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【 日本から米国へのプルトニウム移送、2隻の武装英国船で 】

読了までの目安時間:約 8分

日本が行なっている核燃料再処理事業は、核拡散問題における世界の脅威
たとえ六ヶ所村再処理施設が稼働を開始しても、日本の核廃棄物問題の状況は改善されない

山口まり / AP通信 3月21日

プルトニウム輸送01
2隻の英国船籍の輸送船の内の1隻『パシフィック・イーグレット』が3月21日月曜日、東京の北東にある東海村に着碇しました。
この船は日米両政府の相互協約に基づき、秘匿されていた数十発の核爆弾が製造可能な量のプルトニウムを日本から米国の核貯蔵施設に移送します。
日本の共同通信社はパシフィック(太平洋)核輸送株式会社が運営する2隻の装甲船が、国立研究開発法人である日本原子力研究開発機構の本拠地がある東海村の沿岸に3月21日未明に到着したと伝えました。
日本の市民グループもその事実を確認しました。

プルトニウムが充填された特別なキャスク樽を輸送船に積みこむ作業は数時間かかります。
輸送船は2隻とも砲その他の防御武器を備えています。

『パシフィック・イーグレット、パシフィック・ヘロン』(イーグレットもヘロンもともに鷺を表す単語)の両船ともパシフィック(太平洋)核輸送株式会社が運営するものですが、2014年に日本政府が行なった誓約に基づき、日本国内にあったプルトニウムの331キログラムをアメリカ、サウスキャロライナ州にあるサバンナ川核貯蔵施設に移送します。

川内原発議会
このプルトニウムは大部分は英国から、そして少量を少し米国とフランスから提供されたものであり、これまで日本国内における研究のために使われました。

日本の報道各社と国内の国際的反核団体によると、パシフィック・ヘロンが沖合で待機中、パシフィック・イーグレットがまず着岸し、プルトニウムの積み込みを行っていたようだと語りました。
日本の当局は警備上の理由から詳細の確認を

発電用の燃料としてプルトニウムを使うという再処理事業への日本の取り組みと、そのための備蓄は、安全保障上の理由すら、国際社会の懸念の的になってきました。

11メートルトンに加え36トンのプルトニウムが英国とフランスでの再処理を終え、建材日本に返還・移送するための準備が進められていますが、この量は核爆弾6,000発が製造可能な量です。

今回の移送は3月下旬にワシントンで開催される核セキュリティ・サミットの直前のタイミングで行われ、日米両国の核拡散防止努力に対する取り組みを世界に向けてアピールする目的もあるものと見られます。

don't need it
原子力発電の過程でプルトニウムを生み出し続ける核燃料再処理計画については、日本と中国が実際に行い、韓国もまた強い関心を寄せています。
しかしアメリカ政府はこれまでも度々、核燃料再処理計画は安全管理と核拡散の上で危険が大きいとして懸念を表明してきました。

アメリカの環境保護団体であるサバンナ川核貯蔵施設監視団は、プルトニウムを安全に保管する必要性は認めるものの、外国で作りだされたプルトニウムまでアメリカの国土に建設された施設に運び込まなければならないのか、疑問を感じるという声明を発表しました。

月曜日に発表されたこの声明の中で、監視団の責任者であるトム・クレメンス氏はアメリカ政府に対し、
「核セキュリティ・サミットにおいて、核問題においてアメリカが本来取るべき立場を確認するとともに、日本が行なっている再処理事業が核拡散問題において世界の脅威となっている現実を指摘し、日本に再処理事業を中止するよう厳しく迫るよう」求めました。

anti02
日本は1990年代初頭、フランスの国有企業アレバ社とともに大規模な再処理施設の建設に着手しました。 しかし技術開発は思うように進まず、繰り返されたトラブルによりこのプロジェクトはその都度大幅に遅れることになりました。
昨年11月、安全基準とより詳細な点検を行うため、再処理施設の操業開始は2018年まで延期されました。

専門家は次のように指摘しています。
日本が使用済み核燃料のリサイクル事業を完成させる望みはほとんどなく、たとえ六ヶ所村再処理施設が稼働を開始しても、使用済み核燃料や備蓄プルトニウムの処理問題の状況改善にはつながらないと。

プルトニウムを核燃料として使用する高速増殖炉『もんじゅ』の計画は20年以上計画に遅れが生じ、公平に見てその実現は不可能との大勢の見方によりその事業は廃棄寸前にまで来ており、従来の原子炉でウランとプルトニウム混合物であるMOX燃料を燃やす別の計画も福島第一原発の事故以降休止状態が続いています。
日本の国内の稼働可能な43基の原子炉のうち、現在稼働しているのは2基だけです。

http://bigstory.ap.org/article/d01e23d54d3a41888470399b086cb58f/2-british-ships-arrive-japan-carry-plutonium-us
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【 3月24日~31日の報道写真から 】

アメリカNBCニュース 3月31日

week01
3月26日3月27日にギリシャ北部の国境の町イドメニで、集会を開いた中東からの避難民たち。
難民たちのヨーロッパへの脱出ルートであったマケドニアを始めとするバルカン諸国は、現在国境を封鎖して難民たちが入り込めないようにしています。
このためイドメニには11,500人以上の難民が急ごしらえのキャンプに足止めされています。
ギリシャ政府は難民の国内滞留がゼロになるよう望んでいますが、強制的排除等の手段はとらないことを決定しました。(写真上)

3月30日アーカンサス州リトルロックで折からの豪雨の中、水没した車の中から女性を救い出そうとする消防士。
リトルロックでは夕方のラッシュアワーに雷を伴うゲリラ豪雨に見舞われ、各所で冠水・洪水が発生しました。(写真下・以下同じ)
week02
3月31日パリ市内で労働法改正案に反対する抗議デモの参加者と衝突するフランス警察。フランスのミリアム労働相が進める労働法改正に反対する労働者や学生がデモ行進を行い
ました。
week03
3月30日にベルギーのメヘレンにあるプランケンデール動物園で公開された生後2か月のアジアライオンの子どもたち。
week04
3月29日アフガニスタンの首都カブールで開催された大会で、ナショナルチームを応援するにアフガニスタンのクリケットファン。
Week05
3月28日アラブ首長国連邦のアジマンで高層ビル火災を見守る当局の2人の男性。後刻警察は火事の発生場所が建物の高層階で発生したことを確認したと述べたものの、犠牲者が出たかどうかは一切明らかにしませんでした。
week06
http://www.nbcnews.com/slideshow/week-pictures-march-24-31-n548781

【 フクシマ : 私たちが学びそこねた教訓 】《後篇》

読了までの目安時間:約 6分

核燃料は鉱山のある場所一帯を放射性物質で汚染した後、生産国から危険を海外に輸出し、放射性廃棄物と化してその地域一帯にそれまでなかった危険を作り出す
原発事故は他とは比較にならない程深刻に環境を汚染し、経済と人間生活を徹底的に破壊、今なおその後遺症は日本国内にとどまらず、遥か離れた場所にまで及んでいる

デイブ・スウィーニー / ガーディアン 3月10日

2016
世界のウラン鉱物資源の約35%が埋蔵されているオーストラリアは、これまで長期間世界の核燃料取引の舞台の主役であり続けました。

1980年代以降、オーストラリアのウラン採掘は、2つの巨大事業によってほぼ独占されてきました。
いずれも南オーストラリア州の北辺に位置するカカドゥ・レンジャー・ウラン鉱山とオリンピック・ダムウラン鉱山です。

2011年以降も世界各国の巨大企業は、両方の事業に出資をすることにより、核燃料事業に対する考えを明らかにしてきました。

カカドゥ・レンジャー・ウラン鉱山における採掘事業はすでに終わりましたが、これまでに採掘され備蓄されている鉱石の処理始業は継続しています。
そしてはカカドゥ・レンジャー・ウラン鉱山のオーナーであるリオ・ティント社は、高額な費用を要ししかも複雑な構成を持つこの施設の復旧作業に取りかかる準備を進めています。

核廃棄物01
オリンピック・ダムでは世界最大のウラン鉱山会社であるBHPビリトン社が、2012年承認を受けた数十億ドルを投資した長期間に渡る拡張計画を棚上げにし、南オーストラリア州政府を唖然とさせました。
同じ南オーストラリア州のハネームーン社のような比較的小規模な鉱山会社は事業の見直しと再編、そして設備のメンテナンスなどを行っている状況にあります。
採掘事業などの現業から撤退し、受注取次や営業事務など普通の企業と変わらない業態への転換を行い、『再び良い時代が巡ってくることを』待っています。

歴史的に見てウラン採掘業は政治家との癒着に対する不信、鉱山の数に対する規制、当然課されるべき許認可についての数多くの不備、そして先住民族アボリジニと地域社会の反発といった問題を抱えたまま今日に至っています。

近年これらの問題のうち、政治的制約は低下する傾向にありますが、福島第一原子力発電所の事故以降、原子力発電に対する反発と拡大と、それに伴うウラン燃料価格の低下が、いずれも劇的なほど大きなものになっています。

waste02
10年前世界市場で18%のシェアを持っていたオーストラリアのウラン生産量は、現在約11%ほどになりました。
2014年のオーストラリアのウラン生産量は5,000トンでしたが、この量はこの16年間で最低となりました。
ウラン鉱業はオーストラリアの輸出総額の0.2%未満、雇用面では0.02%の割合を占めています。
ウラン関連産業で働いている総人数は1,000人未満です。

ウラン産業の継続と安定した業績の確保に関する熱意を秘めるオーストラリア政府は、思い切った手を打とうとしています。

彼らは求められているウラン採掘業という業態そのものに対する再評価を行おうとはせず、その代わりに最も最近の例ではまだ規制基準の整っていないインド向けに、大量のウランを無責任に売りつける商売を急速に拡大しつつあります。
こうした事業に対する許認可は極めて迅速に行われ、原子力規制機関もあえて問題にせようとはせず、地域社会の懸念などは真剣に取り上げられないままうやむやにされています。

01ドイツ・反原発
さして儲かるあてもなく、将来性もないウラン採掘業はこうして続けられています。
要するに大きな危険を伴う割には配当の少ないのが、オーストラリアのウラン核燃料事業なのです。

それは鉱山のある場所一帯を放射性物質で汚染した後、生産国からと核燃料の危険を海外に輸出し、その挙句に放射性廃棄物と化してその地域一帯にそれまでなかった危険を作り出すのです。

このサイクルこそは福島第一原発の事故の原因のひとつを作り出しました。

他とは比較にならない程深刻な環境汚染をもたらし、経済、人間の生活を徹底的に破壊し、今なおその後遺症は日本国内にとどまらず、遥か離れた場所にまで及んでいます。

アルジャジーラ抗議集会
「福島で起きたことを、私たちは絶対に忘れないようにすることが必要です。」
福島第一原発の事故発生から5年という節目を迎え、長谷川健一さんが語ったこの言葉こそ、オーストラリアのウラン核燃料事業の本当の価値を、利害から離れた立場で表現した、まさに正しい評価だということを、私たちは胸に刻み込む必要があります。

〈 完 〉
http://www.theguardian.com/commentisfree/2016/mar/11/fukushima-five-years-on-and-the-lessons-we-failed-to-learn

【 フクシマ : 私たちが学びそこねた教訓 】《前篇》

読了までの目安時間:約 6分

フクシマ、それは原子力発電所事故の犠牲の大きさ・放射能汚染の深刻さを一言で表現する世界共通語、
福島第一原発の事故は私たち世代の進路を変えた、決定的かつ世界的出来事のひとつ

デイブ・スウィーニー / ガーディアン 3月10日

2016
ちょうど今から5年前、世界は息を殺しせわしなく指を組んだり離したりしながら、ひとつの新しい言葉を学びました。

フクシマ。

本来日本の県のひとつ、あるいは地方都市の名前に過ぎないこの言葉は、原子力発電所事故の犠牲の大きさと汚染の深刻さを一言で表現する世界共通語になったのです。

福島という日本語の意味は「幸福に満ちた島」というものですが、福島の運は2011年3月11日、原子炉の中でメルトダウンしてしまいました。

津波によって重要な冷却システムを破壊されてしまった3基の原子炉がメルトダウンを起こした福島第一原発は制御不能に陥り、大量の放射性物質を環境中に放出、こうして福島第一原発の事故は私たちの世代における、決定的、そして世界的出来事のひとつとなったのです。

この事故はひとつの分野において、その方向性を決定的に変える必要があるという事実について、世界に警鐘を鳴らす出来事となりました。
この事故の原因を作りだしたのは複数の国々であるというべきですが、福島第一原発でメルトダウンした核燃料を供給し、現在も世界に原子力発電の燃料を供給しているオーストラリアも、深く潜行する関連性を認識しないわけにはいきません。

4号機建屋
3月11日に発生した東日本大震災の巨大地震と津波は、東北地方の太平洋沿岸部のほとんどに、壊滅的な打撃を与えました。
そして東京電力が経営する福島第一原発の安全装置とバックアップシステムを完全に破壊し音発生した事故は人命の喪失につながり、大量の住民避難、何兆円規模の経済損失、そして大気、土地、海洋の大規模汚染へと拡大して行きました。

危機は現在も続いています。

日本政府の原子力規制当局は、今後40年以上続くとされる事故収束・廃炉作業の中で、現在も続いている放射性物質の放出、増え続ける高濃度汚染水と放射性廃棄物をどう管理するかの問題について、今後積極的に関わっていかなければならないだろうことを確認しています。
さらには東京電力の事故当時経営に携わっていた役員に対する「業務上過失致死、同傷害」の訴訟についても監視していかなければなりません。

2012年8月、私は事故の査察を目的とした国際的な公衆衛生専門家の派遣代表団に加わり、福島第一原発の事故現場に入りました。
私たちは事故によって祝福が不可能な程、人生と生活を破壊されてしまった人々と会い、話を直接聞くことができました。
そして人々も、将来の希望も、ともに消えてしまったいくつもの町や村を車で走り抜けました。
仮設住宅では、もう二度と生まれ故郷には戻ることができないという初老の原発難民と会いました。

NBC03
私たちは個人としての勇敢さに縁どられながらも、多くの人間の無関心さにさらされているゲンパツ難民たちの話を幾度となく聴きましたが、その脇ではいつもガイガーカウンターの不気味な音が鳴り続けていました。

一項の中にいた酪農家であり、もはや生産した牛乳を売ることが出来なくなった長谷川健一氏は、
「福島で起きたことを、私たちは絶対に忘れないようにすることが必要です。」
と語りました。

長谷川さんの生活と生計を取り返しのつかぬまで破壊してしまった事故の背後には、黄色地に黒でマークをつけられた大量の核燃料の存在があり、オーストラリアはその生産国として関わり合いを否定するわけにはいきません。

2011年10月、オーストラリア議会はその手抜きと怠慢によって世界に悪名をとどろかせた東京電力に核燃料を提供しているのがオーストラリアであること、そして事故発生当時、福島第一原発内に大量に保管されていたのは正真正銘オーストラリア産の核燃料であったことを確認しました。
福島第一原発周辺に大量に放出された放射性物質の源は、オーストラリア産のウラン鉱石だったのです。

FR24 破壊された福島第一原発
福島第一原発の3基の原子炉の中で溶け落ちた核燃料がオーストラリア産であることが確認され、果然、オーストラリアは世界の核燃料取引の中における自国の役割について再考を促され、かつ取引形態についても見直しが行なわれることになるものと思われました。

国連も同様の見解を持ちました。
国連事務局長は2011年9月オーストラリアに対し、
「ウラン鉱石の採掘に関し、地元の地域社会と生態系に与える影響の大きさについて徹底分析と評価を行うこと」を依頼したのです。

こうしたことはかつてなかった事です。
しかし今やその事を明確に求められることになりました。
そしてオーストラリアのウラン鉱石産業は、いくつかの分野で延び延びになって来た詳細な調査の実施と報告を求められることになります。

オーストラリアのウラン産業の最も最近の調査は、2003年10月の上院の質問に基づくものでした。
この時明らかになったのは環境汚染や環境破壊問題についての過小評価と客観的調査データと基準の欠落、企業コンプライアンスの欠如という産業界の特徴、そして近視眼的経営姿勢でした。

〈 後篇に続く 〉
http://www.theguardian.com/commentisfree/2016/mar/11/fukushima-five-years-on-and-the-lessons-we-failed-to-learn

【 日本政府、1,600キロ沖合の小さな島に130億円を投入 】

読了までの目安時間:約 7分

「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」国連海洋法
東シナ海において軍事的活動を活発化させ圧力を強め続ける中国を、軍事的経済的にけん制するための前線拠点

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2月3日

沖ノ鳥島
沖ノ鳥島に7,500万ポンド(約130億円)の予算をかけて整備を行うという日本政府の発表は、中国政府との間の長年の紛争を再燃させる可能性があります。
中国側から見る限り、沖ノ鳥島はおよそ人間が暮らすことなど不可能な岩礁の集まりに過ぎません。

しかし日本側から見れば、『はるか沖合の鳥たちが羽を休めるための島々』として知られる広大な太平洋に散らばるこの小さな岩礁群は、東シナ海において軍事的活動を活発化させ圧力を強め続ける中国を軍事的にも経済的にもけん制するための、前線拠点として利用可能です。

日本政府は2月第一週、東京から約1,600キロ南方にある沖ノ鳥島の監視施設を再整備するため130億円を予算化すると発表しました。
しかしこの措置は中国政府との間で長年懸案となってきた海事問題を紛糾させる可能性があります。

近年、北東アジアのライバル同士が東シナ海の尖閣諸島の主権をめぐって外交的に衝突する間、沖ノ鳥島は見落とされてきました。

沖ノ鳥島01
これまで中国が沖ノ鳥島に関する領有権を主張したことはありませんが、日本政府がちっぽけな非常に小さい岩礁に多額の投資を行うことについて静観するつもりは無いと考えられます。
周囲には豊かな漁業資源があり、潜在的には大規模な海底油田などのエネルギー資源に加え、豊富なレアメタル資源なども存在しています。

この環礁は台湾と米国が領有するグアムのざっと中間に位置し、東西4.5km、南北1.7km程の大きさを持っていますが、東シナ海の尖閣諸島を巡る領有権争いに加え、南シナ海で同様の施設の建設を進める中国との間で緊張が高まる中、戦略的な重要性が増しています。

これまでこの付近での中国艦船の活動は対日本というよりは、台湾を巡って紛争が発生して米国艦船がこの海域内に入ってきた場合、潜水艦などの海底での作戦実施の際に必要になる海図作成のための調査であったと見られています。

中国政府は沖ノ鳥島の定義については人間が居住可能な島ではなく単なる岩礁であり、したがって周辺200海里に日本が排他的経済水域を設定することはできないとの主張を長年繰り返してきました。
海洋法に関する国際連合条約は、その第121条で島について次のように定義しています。
「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。」
そしてその第3項に次のように記されています。
「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。」

こうした理由からこれまで日本は、中国が南シナ海において行っているような、大量の土砂とコンクリートを使って人工島を建設するような取り組みは行わず、代わりに現存する珊瑚層が海面下で消滅するのを防ぐ対策を行い、その周囲に排他的経済水域を設定してきました。

沖ノ鳥島02
1980年代後半から日本は干潮時に海面に現れる2つの岩礁を浸食から守るため、金属性の防波堤とコンクリート製の護岸設備を作るのに約700億円を投じてきました。
そして第3の岩礁については、波が運んでくるがれきなどからの保護のため、チタン製のネットがかけられています。
そして付近を航行する艦船をモニターし、国土交通省に情報を送るために地上3階建てに相当する監視硝を建設しました。
国土交通省の担当者は朝日新聞の取材に対し、恒常的な浸食に台風の接近による損傷が加わり、倒壊を防ぐため緊急修理が必要になったと答えました。
「これらの施設一式の保全のため、再整備を行う必要があります。」
氏名は明らかではありませんが、同省の担当者はこう語りました。
「できるだけ早く建設に着手したいと考えています。」

http://www.theguardian.com/world/2016/feb/03/japan-spend-billions-yen-tiny-okinotori-islands-1000-miles-south-of-tokyo
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【 今週3月20日~26日の傑作報道写真ベスト20から 】

グレッグ・ホワイトモア / ザ・ガーディアン 3月26日

week01
ブリュッセル市内の建物の壁に、テロの犠牲者へのメッセージを書く2人の男性。(写真上)

ユダヤのプリム祭(エステル記に記された古代ペルシャでの大量虐殺からユダヤ人が逃れ得たことを祝う祭り)の休日、ネタニアのシナゴーグへ向かって歩く女の子。(写真下・以下同じ)
week02
ニュージャージー州の住宅火災の現場の消防士。
week03
マケドニアとの国境の町、ギリシア、イドメネイ村の畑の中にたたずむ難民の子供。
week04
インド、スリナガルから約75キロの場所にあるカンガン村でブランコで遊ぶカシミール地方の女の子。
week05
キューバの首都ハバナで演説するテレビの中のオバマ大統領を見つめる男性。
week07
インドネシアのスマトラ島で、子どもを抱きかかえるオランウータンの母親。
week08
今週亡くなったオランダの伝説的サッカープレーヤー、ヨハン・クライフの自宅前に置かれた写真を濡らす雨の滴。
week09
http://www.theguardian.com/artanddesign/gallery/2016/mar/26/the-20-photographs-of-the-week

【 東日本大震災発生から5年のニッポン 】

読了までの目安時間:約 8分

「日本は原子力発電をあきらめない!」国民の原子力行政に対する疑惑をより強いものにした安倍首相の発言

ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 3月11日

NBC01
国を揺るがすほどの大災害となった2011年3月11日の東日本大震災の発生から、5年が経ちました。
そして巨大地震と巨大津波が引き起こした福島第一原子力発電所の事故は、チェルノブイリ以来最悪の原子力発電所事故となりました。
日本は3月11日金曜日、5年前に発生した東日本大震災で犠牲となった約20,000人の人びとを哀悼しました。
東日本大震災は東北地方を始めとする東日本に壊滅的被害を与えました。

Fukushima residents
明仁天皇と美智子皇后陛下、安倍晋三首相は国が開催した追悼集会の席上で、そして日本中の人々が午後2時46分、5年前に地震が発生した正確な瞬間に合わせて黙とうを捧げました。
この前日警察庁によって発表された東日本大震災に関する集計によれば、3月11日に襲った巨大地震と巨大津波による犠牲者の数は15,894人、そして今なお2,561が行方不明になったままです。
「多くの人々未だに被災地で、不自由な生活を強いられています。そして原子力発電所事故のため愛する故郷に戻れずにいる多くの人々がいます。」
安倍首相は政府関係者や震災の被災者が参加し、東京で開催された式典でこう語りました。

anti-nuclear01
巨大地震が原因となって発生した津波は、福島第一原子力発電所に襲いかかり、6基中3基の原子炉をメルトダウンさせました。
事故により放出された大量の放射性物質が福島県内の広域を汚染しました。
この結果160,000人にのぼるを超える人々が故郷にある自宅を捨てて、避難を強いられる事態となり、福島第一原発の事故は、1986年に発生したチェルノブイリ原子力発電所事故以降、最悪の原子力災害とされるに至りました。

公式の集計では未だに約100,000の人々が、故郷の放射線量が下がらないために自宅に戻ることができずにいます。
事故を起こした原子炉の事故収束・廃炉作業については、福島第一原発の所有者である東京電力によれば、これから40年以上の歳月を必要とします。

2015oct01
しかし日本が原子力発電を必要とするという安部首相の態度は変わることはありませんでした。
同じ席で首相は津波によって壊滅的被害を受けた東北地方の復興事業を加速させると約束しました。
「資源に乏しいわが国が、経済性や気候変動の問題に配慮しつつ、エネルギー供給の安定性を確保するためには、原子力は欠かすことはできません。」
安倍首相は別の記者会見の席上でこう述べました。
しかし原子力発電の継続の問題について日本政府が直接言及したことは、逆に多く国民に原子力発電の安全性と日本の原子力発電担当行政に対する疑惑をより一層大きなものにすることになりました。

▽ 人々の祈り

黙とう2016
明仁天皇と美智子皇后陛下、安倍晋三首相は国が開催した追悼集会の席上で、そして人々が午後2時46分の東日本大震災発生の時間に併せ黙とうを捧げる姿は日本中で見られました。
日本国内のすべての電車や列車はこの時間、運行を止めるよう依頼を受けました。
そして国中の人々に、巨大な悲劇によって命を落としてしまった人々に哀悼するため、黙とうを捧げるよう呼びかけが行なわれました。

アジア各国の原発
[上の図 : アジア各国の原子炉の数、赤は現存する原子炉、黄色は建設中の原子炉。]

http://www.dw.com/en/japan-marks-fifth-anniversary-of-tsunami/a-19110119
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【 フクシマ発生から5年後の世界の原子力発電 】
今や原子力発電は『儲からない商売』

エコノミスト 3月10日

ECO Meltdown
22011年3月11日に発生した巨大津波は日本の東北地方の太平洋沿岸に襲いかかり、いくつもの市町村や農地をのみこみ、福島第一原子力発電所に致命的なダメージを与えました。

約19,000人の市民が津波によって死亡しました。
そして福島第一原発では原子炉の炉心が溶け落ちるメルトダウンの事故が発生、1986年に発生したチェルノブイリ以来最悪となる原子力発電所事故は付近一帯の環境中に大量の放射性物質を放出、約160,000人が故郷、自宅を捨てて避難を強いられました。

5年が経った今も福島第一原発の事故は終息しておらず、多くの市町村が人間の生活できないまま、数万人の人々が仮設住宅などで避難生活を送っています。

川内原発再稼働
事故発生後、日本は暗然上の懸念から国内の稼働可能な原子炉43基のうち、2基を除くすべてを停止させました。
他の国々でも原子力発電に代わり、再生可能エネルギーへと発電手段を変える動きが加速することになりました。

ドイツでは2022年までに国内にある17基の原発すべてを停止させるという政治決断を行い、現在そのための作業が進行中です。
フランスも全発電手段の中で現在75%を占める原子力発電の割合を、10年以内に50%にまで引き下げるという議案を可決設立させました。

一方では経済市場における物価が著しく下落し、電力会社の電気の卸売価格もこれにスライドして下落することになりましたが、多くの原子力発電所の運営を難しくすると同時に、廃炉費用の捻出にも黄色信号が灯ることになりました。

01再稼働反対
市場の自由化・規制緩和が進む中、原子力発電所の経営から利益を得ることはますます難しくなり、かつ危険な原子力発電所を一から建設しその安全性を確保することには莫大な費用がかかるようになりました。
一方で各国政府が二酸化炭素の排出に取り組む中、原子力発電所の閉鎖はしばしば火力発電所がさらに多くの化石燃料を燃やすことにつながっています。

再生可能エネルギーの発電能力の拡大は、風が吹かないとき、そした太陽が輝かないときには、安定した電力供給手段にはなりません。
この点、原子力発電所は二酸化炭素排出料の少ない安定した「ベースロード電源」であることを認めざるを得ません。
原子力発電所の全廃に踏み切ったドイツでは、石炭火力発電所の操業率を引き上げざるを得ず、結果的に二酸化炭素の排出量が増加しました。

原子炉建屋
各国の政府は原子力発電を含めたエネルギー供給計画を形にしなければなりませんが、原子力発電所はそのまま操業を継続するにせよ、廃炉に踏み切るにせよ、莫大な費用がかかります。
福島第一原子力発電所の廃炉には2兆円以上かかると見積もられていますが、事故の収束作業及び汚染された地区の除染には別に10兆円以上の費用がかかるとみられています。

ECO Nuclear map

http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2016/03/daily-chart-5

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