜日の採決の後、こう語りました。

中国は法案の通過に反発、日本の第二次世界大戦(太平洋戦争)中の侵略行為を念頭に、安全保障関連法案はアジアの平和に対する潜在的脅威だと非難しました。
「我々は日本側に対し歴史の厳しい教訓と真摯に向き合うことを求めます。そして平和主義に基づく国づくりに先進すべきであり、アジアの近隣諸国の安全保障の懸念に配慮すべきであり、さらには中国の主権と安全保障を危うくする行為は控えるべきです。」
声明の中で中国外務省の報道官がこうコメントしました。

強行採決
野党側はこの採決をボイコットしましたが、安倍首相が党首を務める自民党と連立与党公明党が過半数の議席を制する衆議院を通過しました。
この後、参議院の審議を経なければ法案として成立しませんが、万が一参議院で否決されても衆議院で再可決されれば良いだけであり、安全保障関連法案の成立はまず間違いないと思われます。

参議院はこの法案を60日間審議する予定です。
この間、さらにこの問題は国民の関心を集め、反対運動が拡大する可能性があります。
「安倍政権への反発を一層大きなものする新たな材料を見つけ出す、さらなる時間が国民に提供されることになります。」
ワシントンの外交評議会の日本部門の上級研究員シーラA.スミス氏が、オンライン上でこう語りました。

《前篇》
http://www.nytimes.com/2015/07/17/world/asia/japans-lower-house-passes-bills-giving-military-freer-hand-to-fight.html?ref=topics&_r=0
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やりきれない思いがするのは、『戦争』を呼号する人間たちは自分たちが前線に出て塹壕掘りから始めて、敵の砲弾や銃弾にわが身をさらすとは決して考えてはいないだろう事です。
自分たちは厳重に守られた部屋の中で椅子に腰かけて命令を下すだけであり、前線に出て敵に身をさらすのは『命令された』人間たちだという土台に立って言っているとしか思えません。
そして戦場にされた場所で暮らす人々の苦しみなど、考えようともしていないのかもしれません。

Syria01

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【 9.11テロ、その日の大統領 】

アメリカNBCニュース 7月24日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

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2011年9月1日、テレビが中継するテロ攻撃により炎上する世界貿易センタービルを見つめるディック・チェイニー副大統領。(写真上)

2011年9月1日、9.11テロ攻撃の後、チェイニー副大統領、ライス国家安全保障担当官らと協議するブッシュ大統領。(写真下・以下同じ)

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テロ攻撃後のパウエル国務長官とライス国家安全保障担当官。
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http://www.nbcnews.com/news/us-news/newly-released-photos-cheney-bush-tense-moments-after-sept-11-n398251
n-pictures/week-pictures-july-23-30-n401061

【 守るべきは米国議会における自分の誓約、日本の平和主義ではなく 】《後篇》ECO

読了までの目安時間:約 8分

なぜ安倍首相はここに来て、集団安全保障関連法案の『対中国』性格を明言するようになったのか
日米安保条約の必要性を理解するのに30年かかった日本人は、集団的自衛権の必要性を理解するのに30年かかる?
憲法第9条は世界中に地獄を作りだした世界大戦を二度と繰り返すまいと誓った、時代の精神が編んだもの

エコノミスト 7月11日

エコノミスト7月11日
安全保障関連法案を巡る議論の多くは、多くの日本人が長年大切にしてきた憲法第9条に関わるものです。
しかし安倍氏は憲法第9条を犯した最初の首相という訳ではなく、解釈の変更に基づく有名無実化は長い間繰り返されてきました。
憲法第9条は日本は陸軍、海軍、空軍、そのいずれも持つことはできないと定めていますが、日本は1950年代からそのすべてを持っています。
日本は実質的な国軍を『自衛隊』と名づけることによって、憲法による禁止をうまくかわしています。
そして同盟国が攻撃された場合を想定に入れることで、『集団的』自衛権の行使を可能にするというアイデアを最初に提案したのは、安倍首相の前任者である民主党の野田佳彦首相でした。

▽ これは『軍隊』ではありません、これは『自衛隊』です

安倍首相は日本が『普通の国』として、国力相応の軍事力を持つことを切望しています。
しかし多くの国民にそれが必要だと納得させられずに来ました。
そして日本政府は、政府見解を支持しているのはごく少数の学者に過ぎないという事を思い知らされました。

集団的自衛権05
一方、反対勢力はここぞとばかりに批判を強めています。
この法律の制定に反対する学界の関係者は、普段は安倍首相を支持している学者も含め、9,000人の学識経験者の支持を集めました。
この動きは逆襲を呼び、集団安全保障関連法案は憲法に違反していると発言した長谷部氏は、かつては氏を尊敬していた自民党議員たちから攻撃されることになりました。

また自民党本部で6月に開催された勉強会で、一般国民が集団安全保障関連法案に理解を示さないことについて、責任はメディアにあると別の攻撃を始めました。
一部の自民党議員は、集団安全保障関連法案に否定的な報道を圧殺するために、広告主に圧力をかけるべきだと発言したのです。
安倍首相はこうした発言には距離を置いています。

安倍首相が日本国民に『集団的自衛権』を行使するために必要な、集団安全保障関連法案を売り込むことになぜ苦労しているのか、その理由の一つは想定される具体的な事例の説明を避けている点にあります。
安倍首相が集団安全保障関連法案の成立にこだわる理由の筆頭に挙げられれば、中国の怒りを買うことは避けられません。
安倍首相は中国の代わりにイランを登場させ、日本が原油を輸入する際の最重要通過地点であるホルムズ海峡の封鎖を防ぐため、同盟国とともに軍事行動を起こす必要性について説明しました。

戦争させない
集団安全保障関連法案を成立させるための取り組みについてエコノミスト誌の取材を受けた安倍首相は、祖父である岸信介元首相が1960年当時日米安全保障条約を締結して辞任に追い込まれた後、数十年を経てやっと日本国民が同条約の必要性を認識したように、一般国民が『集団的自衛権』の必要性を受け入れるまでには25年~30年かかるかもしれないと語りました。

しかしこの問題にこだわればこだわる程、本来もっと緊急性が高くかつ重要な政治的課題であるはずの日本経済の改革のための求心力が失われていくことになります。
安倍首相は参議院での支持を確実にするため、右派の野党と協議を行いました。
仮に参議院でこれらの法案が火付けされても、再び衆議院において3分の2の大多数の賛成を得ることができれば、集団安全保障関連法案は9月には成立することになります。
自民党が連立パートナーである公明党に協力させられれば、それは可能です。

今国会の会期の異例の長さが、その事の助けになります。
審議のボイコットや講義などにより議事の進興が滞る場面もありましたが、国会は6月22日、政府はこの夏いっぱい会期を延長しました。

安部NYT
安倍首相はここまで中国の反応が抑えたものであることに意を強くしているのかもしれません。
日中関係は時に非難の応酬を繰り返す緊張関係に陥ることがあります。
中国側は国営メディアが日本の『軍国主義の復活』について従来と同じ警告を発しはしましたが、政府そのものはここ数か月、緊張関係を作りだすような動きは見せていません。

長い間安倍政権との接触を避けてきた中国政府はここに来て、日中間が『叩き合い』の関係に陥らないよう、むしろ進んで首脳会談を開催しようという姿勢を垣間見せるようになりました。

〈 完 〉

http://www.economist.com/news/asia/21657432-pacifist-nation-inches-closer-taking-responsibility-its-own-security-gloves?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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私は日本国憲法、特に憲法第9条は、第二次世界大戦という地獄の時代を生き残った人々が、二度とこうした地獄を出現させないために、いわば『理想国家』の建設されることを願って起草されたものだと考えています。
その地獄は日本人も原爆、大空襲、沖縄戦、玉砕戦、特攻、満州国脱出など、数限りなく経験されられたはずです。

ガダルカナルの戦死体
それをアメリカに『押しつけられた』などと放言するのは想像力の欠如の典型例であり、何より第二次世界大戦(太平洋戦争)で、せっかくこの世に生を享けながら、苦しみと絶望の中で殺されて行った数千万人の人々に対する冒涜だと思っています。

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【 戦争が人々の人生を、どん底に突き落とした 】

アメリカNBCニュース 7月26日
(掲載されている写真をクリックして大きな画像をご覧ください)

DAY02
ハンガリーのアソットキロムで、シートを被って雨をしのぐシリアからの難民の家族。
ハンガリーはEU諸国の中でビザ・フリーとなっており、豊かな西欧社会へ脱出するためのいわば回廊となっています。(写真上)

ガザ地区のベイトラヒヤ地区で遊具で遊ぶ子供たち。
背景の廃墟となった街並みは、昨夏のイスラエルの50日間に渡る侵攻によって破壊されたもの。(写真下・以下同じ)
DAY01
トルコの首都イスタンブールで平和のためのデモ行進が禁止されたたために、『平和』と書かれたプラカードを掲げて座りこむ市民。
7月20日にイスラム国(ISIS)とのつながりがある20歳の男の自爆テロにより、32名が殺害された事件をきっかけに、トルコ国内では暴力の応酬が連鎖的に拡大しています。
DAY03
7月19日、アフガニスタンの首都カブールから北西約200㎞にあるバーミヤンの洞窟住居から外を見やるハザラ族の人々。これらの洞窟はすべて人工のもので、タリバンが仏像彫刻などを破壊した後、戦争で家を失い、他にどこにも行くあての無い貧しい人々の住居になっています。
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DAY05
http://www.nbcnews.com/news/world/afghan-families-find-refuge-former-buddah-caves-n399451

【 守るべきは米国議会における自分の誓約、日本の平和主義ではなく 】《前編》ECO

読了までの目安時間:約 8分

どんな議論が行われようが、数の力により強引に安全保障関連法案を成立させることは可能だと踏んだ安倍首相
アメリカ軍と自衛隊の共同戦闘行動を可能にする、戦後最も重要な法体系の変更、それが安全保障関連法案

エコノミスト 7月11日

エコノミスト7月11日
2015年7月、日本の国会は戦後最も重要な法体系の変更について議論を行ってきました。

安倍晋三首相は、海外における同盟国軍の軍事行動に日本の自衛隊を『積極的に』参加させ、敵の攻撃にさらされている同盟国軍を掩護するための戦闘行動を行う事を、もっと容易にしたいと考えています。
同盟国軍の筆頭はもちろんアメリカ合衆国です。

しかし軍事分野における日本の平和憲法による制限をゆるめようとする安倍首相の長年の宿願は、日本国民の最も嫌うところであることは明らかです。

安倍政権は衆議院で複数の安全保障関連法案を7月16日までに、強引に通過させることを望んでいます。
第二次世界大戦(太平洋戦争)中に日本に軍事的に征服されていた隣国の中にはこの法案に不安や不満を持つ国もありますが、これらの法案は軍事態勢を全面的に変更するわけではありません。
日本は国連の平和維持活動であっても、実戦部隊を派遣することはできません。
日本自体が『存亡の危機』に陥りかねない状況にあると判断された場合に、同盟国の軍隊の援護のため戦闘行動を行うことが可能になります。

憲法第9条01
安倍首相にとって頭が痛いのは、このところ下がり続けている政権支持率が、今回の法案提出によりさらに一層下向いていることです。

国営放送のNHKの最近の世論調査では、ほとんど半分の国民がこれらの法案の中身を理解していないことを明らかにしました。
強く政府支持の立場をとる産経新聞でさえ、国民の約60%がこの夏これらの法案を成立させることに反対していることを伝えました。

そして自由主義を代表する立場の朝日新聞によると、政府に対する一般国民の支持率は、昨年末に抜き打ちの解散総選挙を行い、その勝利によって第2次となった安倍内閣の支持率が、初めて40%を下回ったと伝えました。

そして3人の高名な憲法学者が、政府が提出する法案は明確に憲法第9条に違反していると国会開会前に証言すると、安倍首相の困難な立場は一層のものとなりました。
日本は『正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。』
これが日本国憲法第9条です。
3人の憲法学者のうちの一人は、他ならぬ安倍首相率いる自民党が検討を委嘱した長谷部恭男(やすお)早稲田大学法学学術院教授でした。

憲法解釈変更 7
安倍首相は日本が武力紛争に巻き込まれることを望まないと語っていますが、アメリカとの同盟関係を重要視しています。
そのアメリカは世界の警察としての巨額の軍事負担に、国家財政がもはや耐えられなくなっている事を認め、一部を日本が肩代わりしてくれる事を強く望んでいます。

日本とアメリカはともに、中国の軍事的台頭と狂気の度を増す北朝鮮の軍事的脅威について懸念しています。
そして日米両政府ともに、日本近海の防衛活動を行っているアメリカ軍艦船が中国軍の攻撃を受けるというような緊急事態が発生した際、日本の軍隊が規則に縛られて自由に戦闘行動を行えないという環境は望んでいません。

4月のワシントン訪問の目的の一つは、安倍首相とアメリカ政府の間で、日米両国の新しい防衛ガイドラインに沿った『相互運用性』を確立する事でした。
米国滞在中、アメリカ議会の議員たちに、新たな安全保障関連法案の必要性について納得させる事は、実に容易な事でした。
しかし安倍首相がこれらの法律を今年の夏には成立させる事ができると米国の議員たちに約束した事は、本国にいる国会議員たちの怒りを買う事になったのです。
安倍首相がアメリカ議会で『約束』をした時点では、日本国内ではこれらの法案は成案にすらなっていませんでした。

安部演説
日本国民との間にどのようなコンセンサスも作ることなく、安倍首相が米国議会においていわば独断で行った『誓約』は、どう贔屓目に見ても軽率のそしりを免れません。
自民党が過半数を制する衆議院ではどのような議論が行われようと、それを無視してこれらの法案を成立させる事が可能ですが、自民党が議席の過半数を制してはいない参議院となると話は別です。

〈 後篇に続く 〉

http://www.economist.com/news/asia/21657432-pacifist-nation-inches-closer-taking-responsibility-its-own-security-gloves?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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「積極的平和主義」等々、どんな言葉を使おうと、爆弾を落とされる、肉親の命を奪われる一般市民の言葉には出来ない程の辛さを(下の写真にあるような)、70年前実に多くの日本人が体験したはずです。
帝国主義の時代も終わり、冷戦構造も解消しても尚、私たちは戦争の理由を探し続けなければならないのでしょうか?

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【 際限もなく広がり、命を奪いつづける現代の戦争 】

アメリカNBCニュース 7月23日
(掲載されている写真をクリックして大きな画像をご覧ください)

07262

シリア国境付近で殺害された2人のトルコ人警官の葬儀。
トルコ空軍によるイスラム国空爆攻撃が続く中、誤爆によりシリア国内のクルド人武装組織の戦闘員32名が死亡しましたが、非合法化されているクルディスタン労働者党(PKK)の軍関係者はその報復として、2名のトルコ警官を殺害したと発表しました。(写真上)

トルコ人警官が殺害された事件で、クルド人の少年を尋問するトルコの私服警官。ディヤルバルク市内。(写真下・以下同じ)
07264
7月23日にシリアのバッシャール・アサド大統領の軍の攻撃により破壊された病院の廊下を、松葉杖を抱えて歩く男性。
07261
ヨルダンのマフラクにあるシリア難民キャンプのテントの中で。
07263
7月21日、トルコのシュリュジュ、イスラム国の戦闘員と見られる自爆テロにより31人が死亡した事件で息子を喪い、泣き叫ぶ女性。
07265
http://www.nbcnews.com/news/photo/today-pictures-july-23-n397566
http://www.nbcnews.com/news/world/loved-ones-grieve-after-bombing-turkish-border-town-n395846

【 自国の『平和主義との戦い』を始めた日本 】

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「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、永久に戦争を放棄する」憲法第9条は安倍首相の野心の最大の障害
安全保障関連法案は、日本国憲法を拠り所とした平和主義国家としてのあり方を、根本から変えてしまう重大なもの
安倍首相の国策の大きな変更には国民の支持が一向に見えず、進もうとする方向は決して正しいものだとは言えない

ニューヨークタイムズ社説 7月20日

自衛隊02
7月第3週の日本の衆議院における採決の結果は、安倍晋三首相をして彼が最も重要と考える国家安全保障戦略の最終目標に近づくための一歩を進ませることになりました。
採決されたのは、第二次世界大戦(太平洋戦争)以降初めて、日本の軍隊に海外での戦闘活動を認める法律です。

しかしこの『勝利』を手にするために採ったやり方は、安倍首相が本当に戦後日本が築いてい来た平和主義に基づく国づくりを続けるつもりがあるのかどうか、深刻な懸念を引き起こしました。

世界で3番目に大きな経済力を有する国が、第二次世界大戦が終了して70年後に国際問題に、とりわけ中国の台頭が著しいアジア地域の問題により大きく関わろうとすることは当然のことと言えます。
しかし深刻な懸念をひきおこしているものは最終目標ではなく、それを成し遂げるために安倍首相が採っているそのやり方です。

安全保障01
議論の中心にあるのは1947年にアメリカ陸軍の監修の下で制定された日本国憲法です
それは自衛隊という名称の日本の軍隊について、自国の防衛にのみ武力の行使を限定しています。

この定めにより、世界的にも有数の規模を持ち、最新の装備を持つ自衛隊が『集団的自衛権』の行使、すなわち敵の攻撃を受けている同盟国やその軍隊を掩護する目的での武力行使はできません。
自衛隊は他国の軍隊と比較して、厳しい制約を受けていることになります。

安倍首相は日本国憲法を改定し、第二次世界大戦(太平洋戦争)後に設けられた制約の数々を撤廃し、日本は『普通の国』になるべきだと長年主張してきました。

昨年安倍首相はアメリカ合衆国に向けて発射されたミサイルの迎撃(撃墜)、攻撃を受けているアメリカ艦船の援護、そして国連の平和維持活動において積極的な任務を遂行できるようにするための準備を始める意向であることを明らかにしました。
そして南シナ海において中国との間に領有権に関する争いが起きている国々に対し、日本が全面的な支援を行う事を正式に表明しました。

I'm not ABE
こうした安倍首相の野心にとっての最大の障害が、日本国憲法第9条です。
第9条は『正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。』とうたっています。
第9条を改定するという事は、憲法そのものを変えてしまうという事であり、そのためには衆参両院において3分の2以上の賛成を得た後、国民投票を行わなければなりません。
安倍首相は自らの内閣において『憲法の解釈変更』を行い、それを自身が率いる自民党が過半数を制する衆参両議会に追認させるというやり方により、この手続きを回避しました。

衆議院は7月17日、11の法案からなる安全保障関連法案を一括審議の上、可決しました。
参議院もこれに続く予定です。

正式な憲法改正手続きとは異なり、通常法案は多数票を義務づけるだけであり、国民投票という形で国民の意思を問う事もありません。

反安倍01
『解釈変更』というやり方は、安倍首相の独創ではありません。
過去においても日本政府は、やはり解釈変更を行ってきました。
しかし今回提出された法案は、日本国憲法を拠り所とした平和主義国家としてのあり方を根本から変えてしまおうという重大なものであり、しかもそのやり方は異論を許さない強引なものでした。

日本の憲法学者の大半がこの法律に反対し、彼らを中心にノーベル賞受賞者を含む学者、芸術家による反対の嘆願書には、10,000人を超える著名な人々が名を連ねました。
そして何万人もの一般市民が抗議行動を起こしました。
世論調査は、日本の有権者が2対1の割合でこの法律に反対していることを明らかにしています。

安倍首相については、日本も、周辺国も、その国民が等しく疑いを持っています。
自らの支持基盤である右翼の国家権力主義者の主張と軌を一にし、第二次世界大戦中に大日本帝国とその軍隊が行った侵略行為、非人道行為については心から反省することなどなく、もはや振り返ろうともしないのではないか、と。

南京虐殺
長く平和主義国家として反映してきた日本を、安倍首相は再び戦争に向かわせるつもりなのではないか、という懸念が広がっています。

民主主義社会において評価されるべき大きな改革の実績を残した政治指導者達には、常にその時々の国民の幅広い支持がついて回っていました。
この度の安倍首相の国策の大きな変更には国民の支持が一向に見えず、したがってその進む方向は決して正しいものだとは言えないはずのものなのです。

http://www.nytimes.com/2015/07/20/opinion/japan-wrestles-with-its-pacifism.html?ref=topics&_r=0
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『民主主義国家を守るため』と称する法律が、民主主義のルールを無視したやり方で強引に成立させられようとしている。
その姿勢から見て取れるのは、この政権はすでに民主主義の根幹を破壊する意思を明らかにしているということである。
ニューヨークタイムズならではの、鋭い指摘だと思います。

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【 これが冥王星!】

アメリカNBCニュース 7月24日
(掲載されている写真をクリックして大きな画像をご覧ください)

冥王星 1
この擬似的に彩色された冥王星の写真は、NASAの探査宇宙船『ニューホライズン』が約45,000キロの距離から、異なる撮影方法で撮った4枚の写真を合成して作られたものです。
そして『ニューホライズン』プロジェクト・チームの科学者たちが、冥王星の表面のそれぞれ異なる状態を際立たせるために彩色を行いました、
初めて明らかにされた準惑星・冥王星の姿がカラー化によって、一層の迫力を持つものとなりました。(写真上)

そしてこちらは7月14日の最大接近の後、冥王星から遠ざかる『ニューホライズン』が撮影した、冥王星の影が太陽を覆い隠す 「冥王食」の写真です。(写真下)

冥王星 2
http://www.nbcnews.com/science/space/new-horizons-captures-plutos-hazy-atmosphere-parting-shot-n397951

【 世界的クリエイター、安倍政権の集団的自衛権行使容認を痛烈に批判 】

読了までの目安時間:約 11分

『憲法を見直した偉大な首相』としてその名を歴史に刻みたい安倍首相、しかしその手法は『卑劣』
日本政府が海外紛争に積極的に関わろうとしている現状は、「非常に不幸な展開」
民主主義的な内容であるはずの日本国憲法の解釈をねじ曲げ、別の法体系を作ろうとしている安倍政権

ユーアン・マッカーディ、ヨーコ・ワカツキ / アメリカCNNニュース 7月14日

宮崎駿氏01世界のアニメーション界において今や伝説的存在であり、スタジオ・ジブリの共同創設者である日本の宮崎駿氏は、海外の軍事紛争に自衛隊を積極的に参加させるべく憲法第9条の解釈を変更した上で、必要な法律を成立させようとしている安倍首相の取り組みを厳しく非難しました。

現在日本の国会議員は国内から批判の多い集団的自衛権の行使を可能にする法案の審議を行っていますが、この法案の発端となった安倍首相の憲法解釈の変更について、日本を代表する芸術家のひとりである宮崎氏は虚栄心に満ちた、「卑劣な」行為であるとの痛烈な非難を行いました。

敗戦に終った第二次世界大戦(太平洋戦争)以降、日本は戦争との関わりを努めて避けてきましたが、審議中の法案は海外における軍事紛争において、自衛隊が積極的役割を果たそうとするものです。

宮崎駿氏02「私が思うに、安倍首相は『憲法を見直した偉大な首相』としてその名を歴史に刻みたいと考えているのでしょう。しかし私に言わせればその行為は『卑劣』なものです。」
アニメーターであり、監督でもある宮崎駿氏は13日月曜日に西東京の彼のスタジオで開かれた記者会見の席上、こう語りました。
議案は、すでに7月の第3週に衆議院で採決される準備ができています。

宮崎氏自身が最後に手がけた長編映画『風立ちぬ』は、戦争に反対する宮崎氏の政治信条を形にしたものだとの解釈が一般的です
この映画は第二次世界大戦(太平洋戦争)中、日本の主力戦闘機となった三菱製のゼロ戦の発明者の物語です。
現在の日本政府が海外紛争に積極的に関わろうとしている点について質問を受けると、アニメーターであり、映画監督であり、そしてスタジオ・ジブリの前の代表である宮崎氏は
「非常に不幸な展開」
であると語りました。

風立ちぬ▽ 憲法改正へ道を開く

今回の法案は、本来もっと民主主義的な内容であるはずの日本国憲法に対し、異なる解釈の上に法的枠組みを作り上げ、集団的自衛権の行使と日本の軍隊の『積極的』海外派遣を可能にするものです。

昨年、安倍首相は同盟国の防衛軍事行動に自衛隊が参戦することが出来るように、憲法の解釈変更を閣議決定し、日本国内全域から反発と抗議を引き出しました。

この法案に反対する人々は、考えられているよりもはるかに大規模な軍事派遣に安倍首相が道を開く危険性があり、そもそも法案自体が憲法に違反していると主張しています。

「私たちはこれの法案の中身、そして導入された経緯に非常に大きな懸念を抱いています。」
野党第一党の民主党の参議院議員代表、国際局長を務める藤田幸久氏がCNNの取材にこう答えました。
「昨年安倍首相が率いる日本政府は憲法の解釈変更を行いましたが、それ自体憲法に違反しています。すでに200~300人の専門家が、憲法に違反していると判断しています。」

集団的自衛権06
藤田議員は日本が戦後の平和主義的な立場を捨てる現政権のスタンスは、アジア地区においても、国際社会においても、日本の地位を損なうことになると語りました。
「この70年間、日本は平和主義的な国家として広く認識されてきました。人道支援目的以外に自衛隊を紛争地域に派遣した事例はありません。
安倍政権が提出した議案は、これまで日本が保ち続けてきた安全保障政策に明らかに反するものです。そして世界の人々が持つ日本人への印象、そして日本という国への評価を損ねることになります。」

▽ 議決すべき時?!
日本国内のいたるところから、そしてあらゆる分野から反対の声が挙がっているにもかかわらず、菅義偉官房長官はこれらの法案の議論には充分な時間が費やされたと語りました。
「政府の基本政策はこれらの法案について丁寧に説明を続けていくというものであり、いつ議決をするかというのは議会が決める問題です。それらの要件が整えば、最終的な決定をすることが必要になります。」

戦争させない
安倍政権の一連の動きは国民の反発を買い続けています。
地方の報道機関が伝えた7月中旬に衆議院での議決前に行われた世論調査では、安倍政権を支持すると答えた人の割合が41%であるのに対し、支持しないと答えた人が43%と、初めて逆転しました。

有権者は2020年に開催される東京オリンピックのメインスタジアムとして建設が予定されている新国立競技場の3,000億円を超える建設費用にも不満を募らせています。

▽ 忍び寄る第二次世界大戦(太平洋戦争)の影

安全保障関連法案の議決の数週間の後には、第二次世界大戦(太平洋戦争)に日本が降伏して70周年を迎える日がやってきます。

宮崎駿氏や藤田議員など各界を代表する人々や政治家は、この日を安倍首相が第二次世界大戦(太平洋戦争)中に日本が行なった非人道的行為の被害者となった国々、特に中国と韓国に謝罪を行う機会として利用するように望んでいます。

日本軍・舟山列島
宮崎氏は中国における日本軍の行動は「侵略戦争」とした上で、安倍首相をはじめとする日本政府は日本が「中国の国土で著しく大きな損害を与えたことについて、心から後悔しているという事」を
明解に認めなければならないと語りました。

伝説的なアニメーターである宮崎氏は昨年、公式に引退を表明しましたが、現在は「辺野古基金」という市民グループとともに活動を行っています。

このグループは沖縄に新しい米国の軍事基地が建設されるのを阻止しようとしています。
宮崎氏は、沖縄を非武装化することが将来の東アジアの平和と安定を確立する上で重要な事だと語っています。
宮崎氏は74歳になりましたが、引退後もその創造的才能の発露にはほとんど衰えが見えません。
現在彼は現役時代にスタジオ・ジブリにおいて特徴的であった手描きのスタイルから離れ、自身の博物館においてコンピュータを使った短編アニメーション映画の制作に取り組んでいます。

宮崎氏は引退前と引退後の違いについて、次のように語りました。
「これまでより30分遅い時間に仕事に取り掛かり、30分早く仕事を追えるようにしています。」
「違いはそれだけです。」

千と千尋の
スタジオ・ギブリの「千と千尋の神隠し」は2003年、日本のアニメーションとして初めてアカデミー賞を受賞し、日本の映画市場最大のヒット作となった記録は未だに破られていません。
そして1985年にスタジオ・ジブリを共同創立した宮崎氏自身は、日本のアニメーション文化への影響力の大きさゆえに「日本のウォルト・ディズニー」と呼ばれている人物です。

http://edition.cnn.com/2015/07/14/asia/japan-miyazaki-slams-abe-security-bill/index.html
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昨日あたりから急に中国の東シナ海におけるガス田開発が、「けしからん!」といった論調でニュースになり始めました。
自民党の外交部会が、
「こうした施設は軍事拠点として使われる可能性がある。」
と主張しているのをニュースで見て、目的はそれか、と思いました。
何が何でも中国を『脅威』に仕立て上げ、集団的自衛権行使への国民の支持を広げたいのだと考えられます。
可能性なら何とでも言えます、たとえヘリコプター1機がやっと離着陸できる規模の設備であっても…

「大量破壊兵器を持っている可能性がある。」
「9.11テロの黒幕である可能性が高い。」
そう言ってアメリカ軍をイラク国内に殺到させたのはアメリカのブッシュ政権でしたが、その論理と酷似しており、まさにそのやり口は正統的なものとは全く別次元のものです。
イラクでは結局「可能性のあった」大量破壊兵器は見つからずじまい、そして9.11テロの黒幕は別のところにいました。

サダム・フセインの独裁政権は倒れ、バグダッドには数多くの米系企業が進出しましたが、北の方にイスラム国というもっと厄介な相手が出現し、ひとつの戦争は今や別の無数の戦争を生み出しています。
そして少数民族が虐殺に遭い、たくさんのジャーナリストが不法に命を奪われる無法地帯が広がり、何万何十万という人々が家を失い、難民と化しています。

クルド 1
クルド 4

1990年イラク戦争。『正義の戦い』をしたアメリカ軍の攻撃の犠牲者。

1990年イラク戦争。『正義の戦い』をしたアメリカ軍の攻撃の犠牲者。


外交問題解決のため、戦争することはやむを得ない。
そのためには家族や肉親を、あるいは自分自身が戦場に行くのも仕方がない。
私は決してそう思うことはできません。

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【 日本の子供たちをクールダウン!】

アメリカNBCニュース 7月21日

シロイルカ01
横浜にある八景島シーパラダイスの水族館を訪れた子供たちに、遊び好きなシロイルカが全く新しい涼むための方法を教えてくれました。
気温が摂氏35度まで上昇した20日月曜日、日本では『海の日』、訪れた子供たちはシロイルカとの涼しい時間を堪能することになりました。

シロイルカ02
シロイルカ03
http://www.nbcnews.com/news/world/japanese-kids-find-fun-way-fight-heat-wave-n395566

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