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【 脅かされている日本の報道の自由( Op-Ed※ ) 】《後篇》

読了までの目安時間:約 7分

ニュース報道や個々のリポーターの発言内容まで、細部にわたる管理を行う放送会社の経営陣
何を話題として取り上げるべきか、触れてはならない問題とは何か、そしてインタビューを行う際の留意点とは?そこまで指図した自民党の『要請文書』
かつてない強力な圧力の下で、日本のメディアが『政権の監視役』としての機能を果たすことは可能なのか?

古賀茂明 / ニューヨークタイムズ 5月20日

古賀氏 2
日本の報道体制のさらなる問題は、日本の大手メディアの場合、経営管理部門と編集部門が明確に分けられていないという点にあります。

大手メディア会社の会長や社長はしばしば、ニュース報道やリポーターひとりひとりの発言内容に至るまで、細部にわたって管理しようとしています。
そうした経営者の中で、権力による干渉に敢えて抵抗しようとする人間はごくわずかでしかありません。
その理由は日本特有の雇用体系にあります。
歴史的に見て日本を代表する程のメディア企業に籍を置くという事は、退職するまでの間高い社会的地位と高額の給料が保障されることを意味するからです。

多くのジャーナリストが自分たちの会社の経営層が日本政府の意に従うつもりであることを認識し、かつ自分のキャリアを守りたいと考えており、政府に批判的な報道を行う事をためらっています。 会社への忠誠心と今の生活を守りたいという気持ちに、独立したジャーナリストとしての専門性の高い倫理感は勝つことが出来ないのです。

古賀氏 1
こうしたシステムは、日本においては特に新しいものではありません。
第二次世界大戦以前はもちろん報道に加えて、いちいちの言論についても政府が厳しい目を光らせていました。
戦後大日本帝国の体制が崩壊し、日本を占領していた連合軍によってメディアを管理するための独立した機関が設立されましたが、日本の保守陣営は1952年これを廃止してしまいました。
このように報道機関に対する政府・政権の干渉は少なくないのですが、しかし最近になって現政権が行なっているメディアへの圧力のかけ方というものは、これまでなかったほど強力、そして広範囲なものです。

安倍政権の下、主要なメディア各社の経営陣のトップは、首相や政府高官ともに豪華な食事を楽しむため、あるいはゴルフに出かけていきます。
そして彼らメディアの経営者たちは、こうした事実が市民に伝わることについて臆するところがありません。

特定秘密 2
昨年行われた総選挙の直前の11月、自民党は国内の主要なテレビ局に対し、その報道が「一方的なものにならない」ことを確実とするよう念を押すための、『要請文書』を送りつけました。
その中には選挙報道の際、何を話題として取り上げるべきか、触れてはならない問題とは何か、そしてインタビューを行う際の内容にまで指示が行なわれていたのです。

そして自民党は放送局の中の1社に対しては、その番組のひとつで、世論調査において多くの人々が表明していたように、安倍政権の経済政策がいわゆる富裕層にのみ恩恵を与えているという指摘を行ったことに対し抗議を行っていました。

こうした状況の下で、日本のメディアが『政権の監視役』としての機能を実現することは果たして可能でしょうか?

ジャーナリストに対する安倍政権の扱いは、国民を完全に政権の意に従わせる権力国家のやり方そのものです。
自由主義国家、民主主義国家であるはずの日本は今、その実態を失いつつあります

※古賀茂明氏は1980年から2011年まで経済産業省の官僚を務めた、ライター、ニースコメンテーターです。
※ Op-Ed : 社説が新聞社の見解を代表するのに対し、この論説では社外を含む多様な委員により署名入りで持論が展開される。( アルク http://www.alc.co.jp/

http://www.nytimes.com/2015/05/21/opinion/the-threat-to-press-freedom-in-japan.html?_r=0
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【 写真集 : 第二次世界大戦(太平洋戦争)】《4》

アメリカCNNニュース 5月8日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

マルマンディ上陸

1944年6月6日Dデイ、フランス、ノルマンディ地方のオマハビーチに上陸しようとしているアメリカ軍兵士。この日連合軍はユタ、オマハ、ジュノー、ゴールド、スウォード海岸に上陸作戦を敢行し、ヨーロッパ本土における決戦の幕を切って落としました。
この側線には5,000の艦船、11,000の航空機、150,000人の兵士が参加しました。
作戦はカーン攻略も含め8月いっぱいを擁し、連合軍兵士だけで35,000人が死亡しました。(写真上)

1944年8月26日、パリ解放。コンコルド広場を行進するシャルル・ド・ゴール将軍と群集。(写真下・以下同じ)
パリ解放1944年12月20日、ドイツ軍最後の大反攻『バルジの戦い』が始まった後、ベルギーのクリンケルター付近を行軍するアメリカ軍歩兵部隊。
欧州本土戦闘
1945年2月23日、硫黄島のすり鉢山の頂上に星条旗を立てるアメリカ海兵隊の兵士。
この戦いはアメリカ海兵隊史上、最も惨烈な戦いとなり、27,000人の死傷者を出しました。
一方島を防衛していた18,000人の日本兵のうち、生き残ることが出来たのはたった216人でした。
硫黄島
アメリカ第9軍がライン川を渡河した後の1945年3月26日、ドイツ、フォアーデ (ニーダーライン)、フリードリッヒスフェルトの街中を行くドイツ兵捕虜。
ドイツ兵捕虜
1945年2月、戦後処理について連合国側の代表が話し合ったヤルタ会談似て、左から英国首相ウィンストン・チャーチル、アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルト、ソ連首ヨシフ・スターリン。
ヤルタ会談
http://edition.cnn.com/2015/05/08/opinions/ben-ghiat-end-of-world-war-ii/index.html

【 脅かされている日本の報道の自由( Op-Ed※ )】《前篇》

読了までの目安時間:約 9分

今年4月に古賀氏を出演させたテレビ局に対し、『いい度胸してるじゃないか!』と言い放った自民党幹部
放送法の反干渉規定を盾に干渉に抵抗する代わり、自民党の出頭命令に唯々諾々と従ったテレビ局
日本の『報道統制』を支えている、記者クラブという閉鎖社会制度

古賀茂明 / ニューヨークタイムズ 5月20日

古賀氏 2
3月の記者会見の席上、日本政府のスポークスマンを務める菅義偉官房長官は、日本を代表する民間放送会社のひとつであるテレビ朝日の番組の中での、私(古賀茂明氏)の発言に対し懸念を表明しました。
発言は、首相官邸の激しいバッシングにより、今後私が番組に出演する機会が無くされたというものでした。

日刊紙の朝日新聞の報道によれば、菅官房長官は次のように発言しました。
「我々は、テレビ局がこの問題をどのように扱ったのか、放送法に照らして綿密な検証を行います。」
これは、場合によってはテレビ朝日の放送許可を取り消すぞという無言の脅迫にほかなりません。

そして4月17日、政権与党の自由民主党の特別委員会のメンバーが特別査問会を開くとして、テレビ朝日、そして公共放送NHKの経営陣を呼び出しました。
自民党の党本部で開かれた査問会は、安部首相が率いる政権に対し批判的な報道を行っていると自民党が考えるテレビ朝日の『報道ステーション』、NHKの『クローズアップ現代』の2つの番組をターゲットにしたものでした。

安倍 3
私が4月25日に地方局である東京MXテレビに出演した後、自民党の幹部が一部のジャーナリストにこう語ったそうです。
「古賀氏の番組出演を許したテレビ局があるそうだが、私に言わせれば、いい度胸をしているよ!」

これらが指し示しているのは、日本政府が言論機関の独立性に不当に干渉しているという事実です。

こうしたことが起きる原因の一つは、日本の言論機関と国家との関係を長年支配してきた構造的特徴にありますが、安倍政権はそれらを巧妙に利用することに秀でており、かつ積極的に利用しています。
そして日本の言論界の一部は、安倍政権のこうしたやり方をむしろ進んで受け入れているのです。
たとえばテレビ朝日は、菅官房長長官の脅迫を押し返す代わり、私が政府批判を行ったテレビ番組の製作に関わった社員を非難しました。
そして放送法の反干渉規定(第三条 : 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない)を盾に不当な干渉に抵抗する代わり、テレビ朝日は自民党の出頭命令に唯々諾々と従ったのです。

古賀茂明氏
日本においては国家機関とジャーナリストの関係は、記者クラブのネットワークを通すことが 『公式な』形とされています。
記者クラブは各省庁、各地方自治体、各政党、そして各々の産業協会にすら存在します。
記者クラブの会員資格は、通常、主要な報道機関の記者に限られています。
一般的に記者クラブの会員だけが記者会見に出席でき、記者クラブの会員だけが組織の当局に接触することを許されています。

クラブの記者たちにこの特権的な地位を授けることと引き換えに、当局側は自分たちにとって都合の良い報道が流れされて当然と考えています。
そしてほとんどの場合、彼らが考えている通りのことが現実になっているのです。

もう一つの問題は日本のメディアを管理監督しているのが、政府組織から独立した機関では無いということです。
現実には政府自身が管理していると言っても良い状況にあります。

I'm not ABE
その権限を握っているのが総務省です。
テレビ局の放送許認可の権限を持ち、放送を続けるためにはライセンスを定期的に更新しなければなりません。
従ってテレビ局は常に政府の監視下にあり、政府が気に入らない報道をすれば放送許可を取り消されてしまう脅威が日常的に存在しているということになるのです。

日本の現在の政治制度の下では、国内のテレビ放送に対し、政権与党が絶大な影響力をふるう事が出来るのです。

〈 後篇に続く 〉

※古賀茂明氏は1980年から2011年まで経済産業省の官僚を務めた、ライター、ニースコメンテーターです。
※ Op-Ed : 社説が新聞社の見解を代表するのに対し、この論説では社外を含む多様な委員により署名入りで持論が展開される。( アルク http://www.alc.co.jp/

http://www.nytimes.com/2015/05/21/opinion/the-threat-to-press-freedom-in-japan.html?_r=0
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もはや日本の大手メディアが古賀氏の『論評』を掲載する可能性が、絶無と言って良い程低くなっている現在、世界の報道のメインストリームにあるニューヨークタイムズが掲載したことの意義は大きいと言わなければなりません。
それにしても、反対意見を公にした相手に対し、政権与党の幹部が『いい度胸してるじゃないか!』と言い放つというのはどういう事でしょうか?
私には恫喝以外に聞こえません。
英国保守党、米国共和党の幹部がメディアの報道等に対し、こうした類いの発言をしたという話はここ数十年間聞いたことがありません。
今回この論評がニューヨークタイムズに掲載されたことにより、その『品位』とその『政治の本質』が世界中に伝わることになるでしょう。

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【 写真集 : 第二次世界大戦(太平洋戦争)】《3》

アメリカCNNニュース 5月8日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

北アフリカ戦線

1942年11月23日、北アフリカ戦線のアルジェで夜間爆撃を加える連合軍。
この年連合軍は、北アフリカとソ連領内において、枢軸国軍の進撃を食い止めることに成功しました。(写真上)

1942年6月、日本軍機の攻撃により、黒煙を上げるミッドウェーのアメリカ海軍航空基地。
4日間に渡るミッドウェーでの戦いで、アメリカ軍は4隻の日本の航空母艦を撃沈するなど、初めて大きな勝利を手にしました。
この戦いは第二次世界大戦太平洋戦線(太平洋戦争)の大きな転換点となりました。(写真下・以下同じ)
ミッドウェー米軍基地
英国空軍掩護部隊(WAAF)の阻塞気球(そさいききゅう)の操作を担当する女性兵士。
基地内で阻塞気球を空中に固定するための、ケーブルの操作方法について講義を受けている時の写真。
第二次世界大戦では、『防衛計画と戦争関連の勤労奉仕』の名の下に、女性たちが通常の家庭内での役割に加えて大きな役割を担いました。
アメリカ、ニューオリンズの第二次世界大戦博物館の資料から。
阻塞気球
1942年11月の『トーチ作戦』で、アルジェ付近に上陸する英軍兵士。
『トーチ作戦』はフランスのヴィシー政権の支配地区に対し、米英の連合軍が行なった上陸作戦。
対ドイツ西部戦線において、米英の連合軍による本格的な反攻が開始された瞬間でした。
英軍アルジェ上陸
1944年、イタリアのアンツィオで捕虜収容所に向かって進むドイツ軍兵士。ローマ南郊へのこの上陸作戦ではアメリカ軍も大きな犠牲を強いられましたが、西部戦線におけるドイツ軍敗退へのマイルストーンとなりました。
アンツィオ
フルーリー・シュル・オルヌの洞窟に避難するフランス市民。
1944年6月のノルマンディー上陸作戦直前、ドイツ軍の要衝カーンには猛爆が加えられ、南郊のフルーリー・シュル・オルヌの住民20,000人はしばらくの間洞窟で暮らすことになりました。
フルーリー・シュル・オルヌ

http://edition.cnn.com/2015/05/08/opinions/ben-ghiat-end-of-world-war-ii/index.html

【 英誌エコノミスト、日本の安倍政権与党が報道機関への脅迫を行っていると批判 】

読了までの目安時間:約 6分

エコノミスト誌の「自民党、報道機関に圧力」の世界報道を、英ガーディアン紙がさらに後押し
自民党は古賀氏の告発に対し、番組制作者を呼びつけ、放送法違反の可能性があると厳しく尋問するという報復を行った

ロイ・グリーンスレイド / ガーディアン 5月18日

安部圧力
安倍晋三首相率いる政権与党が、放送局と新聞社に対し、圧力をかけていると英誌エコノミストが批判しました( https://kobajun.chips.jp/?p=23398 )。
エコノミスト誌の記事によると、日本政府はメディアを脅迫することを目的とするキャンペーンに戦闘態勢で臨んでいます。
その実例として、エコノミスト誌はテレビ番組の問題、そして新聞記事の問題を取り上げました。

「(日本では)政治家が用心深くメディアに干渉するというのは、長く続いてきたいわば慣習です」
記事にはこう書かれています。
「しかし政府官僚からテレビ解説者に転身し、政府・政策批判を繰り広げてきた古賀茂明氏が、リベラル派の放送局と見られていたテレビ朝日の報道ステーションをクビになったことで、安倍政権がメディアに対し、弱い者を仮借なく攻撃している事実がつい最近明らかになり」日本において、メディアに強力な圧力がかけられているという問題が存在していることが解りました。」

安部首相日本メディア
安倍晋三首相が率いる日本の政権与党・自民党はこの番組での突然の告発に対し、番組の制作者を呼びつけ、日本の放送法に違反している可能性があるとして厳しく尋問するという報復を行いました。

また、政権が看板としている経済政策『アベノミクス』が、窮状から一般市民を救い出す政策としては機能していないと指摘するテレビ取材に対し、安倍首相がこれを拒否したとも伝えています。
エコノミストの記事にはこうあります。
「今や日本の主要な放送局の人事異動は、政府の圧力の下で行われているという噂すらあります。」

古賀氏 2
安倍首相の友人でもある国営の放送組織NHKの籾井勝人会長は、日本政府の方針に忠実に従う内容の報道を行うと明言しました。

エコノミスト誌の記事には、自民党はテレビ朝日に対する攻撃と同時に、同テレビ局を系列化に持つ日刊紙、朝日新聞社に対しても圧力をかけているとあります
記事中、朝日新聞社はそれまで行った従軍慰安婦に関する報道が一部偽証に基づくものであったと認めた昨年秋、日本政府と保守系の新聞社や出版社などが集中攻撃を行ったとあります。
この問題に関する史実の全体像は未だに明らかではありませんが、少なくとも朝日新聞社の記者たちは今やこの問題に関する記事を執筆することが非常に難しくなったと語っています。

I'm not ABE
ライバル紙の記者が次のように伝えています。
日本政府の記者会見の場において、朝日新聞社の政治記者たちは不必要に怯えているように見える…

http://www.theguardian.com/media/greenslade/2015/may/18/japanese-government-intimidating-the-media-says-the-economist
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【 写真集 : 第二次世界大戦(太平洋戦争)】《2》

アメリカCNNニュース 5月8日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

ヒトラー・ムッソリーニ
戦争中ドイツを訪問したイタリアの独裁者ベニト・ムッソリーニを出迎えるヒットラー。
イタリアはドイツと同盟関係にありましたが、1940年7月10日までどの国とも交戦関係にはありませんでしたが、この日フランスと英国に宣戦布告し、やがて戦線は北アフリカ、ギリシャへと拡大して行ったのです。(写真上)

1941年7月22日、東部戦線でソビエト軍陣地を攻撃するドイツ軍戦車。ドイツはソビエト連邦との不可侵条約を一方的に破棄、ここに第二次世界大戦中最も凄惨な戦いが始まりました。大戦中ソビエト軍兵士の犠牲は1,380万人と参戦国中最大となりました。さらに戦闘に巻き込まれる、非人道的行為、飢餓、病気による一般市民の死者は900万人に上りました。(写真下・以下同じ)
ドイツ・東部戦線
1941年12月7日、日本軍の奇襲を受け炎上するハワイ真珠湾内のアメリカ海軍の軍艦。奥がUSSウェスト・ヴァージニア、手前がUSSテネシー。
この日の攻撃で真珠湾内の米軍艦船の約半数が破壊されました。
同日日本軍はフィリピンのクラーク&アイバ陸軍航空基地も襲い、航空機の半数を破壊しました。
真珠湾
1941年12月8日、日本への宣戦布告書に署名するフランクリン・D・ルーズベルト大統領。12月11日、アメリカはドイツ、イタリアへも宣戦布告しました。
ルーズベルト宣戦布告
1941年12月、香港から日本軍の捕虜収容所に連行されるイギリス軍兵士。
香港・英軍捕虜

http://edition.cnn.com/2015/05/08/opinions/ben-ghiat-end-of-world-war-ii/index.html

【 戦後続いた軍事力行使の制限、その解除に踏み出した安倍内閣 】

読了までの目安時間:約 9分

日本の侵略行為や非人道的行為に関する反省が希薄であり、歴史を書き換える姿勢を鮮明にする安倍首相が、日本を再び軍国主義路線に向かわせる
安倍自民党が来年の参議院選で勝利すれば、いよいよ憲法を改変するための手続きが具体化する

アンナ・ファイフィールド / ワシントンポスト 5月14日

I'm not ABE
安倍首相が「米国が始めた戦争に日本が巻き込まれることは決してない。」と宣言したことを受け、内閣は自衛隊の行動に課されていた制限を撤廃する閣議決定を行いました。

安倍首相はこの変更が日本の平和維持に間違いなく貢献すると主張する一方で、日米の軍事同盟を一層強化すると宣言しました。
「私はアメリカ合衆国が始めた戦争に、日本が巻き込まれることは決してないことをここではっきりさせておきたいと思います。」
安倍首相は内閣が安全保障関連の各法案に承認を与えた後の記者会見で、こう語りました。

「我々は日本の安全保障の中心である日米同盟について、これまで強化を続けてきました。その日本とアメリカの同盟関係は、この度の私の米国訪問により、かつて無い程強固なものになったのです。」
安倍首相は、日米の同盟関係において日本が軍事力の行使に積極的に乗り出すことについてこう語りました。
これは集団的自衛権の行使容認法案として5月下旬に国会に提案され、アメリカ軍が攻撃を受けた場合、日本の自衛隊が武力で反撃出来るようにします。
国会で審議が始まれば、激しい論戦が予想されます。

広島14
第二次世界大戦終了後、日本を占領していたアメリカ軍の下で現在の憲法が成立しましたが、日本は常設の軍隊を持つことを禁じられ、直接攻撃を受けた場合にのみ自衛のための戦いを行う事が出来ます。

今回の変更は最大の同盟国であるアメリカ軍が攻撃されたことにより日本も危険にさらされると判断された場合、『集団的自衛権』が行使できるようにするというものです。

重要な変更の第2点は、イラクやアフガニスタンなど同盟国アメリカが戦闘を行っている海外に日本の自衛隊を派遣し、後方支援の任務に就かせることをできるようにするというものです。
しかしこの場合も、手続きとしてその都度国会の承認を必要とします。
安倍政権はこうした変更を実現させるため、1年程前から憲法改定に向け着々と手を打ってきましたが、今回の動きによりそれがいよいよ実行されることになりましした。

この問題は日本国内で大きな論争の的になっています。
大多数の国民は現在も平和憲法を支持しています。
しかしもし来年の参議院議員選挙で、安倍政権が率いる自民党が再び勝利し議決権を制することになれば、いよいよ戦争放棄をうたっている憲法の書き換えに向け、動き出すものと見られています。

GRD 安部
14日木曜日何百人もの人々が首相官邸前に集結し、口々にこの閣議決定に反対するスローガンを叫んでいました。
「戦争を可能にする法案に絶対反対」
「安倍内閣による一方的な行使容認を許すな!」

「平和を実現するための手段として、戦争することを可能にする法律が必要だと政府は言っていますが、その言い方そのものが欺瞞にしか聞こえません。」
抗議者の日と死である、東京都内に住む元教師の58歳の吉野のり子さんがこう語ったと、日本のリベラル紙朝日新聞が伝えました。
最近の世論調査は、回答した日本人のおよそ半分が今回の法改定による変更点を理解していない、あるいは反対の立場であることを明らかにしました。

アメリカ政府は、国務省スポークスマン・ジェフ・ラートケが法の変更は日本の国内問題だと前置きした上で、
「しかし我々は同盟関係の中でより積極的に軍事負担に応じ、地域と世界の安全保障活動に進んで関わろうとしている日本の取り組みを心から歓迎します。」

沖縄戦03
集団的自衛権の行使を可能にするための法改定は、韓国と中国でも論争の的となっています。
第二次世界大戦(太平洋戦争)中の日本の侵略行為や非人道的行為に関する反省が希薄であり、これらの点も含め歴史を書き換える姿勢を鮮明にする安倍首相が、日本を再び軍国主義路線に向かわせようとして、これまでにない活発な働きかけを行っているとして懸念を募らせています。

「日本が歴史の教訓に真摯に向かい合い、これまでと変わらない平和主義による発展の道筋を守り、アジア地域において建設的役割を担うよう願っています。
中国の外務省のスポークスマンは北京でロイター通信の取材にこう答えました。
ソウルでは、韓国の外務省スポークスマンは、日本は防衛政策の変更については「透明性を保って」手続きを進めるべきだと語りました。。

http://www.washingtonpost.com/world/japans-cabinet-approves-bills-to-loosen-post-war-military-restrictions/2015/05/14/28a4b9be-fa34-11e4-a47c-e56f4db884ed_story.html
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当初計画していた『限定戦争』が、想定していた規模で終わったためしはないのです。
記憶に新しいイラク戦争でも、相手がサダム・フセインと旧式装備の大統領警護隊という単一の敵であった段階では多国籍軍(実質アメリカ軍)は連戦連勝でしたが、その『勝利の後』イラクを占領し、『反米勢力』という見えざる敵が現れると、アメリカ軍兵士たちがいる場所は地獄の様相を呈することになりました。

中国には紀元前すでに『兵は凶なり(戦争がもたらす惨禍は甚大であり、決してみだりに用いてはならない)』という言葉が有りました。
現在の日本の政権に、その思想は有るのでしょうか?

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【 写真集 : 第二次世界大戦(太平洋戦争)】《1》

アメリカCNNニュース 5月8日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

ドイツ・ポーランド占領
占領したポーランドの首都ワルシャワを行進するドイツ軍兵士。(写真上)
2015年9月1日は第二次世界大戦開戦75周年にあたります。ドイツは開戦の年にポーランド、デンマーク、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、ベルギーを支配下に置き、1年後にフランスを占領しました。
そしてヒットラーの第三帝国に抵抗するのはイギリス一国という状態に陥ったのです。

1939年、ナチス党大会で演説するヒットラー。(写真下・以下同じ)
ナチ党大会
1939年7月14日、日中戦争の最中、戦略的要衝である舟山列島を攻略する日本軍。
1940年日本はナチスドイツ、イタリアと三国同盟を締結、1942年までには環太平洋地域のほぼ全域を勢力下に組み入れました。
日本軍・舟山列島
1940年、占領したパリでエッフェル塔を眺めるドイツ軍兵士。
この年ドイツ軍はパリに侵攻し、フランス政府を降伏に追い込みました。
ドイツ軍エッフェル塔
1940年、バトル・オブ・ブリテンで、編隊を組んで飛ぶ英空軍のホーカー・ハリケーン。
この戦いは7月10日から10月31日に及び、戦いを制した英国空軍は制空権を掌握、ヒットラーの英国本土上陸作戦を挫折に追い込んだのです。
英空軍1940年
1940年9月7日、ドイツ軍は初めてロンドン市内に大規模な昼間爆撃を行いました。これに対し、当初行なわれていた夜間爆撃は『電撃戦』の名で知られています。
英国空の戦い

http://edition.cnn.com/2015/05/08/opinions/ben-ghiat-end-of-world-war-ii/index.html

【『政権の悪口は言うな…』政府の圧力の前に、うなだれたままの日本のメディア 】

読了までの目安時間:約 8分

テレビ朝日を厳しく訊問したことで、古賀氏の主張が事実であることを証明してみせた自民党
たとえ憲法が保障する表現の自由を侵すことになっても、自民党は報道規制の意図を持つ
日本の一般市民に広く深く浸透している平和主義を捨てさせるためには、メディアによる宣伝工作が必要
支配層に対する監視の目を緩めようとしない朝日新聞に向けられた、最大の攻撃と威嚇

エコノミスト 5月16日

安部首相日本メディア
弱体な反対勢力、選挙マシーンが機能すれば勝利が確実な選挙制度、大手メディアが伝える政権支持率の高さ、安倍首相が率いる日本政府は今、向かうところ敵なしという状況にあるように見うけられます。

しかしそれでも安倍政権は、メディアを脅す手を緩めず、ますます圧力を強め続けています。
これには政府支持派のジャーナリストさえ、非難の声を挙げています。

政治家が用心深くメディアに干渉するというのは、長く続いてきたいわば慣習です
しかし政府官僚からテレビ解説者に転身し、政府・政策批判を繰り広げてきた古賀茂明氏が、リベラル派の放送局と見られていたテレビ朝日の報道ステーションをクビになったことで、安倍政権がメディアに対し、弱い者を仮借なく攻撃している事実がつい最近明らかになりました。

政権与党の自民党はこの件で直ちにテレビ朝日の番組制作者を呼びつけ、日本の放送法に違反している可能性があるとして厳しく尋問しましたが、その行為は古賀氏の主張通りの事実が存在することを証明することになりました。

この一連の動きは、たとえ憲法が保障する表現の自由を侵すことになっても、自民党は報道規制の意図を持つことを証明するものであると、メディア問題を専門とする学術関係者が指摘しました。

報道の自由 1
放送免許取り消しを盾に無言の脅迫を行う、あからさまと言って良い言論抑圧の動きは、つい最近別の形で現実になっていました。
昨年の秋、自民党は12月に実施されることになった解散総選挙で、公平な中立不偏の報道を要求しました。
多くの日本人はこの解散総選挙について、時間と税金の浪費と考えていました。
日本のテレビ局は、おしなべてこの問題に関する報道量を減らしました。
結果、後援会組織などに属する人間ばかりが投票に行くことになった結果、投票率は下がり、自民党はやすやすと勝利を手にすることができました。
これらはすべて、偶然の結果ではないのです。

安倍政権が進めてきた経済政策アベノミクスが一般的国民の生活を改善できていないというのは、国民の間ではごく一般的な感想ですが、この点に関するテレビ取材を安倍首相は拒否しています。

今や日本の主要な放送局の人事異動は、政府の圧力の下で行われているという噂すらあります。
海外の報道機関のジャーナリストでさえ、日本の外交官が彼らの報道に干渉しようとしていると不満を露わにしています。

英国紙
その長期的な狙いは、日本の報道体制を作り変えてしまおうというものである可能性があります。
2009年から2012年の間、民主党に政権の座を奪われていたことについて、自民党はその責任は日本の報道体制にあると考えています。

今日、安倍首相が最重要課題としているのは、長年の宿願でもある憲法の改変です。
日本国憲法は70年前にアメリカが主導して起草され、紛争の解決手段としての戦争をする権利を放棄しています。
日本の一般市民に広く深く浸透している平和主義を捨てさせる、あるいは少なくとも憲法の改変に対する批判を小さくするためには、メディアの幅広い支援を必要とするのです。

その主目標がNHK、日本の国営放送です。
自民党はテレビ朝日と並び、あまり重要ではない問題について査問するとして、自民党は時事問題について精力的な取材報道をおこなっている『クローズアップ現代』の番組編集責任者を呼びつけました。
安倍首相とも個人的に親しい籾井勝人会長は昨年、NHKは今後、日本政府の方針に忠実に従う内容の報道を行うと明言しました。

秘密保護法05
さらに自民党は2013年、『家庭の事情により』みのもんた氏がテレビ界から去ることを後押ししました。
みのもんた氏が出演するテレビ番組では、ゲストたちが日常的に政権与党をやり玉に挙げる発言を行っていたと、上智大学のマイケル・チュチェック教授が指摘しました。

しかし威嚇を用いた報道機関に対する最大の圧力は、支配層に対し厳しい視線を向け続ける日本を代表する日刊紙、朝日新聞に向かいました。
テレビ朝日は朝日新聞の姉妹会社です。

昨秋、従軍慰安婦に関する報道記事の一部が偽の証言に頼っていたとして朝日新聞が謝罪を行った際、日本政府と保守系の新聞社や出版社などが集中攻撃を行いました。
この問題に関する史実の全体像は未だに明らかではありませんが、少なくとも朝日新聞社の記者たちは今やこの問題に関する記事を執筆することが非常に難しくなったと語っています。
日本政府の記者会見の場において、朝日新聞社の政治記者たちは時に怯えたようになっている、ライバル紙の記者がこう語りました。

秘密保護法03
自民党内の議員の一人は、安倍首相は放送免許の取り消しまでは行わないだろうと語りました。
そんなことをすれば、国権主義政府の評価が決定的となり、選挙において極めて不利な状況を作りだすことになる、この議員はそう指摘しました。

しかし客観的には、報道機関を怯ませる材料がふんだんに見受けられます。
国家機密の漏えいに関わったジャーナリストを刑務所送りにする新しい特定秘密保護法の成立は、調査報道の矛先を鈍らせることになるでしょう。

パリに拠点を置く国境なき記者団が公表した、世界の報道自由度に関するランキングで、日本は現在61位です。
この5年間で、日本は50位から10位以上順位を落としました。

http://www.economist.com/news/asia/21651295-japans-media-are-quailing-under-government-pressure-speak-no-evil?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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エコノミストと言えば、アメリカの大手メディアも度々引用する程の『世界の良識』を代表するメディアですが、そのエコノミストがこれだけの事を書いているのに、日本のメディアが冒頭のイラストの通りだというのはどういう事でしょうか?

ところでエコノミストの記事は読んでいると、『わが意を得たり!』と感じることが度々ありますが、今回は記事に加え、イラストもそうでした。
安倍首相の椅子の下にぬかずいているのが髪の長い女性記者ですが、首相が外遊する際同行するNHKの記者じゃないでしょうか?
IWTというこの女性記者のレポートを聞くたび、私は「何でこの記者は報告と称し、いつも政権のプロパガンダばかり話すのだろう?」と感じていました。
エコノミストのイラストレーターも同じことを感じていたのかもしれません。

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